転生先はエーテリアス   作:YEX

295 / 330
我々の思い

side タンザナイト

 

あいつって確か、掃討作戦した時にあった部下じゃねえか。なんでここに?

 

『おいおい、とんだ腐れ縁だなこれは....前にここで出くわしたのもこいつだったか?』

 

「オボルス小隊?どうして君達がここにいる?」

 

「ううっ、この聞き覚えのあるイヤ~な感じ....間違いないであります、こいつ....じゃなくて、この人であります!」

 

『いくら何でも失礼すぎんだろ』

 

『『どうしてここにいるか』だと?それはこちらのセリフだ』

 

「ふん....もちろん、ロレンツ少将閣下のご命令に決まっているだろう」

 

やっぱり....まぁ分かってたことだけど....

 

『ああ、お前がロレンツ少将の腰巾着だというのは充分よく知っている』

 

「本来ならば君達に説明する義務などないが....『戦友』同士、無用な衝突は避けたいのでね。この施設には、ポーセルメックスの輝磁資源が保管されている。都市の戦略物資が戻ってきた讃頌会の残党に奪われぬよう、ロレンツ少将閣下は、ここの守備を命じられたのだ」

 

『その『戦略物資』とやらは...元はと言えば、ポーセルメックス自ら讃頌会に差し出したものじゃなかったか?そんなものの後始末に追われているとは...お前達も、ずいぶんと律儀なことだ』

 

「...口喧嘩なら付き合わないぞ。今度は君の番だ、『鬼火』隊長。どうしてここに現れた?こちらは協力要請も交代命令も受けてないが.....」

 

挑発に乗らなかった隊員は質問を返してきた....それをリンが答える。

 

「見ればわかるでしょ?オボルス小隊は私達を捕まえに来たの。ロレンツ少将に制限令を出された身で、軍の秘密を持ったままホロウに入ったから」

 

「プロキシ殿....」

 

「ほう?市長の特使殿達が、そんなに手のかかる人物だったとは。それは本当か?『鬼火』隊長?」

 

『......いや....新しい情報が入った。ホロウのどこかに、讃頌会の重要な拠点がまだ隠されている可能性が高い。今回オボルス小隊が出撃したのは、市民の安全を脅かすリスクを、徹底的に排除するためだ。お前も兵士なら、軍人の本分くらいは理解してるだろう』

 

「本文?軍人の本分は命令に従うことだ!」

 

あっ、ダメだなこいつ....その言葉におれは 心の中で思った。

 

『ただ命令に従っていれば、人々を守れるのか?』

 

「部隊を率いての独断行動だ。軍規違反も甚だしいぞ、『鬼火』隊長!」

 

『軍規がなんだ?私がオボルスを立ち上げたのは、誰かの顔色を伺うためじゃない!軍規が抗わなければ、街一つ守れない?上等だ。軍法会議でもなんでも、受けて立ってやる!』

 

「この会話は録音している....君の一言一句が、法廷での証拠になるぞ....!」

 

『この銃口はそちらに向けている。貴様の一言一句が、今際の遺言に....』

 

『待て、落ち着け鬼火』

 

と、明らかにやりすぎな鬼火を止める。

 

「そうだよ!情報を提供したのは私だし、みんなを先導したのも私なんだから!もし防衛軍のお偉いさんがいちゃもんつけたいなら私にどうぞ!市長の特使として来てる私にね!」

 

「チッ....!どのみち、味方への脅迫行為は重罪だぞ。『鬼火』隊長。わざわざ衝突してまで君達を止める義務はないからな....行きたければ行くが良い。軍法会議の場で、元気な姿を拝めることを、願っている」

 

そう言い、兵士は、再び鬼火に一瞥をくれると、小隊を連れてここを離れた....

 

「はあ、ようやくいや~なやつが行ったのでありますね!」

 

「じゃ、引き続き世界を救おっか~」

 

「これで本格的に、みんなで仲良く前科一犯だけど....本当にここまでしなくちゃいけなかったの?」

 

『心配するな、プロキシ君。いざとなったらこう言うさ―――『特使殿は我々に脅されて、渋々ホロウを案内する羽目になった』と』

 

「そうじゃなくて....私は『鬼火』隊長とオボルスのみんなが心配なの」

 

と、リンが不安そうに言う。

 

『軍規に違反した責任なら全て私が負う....いざとなれば、イゾルデに情けを求めるだけだ』

 

「だめでありますよ!もし『鬼火』隊長が本当に捕まってしまったら、自分ひとりで戦場に立つことに....!」

 

『あのな....少しは私の心配もしたらどうなんだ?オルペウス....』

 

『ははは....』

 

と、雑談していると、アキラがH.D.Dから通信が届いたと連絡が入る。

 

「リン、タンザナイト、防衛軍から緊急の通信要請だ」

 

「防衛軍から通信要請...?」

 

『おーん?そりゃ誰からだ?』

 

「まあ防衛軍というより、()()()()()()()()からだけれどね。最初は師匠を頼ったらしく、そこから僕に繋げてくれたから、こちらでH.D.Dを使って通信を仲介したんだ。それと緊急の通信要請というのは...その、防衛軍の人の前で、ちょっと格好をつけてみたかったんだ」

 

そう言い、通信がアキラからイゾルデに代わる。

 

「やあ、戦友の諸君。『パエトーン』のお家芸は以前から耳にしていたが....ホロウを越えて通信できる装置というのは、実際に使ってみるとやはり不思議だ」

 

『イゾルデ....大佐ッ、この状況については私から説明を....』

 

「軍規を破り、独断で出撃などということをしておきながら....今さら私に情けを乞おうと?我らが『鬼火』隊長も、長年の軍務で少々摩耗したとみえる」

 

「『鬼火』隊長の排熱パーツが、オーバーヒート寸前であります!」

 

『私は...その...大佐は全て知っていたのか?おいプロキシ君....そのH.D.Dとやらは、プライバシーの欠片もないな?』

 

なんかこっちに飛び火してきたが、イゾルデがすぐさましきった。

 

「いいんだ....状況はすべて把握している、その上で言おう。『鬼火』隊長、君の判断は正しい。かつての私達が、ただ命令に従って戦友たちの命を犠牲にしたことを思えば....な。もはや命令だからというだけで、危機に瀕している衛非地区を見殺しにはできない」

 

「かつて..?犠牲?」

 

『イゾルデ....どうして急に昔話なんか....』

 

「.....『鬼火』....今の君になら、あのことを打ち明けてもいいだろう....」

 

あのこと?...なんかただならぬ厄ネタがプンプン匂うぜ....

 

「ここにいる諸君は、『鬼火』隊長が命を預けられる戦友であり、また、新エリー都の安全のためならば、命を投げ出せる戦士だと信じている。そして私がこれから、『鬼火』隊長と諸君につげるのは、とある裏切りにまつわること....私利私欲のために、街と市民を危険に晒した罪深い行いの真相だ」

 

『あの調査に....結果がでたのか?』

 

「『鬼火』隊長と大佐の戦友って....たしか、旧都陥落のとき、上層部が指示を間違えたせいで犠牲になった人たち....だよね?大佐の言う真相って、まさか....」

 

「そのまさか...だ」

 

そう言い、イゾルデは真相へ語り始める.....

 

「当時の指揮官は『アガメムノン』小隊にこう命じた....『市民を撤退させるための鉄道幹線を死守せよ』とな。私達の戦友もその命令通り、最後の一滴まで血を流し、戦い抜いた。しかし、実際に私達が守っていたもの....市民を乗せていると思われた貨物列車が満載していたのは、企業の財産だったんだ」

 

「隊員たちが一分耐えるごとに、一コンテナ分の輝磁がホロウの外に、TOPSが設けた倉庫へ運搬されていった。当然、指揮官には企業から莫大な報酬が支払われたと聞く.....その小切手にあるゼロの一つ一つは....隊員たちの血で書かれていたんだよ、『鬼火』」

 

イゾルデの『怒り』『悲しみ』『恨み』などの負の感情が莫大に感じ取れるような声で言う。その言葉に鬼火は黙り込む。

 

「『鬼火』...隊長....」

 

『.....イゾルデ、その指揮官の名前を言え....!そいつに賄賂を渡してたのは、どこの企業だ....?』

 

「.....」

 

『答えろ....』

 

見なくても分かる....相当怒り狂っていた。

 

「『鬼火』隊長、銃身の状態が不安定であります!」

 

『答えろ、イゾルデ!』

 

「彼らを()()()()()()()()()が十分にそろったわけではないんだ。今はまだ、冷静さを保て」

 

『冷静...?冷静だと?こんなことを中途半端に聞かされて、冷静でいられるか!?』 

 

「『鬼火』隊長!これ以上安定した状態を保てないのであれば....!」

 

「勘違いするなよ、『鬼火』。私の怒りだって君に劣らないと....わかっているはずだ」

 

『イゾルデ、私はこのために生まれてきたんだぞ....こり怒りを銃身に込め、然るべき奴らにぶち込むために....!』

 

「『鬼火』隊長っ!自分は、隊員たちの安全確保のため強制的にスリープモードを起動する権限を有するのでありますっ!」

 

『オルペウス、私の邪魔をするのか....!』

 

なんかやばそうになって来たので、急いで俺は止めることにした。

 

『まって!昔のことで腹を立ててるのはわかる....だけど、今俺たちはすぐやらなきゃいけないことがあるだろ!』

 

『フッ....軽んじてくれるじゃないか、『タンザナイト』。お前にこの怒りが分かるのか?』

 

 

『わっかんねぇよ!』

 

 

『!?』

 

『そりゃ、お前が失った時の怒りとかは本人しかしらねぇけど....けど、あの旧都陥落で失ったのはお前だけじゃない!ここにいるみんな....イゾルデに師匠、リン達だって....旧都陥落のせいで、衛非地区に流れ着いた人たちだってそう....みんな、鬼火と一緒だ。たくさんのものをとっくに失っている...だからこそ、今こうやって必死に止めようとしてるんじゃないのかよ!

 

『......』

 

「タンザナイト.....」

 

俺の決死の言葉に鬼火は黙ってしまう。

 

「『鬼火』隊長....」

 

『礼を言う、騎士君。イゾルデ、永遠にこのままにしておくつもりはないが....しかるべき時がくるまでは、我慢してやる。』

 

「そうしてくれると助かるよ。目下重要なのは、君達の任務を引き続き遂行することだ。このタイミンクで水を差してしまったことは申し訳ないが....君の言葉が正しかったということだけは、伝えておきたかったんだ。命令に従うだけの軍人が必ずしも優れた軍人とは限らない。諸君、躊躇わずに進め。軍の圧力は、私の所で止める」

 

「さっ、時間は待ってくれないよ。ホロウは絶えず変化を続けてるんだから、これ以上ここにいたら、裂け目が消えちゃうかも」

 

『了解した、プロキシ君。オボルス小隊、引き続き前進だ!

 

「はっ!隊長!」

 

そう言い、俺たちは先へと進むことにしたのだった.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....この数年、君は幸運だったのだよ、『鬼火』....私よりも、遥かにな.....」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。