side タンザナイト
照と別れた後、テントに戻って寝ようとした時、突然トリガーたちが現れる。
「プロキシさん!タンザナイトさん!」
「まだ寝る時間じゃないよ~」
「私と『シード』隊員がわざわざお伺いしたのは、プロキシさん達を私達の特別夜間作戦にお誘いするためです」
特別...えっなに?訓練でもすんの?いまから?
「ついてくれば分かるから、とにかくおいでよ!」
シードに言われるがままについていくと、そこにはオルペウスが立っていた。
「シーッ、狙撃手のように、静かに行動してくださいね」
『えっ何すんの?』
シードとトリガーが、オルペウスの後ろからこっそり近づくと....いきなり襲撃をしかけた!
「オ~ルペ~ウス!」
「オルペウス」
「ふぇっ―――きゃあああ!!」
急に現れたシード達にオルペウスは驚く。
「.....むっ!また、あなたたち...!――って、プロキシ殿達までグルでありますか!?」
『ち、違う!シードが勝手に...!』
「そ、そうだよ!私たちはただついてきただけで...二人がこんなことするつもりだったなんて知らなかったの!」
「しーっ!『鬼火』姉さんは就寝中なのであります...!彼女のお休みを邪魔をしては駄目ですよっ!」
と、抑え目な音量で言うオルペウス....あっホントだ鬼火の眼が消えてる。
「隊長は『セルフチェック』中なのですか?」
「クイズ!オルペちゃんが本当に怖いのはどっちでしょうか!一番、隊長のお休みを邪魔すること!二番、こっそり『禁制品』を食べてるのが隊長にバレること~!」
「異議あり!まず、自分は本心から隊長のお体を心配しているのであります!次に!『防衛軍行動規範』、『駐屯時の摂食禁止品リスト』にレモン味のスナックは含まれていません!自分は、『鬼火』隊長が一方的にスナック菓子を『禁制品』としたことに、異議を申し立てる権利を有します!」
と、なんかシードのクイズをオルペウスが答えてる....なんかあれ?
「へ~?それならオルペちゃん、どうして隊長が起きている時に異議を申し立てないのかな~?」
「我らが『オルペちゃん』にも、彼女なりの戦略があるそうですね」
「とーにーかーくー...オルペちゃん?この最高機密を隊長にばらされたたくなかったら....」
「その『禁制品』を、みんなでシェアしませんか?」
「わーん!また『シード』と『トリガー』さんに物資を略奪されるであります~!」
さては、こいつら....おかし食いたいだけだろ。
「なーに言ってんの!『夜間特別作戦会議』の恒例行事だよ!」
「みんなでやれば怖くない、ですよ。オルペウス。ふふっ....」
「フンであります!こうなった以上、プロキシ殿達にも罪を背負ってもらいますからね!」
『解せぬ』
衛非地区の潮風に包まれながら、オボルスの隊員達と一緒に渋々、レモン味のスナックを掃討した。*1
夜も更け、オルペウスに襲撃を仕掛けた『シード』と『トリガー』も小隊のテントに戻っていく....俺も戻ろうかと思ったその時、オルペウスに呼び留められる。
「プロキシ殿、騎士殿!実は、まだあなたに伝えたいことが....その....隊長のことについてであります」
『隊長のこと?』
「...当ててみよっか――『鬼火』隊長が寝てる時じゃないと話せないことだね?」
「はい....前回行動した時、プロキシ殿に辛辣な態度を取った隊長に代わって、謝罪したかったのであります。でも、隊長がああなるのには、彼女なりの理由がありまして....えと、信じてもらえるかわかりませんが.....」
『大丈夫だオルペウス。俺はお前のことを信じてる....オルペウスが鬼火のことを信じてるみたいにな』
「私も!」
と、不安がっているオルペウスを励ます。
「...それにしてもユニークなコンビだよね。兵士と武器型の知能構造体って―――」
「知能構造体...その言葉だけでは、隊長の存在はとても言い表せないのであります......」
ん?なんかあるのか?
「プロキシ殿、騎士殿、自分は....あなたを信じてもいいのでありましょうか....?」
『言ったろ?俺たちはオルペウスを信じてるって....だからオルペウスも俺たちのことを信じてほしい―――まぁ
「....ふふっ、やっぱり、騎士殿は変わった人です....でも安心したのであります」
オルペウスがクスっと笑った後、鬼火の秘密を話し始める。
「自分は....ただの『ガンナー』に過ぎないのでであります。『鬼火』隊長の補佐として存在しているだけの....兵士であります―――『また自分を卑下するのか、オルペウス。お前は特別だ。他の誰とも違う、唯一無二の存在なんだ....』....もし『鬼火』隊長や、隊員の皆がここにいたら、きっと....そんなふうに励ましてくれたはずであります」
「....でも本当は分かっているのであります。自分は特別なんかじゃないって....生まれた時から、『ガンナー.』としての使命と、意識しか与えられてこなかった自分は...十一年前のあの災厄で、この地は....あまりにも多くのものを失いました。とりわけ、新エリー都を守る、多くの兵士たちを....防衛軍のなかで、たったひとつ残った宝石―――『オブシディアン大隊』も甚大な被害を免れなかったのであります」
「あの頃、防衛軍では、様々な計画が進められていました――強化兵士、改造兵士....そして、クローン....」
「『!』」
「とても残酷に聞こえますよね?でも、そうした計画がなければ、『オブシディアン大隊』も...今日まで存続できなかったかもしれないのであります。自分が生まれたのも、そんな時でした――伝説の兵士のクローン体として....その補佐を務めるために、自分は作られました。その兵士のコードネームは―――『鬼火』」
「彼女の肉体は既に壊れ、銃器に宿っているのはその意識、あるいは『魂』と呼べる物のバックアップなのであります。肉体が死してなお、武器として防衛軍に振るわれ続ける....『鬼火』隊長は、そんな運命でも本望だと、いつもおっしゃっていますが....自分には分かりません。それが祝福なのか、あるいは呪いなのか....」
「皮肉なことに、自分はそれが幸運だったのであります。だって自分は彼女の体を貰い、名前を貰い....その人生まで奪ってしまったのですから。ですが、『鬼火』隊長は....そんな自分を責めるどころか、こう言ってくださいました―――『オルペウス。私の人生をなぞってもつまらんぞ。お前は...お前の人生を歩け』、と」
『.....』
「兵士たちの視線に混じる同情や哀れみ、そして嘲りや嫌悪にも....気づいてはいましたけど....それでも自分は、やっぱり幸運だったのであります。『鬼火』隊長と出会えて、『オボルス小隊』と出会えて....そして....プロキシ殿や騎士殿のような、おもしろくて凄い御方にも、お会いできたのでありますから....」
「彼らは...あなたたちはいつもこう言ってくれました。決して自分を貶めてはいけないと....あのガラスのカプセルも、味気ない栄養液も...同情に哀れみ、嘲りや嫌悪のこもった視線も、何もかもが自分の『特別』を否定したとしても―――皆さんだけは...何度も、何度も言ってくれたのであります――オルペウスは唯一無二の存在だと...!冷たくて硬いガラスの檻なんかよりも、自分は....皆さんの思いを選びます!」
「温かな『鬼火』隊長、賑やかなオボルス小隊、そして....かっこいいプロキシ殿と騎士殿!皆さんの方が、ずっと自分は好きであります!どんな道を歩んできたのか...きっとそれだけでは、自分たちを物語るこちはできないのであります。『鬼火』隊長にとっても、自分にとっても。隊長はいつもプロキシさん達のことを....悪し様に言いますが、本当に、本当にちょっと口が悪いだけでありますから!」
「自分たちを物語るものが、歩んできた道だけではないのなら....自分も、隊長も....どんな道を選ぶのかは、自分で決めなければなりません。『プロキシ』殿や『騎士』殿なら....そんな自分や隊長たちに、きっと、『正しい生き方』を示してくれるはずでありますから....信じているであります、プロキシ殿、騎士殿!」
『....オルペウス』
振る声で自身の生い立ちをはなしたオルペウスに俺は鉄のしきりに手を置き、潮風に触れながら、俺自身の経験を言う。
『俺も...俺
「...え?そ、それってどういうことですか?」
『...俺も、
「えっ....」
そして、俺はオルペウスに自身のことを明かす....俺の正体、クローンの前の人物、乗り移ったこと、今までのこと....その情報量はオルペウスの顔を唖然とさせる。
『―――と、まぁそんなところかな....俺とインフィニティについては』
「....えっと、騎士殿....その、言っちゃなんですが....寂しくないのですか?」
『....もちろん、寂しいよ』
「っ...」
『俺だってまだ高1ぐらいだぜ?まだ親に今までの恩を渡してないのに、こんな世紀末な世界に送られて....でも――』
そう言って、俺はオルペウス達の方へ振り向く。
『今はこの世界を守っていきたいと思っている』
「!」
『正直、何故ここに憑依してきたのか、何故この世界にきたのか分かんないけど....だからといって、この先の敵と『やらない』わけにはいかない...せめて俺の目の前で、犠牲になんてさせない....!』
「騎士殿....」
(すごい決意....より一層青く光り輝いてる..!)
「....凄いです、騎士殿。私より過酷なことがあったのに、それでも新エリー都の人々の未来を守るために、前を向き続ける姿勢....私、感動したのであります!」
と、オルペウスは俺の話に敬意をこめて敬礼する。
「...改めてみると、オルペウスと『鬼火』隊長、タンザナイトとインフィニティ、どちらも似たもの同士だね」
『...そうだな』
「ふぇ!?そそそ、そんな...騎士殿の活躍に比べれば私なんて...」
ハハハハっと、笑いながらその後俺たちは解散し、明日に備えて休むこととなった....
実際、オルペウスと『鬼火』隊長、タンザナイトとインフィニティって似てるよね....元の素体と乗り移ってる点で