少し数日が経った後....タンザナイトにヒューゴから連絡があった。どうやら、まだ使われてないサクリファイス化の注射が大量に見つかったらしい。
そういうわけで、タンザナイトはヒューゴ、ビビアン、ライカン、リン達とともにホロウに入って、あの薬を破壊するためにひとまず待ち合わせに向かうのであった.....
『ポート・エルピス 無人の倉庫』
「来てくれたか、店長くん、騎士くん」
「二人のパエトーン様とタンザナイト様が一緒に案内してくださるなんて...ビビアン、幸せすぎるのです.....」
「今回は世話になるね、店長くん達。俺が手に入れた情報によると、薬の数が多かったものでね。俺の推測では、ディナはすべての薬剤を一箇所に置くはずがない、よって、ここでは手分けする必要があるだろう。念のため、店長のお二人は一緒に行動してもらいたい」
『よし、じゃあ....ディナを止めるぞ!』
タンザナイトはそう言い、ディナの野望を止めるべく、ホロウへ向かった。
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「ランドンが遺した薬はこの付近にある。さらに、以前失踪した
『これはちょっとまきで行った方がいいよな....』
そう言いながら先へと進み続けるタンザナイト達....先に進んでいると、ディナの部下たちが現れ、襲い掛かる。
「奴らは薬を破壊するつもりだ!止めるぞ!」
「...先に守衛を片付けるとしよう。一部の薬はこの倉庫に保管されている」
「そうか...ならどいてもらうぞ―――『
『ぎゃぁぁぁっ!?』
タンザナイトの右足が八本の鞭に変わり、回転しながらディナの部下達にぶつける。
「やれやれ。こうも騎士くんばかり活躍しては俺のメンツは下がるなっ!」ズパァンッ!!
「はぁっ!」バキッ!
「たぁっ!!」ズドォンッ
ヒューゴたちも負けじとそれぞれの攻撃で部下達を倒す。
そして部下を一通り倒したタンザナイト達はランドンの薬を探すと、多くの薬を見つけた。
「ランドンめ、思ったよりも大量に薬を遺していたのだな。幸いなことに、これらはまだ手つかずだ。ディナが最後の計画を実行していないという証左だろう」
「付近にもまだ沢山あるはずでございます。行方不明の人々についても、今のところ手がかりはない.....讃頌会が、こちらの動向に気付いていないはずがありません。あちらはあちらで、何かしら対応を準備している最中かと」
「精神を支配する薬、サクリファイスを生み出すランドンの薬...二つを掛け合わせて、本当にディナの命令に従うサクリファイスができたら、それはそれは厄介なことになるぞ」
「手分けした方がいいかもよ?ヒューゴとライカンはこの辺で薬を壊して回って、私、ビビアン、タンザナイトと他の場所を探してみるよ」
と、リンは効率的に考えて、手分けして探すことを提案する。
「よかろう。ただし、万一ディナに遭遇することがあれば、くれぐれも用心したまえ。カミエルの言う通り、彼女は父親の遺志にいささか執着しすぎている。何をしててくるかわかったものではないからな....では、一旦ここで別れるとしよう。もう一人の店長くん、イアスとともに俺とライカンを案内してくれるかな?」
「『ああ、この数日で調子はだいぶ良くなった。ヒューゴとライカンさんは僕に任せてくれ』」
「今になって幸運を実感したのだが....俺達にはパエトーン殿が二人もついているのだな」
「『けれど、仕事が倍になったような気もするな....以前はリンと二人で一つでよかったに...』」
「能ある者は労も多し...だ。なに、市長殿はきっと倍の報酬をくださるだろう。彼ほどのものが、出し惜しみなどとけちな真似をするはずがあるまい。なあライカン」
「......市長閣下には、上申しておきましょう」
(今、一瞬考えた?)
と、なんか一瞬考えて言うライカン。
「『報酬は問題の一つに過ぎない。リン自らホロウに入るばかりか、別々に道案内だなんて....
「....」ポロッ
皆が話している間、ビビアンは面々の後ろに立ち、ある背中をみつめていると、ふと涙を流した...彼女は振り返り、1人でランドンが薬を残した方へ近づいていった―――
ビビアンはパエトーンとタンザナイトを見た時に流した涙、そして、あの時に視えた運命を思い出した――
(それが....わたしに見えた未来。パエトーン様、タンザナイト様....)
ビビアンは目を閉じ、何か決心したようだった。そして、ランドンが作った薬を手に取り――悲劇が避けられないのなら、墜落が定めのこの運命、どうか私に背負わせてください――
「ごめんなさい....ですが、今度こそ結末を変えてみせます。あなた達には、不幸になってほしくない。これが私の一番の願い...!」
ビビアンは胸にその思いを潜め、タンザナイト達と一緒に探索を開始した。
道中敵が現れるが、そんなのを蹴散らしつつ、段々と奥へと進んでいくと、裂け目の横にいくつかのコンテナが見えた。
「裂け目の横にいくつかコンテナが...!中に何か入っているかもしれません。明けられないか試してみましょう」
『賛成』
そう言いながら、コンテナを開けてみると、そこには失踪した作業員達がいた。
「もう金はいらないから、解放してくれ!」
「ひぃぃぃ!?エーテリアスだ!?」
「もうここまでみたいです....楽にさせてください....」
「落ち着いてください。私たちは助けに来たのです、他の遭難者はいますか?」
ビビアンはなんとか落ち着かせて作業員達に他の失踪者のことを聞く。
「いたんですが....彼らはもう....」
「エーテリアスになったんです!たくさんのエーテリアスに.....みんな死んだんです....」
「お願いです、逃がしてください、あの女の子....絶対僕たち生かして帰す気ないですよ....」
『安心しろお前ら、俺たちがしっかりと元の場所へ送ってやる....ちょっと待ってろ』
タンザナイトは『時空モード』に変わって、ホロウ外のエーテルエネルギーをもつポータルを探す。
「今タンザナイト様がここから出る空間を作っていますので安心してください」
「うう...ここに来た皆はエーテリアスに....すっごく怖いエーテリアスになったんです....あんなにも大量なエーテリアスの群れを、彼女は一体何に使うのか、想像もできません....」
「きっと死人がでます....誰だろうと、あのエーテリアスたちにやられてしまいます....コホッコホッ....」
『...よし、繋いだぞ!』
「どうやらタンザナイト様が出口を作られたようなのです。あとのことは、わたしたちに任せるのです」
彼らを『
「ここを見つけるのは、本当に大変だったでしょ?ビビアン....もし何も見なかったことにしてくれるなら、急いであなたを始末する必要もないわ」
「あの人たちは安全な場所へ移送しました。もうあなたに打つ手はないのです」
ビビアンは冷静に言うが、ディナはどうでもいいような感じで返した。
「ただの実験体だもの。にげたなら逃げたでいいわ。この世界に
『詐欺まがいなことして.....よく回る口だな』
「そうです、ディナ。かつてランドンが皆を騙していたときも、そうしたように」
すると、ディナは悪切れもなく言い放った。
「騙す?お父様は、ホロウに大切なものを奪われた人々のために希望を示したのよ。ビビアンだって、お父様があなたへ示した希望に胸を躍らせたでしょう?」
「お父様の憐憫を受けるまで、あなたはただ、みんなに疎まれる不幸の前触れにすぎなかった....あなたに存在する意味と、存在してもいい場所を与えたのは他ならぬお父様なのよ?」
「お父様の導きのもと、あなたが初めて『祝福』を授けた日を覚えてる?彼らから感謝の眼差しをもらって、あなたはどんな気持ちだった?」
「.....」
その言葉にビビアンは黙り込む。
「あなたが初めて希望を....自分の存在意義を感じられた瞬間だったでしょう?忘れないで、あれこそお父様が、あなたが言うところの『騙す』ことであなたに示してくれた希望なのよ。」
「それであなたは?あなたは一体何をしたの?あなたはお父様の関心を、みんなの敬愛を独り占めにしていながら、最後にはすべてを滅茶苦茶にしてしまった!あの人たちが讃頌会を離れて、もっと幸せにくらせるとでも思っていたの?そんなわけないでしょう!ホロウに苦しめられ、お父様が示してくれたなけなしの希望さえ失って....彼らはただの歩く屍になるだけだわ」
「思い上がらないでビビアン。あなたが、皆を救えたと思い込んでいるかもしれないけれど....結局、ただあなたは希望を引き裂いて、災いをもたらすだけの存在にすぎなかったことを証明しただけ」
ビビアンはぽつりと、口を開く。
「ディナ、全ての人が見せかけの希望にすがっていたいわけではありません。あなたは言いました。あの人たちは欲深いからこそ、あなたの犠牲者となることを甘んじて受け入れるのだと」
「確かに、彼らは決して絶対的な善人ではありません.....ですがその『欲深さ』とは、ホロウの外でより良く生きていたいという願いではないですか。あなたとランドンは希望を示したのではなく、彼らの希望を利用したにすぎません」
「何度自分を欺いたら気が済むのです?ランドンがしたことのむごさを、あなたはこの上なくわかっているはずなのに....」
「違う....」
すると、あれだけイキっていたディナが、弱弱しく否定する。
「ランドンがあなたに『祝福』を授けると言った時、あなたの顔にはまぎれもない恐怖が浮かんでいたではありませんか。わたしにはハッキリと見えました。本当にあなたの言う通り、全てが正しい行いであったのなら....なぜあんな顔をしたのです、ディナ」
「やめて!その憐れむような目をすぐやめて!すべては、ホロウを災いではないものに変えるため。お父様は何も間違っていない....それが、みんなの希望だから....!」
「ディナ、今すぐ引き返しましょう。自分に嘘をつくのは やめてください。制御できなくなったサクリファイスがホロウを離れてしまったら、
「ホロウが人々の命を奪わなくなったとして....あなたの言うその『希望』がさらに多くの命や思いを奪うことになるのですよ」
「そんなもの、偉大なことを成し遂げるためなら、払わなければならない代償だもの!」
「代償になっていい人など、誰ひとりとしていないのです」
その言葉に、ディナはため息を吐いた。
「はぁ....あなたのそういうところ、本当に嫌い。実験体なんてまた捕まえればいい。お父様が研究していた薬も、時間さえかければ私が再現してみせる」
『お前...まだそんなことを!』
「お父様が始まりの主に捧げたものを、私が完成させる.....お父様の理想を実現してみせる!私にはもう――引き返す術なんてないのよ!」
すると、ディナの懐から、薬が入った注射がひとりでに空中で動いた。
「っ!?薬が...」
「う..浮いてるぅ!?あり得ないでしょ、物理的な性質上!?」
「見せてあげるわ....私だけの『
「ディナ様!」ダッ
カミエルは駆けだすが、ディナは首をしたに下げると、宙に浮いた注射がそこを刺し、注入する。
「グッ....ヴアァァァァッ!!』ズズズッ
「きゃっ!?」
『うおっ!?』
「うわぁぁ!?」
ディナは顔にコアが現れ、エーテル結晶と共に包まれる....その後、結晶の中から怪人ような人物が割って出てくる。
『....』
「ディナ.....」
その人物は体は灰色で鎧や仮面が黄緑色で、仮面のような部分のある頭部には片目しかなく、マントと軽鎧風の体に左右非対称な見た目の王様っぽい雰囲気をしている。そして中心にコアが埋め込まれている姿があった。
「そんな....ディナ様....」
『っ....リン、カミエルの傍でじっとしてろ』
「う...うん」
タンザナイトが支持を出すと、リンはカミエルの手を引いて、安全な場所で待機する。
「ディナ...絶対、救ってみせます.....!」スッ
『ああ』
(気をつけて、二人とも!!)
『さぁ....『理想郷』の糧となりなさい.....』スッ
エーテリアスとなったディナは杖のような武器『理想郷の杖』を持ち、二人と対峙する.....
ねじれポイント
カミエルよりさきにディナが行動したので、カミエル生存
ディナ・ユートピア
長きに渡る歪んだ愛と言う名の束縛のもと、親族の関心と愛情を獲得するため、少女はホロウで肉親を失った被害者を騙すことさえ厭わなかった。
彼女は、親族の「祝福」の薬の秘密の隠蔽を手伝いさえすれば、侵蝕された人々の苦痛の慟哭さえ耳にしなければ、この卑劣な実験が明るみにさえ出なければ、親族との紐帯は絶えることはないと信じていた。
しかし最終的に彼女はその目で、血溜まりの中に横たわる親族が息絶える姿を見ることとなった。
それ以降、怨恨と嫉妬が棘のように彼女の心に突き刺さり、一瞬たりともその苦しみから解放されることはなかった。
復讐の歯車が理性の隅々まで蝕んでゆくなか、彼女は親族の残した手記から、歪んだ生きる意味を改めて拾い集めたのだった。
彼女の生命の奇跡は執念に囚われた寓話のようだった。
かつての同胞が彼女に救いの手を差し伸べても、少女にはもう後戻りできなかった。というのも、彼女を光のもとへ導く言葉の数々は、骨の髄まで刻まれた嫉妬、執念、怨恨によって、ことごとく木端微塵に打ち砕かれてしまった。
ついに、日が暮れようとするその時、その体が崩れて現れた。その崩壊した仮面から見える瞳は見放された者の目のようだった。
ユートピア――復讐に朽ちてゆく理想郷よ、恨みをその身に宿し、更なる深淵へと征け。
「その瞳は他のエーテリアスよりも凄惨だった。よく見ると、その目は女性の寂しい目に似ていた…」
──ホワイトスター学会の学者が注意深く姿を見て、残した記録
ディナの姿はWの『ユートピア・ドーパント』のコアを埋め込んだリデコ版です