『『
タンザナイトは拳を飛ばして爆発させ、エーテリアスを吹き飛ばす。
『『
次に手から青い結晶の鎖を作り出し、エーテリアスに巻き付け、他のエーテリアスにぶつける。
「はっ!...流石タンザナイト様なのです。次々に襲い掛かる敵をいとも簡単に倒すなんて!」
『ふぅ....っ!』
すると、今度は通常より赤い個体の『タナトス・畜エネ型』が四体も現れる。
「なっ!タナトスが四体も....」
『っち...骨が折れるぜ』スッ
タンザナイトがそう呟くと、手を胸前で左手を握り人さし指を立て、それを右手で握る印相、『
「っ!その技って」
『『時空領域.....
ピチャン.....
一滴、地面が滴ると、地面が水たまりのようなリフレクション現象に変わった。
「わっ、すごいのです!
「やっぱ映えるよねそれ....」
『ふっ...行くぜ』スッ――バッ
『っ!』ググッ....
タンザナイトが手で動作すると、タナトスの動きが一気に鈍くなる。
「なっ!タナトスがいっぺんに動きが鈍くなったのです!」
「この空間はタンザナイトの意思で『エーテルそのもの』を操れるんだって」
「す....凄いってものじゃないのですよこれは!下手すれば国家転覆できるレベルなのです!」
『生憎、俺はそう言うのはあまり向かないけど....っな!』シュッバッ!
『っ!?』ドガガガガッ!
タンザナイトは手を翳して、エーテルエネルギーで作った平たい斬撃の物体を作り出すと、タナトス目掛けて投げつけ、四体とも一刀両断する。
『おっし!いっちょ上がり!』ブシッ!!
「さっすがタンザナイト!頼りになるぅ!」
「ああ...こ、これがタンザナイト様の本気.....こんなまじかで見られるなんて.....夢みたい――」
パリィィィィンッ!!
『!?』
三人が急に割れた音が鳴り響き、聞こえたほうに顔を向けると、割れたところから元の景色が見え、そこに墨のような鳥が徘徊していた。
『なんだあれ....墨汁?』
「....っ!誰かいます!」
「....」スッ
謎の人物が札?のようなものがはらりと、向かっていくと、そこから変化し、一本の光輝く墨汁のような道ができる。
「なにを....」
「ふむ....面白い技を使うな....」トス...トス...
その人物は、作った道を渡って近づいてくる。
「そこから見ていたぞ....成程、これは鍛えがいがあるな」
『だ....誰?』
その人物は、白髪で黄色の瞳、布面積が少ない白い服の上に黄色のジャケットを着ている女性だった。
「ん?ああ、私こそは雲嶽山第十三代宗主.....お前さん達は『
『は....はぁ?』(というか、この人....時空領域を外からぶっ壊してきたな....ただ者じゃないな、この人は)
「お前さん達がどんな人間なのか、メイフラワーがよこした資料を見て興味が沸いた。わざわざ見に来てやったというわけさ。最初はとんだ厄介ごとを押し付けられたと思ったが....お前さん達、なかなかどうして、いい『気』をしているじゃないか。特にそこのエーテリアス」
『えっ?俺っ?』
「ああ、エーテリアスという
『はっ...はぁ、どうも』
「...あっ!市長さんが言ってた凄腕の調査員ってあなたのこと?」
「ああ。しばらくはお前さん達の師になるよう頼まれた....いくつか追加で『指導』をしてやれとさ」
『....お前さん
「もちろん....お前のことだ。タンザナイト」
『俺も!?』
と、まさかタンザナイトも指導されるとは思わず、驚いた。
「えっと...『指導』って言っても、具体的に何をするの?」
「うーむ、とはいえここはお喋りに向いている場所ってわけでもないしなあ。私は別の調査のついでだし、お前さん達も忙しそうだし、顔合わせはこのくらいにしとくか」
「また適当な頃合いを見て、お宅にお邪魔するよ。じゃ」
儀玄は二言三言残して去って行った。ビビアンのほうはというと、何やら
「すみません、パエトーン様、タンザナイト様....わたし、少し気分が悪いようなのです....今日はもうホロウを出たいと思います。サクリファイスのコアに関することは、もう少し調べてみますから....進展があればまたご連絡さしあげるのです」
『....そうだな、うん。一旦まずはここから出よう』
タンザナイト達は、このホロウから脱出したのだった.....
~~~~
辺りはもうすっかり夜になっており、船が通る川辺をビビアンはじっと見つめていた。
――そして、タンザナイト達に気づいたか、ビビアンは口を開く。
「パエトーン様、タンザナイト様、もう帰って休まれますか?」
「別に私は急いでないよ。むしろ、ホロウを出た後、あんたがどんどん落ち込んでるから....そっちが心配」
「わたし....」
『...もしかして、あのディナってやつとなんかあるのか?』
「モヤモヤしてるなら、私達に話してみて。こう見えてけっこう聞き上手だよ!」
「他でもないパエトーン様とタンザナイト様に過去を隠すつもりなんてなかったのですが.....」
ビビアンがそう言うと、過去のことを話し始める。
「小さい頃から不幸をもたらす人間だと見なされてきたわたしは、どこへ行っても長くは留まれませんでした。ランドンが私を養女にして、讃頌会に連れて行くまでは.....」
ビビアンが讃頌会に入った時にディナと出会ったのだ。ディナはビビアンを快く受け入れて、実の妹のように接してくれた。
ディナは父親であるランドンを大変誇りに思っており、ランドンがいつか皆を、ホロウの恐怖から解放してくれる....そうしきりに言っていた。あらゆる命が、ホロウの内外を問わず自由に生きられるようになるのだ...と。
ディナはそんな父親の手伝い、『祝福』と呼ばれるものを『授かる』人間を選別する役を担っていたのだ。これには讃頌会の誰もが彼女を尊敬していた。
『祝福』を授かることで、より優れたエーテル適性に恵まれ、ホロウへの出入りが容易になり、突発的なホロウ災害を恐れる心配もなくなるのだ。
当時、ディナとビビアンは毎日のようにお喋りしていたが、ディナの話題と言えばもっぱら讃頌会にと父親のことだった。だが、ランドンがビビアンにディナの代わりをさせるようになってからは、二人の関係が変わり始めた。
ランドンはビビアンにこういった。ビビアンはただ不幸をもたらす存在などではない....ランドンの言う通りにすれば、誰かを救うことができるのだと。それからというもの、ランドンは定期的にビビアンを人に引き合わせ、ビビアンが涙を流した時だけ、彼らに『祝福』と呼ばれる薬を授けていた。そうして『祝福』を授けられた人は、災いを避けることができる....が。
「もしかしてその薬って....ブリンガーが打ったあの薬?」
―――そう、何を隠そうこの『祝福』と呼ばれる薬は、サクリファイスの初期段階のものだった。短時間で能力を大幅に向上させられる一方で、エーテル侵蝕症状の進行もはやめてしまうのだ。投与された人のほとんどは最終的にエーテリアスとなってしまうが、ごく少数だけが『サクリファイス』へと変化するのだった。ただその過程で、人間であった時の意識はどこかへ行ってしまうらしい。
エーテリアスはその場で処分され、サクリファイスは讃頌会の上層部に献上される.....ただ、讃頌会の理念において、サクリファイスは
そんなことも知らずに、自分が誰かを救うことのできると喜び、ディナに共有したいと思っていたが、ディナは段々と距離を置かれるようになった....そして月日は流れ、讃頌会内部で、ランドンが次第に影響力を失っていった....
そんな時に、ビビアンがディナの前で涙を流す日が訪れたのだ。ランドンはそれを、自身の信頼回復に使えると思ったのか、自分の娘に『祝福』を授けると決めたのだった。
『っ.....』
(ひどい....娘でさえも道具としか思っていないの...!)
ビビアンはずっと『祝福』は良い事だと信じていたが、あの日ディナの顔に浮かんだ驚愕と恐怖を見て、初めてビビアンは疑いが芽生えたのだ。そしてその日の夜ビビアンはランドンの後を追った...そうして行きついたのはホロウ、かつて『祝福』を授けたはずの人が徐々に侵蝕されていく現場だった。
やがてその人たちはエーテリアスとなり、ランドンはそれを躊躇なく、殺したのだ。ランドンが気づく前にビビアンは戻り、ランドンの書斎に侵入した。その真実は、ここで知ったのだ。
ディナが『祝福』を授かるまでもう時間がないと知るビビアンは『祝福』を受ける日、皆に向けて言った....本来『祝福』をうけるべきなのはディナではなく、ランドンだと。最初こそランドンは抗弁して、そこにいた人々も信じようとはしなかったが、ビビアンは皆の前でランドンを見つめ、わざと涙を流したのだった―――
「ランドン様、どうかご自身に祝福をお授けください!」
「ビビアン、貴様っ....」
「どうして拒まれるのですか?まさか、私達をずっとだましていたと?」
苦い顔をしたライドンは市民に向かって拳銃を構える。
「恩知らずの愚民どもめ、貴様らにもう価値などない!」
「ひっ....」 「嘘つき!」 「は...早く逃げよう!」
その姿に皆は驚き、恐怖で逃げ出そうとする。
「目を覚ましてください、ディナ!早くいかないと!」
「ビビアン...一体何が...」
ディナが目を覚ますのに気づいたランドンはディナに躊躇なく拳銃を向ける。
「ランドン様の言う『祝福』、その正体は――」
拳銃の引き金を引こうとする瞬間、カミエルがランドンを取り押さえる。
バンッ――!
火薬の爆発が音が響き渡ると、そこにはもみあいの際に拳銃が発砲し、弾丸がランドンに当たったのだ。
「お父様!」
「違うの、私はただ....」
そう言いながら、ランドンはその場で倒れる。
「ママ、お家に帰りたいよ....」
「僕たちには関係ない....これは、これは祝福を授けなかった代償だ....!」
「ビビアン、これはあなたが....?」
と、ランドンの手を握りながら言う。
「ディナ、わたしはただあなたに祝福を受けて欲しくなかっただけで――だって祝福を受けてたら...!」
「私だって、お父様を失いたくなかった。あなたはずっと、彼がしていることを知っていた.....
それなら、どうして....お父様は私の唯一の家族だった.....うぬぼれないでビビアン、あなたは不幸しかもたらさない、いつだってそう....」
ディナはそう言い、ビビアンを睨むつけた.....
ビビアンの声は震えながら、過去を話し終えた....
「ランドン亡きあと、てっきりディナは讃頌会を離れたと思っていたのです....あの男が遺したものを引き継いでいたばかりか、カミエルまでもが彼女の傍にいるなんて....」
「カミエルの家族は、全員がホロウ災害で亡くなっています。讃頌会の理念にとても共感していたのも、そのためです。本質的な悪人ではなく、ただ....希望を託せる場所が必要だっただけのこと」
「彼女はかなり早い時期から讃頌会に参加し、ディナの成長を見守ってきました。あの事件が起こったときだって、彼女はただディナを守ろうとしただけだったのに....おそらく、彼女がディナの傍で手をよごしているのは、ある種の罪滅ぼしなのでしょう」
「わたしはディナを救い出すどころか、逆に彼女を閉じ込めてしまった.....不幸を予知できても、その結末を変えられないことは一度としてないのです.....あるいは本当に、わたし自身が不幸の引き金なのかもしれません」
『違うぞビビアン....悪いのは、お前の力を悪用したランドンだろ....!』
「そうだよ、タンザナイトの言う通りだよ!それにディナとカミエルだって....本当のことを知ってて、今でもああしてるわけでしょ。それはあの人たちが選んだことだもん」
「ホロウが奪っていった誰かの家族なんて、それこそディナ達に限らず数えきれないくらいいるよ。でも生き残った人たちがみんな、
「パエトーン様、タンザナイト様....」
二人は、ビビアンの負の言葉を否定したのだった。
「自分を信じてあげて、ビビアン。あんたはいまだって、自分の力でサクリファイスの危機をぶっ壊していってるんだから。それに言ってたじゃん。今の自分をすっごく気に入っているって。あれはもう無効ってことでいいの?」
「....その言葉は、ずっと有効、なのです。話を聞いてくださって、ありがとうございました。もう何年も前のことですが、ずっと向き合う気になれなくて。今日ディナに再会したことは...もしかすると運命だったのかもしれません」
「すべてお話する機会をくださったおかげで、心が少し軽くなったような気がするのです。パエトーン様とタンザナイト様は、素晴らしい聞き手でもあるのですね」
「うんうん。これからも、なんかモヤっとしてたらいつでも私達に吐き出していいよ!」
『いつでもいいぜ!』
「...はい!今日は色々なことがあったのです....きっとあなたもお疲れだと思います。わたしは再度サクリファイスのコアを追うとします。情報があれば、またご連絡するのです。おやすみなさい、パエトーン様、タンザナイト様」
『おう。お休み、ビビアン』
「お休み、ビビアン!」
そう言い、タンザナイト達はこの場で解散した。