side タンザナイト
「はー...ビックリしちゃいました。どこから入り込んじゃったんでしょう?このへんの御家で飼われてたとか...?」
「まずはこいつが落ち着ける場所を探す。近所に尋ねて回るのはそれからだ。福福、リンとタンザナイトを皆に紹介してやれ。ついでに適当観の案内も頼む」
「任せてください、お師匠さま!」
そう言い、俺が受け止めた猫を師匠に渡す。
「私はこいつをどうにかしてくる....リン、タンザナイト、またあとで探してくれ」
「分かったよ、師匠!」
『了解、師匠』
師匠は、騒ぐ猫を連れて、中庭に向かった。その後、福福さんが兄弟子たちを紹介し始める。
「と、いうわけで!ご紹介しますねっ!こちらが、新しく雲嶽山に加わるリンちゃんにタンザナイトくんですよ~!それでもってお弟子ちゃん達、こちらの二人は兄弟子の『
「兄弟子の皆さん、初めまして!私リンって言うんだ。分からないことだらけだから、色々教えてね!」
『兄弟子の皆、初めまして。タンザナイトだ。『蒼光の騎士』で名が通ってるエーテリアスだが、色々と教えてもらうと助かります。あと、甘未が大好きです』
「おやおや、師匠がおっしゃっていた新参の方ですね。百聞は一見に如かず、とはこのことです。ましてや人間と同じ生活をするエーテリアスときたら....」
と、釈淵さんがクイッと眼鏡を上げた。
「いいぞお、活きのいい新人たちだあ!さあさあお腹が減ってるだろ?そっちの新人は甘未が好きだったな...この兄弟子が腕を振るってやろう!何を隠そう、雲嶽山の台所を預かる潘引壺とは俺のことだ!きっと、お弟子ちゃん達の胃袋をうならせてみせるからな!」
次に引壺さんが自信満々に自分の料理の腕を褒めたたえていた。
....そんなに美味しいなら期待しちゃいそうだな。
「もう一人のお弟子ちゃんはどうだ?ぱっと浮かばないなら、チャーシューまんなんてどうだ?おれの作るやつは絶品だぞお!」
「やったぁ!潘さん!あたしは角煮と、手羽先のから揚げと、それとえっと....」
「姉弟子さん。潘は『お弟子さん達に』作ってあげると言ったんですよ。お腹がすいているなら、備蓄の乾パンはどうですか。そろそろ賞味期限が切れそうなんです」
「へっ?あはは....そうですよね~やっぱりお弟子ちゃん達が食べたい奴にしましょう!」
と、照れくさそうに福福さんが言う。
「私は全然乾パンでもいいよ...!ほら、こういう時はやっぱり姉弟子が優先っていうか...!」
「はっはっは....わざわざ苦しみを背負わずともいいんですよ。あんな美味しくないものは、姉弟子さんにお任せしましょう」
「ガハハハ!福姐なら、鼻を洗濯ばさみでつまんででも食べようとるからなあ!」
と、引壺さんは笑い飛ばしていた。
「もう、二人とも....福福をなんだと思ってるんですか!」
「なんにせよ今は堪えどころですね、姉弟子さん。お弟子さん達と師匠はホロウから出てきたばかりなんですから。滋養のある食べ物と休息が必要です。」
ん?なんかこっちチラッと見たな...エーテリアスだから、どうなのか迷ってるのかな?
「とはいえ、あの飛行船にはかつて僕たちも乗ったのですが。どうして今になって故障なんて...?」
『ああ...それなんだが』
俺は事の経緯を兄姉弟子に説明する。説明が終わると、福福さんが驚愕したのだった。
「お、襲われたぁ!?じゃあ、事故なんかじゃなかったんですね?」
「うん。師匠が墜落した飛行船を調べたんだけど...ロケランか何かで撃ち落とされたみたい」
「ゆっ、許せません~!あたしたちの雲嶽山を襲うだなんて....誰の仕業か分かったら、福福がきつ~いお仕置きをしてあげますっ!」
「そうですね...雲嶽山の調査を、意図的に妨害しようとした可能性も否定できません。お弟子さん。師匠から聞いたのですが、あなたはかの有名なプロキシ『パエトーン』だとか。それに『蒼光の騎士』と...」
「あなた達が雲嶽山に加わる以上、調査に目覚ましい進展があることは自明ですからね。その結果をよしとしない何者かが、あなた達を狙ったというのは大いにあり得ます。ただ....今回の調査は、市長が秘密裏に手配したものだったはずですから。情報が漏れた経緯はどうも引っ掛かりますね」
『確かに....』
「当初の計画では、あなた達兄妹二人とお弟子さんで衛非地区に向かってもらう手はずでした。直前で、師匠から自ら護衛を買って出なかったらどうなっていたか....考えたくありませんね」
「うわ、そうだったんだ....師匠がついて来てくれてよかった....」
と、リンがホッとした様子で言う。
いや本当に良かったよ、あの数じゃリンを守れるか怪しかったし....
「そうだそうだ、お師さんが占いで悪い兆しを見たらしくてな....それで自分が行くと言い出したんだぞお師さんの占いは、相も変わらずよく当たるもんだ....!とはいえこの騒ぎで、俺達雲嶽山が適当観に戻ったことは方々にバレちまったろうからなぁ.....」
と、引壺さんがため息を一つ吐く。ん?...なんかまずいのか?
「大丈夫ですよ、潘。わたしたちの師匠がここにいる限り、小悪党が手を出してくることはないはずです」
「適当観に、戻った?みんな普段からここに住んでいるわけじゃないの?」
リンがそのことを言うと、福福さんが説明してくれた。
「雲嶽山の総本山はここじゃないんです。
「これでもできるだけ準備したんですが、お泊りするにはちょっと質素すぎるかもですねぇ...ほんと、お弟子ちゃん達には申し訳ないです」
「そうだったんだ、でも平気だよ。私って割とどこでも寝れる性質だし....姉弟子さんも兄弟子さんも、準備してくれてありがと」
『おお、まぁ俺はホロウの環境で寝てるから俺にとっては結構いい場所だとおもうな』
『.....』
あれ、何で皆シーンってなんの?
「....微妙に笑えないこと言うのやめなよ....」
「コ...コホンッ、ちなみに、あたしたち以外にも弟子がいるんですけど.....今はみんな調査で出払っちゃってるんです。またこんどご紹介しますねっ!」
「福姐....時間も時間だし、ぼちぼちお弟子ちゃん達には休んでもらわないか?俺も何か作って来るとするよ」
「あっそれもそうですねぇ。そういうわけでお弟子ちゃん達、いつでも横になってくれていいですよ!」
「ありがとう潘さん。でもお腹が減ってないから....ご飯は大丈夫。適当に散歩でもして、この辺になれとこうかな」
『うん、俺もそうしようかな....この場所にはまだ慣れてないし』
そう言い、俺たちはこの『適当観』の周りを見てまわることにした。