デッデデデンデン!
side タンザナイト
防衛軍の一件を片付いて数週間、いつものように出会ったアキラに挨拶する。
「おはよう、リン、タンザナイト」
『おはよう、アキラ。....なんかみんな集まっているな?』
そこには師匠や福福たちがいた。
「ああ。ちょいと断れない集まりがあってな....適当観を離れて、市内に行かなければならなくなった」
「断れないって....そんな大事な集まりなんだ?それに、みんな行っちゃうの?」
「ああ...お師さんの直弟子で、衛非地区で起きた一連の事件に関わった奴は、ひとり残らず行かなきゃならん...とはいえ、三人が入門したきっかけは、行きあがり上ってこともあるからな、免除でもいいだろうとなったんだ」
「それにお三方がいてくれたら、適当観の留守を安心してお任せできますからっ!」
「そういうわけで、出発前に大事な用を済ませるぞ。福福、茶を持て」
「はい、お師匠様!」
『....茶?』
そう言い、福福さんは茶を持ってこようと、その場から離れる。
「確かに、始まりは『名目上の』弟子だった。だが私たちはともに多くを経験し、お前さんの決意、能力、そして尽力は誰の目にも明らかだ。留守を任せる以上、どっちつかずな肩書はもうやめたい。そこで...どうだリン、タンザナイト、正式に雲嶽山の門下に入る気はないか?」
「もちろん、喜んで!」
『ああ、いいぜ!』
「よしよし、それが聞きたかった。ならここを発つ前に、入門の儀式を執り行うぞ」
『入門の儀式?.....もしかして、さっき福福さんに茶を頼まれたのになんか関係が?』
「さすがタンザナイト、察しがいいな」
すると、丁度福福さんが茶を二つ用意して持って来た。
「はい、お茶ですよ~!お弟子ちゃん、まずはこれをしっかり持っててください!それではお師匠さまのほうを向いて、丁寧にお辞儀をしながら、お茶を差し出してください!『師匠、お茶をどうぞ!』って」
福福さんがそう言い、俺達も言った通りの動作をする。
「『師匠、お茶をどうぞ!』」
「うむ」
師匠はお茶を受け取り、ゆっくりと一口飲んだ....
「....うむ。いいだろう」
「やったあ!やりましたよお弟子ちゃん!改めて、正式に雲嶽山へようこそっ!」
「ガハハ!いや~めでたいめでたい!まぁ今さらって感じだが、改めて歓迎するぞ!」
「え?儀式って....これだけで終わり?」
「本来は仕来りがある。雲嶽山で2年の修行を経たうえで、吉日に師と弟子が本山で誓いの儀式を執り行う....そうして初めて、正式に認められた修行者となれるんだ。だが、ここではいいだろう。お前さん達はこの儀玄が認めた弟子...それだけで十分だからな」
そう言うのに囚われない所は、さすが師匠だな。
「えへへ....実はですね....お師匠様ったらなが~い誓いの言葉が覚えられなかったんですよ!『こんなもの暗記するなら、いっそ....』」
「福福。妹弟子達に妙なことを吹き込むなよ」
まぁ確かに、前の奴は絶対長いだろうとは思ったが....
「あはは、何も聞いていないよ....そうだ!お兄ちゃんもタンザナイトも正式に入門できるんだよね?私達、3人そろって弟子入りしたわけだし....」
「ん?僕はもうお茶を飲んでもらったよ。そういえば、リン達はまだ寝ていたんだっけ」
『こいつ、いつのまに...!』
「と、言うことはだ....先に入門したのが僕だから、つまりは僕は正式に君達の兄弟子ということになるな」
「ええっ....私、姉弟子になるチャンスを逃しちゃったの!?....お兄ちゃん?私の目覚まし止めたでしょ!?今日はいつもより寝坊したなあって思ったけど....!」
と、アキラとリンのやり取りを見て、師匠が笑う。
「ふっ...これで憂いなく留守を任せられるな。福福、潘、伝えることがあるなら手短に済ませろ。ぼちぼちここを発つぞ」
「分かりましたお師匠さま!....はい、お弟子ちゃん、適当観の生活費です!」
そう言い、福福から生活費の入った袋を貰う。
「あと数日で電気代の集金が来ますから、忘れずお支払いしてくださいね!でないと、オシシちゃんが充電スタンドをつかえなくなっちゃいますからっ!電気代のことだけじゃなく、片付けないといけないことを全部リストにまとめておきました。後はその通り進めていけばいいですからねっ!」
『大姉弟子はやることが多いな....』
「まあ、私は大姉弟子ですからね~こういったことは本来、一番下の弟子にやらせないんですけど、この数日間だけ、あたしの代わりとして頑張ってください!」
「そういや、今まで瞬ちゃんがいちばん下の弟子だったな.....これで彼女も姉弟子になったわけか」
「瞬ちゃん」
聞いたことない名前が出てきたな。
「はい。実は、あなたがまだ会ってない姉弟子が一人いるんです。これまでは、彼女が一番下の弟子でした。でも最近は大事なようがあって、しばらく会えそうにはありません」
『どんな人だ?』
「一目見たら分かるような子です!えっとですね、ふわふわで大きな尻尾と、栗色のロングヘア、さらに可愛らしい赤い飾り紐をつけた女の子を見かけたら....その子がきっと瞬光ちゃんです、もし会ったら、すぐに姉弟子って呼んであげてくださいねっ!」
「うん、わかったよ!」
「なにを覚えたって?」
そのとき、怪談でいきなり出てくる幽霊のように、柚葉が会話に入り込んできた。
『うおっ!?....柚葉か、どうした?』
「おはよ!最近、奇々解々の商売が上手くいってて、品切れが多くって。だから輝磁の加工品を仕入れようと、オシシのとこに来たの。真斗も荷物持ちで呼んだんだけど....」
『あれ、その真斗は?』
「はあ....真斗は外で足止めされちゃったの。知り合いと誰かがもめてて仲裁に行くから先に行けって言われて」
揉め事?なんかあったんかな...
『そうか、じゃあ行ってみるよ』
「うん、ついでに真斗に伝言お願い!オシシが人を手配して、一緒に奇々解々まで材料を運んでくれるって言ってたから、こっちは気にはなくていいよって」
『わかったぜ』
そう言い、俺とリンは真斗が揉め事を仲裁している場所へ向かう。
すると、鉱夫とサラリーマンみたいな人が口論していた。
「どういうつもりだ!?こっちが先に見つけたんだぞ!立派な背広着てりゃ、横取りも許されんのかよ!」
「ふん....早い者勝ちだなんて、子供じゃあるまいし。聞いたことは無いか?チャンスを掴むのは、いつだって備えをしてたやつだってな」
「そうかいそうかい....じゃあ今から見せてやろうじゃねぇか、俺がこの拳で『チャンス』掴み取るところをな....!」
「よしやがれ、パウル。やっとこさ衛非地区が静かになってきたってのに、面倒を増やしてんじゃねぇよ」
「何度でも言うぞ、チャンスは平等に与えられてるんだ。競争がしたいなら、ポーセルメックスはいつでも相手になる。もちろん、
そう言い、サラリーマンの男は去って行った。
「かーっ、真斗のアニキ!見ましたかあのドヤ顔!俺、こんな屈辱初めてっすよ....!競争?上等だ、とことん付き合ってやろうじゃねえか!」
「落ち着けよ。前にも言ったろ、プロキシ抜きじゃこの件は無理だ」
「なあに、アニキはどんと構えといてください!俺がなんとかしてみせるんで!じゃ!」
そう言ってパウルと呼ばれた男は去って行った....死んだな、あいつ。
「おいパウル!ったく、後先考えねぇで突っ走りやがって....」
『どうした真斗、さっきそこでなんか揉めていたみたいだが...』
「押忍、しょうもねぇとこ見られちまったっスね....。実は最近オレら、ミアズマに覆われたエリアが後退してるってことに気が付いたんスよ....それで、前は立ち入り禁止だった『昔日の丘』ってとこに行けるようになったんだ」
『『昔日の丘』?』
「あそこはいま金鉱脈みたいなもんで...まだ手つかずの輝嶺石が山ほど埋まってるうえに、バカでけぇ施設の廃墟を見たってやつもいました。だから、みんなで一回ちゃんと準備してから探索を....と思った矢先に、ポーセルメックスのやつらに先を越されちまったんス。連中、大金バラ舞この辺のプロキシとホロウレイダーを根こそぎ雇っちまいやがった。このままじゃ、やつらがTOPSの工業に輝嶺石を運び込むとこを、指くわえて見てるだけ....ってことになっちまう」
そりゃ確かにパウルっていう人が起こるのも納得だな....と俺はうなずく。
「確かに、聞いてるだけでイラッっとくるね....」
「パウルの気持ちもわかるし、自分だって腹に据えかねてます....けどオレらがカネで
『いや....いるだろ』
「えっ?何処に?」
『ここに』
そう言って、リンと俺を指す。
「―――あっ!そ、そうだったスね!リンちゃんも腕のいいプロキシだし、タンザナイトさんは企業を持ってるし!すんません、いっちょ頼まれちゃくれないスか!」
「話はわかったよ!ホロウに行きたいなら、いつでも声をかけてくれていいから。私達、晴れて雲嶽山の正式な弟子になったんだ~記念すべき最初の修行って感じだね」
『よーし気合いれるか!』
「押忍!じゃあ決まりっスね。自分は準備がてら、パウルに無茶すんなって連絡しとくんで。そうだな...ついでに
「『あのコ?』」
「怪啖屋で知り合ったネッ友なんス。訳あってわざわざ澄輝坪まで来てくれてて、ちょっと...変わった子っつーか。とっつきにくいわけじゃねぇんスけど....特に、タンザナイトさんを見せると色々やばいと言うか......とにかく、ジブンの準備が済んだら出発しましょ」
ん?ちょっと待って、今最後らへんなんつった!?色々って何!?
「じゃあ私達も適当観に戻って、お兄ちゃんと準備してくるね」
「押忍!そんじゃ奇々解々の前で、集合よろしくお願いします!」
そう言い、最後らへんの言葉が気がかりになるが、一旦適当観に戻って準備をすることとなった。