side タンザナイト
すこし散歩していると、そこに師匠がいたので話しかけてみた。
『あっ師匠!』
「ああタンザナイト、リン、福福にほかの弟子は紹介されたか?どうだった」
「福福先輩が兄弟子たちを紹介してくれたよ。二人ともすっごく親切だった!」
と、リンが満足げで師匠に話した。
「そうか、なら良かった。飛行船が落とされた今、もはや雲嶽山の帰還は隠しとおせまい....こそこそできない以上、これからの調査は困難を極めるだろう。メイフラワーの手配した空路がバレていたとくれば、向こうもやり手であることは想像に難くないからな」
『ええ....それってやばくないか?』
「まあ心配するな。敵から仕掛けてきてくれるなら話が早い....その手の内をじっくり見せてもらおうじゃないか」
と、師匠は格のあるセリフを言う。やっぱり師匠は頼もしいな...
「師匠ったら頼もしいんだから!調査の方は、まぁゆっくりやってこ」
『そうだな。それにここは初めてなんだし、慣れるのが優先だろう』
「ああ。タンザナイトの言う通り、お前さん達がここに慣れる方が先だ。適当観は常に人が住んでいるわけじゃないが、少なくとも清潔ではある。何かあったら私か、福福たちに聞け。どちらでもいい」
「そうだ、丁度聞きたかったけど....師匠、ここってなんで『適当観』って言うの?」
リンが『適当観』の由来を師匠から聞いてみると、それを師匠が淡々と答える。
「『適当観』という名前は、さる雲嶽山の先人がつけた。拠点の立地を決めるにあたり、一週間もここで風水を調べていたと聞く。そして地主に徘徊しているわけを問われた彼女は、咄嗟に嘘をついたんだ。風水のよい土地だとバレたら、足元を見られるかもしれないからな...『適当に見ているだけだ』、と」
「この土地を買い、道観を建てるとなったのちも大工たちにそのことをからかわれ...あげくについた名前が、『適当観』というわけだ」
『....つまりほぼ『適当』じゃん!!』
と、師匠の話が終わった後、突っ込んだ。もっと深い理由かと思ってたぞ....
「しばらく放置されていたことについては...旧都陥落の頃までさかのぼる必要がある。これはまたの機会にしよう。長らく誰も住んでいなかったとはいえ、交代で掃除に来るくらいはしていたぞ」
「こうしてまたここで目的を果たすことになったんだ。潘たちには予め片付けをさせつつ、周辺の状況を探らせていた。調査が順調にいけば、しばらくはここに泊まりだ。そうなったら、ここの物は『適当』に使ってくれ」
「わかった、私も近所を『適当に観て』みるね!」
『.....』
「「....」」ジー
『....言わないからな?』
「ノリが悪いなぁ...そうだ、まだ用事があった。名目上とはいえ、お前さん達はもう雲嶽山の弟子だからな。新たに弟子が入門したときは、その卦象を占って厄除けの祈祷をする習わしだ」
占いね...そんな仕来りがあったんだ....
「さぁリン、タンザナイト、適当観の大黒柱を紹介してやろう」
『....』
今俺の目の前にいるのは...一匹の眼鏡をかけたスカンクのような見た目の犬?が座っていた。
『....師匠も、まさかとは思うが、あの動物が大黒柱とかじゃないっすよね?』
「そうだが?」
『頭沸いてんのか?』
「ええ....」
と、さすがの俺でも辛辣なツッコミをした....いや動物が大黒柱とかありえる普通?
「ああ、説明がまだだったな。私たちがここを離れた間、朔はずっと適当観に居続けて、参拝客のために占いを行い、相談に応じてきたんだ。適当観の修繕費や諸経費も、全てその収入に頼ってたわけさ」
『えっできるの?占い??』
「この子はな、過去に侵蝕を受けたせいかわからないが、私が買い始めたころから、エーテルに対して極めて敏感だったんだ。その後、運命を察知する力も並外れていることがわかって、この場所を建ててやったんだ、言うなれば、情けは人の為ならず....というやつだな」
「あっ、じゃあ本当に先輩だったんだ!お疲れ様でーすっ!」
「占ってほしい時はこの龍亀を振ってみろ、さすれば今日の運勢が定まる。なに、心配するな。分からないことがあれば私が解説してやる」
師匠がそう言い、実際にリンと一緒に占ってみた.....
「うわーっ!やった『大吉』だぁ!」
『へーよかったじゃん』
リンは大吉と、結構いい感じの結果をのこせた....よしっ俺も!
『ヘアァァァッ!!』
『平』 ドンッ!
『ウソダドンドコドーンッ!!』
「ありゃりゃ....ドンマイ、タンザナイト」
結果は....『平』だった。
クソ―ッ!なぜだ!!あれか?スカンクみたいだなってのが嫌だったのか!?
「どうだ?リン、タンザナイト、こいつに秘められた玄妙ってやつが理解できそうか?」
『サッパリ分からないっ!』
「私も....何かそれっぽいこと言ってるみたいで、実は何も言っていない...なのに何かを言い当てられたような....そんな気分....」
「運命は覗けても、天機まではなかなか測れない。リン、タンザナイト、お前さん達興味があるなら、これからもたびたび体験しに来るといい」
『はっ...はぁ...』
そう言って師匠は去って行った.....その後、リン達のボンプ『ハツ』が経営を始めたり、ティンに挨拶したりと、見知った顔との挨拶がすむと、引壺さんから部屋の準備ができたらしいので覗きに行くことにした。
リン達の部屋をのぞいてみると、そこには見慣れた機械や大きなベットが置いてあった。
.....ベットが一つしかない?妙だな.....あっ俺とは別の場所で割り振られていたぞ。ベットとか机とか質素な感じで。
「うん....一通り揃えてくれてるね。そうだ、お兄ちゃんにこっちの情報を伝えとこう」
『それがいいな....多分アキラも心配するだろうし....』
そう言ってリンはアキラへ連絡を取ったのだった。
臨時のH.D.D装置を起動し、しばらくすると通信の向こうからアキラの声が届いた。
「もしもし、リン、タンザナイト、聞こえるかい?」
「聞こえてるよ。呼び名が違うけどね」
『おいおい....』
「コホン!私、妹弟子なんですけど!」
なんだぁ?テメェ....
「リン....冗談を言っている場合かい?師匠から連絡があって、飛行船ごとホロウに落ちていたと聞いた。それも何者かの襲撃だとか....いったい何があったんだ?」
「もう絶対飛行船なんて乗らないんだから!前も邪兎屋がひどい目に遭ってたし....新エリー都の飛行船って、ひょっとしてすっごく危ない?ホロウに落ちてからも、得体のしれない人たちに尾けられていたし。師匠たちがいたからよかったものの.....」
「衛非地区に向かうだけでこんなことになっちゃうんだもん、今回の調査は手ごわそうだね。お兄ちゃん、やっぱり家で待ってなよ。来ない方がいいって」
と、愚痴を入れつつ、アキラのことを今は来ない方がいいというリン。それに対してアキラは断りを入れる。
「来ない方がいいなんて、そんなことあるか。そっちでまた何かあったとき、すぐに駆け付けてやれないかもしれないんだぞ。H.D.Dシステムのリモート機能は調整済みだけれど、さっきラマニアンホロウの観測データを見返したら、確かに
『変な部分だと?』
「ああ、リモート接続だと、複雑な演算をリアルタイムで処理できない....こういうデータはそっちで更新しないといけないんだ。それに....儀玄さんなら、僕たちのエーテルを操るという潜在能力を引き出してくれる....この先にどんな危険が待ち受けていようと、リンたちの足手まといにはなりたくないんだ」
『アキラ....』
アキラの思いに俺達は胸を打たれる....だよな、アキラにとってはただ一人の妹だし....
「そっか...わかった。でも、もし来てくれるなら、一旦安全が確保できてからだね。まぁ、どのみち私達の動きはバレてるし...わざわざ飛行船に乗らなくていいのは確かかな。もっと安全な方法できてね。具体的なことはまた師匠と相談するよ」
「ああ、その辺りは師匠に任せよう」
と、今後についてでアキラは了承する。
「あっそうだ」
ふと、アキラが何かを思い出したか、俺たちに言う。
....なんだ?
「そういえば妹弟子さん?もう師匠から、何かしら術法は教わっているのかい?」
.....そっちかい。
「勿論!師匠ったら凄いんだよ!雲嶽山の雲に乗ったり、空を飛びまわったりする術を教えてくれてね....飛行船が落ちても無事だったのはそのおかげ!」
『でまかせ言うんじゃねぇよお前』
と、明らかに盛りすぎな設定に俺はツッコム。
「やれやれ、あんまりからかうんじゃないよ妹弟子さん?あんまりデタラメ言っていると、バケツを持って廊下に立っとれ...なんて師匠に言われるぞ」
「むう...」
すると、ドアの外が騒がしい....誰かが適当観に来たようだ。
「あれ...?表でなんかあったみたい...お兄ちゃん、一旦切るね。諸々師匠と相談しておくから」
「分かった。本当に気を付けるんだぞ、リン、タンザナイト....僕もすぐに行く」
と、アキラと通信を切り、一旦外へ様子見に行くのだった.....