side タンザナイト
いま、目の前にメヴォラクの仮面を取ったイゾルデの姿がバッチリと目に映っている。
「防衛軍とポーセルメックス、そして讃頌会....成程、一見バラバラに見えていた点を繋ぐのはお前さんだったわけか」
『「イゾルデ....どうしてお前が、あのカルトどもの服を着ている....」』
(....ん?なんか、鬼火の声が.....)
『それは、もう察しているだろう?』
「っ!.....ストラス」
ストラスが鉄柵に腰をかけ、語り掛けてきた。
『この者は私達といわば手を組んでいると過言ではない』
「...『鬼火』、ロレンツと対峙していたとき....何故君は撃たなかった?」
「あなたは一体だれなの?防衛軍の大佐イゾルデと、讃頌会の司教メヴォラク、どっちが本物のあなたなの?
防衛軍があんたの指揮で動いてて、讃頌会はあんたの指揮で反響してた...差し手が一緒じゃ、決着がつかないのも無理もないね」
『だから、本拠地にあんな『盲点』が作れたんだろうな....何故だ。何故、こんなことを.....足止めでも、お前の目的は一体.....』
「察しが良いな、『パエトーン』、『蒼光の騎士』。君達にはこれまでずいぶん手を焼かされてきたが、きっと、それが私達の間の運命なのだろう。私の目的と言ったな?我が信徒たちは、君達に何も嘘をついていない....全ては『最後の牲祭』のため」
『「ならイゾルデ....衛非地区で起きた悲劇の一切は、まさかお前の仕業だと?」』
「悲劇だと?....まあそうとも言えるかもしれない。私が彼らの仇を討つために....あるいは、君が追い求めた『正義』のために、苦心して築き上げたこしは―――確かに....悲劇だった」
イゾルデの顔は涙が出そうなほどの悲しみの顔だった。
「なぜなら、私はとても悲しい思いをしたからだよ。流れるべき血と相対したとき、君の見せた弱さと....裏切りにな」
「裏切りって....!『鬼火』隊長だって、何年も軍の内部で調査を続けて来てんだから!そりゃあ、立場上横槍も色々あったろうけど....!」
「あの時、君は撃てたはずだ」
『「私はオブシディアン大隊の兵士だ。それが『敵』でないのなら、撃つことはできない。軍人という立場を差し引いても、新エリー都の法は、私的に制裁を加える権利を認めていないんだ。そして何より、私はオボルス小隊を預かる身――一個人の怨恨で、私について来てくれる者達を巻き込むわけにはいかないんだ」』
鬼火の声が、いつもの機械のボイスとは違く、生のある声でイゾルデに向き合っていた。
「そうか...本当にすまない。何故私は忘れていたのだろうね....?君の後ろには、もう....新たな絆ができあがっていたというのに。ならば私一人で追悼するとしよう、忘れ去られた、亡き魂たちのために。牲祭は間もなく始まる。君達も見届けたいというのなら歓迎しよう」
ふざけんなっ!んなもん、止める一択だろ!
「あいつを止めるぞ!」
すると、イゾルデの前に強力なミアズマの波動が現れ、術法を展開している師匠とオボルス小隊を押し返した....次に見た時には、そこにイゾルデたちはいなかった。
「イゾルデ大佐....どうして....こんな....」
『....』
「11年という歳月は、数多の変化をもたらすのに十分だ」
『共に歩んだ、か....』
『鬼火....』
鬼火が今のイゾルデを見て、自身の感情が追い付かないのか、寂しそうに呟く。
『最後にイゾルデと肩を並べたのはいつだ?どれくらい共に歩んでいなかった?』
「考えてみれば、私が『鬼火』隊長より年下とは限らん、故に説教は控えるが.....この私もそれなりに多く経験してきた身だ.....ただ、どんな理由であれ、かつての自分と道を違えるのは...残念なことだな」
『....行こう、イゾルデを止めるぞ!』
『....ああ』
そうして、俺たちはイゾルデの後を追い駆けるため、さらに奥へと駆けだした。
「ミアズマが集束する場所は、すぐ先だ」
「イゾルデ大佐もそこにおられますか?」
『ああ、きっと....そして、ストラス達も....』
『はじめてだな...誰かと向き合うことが、こうも難しいと感じるのは』
「『戦術マニュアル』にはこういったケースの対応策は載っていないのですか?」
『ねえだろ』
『お前というやつは....そんなものがあれば、どれほど良かったことか』
と、鬼火は呆れながらも、苦笑いした。
「『鬼火』、イゾルデが犯した罪というのは、到底許しがたいものだろう」
『ああ、わかってる。私はとっくに一人前の軍人だ、なめてもらっては困る。彼女が本当に、かつての自分を裏切ったのなら.....許しはしないさ』
鬼火のその眼は決意に満ちた眼だった.....そうして、イゾルデ達がいる最深部らしきところへ着くことができた!
「イゾルデ大佐!あなたは....重大な罪を犯したのであります!自分たちに従って、共にホロウを出て....審判を受けてください!」
「.....ひたむきで愚か....そこが昔の彼女のようだ」
『もうやめるんだ、イゾルデ.....ルクローは死んだし、ロレンツは黒枝が然るべき処罰を受けさせる....もうお前の復讐は終わったんだ』
「終わった?死んだ兵士たちは二度と帰ってこない。このまたは彼らに大きな借りがあるまま....何をもって償えると言うんだ?正直、『始まりの主』がどのような世界を見せてくれるのか、私には分からない....だが、せめて.....この失望に満ちた世界とは比べるべくもないもののはずだ」
『っ....イゾルデ』
「しかし、君の言う通り復讐は終わった。この世における私の末路も....ここからは....『終域』への門を叩く時だ」
「街を守る兵士と、悪の司教....どっちが本当のあなたなの?あなたはイゾルデさん....?それとも、メヴォラク...?」
「どちらも
『あいつらの仇を取ってやりたい気持ちは分かる。だが....何故よりにもよって、そんな邪道を選んだ?』
「なら何をもって復讐を遂げろと?情か?正義か?まさか愛などとは言わないだろう?頼れるのは、罪にまみれたこの手だけだ!」
『戻って来い、イゾルデ!彼らはもう戻ってこないんだ....この上でお前まで....失ったら、私は....』
「私だって、もう来る所まで来てしまったさ、『鬼火』。ありきたりな言葉や、胸を撃つようなセリフはもう役に立たない。本物の兵士らしく、銃と剣で決着をつけよう」
そう言うと、イゾルデの右手に、讃頌会のマークが禍々しく光る。
『っ!止めてみせる....ここで止めないと、今までのことが全部無駄になるっ!!』
「....甘ったれるな。いいか....復讐に帰路などない....」
すると、イゾルデの後ろに大量のミアズマ兵が現れる。
「作戦開始!」
スチャッ―――ドドドドドドッ!!
『!?』
イゾルデの合図と共に、ミアズマ兵が上目掛けて、撃った!―――すると、空がミアズマで覆われ、ホロウを飲み込もうとした。
「いけない!」
『隊形を維持!プロキシを守れ!』
『くっ....おらぁ!!』ブォンッ!!
急いで俺は槍の結晶を作り出し、空へ向かって勢いよく放つが....
ビキビキ....バキィィンッ!
『うげっ、マジかよ!』
「タンザナイトの中和攻撃でも効かないなんて.....」
「ふっ...
『!なんだ、その
『ほう....ついにそれを使う時が来たか』
すると、イゾルデが取り出した玉が空に作り出したミアズマに吸収される。
「もはや道は分かれた.....今さら戻れる物か!」ピキーンッ!!
ズォォォォォォオオオオオオオオオッ!!!
『うわぁぁぁ!?』
イゾルデが持っている玉が光だし、赤黒い何かか、イゾルデを中心に激しく渦巻いた。その影響で、俺たちは吹き飛ばされそうになった。
「す...すごいエーテル波動!?」
『なんなんだよ....一体....』
ヌッ―――ブォォァアアアアッ!!
渦巻きがはれると、そこには、建物があった場所が一変し、辺り一面湖のような神秘的な場所に早変わりになった!さらに、それだけではなく、イゾルデの姿もまた、別人のように変化していた。
「あれって!?」
「うわ~.....そっくり....」
「そんな、嘘でしょ....」
『....あれは――――オルペウス?』
「...えっ.....なんで.....」
その姿は今のオルペウスにそっくりで、違うところと言えば、色が漆黒のように赤黒く、腕や首などいたるところにどす黒い炎が纏っていたイゾルデの姿がいた。
『嫉妬、怨念、憤怒、過酷、殺意......その負の感情を薪とし、復讐と言うエネルギーで燃え続けるその姿.....』
『まさに狂獣.....仮に今の姿の名を冠するなら―――』
『君は―――滾る炎には程遠い.....その名が泣いているぞ!『鬼火』!!』
『――『アフリト』.....復讐に燃え続ける
ねじれポイント
イゾルデがバリバリ強化+仮面三人集が襲い掛かる
Q.つまり?
A.やばたにえん\(^o^)/
『アフリト』
冥き河の向こう側に燃え盛る凶焔は、復讐者の行く道を照らしきれない。神龕に呪いを刻んだ執念の狂徒は、ついに己が冒涜の報いを喰らった。
ホロウは高塔の下に集い、亡魂はエーテルから目覚める。具現した怨嗟は狂炎の力に凝り固まり、そこに信仰も正義もない。生まれ落ちたのは、怨みと狂気を貫く炎のみ。
血の臭いを放つ血痕が罪の地を覆い、やがてこの長き物語の終焉へと広がっていく。友に似た姿は彼女の心からの願いなのかもしれない...「結末が満ち足りぬものなら、せめてこの手で書き上げよう」。
――立ち上がるミアズマの大波の中、どこからともなく響く囁き