side タンザナイト
あいつって確か、掃討作戦した時にあった部下じゃねえか。なんでここに?
『おいおい、とんだ腐れ縁だなこれは....前にここで出くわしたのもこいつだったか?』
「オボルス小隊?どうして君達がここにいる?」
「ううっ、この聞き覚えのあるイヤ~な感じ....間違いないであります、こいつ....じゃなくて、この人であります!」
『いくら何でも失礼すぎんだろ』
『『どうしてここにいるか』だと?それはこちらのセリフだ』
「ふん....もちろん、ロレンツ少将閣下のご命令に決まっているだろう」
やっぱり....まぁ分かってたことだけど....
『ああ、お前がロレンツ少将の腰巾着だというのは充分よく知っている』
「本来ならば君達に説明する義務などないが....『戦友』同士、無用な衝突は避けたいのでね。この施設には、ポーセルメックスの輝磁資源が保管されている。都市の戦略物資が戻ってきた讃頌会の残党に奪われぬよう、ロレンツ少将閣下は、ここの守備を命じられたのだ」
『その『戦略物資』とやらは...元はと言えば、ポーセルメックス自ら讃頌会に差し出したものじゃなかったか?そんなものの後始末に追われているとは...お前達も、ずいぶんと律儀なことだ』
「...口喧嘩なら付き合わないぞ。今度は君の番だ、『鬼火』隊長。どうしてここに現れた?こちらは協力要請も交代命令も受けてないが.....」
挑発に乗らなかった隊員は質問を返してきた....それをリンが答える。
「見ればわかるでしょ?オボルス小隊は私達を捕まえに来たの。ロレンツ少将に制限令を出された身で、軍の秘密を持ったままホロウに入ったから」
「プロキシ殿....」
「ほう?市長の特使殿達が、そんなに手のかかる人物だったとは。それは本当か?『鬼火』隊長?」
『......いや....新しい情報が入った。ホロウのどこかに、讃頌会の重要な拠点がまだ隠されている可能性が高い。今回オボルス小隊が出撃したのは、市民の安全を脅かすリスクを、徹底的に排除するためだ。お前も兵士なら、軍人の本分くらいは理解してるだろう』
「本文?軍人の本分は命令に従うことだ!」
あっ、ダメだなこいつ....その言葉におれは 心の中で思った。
『ただ命令に従っていれば、人々を守れるのか?』
「部隊を率いての独断行動だ。軍規違反も甚だしいぞ、『鬼火』隊長!」
『軍規がなんだ?私がオボルスを立ち上げたのは、誰かの顔色を伺うためじゃない!軍規が抗わなければ、街一つ守れない?上等だ。軍法会議でもなんでも、受けて立ってやる!』
「この会話は録音している....君の一言一句が、法廷での証拠になるぞ....!」
『この銃口はそちらに向けている。貴様の一言一句が、今際の遺言に....』
『待て、落ち着け鬼火』
と、明らかにやりすぎな鬼火を止める。
「そうだよ!情報を提供したのは私だし、みんなを先導したのも私なんだから!もし防衛軍のお偉いさんがいちゃもんつけたいなら私にどうぞ!市長の特使として来てる私にね!」
「チッ....!どのみち、味方への脅迫行為は重罪だぞ。『鬼火』隊長。わざわざ衝突してまで君達を止める義務はないからな....行きたければ行くが良い。軍法会議の場で、元気な姿を拝めることを、願っている」
そう言い、兵士は、再び鬼火に一瞥をくれると、小隊を連れてここを離れた....
「はあ、ようやくいや~なやつが行ったのでありますね!」
「じゃ、引き続き世界を救おっか~」
「これで本格的に、みんなで仲良く前科一犯だけど....本当にここまでしなくちゃいけなかったの?」
『心配するな、プロキシ君。いざとなったらこう言うさ―――『特使殿は我々に脅されて、渋々ホロウを案内する羽目になった』と』
「そうじゃなくて....私は『鬼火』隊長とオボルスのみんなが心配なの」
と、リンが不安そうに言う。
『軍規に違反した責任なら全て私が負う....いざとなれば、イゾルデに情けを求めるだけだ』
「だめでありますよ!もし『鬼火』隊長が本当に捕まってしまったら、自分ひとりで戦場に立つことに....!」
『あのな....少しは私の心配もしたらどうなんだ?オルペウス....』
『ははは....』
と、雑談していると、アキラがH.D.Dから通信が届いたと連絡が入る。
「リン、タンザナイト、防衛軍から緊急の通信要請だ」
「防衛軍から通信要請...?」
『おーん?そりゃ誰からだ?』
「まあ防衛軍というより、
そう言い、通信がアキラからイゾルデに代わる。
「やあ、戦友の諸君。『パエトーン』のお家芸は以前から耳にしていたが....ホロウを越えて通信できる装置というのは、実際に使ってみるとやはり不思議だ」
『イゾルデ....大佐ッ、この状況については私から説明を....』
「軍規を破り、独断で出撃などということをしておきながら....今さら私に情けを乞おうと?我らが『鬼火』隊長も、長年の軍務で少々摩耗したとみえる」
「『鬼火』隊長の排熱パーツが、オーバーヒート寸前であります!」
『私は...その...大佐は全て知っていたのか?おいプロキシ君....そのH.D.Dとやらは、プライバシーの欠片もないな?』
なんかこっちに飛び火してきたが、イゾルデがすぐさましきった。
「いいんだ....状況はすべて把握している、その上で言おう。『鬼火』隊長、君の判断は正しい。かつての私達が、ただ命令に従って戦友たちの命を犠牲にしたことを思えば....な。もはや命令だからというだけで、危機に瀕している衛非地区を見殺しにはできない」
「かつて..?犠牲?」
『イゾルデ....どうして急に昔話なんか....』
「.....『鬼火』....今の君になら、あのことを打ち明けてもいいだろう....」
あのこと?...なんかただならぬ厄ネタがプンプン匂うぜ....
「ここにいる諸君は、『鬼火』隊長が命を預けられる戦友であり、また、新エリー都の安全のためならば、命を投げ出せる戦士だと信じている。そして私がこれから、『鬼火』隊長と諸君につげるのは、とある裏切りにまつわること....私利私欲のために、街と市民を危険に晒した罪深い行いの真相だ」
『あの調査に....結果がでたのか?』
「『鬼火』隊長と大佐の戦友って....たしか、旧都陥落のとき、上層部が指示を間違えたせいで犠牲になった人たち....だよね?大佐の言う真相って、まさか....」
「そのまさか...だ」
そう言い、イゾルデは真相へ語り始める.....
「当時の指揮官は『アガメムノン』小隊にこう命じた....『市民を撤退させるための鉄道幹線を死守せよ』とな。私達の戦友もその命令通り、最後の一滴まで血を流し、戦い抜いた。しかし、実際に私達が守っていたもの....市民を乗せていると思われた貨物列車が満載していたのは、企業の財産だったんだ」
「隊員たちが一分耐えるごとに、一コンテナ分の輝磁がホロウの外に、TOPSが設けた倉庫へ運搬されていった。当然、指揮官には企業から莫大な報酬が支払われたと聞く.....その小切手にあるゼロの一つ一つは....隊員たちの血で書かれていたんだよ、『鬼火』」
イゾルデの『怒り』『悲しみ』『恨み』などの負の感情が莫大に感じ取れるような声で言う。その言葉に鬼火は黙り込む。
「『鬼火』...隊長....」
『.....イゾルデ、その指揮官の名前を言え....!そいつに賄賂を渡してたのは、どこの企業だ....?』
「.....」
『答えろ....』
見なくても分かる....相当怒り狂っていた。
「『鬼火』隊長、銃身の状態が不安定であります!」
『答えろ、イゾルデ!』
「彼らを
『冷静...?冷静だと?こんなことを中途半端に聞かされて、冷静でいられるか!?』
「『鬼火』隊長!これ以上安定した状態を保てないのであれば....!」
「勘違いするなよ、『鬼火』。私の怒りだって君に劣らないと....わかっているはずだ」
『イゾルデ、私はこのために生まれてきたんだぞ....こり怒りを銃身に込め、然るべき奴らにぶち込むために....!』
「『鬼火』隊長っ!自分は、隊員たちの安全確保のため強制的にスリープモードを起動する権限を有するのでありますっ!」
『オルペウス、私の邪魔をするのか....!』
なんかやばそうになって来たので、急いで俺は止めることにした。
『まって!昔のことで腹を立ててるのはわかる....だけど、今俺たちはすぐやらなきゃいけないことがあるだろ!』
『フッ....軽んじてくれるじゃないか、『タンザナイト』。お前にこの怒りが分かるのか?』
『わっかんねぇよ!』
『!?』
『そりゃ、お前が失った時の怒りとかは本人しかしらねぇけど....けど、あの旧都陥落で失ったのはお前だけじゃない!ここにいるみんな....イゾルデに師匠、リン達だって....旧都陥落のせいで、衛非地区に流れ着いた人たちだってそう....みんな、鬼火と一緒だ。たくさんのものをとっくに失っている...だからこそ、今こうやって必死に止めようとしてるんじゃないのかよ!』
『......』
「タンザナイト.....」
俺の決死の言葉に鬼火は黙ってしまう。
「『鬼火』隊長....」
『礼を言う、騎士君。イゾルデ、永遠にこのままにしておくつもりはないが....しかるべき時がくるまでは、我慢してやる。』
「そうしてくれると助かるよ。目下重要なのは、君達の任務を引き続き遂行することだ。このタイミンクで水を差してしまったことは申し訳ないが....君の言葉が正しかったということだけは、伝えておきたかったんだ。命令に従うだけの軍人が必ずしも優れた軍人とは限らない。諸君、躊躇わずに進め。軍の圧力は、私の所で止める」
「さっ、時間は待ってくれないよ。ホロウは絶えず変化を続けてるんだから、これ以上ここにいたら、裂け目が消えちゃうかも」
『了解した、プロキシ君。オボルス小隊、引き続き前進だ!』
「はっ!隊長!」
そう言い、俺たちは先へと進むことにしたのだった.....
「.....この数年、君は幸運だったのだよ、『鬼火』....私よりも、遥かにな.....」