side タンザナイト
ロレンツ少将のテントから離れ、イゾルデは振り返ると、俺たちに謝って来た。
「すまない、リンくん、タンザナイトくん。助力する客人として来てくれたというのに、このような扱いを受けさせて.....軍で物事を進めるには、手続きと多少の不具合はどうしても避けられないものでね」
『別に、大丈夫だイゾルデ。お前が謝ることなんてないさ』
「....そうか―――あのロレンツ少将は、11年前の旧都陥落で功績を挙げ、旧都陥落後に現在の位置へ昇進した。この数年間、彼の振る舞いは一貫して傍若無人だったよ。少将のやり方が好きだとはお世辞にも言えないが....彼の下で働くことで、たくさんの『機会』と『便宣』を得られたのは事実だ....おかげで、旧都陥落の
「旧都陥落の真相?」
まさかすべての元凶が....
「より正確に言えば....私がかつて所属していた小隊の失敗....その原因、だな。『鬼火』もずっと気にかけていた」
あっそっちでしたか....
「少し脱線したが....とにかく安心してくれ。オボルス小隊も、他のオブシディアン大隊の兵士たちも、必ず全力で君達の安全を確保するさ」
そう言い、イゾルデは軍の作戦内容を伝えた後、先にこの場から離れた。
「なんか失礼な人だったなぁ....防衛軍の将官クラスって、みんなあんな感じ?『外出及び対外的な連絡』をまるっと制限だなんて、囚人みたいな扱いじゃん.....」
『だな。ただ.....あのロレンツ少将....何か裏がありそうな感じかするぞ....』
「うーん....あ、でも、山を下りて適当観で休憩するくらいなら、さすがに止められないんじゃないかな?」
『....連絡を制限されてるからむりじゃね?』
「それは行ってみないと分からないでしょ!」
そう言い、リンは早速適当観へ向かうべく、モノレールの所へ移動するが....
「すみません、ここを通してはいけないと上からの命令されておりますので」
「え~~~~っ!?」
知ってた。
すると、リンの声が聞こえたのか、トリガーたちが降りてくる。
「リンさん、何かありましたか?こちらの方は市長の特使としていらっしゃっています。敬意を持って接してください」
「威風堂々の『リンさん』を、よくも~!」
「自分は命令に従ったまでです」
「命令を遂行するのは軍人の本分、この兵士の気持ちは理解できるわ。あなたたちも悪く思わないで欲しい、『クリムゾンホーン・タクティシャン』、『しかのこのこのここしたんたんざ兄さん』」
『誰がりっぱな鹿やねん』
「むー....しょうがない、引き下がるしかないか.....」
リンはそう言い、階段を上ると、オルペウス達が出迎えていた。
「隊長!甘んじて拷問を受けに向かったプロキシ殿達が無事帰還したのであります!」
『脈拍に乱れはなく、顔色も悪くない。如何やら試練を乗り越えたようだ。貧弱そうな見てくれの割にやるな。敵に捕まって本当の拷問を受けたとしても、立派な兵士として責任を果たせるだろう』
『大げさすぎだろ』
「ふんだ....さんざん悪者いじりしてきた『鬼火』隊長ならわかるでしょ?私が拷問から逃げるくらいはわけないって」
「ゲホッ...ゴホゴホ....」
と、鬼火たちと話しているとイゾルデが割り込んできた....さっきからこの人せき込んでるが大丈夫か?
「たしかに少将は一筋縄ではいかない人物だ。とはいえ、オブシディアン大隊で市長の特使が拷問されるなどということが、起こるはずもない」
そうして、イゾルデは少将の命令を全員に説明した.....その説明に皆、それぞれの反応を見せた。
「プロキシ殿達の外出と通信を、作戦完了まで『制限』....!?そっそれは、一体どういうことでありますか!?」
『つまり....お前達の愛しい『パエトーン』と『タンザナイト』を、我々の手でここに閉じ込め、大切な人々の連絡を取る手段も断つ、と....そういうことだ』
「そ、そんなの....とっても....」
「とっても、ひどいであります」
「ひどい話だよね....伝説のプロキシ『パエトーン』と蒼光の騎士『タンザナイト』も、ついに年貢の納め時かな」(なんかトリガーは妙に嬉しそうだけど....)
「伝説のプロキシ『パエトーン』と蒼光の騎士『タンザナイト』がオボルス小隊の手に落ちたと思えば、我々としては朗報だ。少将の『もてなし』には疑問が残るが...軍人にとっての命令は絶対なのでね」
むむむ....階級制度め.....
「命令なら仕方がない。私としても誠に遺憾であるが.....澄輝坪ではしばらくの間、大人しくしていてもらおうか」
えー本当に思っているでござるかー?なんか笑ってるような気がするが....
「なに、心配はいらない!オボルス小隊とオブシディアン大隊は、ホロウ鎮圧における最初の防衛ラインだ!讃頌会の掃討にかかる時間は、お前の想像よりはるかに少ないだろう」
「そ、そうですよ!そうして全部片付いた暁には、プロキシ殿達は晴れて、自由の身であります!」
「それでは命令に従い―――位置情報追跡装置の取り付けと、所持している電子機器への一時的な通信機能制限を、技術部門へ依頼する」
俺たちはされるがままにGPSという電子の枷.....それを
―――ちょっと待て、何故俺だけ首なんだ。リンは足首だぞ。
「本当は騎士くんだけ爆破装置をつける予定だったが.....私が止めて、プロキシくんと同じものを用意したんだ」
『殺意たけぇなおいっ!』
あっぶねぇぇぇ!!イゾルデマジ感謝だなおいっ!?
俺なんかした?嫌われる理由....あったわ、俺エーテリアスやん。そりゃ人類の敵を前にして恨みとかあるやん。
「改めて不便を詫びるよ、プロキシくん、騎士くん」
『オブシディアン大隊において、命令とは山々よりも重い掟だ。お前達のことはまだ好きになれないが、こうして自由を奪うなどというやり方は好ましくない。どうか、イゾルデや隊員たちを恨まないでやってくれ』
『まぁしょうがないか....これも作戦の内、我慢するか』
「私は軍人じゃないからあれだけど、みんなにとって『命令』がどれだけ大事かってことは、なんとなくわかるよ。私がちょっと窮屈な思いをするだけで、この作戦がうまくいくなら....衛非地区のみんなが安全になるなら、全然オッケーだから」
『ふん、大した覚悟だ。少し見直したぞ、小娘、小僧....心配するな。軍にいるの間は、私がきっちり面倒を見てやるからな!』
「面倒をみる、でありますか....しかしながら『鬼火』隊長は、お世辞にも面倒見がいいタイプではないので....」
と、遠い目で言うオルペウス....おい、言われてるぞ鬼火。
「改めて不便を詫びよう.....本当にすまない、プロキシくん、騎士くん」
その後、拠点のテントに戻ろうとした時、シードから声を掛けられ、ひょんなことからオボルスの定期装備点検に参加することとなった。
そうして、オボルス小隊のメンバーと俺たちが集まった後、シードが点検する。
「それじゃあ、今日はーの定期点検、はっじまっるよ~点検担当は....『シード』隊員!」
慣れた手つきでメンバーの点検が終わると、今度はリン達の方が始まる。
「次はプロキシ君だよ!うーん....どこから見ていこっかな?」
シードは真っ直ぐにリンの瞳を見る....たしかリンとアキラはH.D.Dシステムとリンクできるんだっけ....あれこれ、バレてない?大丈夫?――あっ目をそらした。
「うん!綺麗なおめめ!問題なし!」
よかった、どうやらバレてないみたいだ。
「最後はタンザナイト君だよ!....どっからみようかな?」
シードがそう言うと、俺のからだをあちこち触ってくる。
『....ちょっとくすぐったいぞ』
「え~?だって君の体、ぷにぷにしてて柔らかいも~ん....よし、異常なし!点検は以上!」
「.....点検とか言って.....プロキシ殿を見つめたり、騎士殿の体を触る口実が欲しかっただけなのでは....?」
『全員の点検が済んだのなら、ここで解散だ!各自で休息を取って、必要があれば武器庫でメンテナンスしてこい!』
「プロキシ君達もおめめと体を大切にしてね~!」
そうして、オボルスの定期装備点検が終わり、リンと一緒にテントに戻り、休むことにした.....