「......うう、ど、どうなったの?」
気を失ったリンは目が覚めた後、辺りを見渡す。
「カミエルは倒れてる....っ!これって....」
隣にカミエルが倒れており、前を向いてみると、倒れているタンザナイトの他、エーテル結晶が広がっている中、中心に侵蝕されたビビアンがいた。
「ビビアン!」ダッ
リンは思わず飛び出して、ビビアンの方へ駆け寄る。
「ビビアン!体が...!」
「うっ....くっ.....お、お見苦しいですよね......けれど....これで『不幸を呼ぶ』のも終わり.....」
その時、リンはビビアンを抱き着いた。
「ダメ、ダメだよビビアン!タンザナイトがいま治してあげるから...!」
「ごめん、なさい.....」
「いや、いやっ....うぅっ....!」
「あたた....かい.....素敵な....夜......―――」
ビビアンは涙を流しながら、瞳を閉じる。
「っ....ビビアン!?そんな―――っ!」
『ビビアン....まさか、こんな自爆上等な手段を使ってくるとは思ってもいなかったわ』
そこには、ボロボロの姿のディナは立っていた。
「嘘っ....な、なんで.....」
『咄嗟の判断だけど、エーテル結晶が
わ....にしても、残念だったわね。覚悟してやった行為が、無意味に変わったなんて...ね』
「っ―――」
リンは目の前の怪物に息が過呼吸気味になり始める。
『ビビアン....やっぱりアンタは、『不幸を呼ぶ』女よ....さぁ、あなたもビビアンと同じとこへ送ってあげるわ』スッ
ディナはそう言うと、杖を構え、リンに目掛けて刺そうとする。
「――――」
『....ん?』
すると、リンの目が、青く光り始める。
「こんな結末―――」
『っ!』
「私はやだから!!」
すると、リンの体が輝きだし、辺り一面を包み込んだ。
『なっ...なによその光....がぁぁぁぁっ!?」
「 」サラサラ....
包み込まれると、ビビアンの侵蝕していた結晶やエーテリアスとなったディナの体がさなぎの孵化のようにきれいに剥がれ落ちていった。
そして、その光が収まったころには、
~~~~~
「リン....リン!」
「ん....んん?」パチッ
気を失ったリンが目が覚めた。
―――そこは自宅の二階のベットだった。
「リン...目が覚めて本当に良かった」
「何が起こったの....?確か私、ビビアンといて....そ、そうだまだ生きていたディナに止めされそうな感じだった!ビビアンはどこ!それに...タンザナイトや他の人は!?」
と、慌てるリンにアキラは落ち着かせるように冷静に言う。
「ヒューゴとライカンさんが君達をホロウから連れ出してくれたんだ。君は重度の昏睡状態で、今回は本当に肝を冷やした。目を覚まさなかったら僕は.....とはいえ、ヒューゴから検査結果は問題なしという連絡があった.....ディナを除いて」
「ディナが?それって、一体....」
「うん、如何やら目覚めたタンザナイトから聞いた話ではディナはエーテリアスになっていたらしい....そして人間に戻った時、記憶に異常がでてしまって、前の記憶が消し飛んでったらしい....つまり、讃頌会もビビアンもカミエルですら忘れてしまったらしい」
「嘘...記憶が無くなったの!?―――というかディナが普通の人間に戻ったの!?」
「ああ....それで、リン、思い出せるかい?あのとき、君達に何があったのか....」
アキラにそう言われ、リンはさっきまでのことを必死に思い出した。
「えっと...あのときは凄い切羽つまってて...ビビアンが薬を打って、倒れてたところにまだ生きていたディナがいて、止めを刺されそうになったけど.....それから、えーっと―――それから何が起きたのかは、うまく説明できないっていうか....何かを見たような気がするだけ。私はただどうにかしなきやって必死で.....」
「ぶっちゃけ、何してたかも思い出せないんだよね。その後、気を失っちゃって....あれから何があったの?」
「僕がヒューゴとライカンさんをその場に案内したとき、五人は倒れていたんだ。呼んでも揺すっても反応はなかった.....とはいえ、この話は一旦置いておこう。リン、まだ具合が悪いところはあるかい?」
「まだ、ちょっと頭がぼんやりするかなってくらい....」
「そうか、もう一晩ゆっくり休むといい。明日ヒューゴとビビアン、それにタンザナイトがお店に来るそうだ。何かあれば、その時話そう」
「分かった。じゃあお休み、お兄ちゃん」
そう言って、リンは明日の朝までぐっすり眠った.....しばらくしてビビアン、タンザナイト、ヒューゴ、ライカンがビデオ屋にやってきた
「パエトーン様!体のほうはいかがですか!?頭痛はありますか?まっすぐ立てていますか?心臓はきちんと鼓動していますでしょうか?ええと、あと食欲は....」
『落ち着けビビアン』
と、開幕から早口で喋るビビアンをタンザナイトが止める。
「す、すみません、タンザナイト様....もう心配で心配で....パエトーン様。いまひとたびお姿を拝見できて、ビビアンは本当にうれしいのです。うう....私があんなことをしたばっかりに....」
『いやまさか、自分の身を犠牲にして自爆上等な手段でいくとは思ってもいなかった....奇跡的に助かったとはいえ、俺も心臓が止まったぞ』
「タンザナイトには言われたくないセリフだね」
「貴公がそれを言うと、所謂『ブーメラン発言』になるのだが?」
『ひどくね!?』
「とはいえ、二人が頑張ってくれてなかったら、私達ホロウで死んじゃってたもしれないんだよ」
リンがそう言った後、アキラが本題に入った。
「それで、あの時何が起こっていたんだ?リンは君の体に結晶が発生するのを見たと言っていた。それにタンザナイトからはディナがエーテリアスになっていたと言っていたが....僕はイアスを通じて見ていたけれど、それらしいものはなかったんだ。ヒューゴとライカンさんは、現場で何か異常に気付いたかい?」
「その件につきましては、私の方から説明を。ビビアン様が目を覚まされた後、彼女の口から同様に結晶の発生についてお伺いし、市長閣下が検査を手配してくださいました」
「検査の結果、ビビアン様には確かに、軽度の侵蝕による後遺症が見られたのですが....ビビアン様がおっしゃった通りに、すでに結晶が発生していたとあれば、この程度の後遺症で済むはずがございません。より正確に申し上げれば、体表に顕著な結晶化が見られた時点で、そう時を置かずしてエーテリアスになってしまうはずです。また、ディナ様も同じく、エーテリアスになった時点であんな後遺症が残るぐらいの傷で済むはずがございません」
「そのため市長閣下はこうお考えになりました。プロキシ様の体内にあるエーテルエネルギーが、ビビアン様や周囲のエーテル粒子に影響し....侵蝕症状の後退を促したのではないか、と」
「本質的な侵蝕とは、
『....ん?じゃあなんでディナは元の姿に戻ったんだ?』
「これは推測になりますが....元々サクリファイスの薬にはタンザナイト様の細胞が入っております。タンザナイト様はサクリファイス同様に未知数の存在です。恐らく、そのタンザナイト様のエーテルエネルギーとプロキシ様のエーテルエネルギーが作用して、元の姿のディナ様になったと考えております」
『なるほど....そう言われると納得するな』
と、ライカンの説明にリンは驚く。
「ええ...私、そんな力があったの...?人のエーテル粒子に影響...って、私がエーテルを操ってるみたいじゃん!」
「まるでタンザナイトの力を使っているみたいだ....」
『確かに俺はエーテルエネルギーで結晶やエーテル侵蝕やら操れるが.....』
「これこそ、あなた様が特別とされるゆえん....あなた様の『先生』が残された、贈り物なのでございます」
「先生...!先生が、私に....?」
「私めも全貌はご存じあげませんゆえ、詳しい説明はできかねます。ご容赦ください。ですが...かの
(まぁ実際俺の『時空領域』をぶっ壊してきたし....)
「もしそうなったら~...クレームはライカンさん宛てでいいのかな?」
「こほん....プロキシ様は人付き合いを心得たお方でございますから、そのようなことなはならないと信じております」
と、リンの言葉をライカンは紳士のように返す。
「ライカンさん、私もっと心配になってきちゃった....」
「何はともあれ....今回の件につきまして、市長閣下から皆様に心よりの感謝を伝えるよう仰せつかっております。様々な理由から、表に出ることはかないませんが....皆様に対し、市長閣下の権能の及ぶ限り、無条件でご支援を提供してくださるのことでした。こちらに期限はございません」
「ん?無条件?そいつは、俺が市長になりたいと言っても有効なのかね?」
「本当にその意思があるのならば、次の選挙では、彼自身と彼を取り巻く者の票をあなたに全て投じてもよいとのことでした。その他の票については、そちらでどうにかして頂く必要がありますが。また就任後は、各種日常の雑務についても責任を以て模範的に処理されたし、とのことです。こちらに本日締めの公文書―――『都市における廃棄物の分類処理原案』の写しを預かっています。まずはこちらに目を通されるのがよいかと」
「ちっ、食えない古狸だ」
と、冗談をマジレスで返すライカンにヒューゴは悪態をつく。
「わ...私はどうしましょう...パエトーン様かタンザナイト様か.....ああ、選べません!」
「そちらの件につきましても、市長閣下は言及されました。必要な書類はすべてご用意が完了してございます。また式に関する諸費用は、市長閣下より祝辞として負担する旨を言付かっておりますゆえ...プロキシ様かタンザナイト様の同意があり次第、すぐに署名し、手続きを行うことが可能です」
「ただし原則として、本来なら双方の自発的な同意が必要であり、それは脅迫、監禁、ならびに一方の当時者が意識混濁した状態等で行われてはなりません」
「そそそ、それ以上はどうか言わないでください!私がパエトーン様とタンザナイト様に、そのようなこと....するはずないではありませんか!!コホン...まぁ、ないに越したことはない....という意味ですけれど....少なくとも今日はないのです」
「そしてプロキシ様、タンザナイト様。お三方が望んでおられることに関しても、市長閣下は目星をつけておいでです。ですが市長閣下の提供する『支援』を所望されるタイミングについては、お三方が儀玄女史と面会されたあとでもよいとのことでございました」
その後、いつもの日常を感じながら、全員でご飯を食べ、ヒューゴたちと別れを告げて帰ることとなったのだ.....
『そうえば、カミエルは?』
「カミエル様は、記憶を失ったディナ様と一緒に更生しています」
『....もしよかったらさ、―――』
「っ!....分かりました、あなた様がおっしゃるなら検討してみます」
後日、ビビアンのメールから、ディナからツイッギーと共に薬を研究するカミエルとの姿が送られてきた。
ねじれポイント
記憶失ったけどディナが生きている
アウトロー下完!次回は儀玄との関わったりしちゃうよ
にしてもこうなってくると先生がインフィニティにあの薬を渡したとしか考えられない?大丈夫?