side タンザナイト
色々あって、防衛軍の拠点に帰って来た俺たち、するとオルペウスがこの拠点の説明をし始める
「オブシディアン大隊は一時的に、海覧通りを作戦の臨時駐屯地として微用したのであります。当面の拠点はこの場所になりますね。とはいえ....今日は、いつもより駐屯地にいる人員が多い気がするのであります」
『そうなのか?』
『フン.....作戦に調整があったんだろう。とにかく、イゾルデに戦果を報告しに行くぞ』
そう言い、俺たちはイゾルデの所へ行き、今回の作戦の戦果を報告する。
『結局、偵察任務は問題なく完了した。我が隊は死傷者もなし.....オボルスの火力を前にして、讃頌会の連中なんぞお話にならなかったな。およそ秩序だった動きもしなければ、知恵が回るわけでもあるまい....対ホロウ行動部や治安局がどうして手を焼いているのか...まったく理解できん。まぁ、イゾルデ大佐の緻密な戦略の賜物だがな』
「それに、プロキシ殿と騎士殿の活躍も無視できないのであります!『トリガー』さんや『11号』さんがおっしゃっていた通り....いえ、それ以上だったかもしれません!インターノットの噂は本当だったんでありますねぇ.....」
『....ああ?オルペウス....お前私に隠れて、インターノットなどという違法サイトを閲覧してたな!?』
「ひぃ...お助けであります...!」
と、怯えるオルペウス。
....何この『子供が夜中にゲームしてるのを怒る母親』みたいなかんじ....
「『鬼火』隊長、慢心はするなよ。君達が今しがた相手にしたのは、讃頌会の中でも敗残の兵にすぎない」
『わかってる―――連中の本拠地があるホロウ内座標は確保済みだ。正面からぶつかろうと問題ないが....オブスキュラやらサクリファイスやらは、依然厄介だな』
「市内のオブスキュラ捜索は私と駐留部隊で対応する。君達は、ホロウでの任務に集中してくれ。竹は末から、木は元から――という言葉がある。あの讃頌会のことだ、そんな動きすらも、我々の注意を逸らすための陽動とする可能性がある」
成程な...確かにそのブラフの線もあるな。
「それはそうとプロキシ、蒼光の騎士―――ホロウでの働きは、相変わらず見事だったと聞いている。どうだい?『オボルス』との共同作戦は....『鬼火』隊長が、無礼を働いていないといいのだが」
『フン.....』
「えっと....そういえば『鬼火』隊長がね....エーテリアスは悪党だからタンザナイトに出会った瞬間、軍用の高出力レーザーで『おもてなし』されちゃって....」
『おいやめろ!都合よく話を切り貼りしやがって...この実直だけが取り柄の銃を貶める気か!』
「そうかそうか....どうやら、私の定めた『対『パエトーン』、『タンザナイト』用臨時言語規範』は、あまり役に立たなかったようだな.....すまない、タンザナイト。我が軍の隊員『鬼火』隊長が....」
『あー...うん、俺は気にしてないぞ。無傷で済んだし』
「す、すべては、自分が心を強く持たなかったせいであります....!ですからどうか、『鬼火』隊長を軍法会議にかけることだけは、なにとぞご容赦いただきたく.....」
「確かに言葉はちょっとキツかったけど....『鬼火』隊長とチームのみんなは真剣に私の任務をサポートしてくれたし、軍用レーザーだってすっごく心強かったよ」
『....まあ、プロキシ君達のサポートがなければ、我々の作戦もこれほど順調には行かなかったかもしれないな』
『あっこれ知ってる。ツンデレってやつ――』
『黙れぇ!!』ボォォォォッ!!
『ウォォォォッ!!アチィィィィッ!?』
鬼火の火炎放射が俺の顔にぶち当たり、横たわる。
「なにしてんだか....」
「と、とりあえずいがみ合いが終わり、握手で和解する展開....でいいんでありますか?」
『ゴホンッ.....だが、それだけの腕がありながら、どうして『プロキシ』などという不名誉に甘んじている?軍に入って階級を貰い、本気で新エリー都を守っていた方が、よほど意義があるだろうに....』
「ちょっと、不名誉ってどういうこと?確かに私達は日陰者だけど.....日向にいるってだけでふんぞり返っているだけの人たちよりは、よっぽど光ぽいことしてるんだから!特にタンザナイトは日陰者を日向にいさせられる実績を持ってるんだよ!」
「隊長、今の発言は....かなり思慮に欠けたものであったかと....」
『フン....お前達プロキシはこれまで、合法的な資格のない市民をどれだけホロウという地獄に引きづり込んできた?どれだけのホロウレイダーに罪深き金儲けの道を案内してやったんだ?』
『まて』
鬼火の言葉で俺は立ち上がる。
『鬼火、確かにお前の言う通り、『アンダーグラウンド』の中には後ろ暗い決まりがあるが.....
『お前.....』
「ゲホッ....ゴホゴホ.....」
一触即発な雰囲気だったが、イゾルデの咳払いで話が入る。
「もういい。『鬼火』隊長も、プロキシくんも、騎士くんもその辺にしておくんだ....君達が『正義』の味方なのならな。憎まれ役は、鬼の形相をしたイゾルデ大佐だけで事足りるだろう?」
『.....』
「またしても隊長、イゾルデ大佐にやりこめられてしまったのであります.....」
「あはは、プロキシ君達もお子ちゃま扱いだね~これで僕たちはもうおんなじクラスだよ!やっほー同級生!」
「....ブリーフィングは以上とする。それとプロキシくん、騎士くん、ロレンツ少将が君に会っておきたいそうだ。後で少し付き合ってもらえるかな?」
『軍の少将が?』
「うーん....なんかイヤな予感しかないなあ」
「なに、私もいるんだ。心配いらないよ」
そう言い、イゾルデと一緒にロレンツ少将の所へ向かう。
「少将閣下!お客様です」
「イゾルデ大佐。例の....オボルス小隊が、讃頌会本拠地の座標を掴んだというのは本当か」
「はっ。偵察はは極めて順調でしたが、予想買いの情報もありました。衛非地区に設置された大量のエーテル反応器.....すなわち『オブスキュラ』に、重大なリスクが潜んでいる可能性があります」
「そういう細かいところはお前の部下と詰めろ。ここへ持ってくるのは結果だけでいい―――なに、お前ならうまくやるさ」
「了解です、少将」
「大佐。お前はオブシディアン大隊に数多といる凡人どもの中で、ひときわ光を放っていた。あのときお前を見出したこと、俺は今でも儲けものだったと思っている。お前のような人材を前線で燻ぶらせていては損失だ....俺は実利主義者だからな。成果を出す以上は、きちんと報いてやるとも」
何だこいつ....見るからに怪しげなやつだ.....
「今回はまたとない好機だが、衛非地区に部隊を送り込むにあたり、軍内部では相当の根回しが必要だった....必ず成功させろ」
「はっ!」
「おっと....客人のことを失念していたな。大佐、紹介しろ」
「この者達は、市政庁より派遣された、『特任ホロウ技術顧問』兼『市長付き軍事行動特派員』....リンさんとタンザナイトさんです」
「衛非地区へようこそ、リンくん、タンザナイト。歓迎しよう」
『...スッ』
「私、もう衛非地区にはしばらく前にいるんだよね。だからどっちかって言うと...私達適当観のほうが、防衛軍を歓迎する立場かなって」
「適当観?ああ―――雲嶽山か。失敬、忘れていたよ。こちらの客人は、メイフラワー市長のお気に入りだったな。なあ大佐、ひとつ教えてほしいんだが....市長の御用聞き兼、悪名高いプロキシとエーテリアスとやらがどうして防衛軍の案件に首を突っ込んでる?」
「はっ....こちらのリンさん達は、市政が特別に任命した技術顧問であると同時に、メイフラワー市長直属の特使として、今回限り、防衛軍の作戦に対する協力と監督の任を担っています」
「協力、か.....雲嶽山の宗主自ら動くというのなら、その言説もいくらか納得できたが....おまけに監督だと....?ふん―――オブシディアン大隊が引き金をひくタイミングまで、メイフラワーに口出しされる筋合いはないぞ。しかもエーテリアスごときに.....」
と、俺たちに高圧的な態度をとる....
「少将。リンさん達が関与するのは、特別小隊『オボルス』の行動のみであり、主力部隊の作戦や指揮についてはこの限りではありません。それこそが、衛非地区における軍事行動に市政が不干渉を貫く条件なのですから。少将にとって、願ってもないことなのでは?」
「もちろんだ、大佐。相変わらず見事な采配だとも。―――貴官のおかげで、
『おっとぉ....?随分と変わった『おもてなし』だな』
「少将。市長や雲嶽山から、反発があるかもしれません」
「これは命令だ、イゾルデ大佐」
「はっ、ご命令とあれば」
可哀想だなイゾルデ....あんな奴の言いなりにならなければいけないなんてな....
「さてと....ポーセルメックスの人間が澄輝坪で待っているんだ。なんでも、『防衛軍の駐留を歓迎すべく』一席設けてくれるそうでな。資本にたかる虫どもめ。しぶとく生き延びる術だけは心得ていやがる.....すまんが、こちらの客人を『もてなす』のは任せたぞ。大佐」
「行こうか、特使さん達」
そう言い、イゾルデと一緒にこの場から離れるのであった.....