ビビアンがバードンに接触できたことを伝えると、余った時間で今夜を凌ぐため、晩餐会のお作法を開設するビデオを見て、頭いっぱいになるまで予習した.....
時間になり、約束された場所へ向かった。
「バンジー嬢、こちらのお二人は....*1」
「ん?どうかしたのかしら?」
「えっと、僕が言いたいのは、こちらのお二人はどうにも、ボディーガードには見えないですが」
「レイヴンロック家がわたくしの安全を守ってくださるのでしょう?ボディガードを連れてくる必要なんてありまして?彼女たちはわたくしのパートナーです。レイヴンロック家の晩餐会は贅沢の極致で、外では味わえない食材も豊富だとお聞きしまして、ぜひ味わってみたいとお考えですの。まさかあなたがたは、たった二人をお連れすることも許さないほどのケチでして?」
「もちろんそんなことはありません、バンジー嬢のパートナーも、僕の大切なゲストでございますから。さあお三方、お乗りください。僕の運転手が港までお送りします。その後はモーターボートで邸宅へ向かいましょう」
そう言って、おおよそ一時間後、やっとレイヴンロック家の邸宅まで到着した....バードンの案内で、厳重なセキュリティチェックをいくつも通過した後、ようやく会場までたどり着いた
「さてバンシー嬢、僕の誠意は十分にご覧いただけたかと思います。次はあなたの番では?」
「誠意?こうしてパーティに足を運んだではありませんか。これがわたくしの誠意ですわ」
「バンシー嬢...うわべだけの誠意では、この関係もあまり長続きはしませんよ」
「あなたがたレイヴンロック家のやり方は、ようく存じ上げていましてよ。もし手ぶらできていたなら、わたくしたちは今夜....このお屋敷から出ることすら叶わないでしょうから」
「あなたのエスコートに応じ、こうして大切なパートナーも伴ってきました...誰が何と言おうと、これがわたくしにできる最大級の誠意ですわ」
アンビーがそう言うと、バートンはからかうような感じで返す。
「またまた、お戯れを...どうして僕ごときが、お二方の自由を縛ることが出来ましょうか」
「これが戯れかどうかは、お互いによくわかっているはずでしてよ。この場で社交辞令に終始する必要はありませんわ」
「ここにいる大半の人々よりも、わたくしは良く知っているつもりです。これまでレイヴンロック家が、如何にして財を成してきたのか....そして、ハルトマンがあれほどの醜聞に見舞われてなお、権力を握っていられるのは何故なのか.....」
「ほう、それはぜひとも聞いてみたいですね」
「讃頌会、『祝福』、サクリファイス...そして、ランドン。どれからお聞きになりたいでしょうか?」
すると、バートンは驚いた様子で聴いた。
「どこでそれを...?いえ、あなたはいったい何者です?」
「ふふ、あまり警戒なさらないでくださいな。私の記憶がたしかなら、今は晩餐会のお時間ですわね?わたくしとパートナーは少しお腹がすきましたわ。それを放っておくのが、あなたがたのおもてなしでして?」
「......」
「お腹が満たされたら....
「それを、知っているのですか?」
「さぁ。先に何か頂いても?そうそう、期待してますわよ。きっと『食後のデザート』は、特別なものを用意してくださるでしょうから。あなたのご存じになりたいことは、甘いものに舌鼓を打ちながらでもお話できるはず....ですわね?」
ビビアンがそう言うと、バートンは賛同するように言う。
「もちろんです。ゲストを空腹のままにさせたとあってはレイヴンロックの名折れ....『デザート』については、僕が
「後ほどまたお伺いします。それまではお三方、心行くまで当家の晩餐会をお楽しみください」
バートンはは足早に立ち去り、ビビアンはようやくほっとした様子だった。
「ああいう人と関わっていると、本当に神経が摩耗していくのです。今まで、ヒューゴがどうやって耐えていたのか分かりません」
「さっきのビビアン...バートンに有無を言わせないあの感じ...まさに貴族のお嬢様って感じだったねぇ!」
『そうだね。まるでスパイ映画でも見ている気分だったよ!』
「ヒューゴから、少し話術を学びましたので。例えば、先ほどの『食後のデザート』には、条件を上乗せしてくれたら応じる、という意味があるのです。幸い、老獪なハルトマンは権力を失うことを恐れています」
「サクリファイスの休眠体がすでに破壊されていることや、コアが偽物だったこと....そのあたりは間違いなく、
『成程...』
「さぁパエトーン様、タンザナイト様、晩餐会は始まったばかりで今が一番賑やかなのです。こっそりハルトマンの書斎を探しに行きましょう」
タンザナイトが納得すると、ビビアンはタンザナイト達に書斎を探すよう言う。
「うん、さっきこの辺の構造を確認しといたよ。もう少し人が増えたら、会場の隅にあるドアから庭園に出よ」
「はい!パエトーン様達にぴったりくっついていきます!」
『よし、行こう』
計画通り、ビビアン達は一緒にパーティ会場を抜け、そのまま屋敷の奥へと進んだ。それほど時間もかからずにハルトマンの書斎は見つかったものの、鍵すらかかっていなかった――
「すこし....うまく行き過ぎている気がするのです」
『ビビアンもそう思うか?流石に鍵をかけないのは不自然だ....』
「うーん...この屋敷、外の方をすっごく警戒してるみたいだし、中はそうでもないね。でも、念のためライカンさんに連絡しとこ?」
「はい。外部との連絡は緊密にしておくべきなのです」
「ハルトマンの最近の取引とか、協力関係とか...そのへんを調べたら手がかりがあるかもね。それに...サクリファイスのコアがも、やっぱり気になるし」
「そうですね。ディナに渡そうとしたコアが偽物だったとはいえ、本物を隠し持っている可能性がないわけではないのです」
(あの反応を見る限りその可能性は薄いが....)
「じゃ、手分けして探そっか」
ビビアンと共にハルトマンの書斎をしばらく探して見たものの、全く成果がなかった。その時、突然書斎の外から足跡が聞こえ、咄嗟にビビアンとリンは机の後ろ、タンザナイトはドアの上の壁にくっついて身を潜めた――
「お三方....レイヴンロック家のもてなしはお気に召さなかったかな?それとも何か...満たされぬあまり、こんな所まで食い物を探しに来たのかね?」
「.....」
「まだ出てくる気はないか。まぁ、無理もない。どのみちお前達にとってこれが最後の時間だからな。バートン....とんだ愚か者め。つまらん野心を渡らせたあげく、市長の罠にはまるとはな」
「だが結果として、お前達のほうから俺の縄張りに転がり込んできてくれた....これは予想外だったぞ。むしろバートンのやつには、感謝しなければならないかもな...お前達を始末する方法をわざわざ考えずに済んだのだから」
「ビビアン嬢、それにパエトーン、タンザナイトよ。あの世でヒューゴによろしく言っておいてくれ。そうそう、これも頼む――レイヴンロック家の財産も、権力も、すべてこの俺が頂くとな!」
『っ!』ドッ
ハルトマンが銃を机に構えると当時に、タンザナイトが力を開放して一気に接近する。
「なっ!?そこに――」
『『シルバーブリッツ』っ!』バリリッ!
ドコォッ!!
「あばふっ!?」
電光を纏ったタンザナイトの飛び蹴りが、ハルトマンの顔面にぶつかり、壁にぶつかる勢いで吹っ飛ぶ。
―――すると、薬莢の軽やかな音と共に何処からか聞き覚えがある声が響いた。
「やれやれ....念のために弾丸を抜きとってていたが、要らぬ心配だったな」
『ヒューゴ!?』
「ばっ...ばば、バカな....!お...お前は確か....」
そこにいたのはなんと、タンザナイトによって落ちてしまったヒューゴだった!
「叔父上。レイヴンロック家のものは、目的を達成するまで決して諦めない。まだ、貴公を高みから引きずり降ろす道半ばなのだ。どうして俺が早々にこのゲームを降りれようか」
「薄汚い雑種め....!こんな小細工を弄することしか貴様には能がないのか!」
「力任せの能よりはマシだろう」
『ムッ...』
と、タンザナイトは顔をしかめる。
「それより聞きたいかね?死さえも欺く小細工を以て、俺が何を成し遂げたのか....我が親愛なる、叔父上」
オッドアイの輝く瞳に見とれながら、ヒューゴのこれまでを語り始めるのであった.....