side タンザナイト
一晩休んだおかげですかっと晴れやかな気分だ....そうとなれば調査の続きをしようか――ってみんな集まってるな....
俺は早速、師匠たちが集まってるところへ向かった。
「うーん....外で労働者さんたちがかなり集まってるみたいです....みんな興奮してて、ポーセルメックスを許さないぞー!とか言ってます。労働者さんから聞いたんですけど、ロア先生はもう調査結果を公開しちゃったみたいで...たくさんの人がポーセルメックスの労災に関するパンフレットを手に入れてて....集まって抗議しようとしてる人もたくさんいる感じですっ!」
『早くないか動きが?パンフレットまで作ってさぁ....』
「そうですねぇ。それと、エリックさんも見かけました。ポーセルメックスに抗議するために、労働者の人達に声をかけて回ってたみたいです!なんだかあの人たち、ずっと前からこの日を待ってたような気がします....」
『....ちょっと話をきいてみるか』
そう思った俺は、リンと共にエリックの所へ向かうのだった.....すると見かけた瞬間、エリックが嬉しそうに話しかけてきた。
「やぁリンさん、タンザナイトさん!あなた達のおかげで、ポーセルメックスとTOPSが隠蔽しようとした事故をはれて白日の下に晒すことが出来たんだ!」
「そうなんです!ロア先生が教えてくれましたよ。放棄されたエリアに入って、薬害の証拠を見つけてくれたと!証拠があれば、より多くの被害者たちと団結してダミアンに直談判できます!なにせ、主導権は僕たちにあるんですから!絶対に逃がしません」
「そうだ、ぼちぼちダミアンのところへ行く頃合いなんだが....ロア先生に声をかけてくれないか?
なるほどな...そういう可能性もあるな。
「じゃあ伝えてくるね。大丈夫、私電子機器ならお手の物だから、盗み聞きされるようなヘマはしないよ」
『俺もいざという時は消えるから』
「そうか....ん?ま、まあいか。それじゃあ頼んだぞ」
「僕の番号をお伝えしておきます。エリックに連絡したいときは、直接僕にかけてもらえばいいですから」
と、パロから連絡先を貰い、俺とリンでロアさんを向かいにいくのだった。
数分もかからず到着して、ロアさんがいたので話しかけた。
「エリックに調査結果を伝えてくれたのか?それはよかった!僕の方で一連の証拠をまとめた、これでポーセルメックスの罪は明白だ!」
『おおそうか!』
これでまた一歩近づけたわけだな!
「彼らの侵蝕緩和剤の品質に問題が生じ、大勢の労働者の侵蝕症状を起こしたにもかかわらず....その補償さえも拒否した。より多くの人に彼らの罪を知ってもらおうと、整理した証拠をパンフレットにまとめた。これで、抗議に加わってくれる人たちがもっと増えるはずだ!」
「今回は本当に助かった!心から感謝するよ、雲嶽山の先生方!」
「いえいえ。それはどうも~あはは....」
そうして、ロアさんが移動したので、俺たちも師匠の所まで戻ると、アキラが出迎えてきた。
「お帰り、リン、タンザナイト」
『おう、戻ったぜ』
「今もロア先生とエリックさんたちは、賠償金を求めて抗議するために人を集めてるんだって。まぁ、私はまたちょっと....引っかかってるとこがあるんだけどね」
引っ掛かってるとこ?ダミアンが黒幕なのは確定だと思うが.....
「そうですよ!お師匠さまたちが乗ってる飛行船を襲ったのも、市長さんに労災のことがバレたら困るからに決まってます!」
「あまり結論を急ぐものではありませんよ、姉弟子さん。市長の調査員を妨害しようとした件については、TOPSの仕業とするにはいささか挑発的なやり方でした」
「ああ....私の知る限り、TOPSはビジネスマンと大差ない。何をするにも利益とコストの連中だ。それが、飛行船にミサイルをぶっ放す?ないな。それだけ派手にやれば、かえって自分たちの首を絞めることくらい連中はわかっている」
それが本当なら....ありえそうなのは―――
『....まさか、『讃頌会』の連中か?』
「さぁな、そのうち向こうから説明に来てくれるさ」
「向こうからって、そんなの誰が....」
「ダミアンだ」
凛とした態度で師匠が言う。
...ダミアンが?
「あのダミアンさんが?わざわざ?お、お師匠さま、ひょっとしてそれも占いで....」
「
「ええ。基本は力を誇示して優位に立とうとしますが、不利とみるやすぐに下手に出て和解を持ち込ももうとする.....そういう『やり口』ですね」
『プライドもへったくれもねぇな』
と、そのなやり取りをしていると、適当観の外が何やら騒がしくなり、引壺さんが状況を確認しに行った。
―――すると引壺さんが慌てた様子で走って来た。
「て、てぇへんだお師さん!大当たりだよ!たったいまダミアンの野郎が表に来て、俺達に会わせろとさ!」
「思ったより早かったな....入れてやれ」
師匠がそう言い、引壺さんがダミアンを適当観に案内した。
「....お伺いするのが遅くなってしまい申し訳ありません。少しばかり『事務処理』があったものですから。聞くところによると、皆様は危険を顧みず、ホロウへ立ち入り調査をされたとか....事前にお知らせ頂けなかったのは、ひとえに私の不徳の致すところ、でございましょうか」
「まあひとまず無事で戻られたようで何よりです。万一何かあれば、上に責任を問われるのはこの私なのですから....さて皆様。なにやら廃棄されたエリアにて、弊社の無効になった生産プランを発見されたとか....ええ、従業員からそのように聞いたものですから、これはご説明せねばとお伺いしたのですよ」
....ああ、なんか捨てられていた資料とかあったところか。
「あの生産プランは、いずれTOPSに帰属する機密事項となります。今回の所謂『労災』とは、全く....本当に全く関係のないものですので、何卒誤解のなきようお願い申し上げます」
「これはこれはダミアンさん、急に小さくなっちゃってどうしたの?この間の威勢が影も形もないけど.....」
「そうですよっ!あのゴーガンフソンっぷりはどうしちゃったんですか?あたしたちがポーセルメックスに不利な証拠を見つけたとたん、目の色まで変えちゃって.....」
「何をおっしゃいますやら...この私がかつて、雲嶽山の皆様に非礼を働いたかのような口ぶりですね?」
『でもお前、明らかに意図的に避けてたよな?』
圧なんかかけていたし.....
「....仮にそう映っていたのであれば....責任者として立場がある以上、不自由なこともあった、とだけ申し上げておきたく。ですが、今や状況が変わりました。労働者たちが社に対して抗議を始めており、私は
ん?なんか話の流れ変わったな?
「保障の手続き...って、あんたたちが事故の記録をもみ消して有耶無耶にしたんじゃないの?少なくともロア先生はそう言っていたよ」
すると、ダミアンが驚いた様子で撤回し始める。
「なんですって?誤解もいいところですよ。既に補償は申請済みであり、一連の承認を受け付けている真っ最中....ただ、その
....なんか話が矛盾してねぇかこれ?
「ロア氏から聞いたと言いましたね?彼は他になんと?」
「あんたたちに脅迫されたり、侵蝕症状の治療を妨害されたって言ってたよ」
「まぁ、それについては間違っていませんね.....なにせロア氏は正式な医師免許を持っていないのですから。違法な治療が提供されているなら、止めるのが私の仕事です。」
うーん、困った....もっともな理由で反論できんな。
「それに私は常々、彼が従業員を治療する際のやり方には
「なんですか?問題って」
「『解脳水』...ご存知ですね?弊社が従業員に対し、彼がTOPS製侵蝕緩和剤の代わりに勧めている薬品です。その効力のほどは定かではありませんが、侵蝕事故が起きて以降少なくないリピーターを獲得していると聞きます。ですから、さぞ荒稼ぎしていることだろうと思いきや....なんですあの価格は?薬に含有される成分を考慮したら、それこそタダで配っているのと大差ありません。何が目的があってのことなのか、不気味ったらありゃしないですよ」
まっ、リスクとコストしか考えてない会社だったら分からんだろうな....一生。
「私共としては目下性急に調査をすべきだと考え、その全貌を明らかにする途上にあったのですが....ええ。そこへ雲嶽山の皆様が、ありがたくも首を突っ込んでくださったというわけです」
『あー...つまり、ロアさんの薬―――『解脳水』に問題が?』
「ご理解が早くて助かります。私から見れば、ポーセルメックスの薬に問題があるとする彼の告発は、弊社と従業員間の対立を煽っているだけのように思えてなりません。互助会の連中も、これを機に多くの賠償金を勝ち取れると考え、彼の一挙一動に共鳴する始末.....」
「はぁ。雲嶽山の皆様におかれましては、そう簡単に私の主張を信じることはできないでしょう。ですからどうぞ、何もかもご満足のゆくまでお調べください」
と、ダミアンは一つため息交じりに呆れたような感じでいう。
....この様子だと本当のようだな。
「その証明として、侵蝕事故の関係者名簿と賠償の進歩が分かる資料を皆様に送ります。もし今後何か問題がございましたら、いつでも私までご連絡ください」
そう言い残し、ダミアンは資料を残して、適当観を去った。
「ど、どういうことなんでしょう....?まさかロア先生が嘘をついてたなんて、そんなことあり得ませんよねっ?」
『分からん。分からんが....まずは、状況を整理するんだ...!』
「うん、そうだね。とにかく、まずはダミアンのくれた資料を調べよ。あいつが嘘をついてる可能性だって全然あるんだから」
そうだったらいいが....あの反応を見る限り、薄いな....
「リン、この件は僕に任せてほしい。ダミアンの情報が信頼に足るか検証してみるよ
。その間、こっちは治療を受けている人間をあたるぞ。何かしら収穫があるだろう」
「はい、お師匠さま!福福は近所で聞き込みをしてきます!」
「ようし、俺も知り合いに聞いてくるぞ!任しといてくださいよ!」
「私も行くよ。ついでに、ロア先生とエリックさんにどういうことなのか直接聞いてみる」
「ああ....既にあらゆるものが絡まりまくっているからな。はっきりさせるぞ」
そうして、俺も皆と別々に行動し始めた....ん?あれって確か....狛野か?なんか困ってるけど....
「...パロのやつどこ行きやがった?まさかホロウにはいったんじゃねぇだろうな....」
『確か狛野だっけ?どうした?なんか困ってるけど....』
「押忍、タンザナイトさん。パロのやつ見なかったっスか?なんか連絡とれねぇんだよな....」
『じつは俺も探してたんだ。あの人とロアさんに『解脳水』について、はっきり聞きたくてな....』
「あいつ....夫婦そろってロア先生の耐侵蝕治療を受けるために、ホロウへ行くって...それが最後のメッセージだったんス。まさかとは思うけど、ホロウにはいっちまったんスかね.....」
パロのやつ...家族の為に....
「それで、そっちは?『解脳水』のことを聞きたいって、なんか問題でもあったんスか?」
『ああいや...ちょっと『解脳水』のことをくわしく知りたくてな....パロが言ってたんだろ?ロアさんがホロウで皆を治療しているって。俺、どうにかして状況を聞いてみるよ。とにかくありがとう!』
「そうスか....そうだ、パロのやつに会えたら伝えちゃくれないスか。娘さんに心配かけてんじゃねぇぞ、って。しばらくなだめてられそうっスけど、泣かれちまったらお手上げなんで....電話の一つくらいかけて、家族の傍にいてやれって....お願いします」
『....ああ!分かったぜ』
その後、色々な人から一通りに聞いてきたので、俺は適当観へ戻ることにした.....
頼むから、この胸のザワザワを収まってくれよ.....