ヒューゴは実はハルトマンの油断を誘うためにライカンと一芝居打っていたのだ。*1多少色々手違いはあったがその場にいた全員をだますことに成功したのだった。
そして、市長が受け取った犯行予告もサクリファイスのコアをハルトマンの手に渡ることなど、これもヒューゴの仕込みだったのだ。
なぜこんな大がかりなことをするのか....それはレイヴンロック家に復讐するためだったのだ。その中でも、悪逆非道のハルトマンを追い詰めるらしい。
―――だが、その前にヒューゴには最初にやることがあった。それは、ハルトマンが妙な薬――『ある程度まで人の心を操れる』効力を消すことだった。
....どうやら、ハルトマンが薬を盛られていたが、ヒューゴは
幸い、薬は大した量じゃなかった。効き目のでるタイミングを遅らせる別の薬のおかげで、操れるには至らなかったらしい。どうやらハルトマンがその場で感づかれるのを恐れたのだろう....だが、これを解毒する薬はない。おまけに無理やり遅らせていた効き目は身体の限界にともなって
そうして、ヒューゴは誰もいないガレージで、薬の効力を失くすまで耐え続けるのであった.....
―――長い時間、内なる悪魔との戦いでやっと打ち勝った。後遺症は多少残るが、なんとかなったヒューゴは、ライカンと共にハルトマンの確かな証拠を獲得するため、行動に移したのだった。
ヒューゴはその証拠を集める過程について語っていると、ハルトマンは話の途中で怒りを抑えきれず、机をバンッと叩いた。
「汚らわしい落とし子風情め....俺がくたばれば、貴様が後釜になれると?バカな!この程度は些細な汚点だ。レイヴンロック家さえ揺らがなければ、俺はいつでも再起できる」
「この期に及んで、まだ理解できていないとみえる。俺は父の仇を討つつもりもなければ、くだらん椅子の取り合いにも興味はない。俺もまだ、貴公から命を取るほど落ちぶれていないのでね」
ヒューゴは机に置いてあった万年筆をハルトマンに指しながら言っていると、ヒューゴは唐突にテレビをつけた。
「ちょうどいい時間だ。こちらを見た前、叔父上」
『....TOPS財政ユニオンを代表して表明する。レイヴンロック家の行いについて、我々は
と、TOPSの関係者がレイヴンロック家の縁を切ったことを伝えるニュースを聞くと、ハルトマンはヒューゴの服を引っ張る。
「き、気でも触れたか!レイヴンロック家を潰して貴様に何の得がある!このまま一生、コソ泥でいるつもりか!?」
「コソ泥?....叔父上、今一度自己紹介がいるようだな?―――」
ヒューゴはハルトマンの掴みかかった手をほどくと、口を開く。
「人々はく余地をそろえて言う。『富めるものから盗み、貧しきものに与える怪人』....『何人をも騙しおおせる稀代のペテン師』」
パチンッ―――と銀色に輝くコインを弾く。
「.....それこそがモッキンバードのリーダー....新聞の一面を飾り、新エリー都を魅了してやまない大怪盗だ。俺には深淵に足を踏み外すことを許さぬ親友がいる。涙を流してくれる相棒がいる。手を差し伸べてくれる『伝説』と『騎士』がいる.....」
「俺の名はヒューゴ・ウラド。貴公のように、『レイヴンロック』などという姓に拘泥はしない」
「雑種風情が....生まれてくるべきではなかったな!」
「過分なお言葉だ、お互い様だがね」
ハルトマンの遠吠えを軽く聞き流し、ヒューゴたちはモーターボートに乗ってレイヴンロックの邸宅から離れた。ボート・エルビスに着いた後、一同は港で迎えに来るライカンさんを待つことになった.....
「ここまでよくやったな、ビビアン」
「ヒューゴ、まずは説明してください。わたしは、今、冷静を欠こうとしています」
「なにゆえ腹を立てている?表舞台へ舞い戻るにあたり、お前の温かい言葉は必要不可欠なのだが」
「ヒューゴ。わたしも、
ビビアンがそう言うと、ヒューゴは弁解するように説明する。
「ビビアン...お前とその大切な人間が、俺のせいで更なる危険に巻き込まれることを、望んでいなかった。俺はいつだって、とてもわがままな人間だ....お前達を自分の計画の一環とすることも厭わない」
「だが万一の失敗で、大切な仲間を傷つけることになったら....それを良しとしたくないのも、この我がままな自分なのだ。わかってくれ。それにビビアン、お前だって立場が同じならこうしたはずだ....違うかね?」
「.....」
「外のことはライカンがすでに片付けた。おれ達はここを離れるとしよう。それと....リン君、タンザナイト君。ありがとう。そして芝居とはいえ、君達を襲うような真似をしたこと....すまなかった。」
「ハルトマンの警戒を緩め、君達に危害を加えさせないためにはああするほかなかったのだ。不肖ヒューゴ・ウラド、この恩を胸に刻んで、永遠に忘れないと誓おう」
その後、ライカンの手を借りて、レイヴンロック家の邸宅を無事に去り、ビデオ屋に戻った。
「プロキシ様、タンザナイト様、すでに遅い時間ではございますが....早急にいくつか重要な情報をお伝えしたく。」
「それで?ヒューゴの死んだふり計画を、ライカンは最初から知っていたわけ?」
と、リンはいじわるな言い方でライカンをつめる。
「コホン....私としては、あの場でこの男の
「ハハハ...!ばつが悪くなると、下手くそな言い訳に終始するのは相変わらずだな」
「ヒューゴ様。とっとと本題に入られては?私は12時までに帰って休まねばならないのです」
「あ、あはは....ふたりってなんだか仲いいよね....」
『それだけお互いのことを知っているんだろうな....』
と、二人のやり取りを苦笑いするリンとタンザナイトだった。
「時代遅れの体内時計が悲鳴を上げているそうだ。手短に話すとしよう。カミエルの話によると、ディナは例のコアを連中が作っているサクリファイスに埋め込み、能力を大幅に強化するねらいがあるそうだ」
「だが、このようにして誕生したサクリファイスは意識を持たず、あらゆる生物を無差別に攻撃する。無論、それを創造したものも含めてな。ゆえにこれまで、讃頌会の奴らは決してそんなことはしなかった。何のメリットもないからな」
「だが、ディナの薬があることで話は変わってくるのだ。精神を支配できる薬がその工程に挟めれば、大幅に強化されたサクリファイスを統制下に置くことも、絵空事とは言えなくなる。サクリファイスの休眠体そのものはすべて破壊されたが、それを生み出す薬についてはまだストックがあるようだ。ディナは再びサクリファイスの生産に着手するだろうな」
と、ヒューゴがサクリファイスの件で話を進めていると、リンがふと思い出す。
「サクリファイスの話はひとまず置いといて....ハルトマンが持っているコアは偽物だったよ。そもそも本物を探すとこから始めないと」
『あっ、そうだったな』
「本物のコアだと?それなら、ずっとここにあるではないか」
「ここに?パエトーン様のビデオ屋に、ですか?」
「覚えているかビビアン。貴様がオークションであのコレクションを競り落とした時、たしか俺はこう言っていたな?プロキシくんに贈呈してはどうかね、と.....」
「覚えてはいますが、あれは何の変哲もないペンダントなのです。出品者といえる方にお会いしましたが、彼女は讃頌会となんの関係もありません」
『....もしかして』
タンザナイトがそう言い、リンにペンダントを貸してもらい、触ってみると、そこに
『!』
「その驚愕の表情は、俺の『ささやかな手品』に対する賞賛としておこう」
「コホン...」
「このコアは市長殿に差し上げる。『俺が死んでいる』あいだ、彼はビビアンと店長くんと騎士くんを守ってくれた....約束の通りにな。であれば、俺も違えないのが筋というものだ」
ヒューゴがそう言うと、ビビアンは納得した感じで言う。
「成程です。市長がモッキンバードを利する世論に加担していたのは、そういうわけでしたか。一瞬でも、彼の善性を信じてしまった自分が恥ずかしいのです」
『まさに....『灯台下暗し』ってな』
「サクリファイスのコアがここにあるなら、次はディナだね?無関係な人達がサクリファイスに変わっちゃうのを止めなきゃ!」
「ああ。それに加えて、ランドンが残した最後の薬も破棄せねば」
「これで何もできなくなったディナが、自身の執着に見切りをつけてくれるとよいのですが」
「比較的重要なことはこれですべてだな。俺は今一度、ランドンが遺した薬の在り処を探る。情報があればまた連絡しよう。アディオス」
こうしてタンザナイト達は一旦解散することとなった。
ヒューゴの色々についてはぜひゲームで確認してみてね