side タンザナイト
俺は二人に、さっきの情報と盤岳先生の連絡に応答がないことを伝える。
「うーん、もしかしたら盤岳先生がもうホロウの中にいるなら、みんなが閉じ込められたって話も聞いてるのかな」
『その可能性もあるか...』
「そうだね。リンとタンザナイトは先に瞬光先輩とホロウへ入ってくれ。H.D.Dの調整は僕が今すぐ済ませるよ」
『わかった。よし、早速いこうか!』
そうして、俺たちは鉱区跡地へ入っていったが....そこにはいたるところに
「ええっ、ホロウの中で...花がこんなに咲いてる?」
『この花、前にどっかで見たな....ミアズマの侵蝕もあんまり受けていないみたいだな....』
「確か、貫さんがラマニアンのミアズマが『引き潮』みたいになってるって言ってたけど....これもその前触れなのかな?一度ミアズマに覆われた場所でも、生命の痕跡が見られるようになってきたし....」
「そういうこと...?なんかこの白い花、ずいぶん前にどこかで見たことあるような....どこだったかな....?ううん、そんなことより人助けだよね。このままどんどん奥へ行こ!」
『ああ』
そう言って先へ進むと、助けの呼ぶ声がきこえた。
「た、助けてくれぇ!?」
「助けを呼ぶ声が...あっち!」
そこにはスーツの男が孵化した卵のようなものを纏うエーテリアス『ハスクロン』に襲われている場面だった。
『っ....?』
「助けてくれ!」
「かしこまり!ただいま対応中でーす!」
ズドン!!
『!!』
すると、空から巨大な足が飛び出してきて、ハスクロンを一体倒す....そこに立っていたのは照さんとこの『ダイアリン』だった。
「よっと!」
「?...っ!?」ガシッ!
今度は巨大な手が出て来て、スーツの男を掴み、遠くへ放り投げる。
「それー」
『うおっと』ギュォォォ――
「おうっ!?」
俺は急いで引き寄せる空間でスーツの男を捕まえる。
「ふっ...はっ!」シュッ――ババッ!
『うわ、すげぇ』
「カンフーみたい...!」
ダイアリンはフラフープなようなものを巧みに使い、ハスクロンを一体ずつ退治していく。
「ふぅ...あ、お客様~ぜひ『星5評価』と『過去のクレーム・低評価の削除』をお忘れなく!さもないと....ふふん★」キランッ
『.....』
捕まえたスーツの男の方へ近づき、なんか脅し臭い言葉を言う....
そのあと、スーツの男を卸したあと、高圧的なセリフを言う。
「お、おい...本当に、俺を安全に送り届けてくれるんだろうな...?今回の査定がどれだけ大事か分かってるのか?もしこのまま俺が『作業再開に向けた安全性分析』のレポートを提出できなかったら―――」
「はいはい、大丈夫ですから黙っててもらっていいですか~?まったく羨ましくなる鈍感っぷりですねぇ。これだけやらかしといて、ちっとも気づいてないんですから....あとで適当におべっか使ってればなんとかなるなんて....まさか思ってませんよね?」
「やらかした?...どういう意味だ....?」
「はぁ~~。報連相のできないダメ人間のお説教なんて、今日のお仕事には無かったんですけどね?おたくにクレームが入ったと聞いたので対応に来てみたら、こんな危ないところに逃げ込むなんて」
なんか、すっごく毒を吐くなこの人....
「まぁ、とはいえ?あらゆるクレームに対して最も迅速かつ効率的な解決策を見つけること...それがあたしたち『TOPS部署横断型カスタマーサポート』の目指すところですからね。あんたの知能は未就学児レベルですから、ぜひあたしのことは知育教材かなんかだと思ってください。ご希望なら、音が出るおもちゃみたにホロウを案内してあげますよ!」
「お、お前....!」
『はいはいストップストップ.....話進まねぇから。とりあえずまた会ったな、ダイアリン。あと、部署横断型カスタマーサポートってなんだ?たしかお前黒枝の―――』
「しー!」
『ワプ』
急にダイアリンは俺の口を塞ぐ。
「....生きていくのって大変ですよね?人生も仕事も、選択肢が多いに越したことはないじゃないですか....その様子だと、そちらも野次馬ですか?」
『....いや、俺らはここに閉じ込められた人たちを助けに来たんだ。ダイアリンもそうだったりするのか?』
「私はただ....クレーム対応のためにこんなところまで派遣された、不幸なオペレーターってだけなんですけど....でもまぁ知らない仲でもないですし、喜んでお手伝いしましょう!その代わり、帰ったらあたしに高評価をつけて、今日のノルマに貢献してくださいね!」
高評価についてはよくわからんが....そんなこと食っちゃべっていると、エーテリアスが現れる。
「っと....引き受けたそばからなんか来ちゃいましたね。あたしの口ったら、いつだって災いの元なんですから」
救助された人を先に避難させ、襲い掛かってくるエーテリアスを倒す。
『ここはいっちょ決めるか!―――『
「うわっ!でかっ!」
「なっ!?」
『ふんっ!』ブォンッ!
空間のゆがみで巨大化した手で襲い来るエーテリアス達を押しつぶした。
「なっなっなっ....な~にをやちゃってるんですか!?そんなことしたらあたしのアイデンティティが失っちゃうじゃないですか!どうしてくれんですか!訴えちゃうレベルですよ!」ポカポカ
『いていていて....別にいいだろ。巨大化だけじゃなく縮小化できる空間だってできるんだから』
「あたしの上位互換じゃないですか!!エーテリアスのくせに生意気ですよ!!」ポカポカ
「えーっと....早く避難した人のところへいこう?」
そう言い、子供のように駄々こねるダイアリンを無視しつつ、スーツの男のところへ戻る。
「ああ、本当に参った...お前達、救助に来たんだろう?まずは俺を安全な所まで連れて行ってくれ!」
『他の人達は?』
「し、知るか、そんなこと!とにかく、早くここから出してくれ!痛い、全身が痛いんだ、ああ――」
「作業再開に向けて調査を始めたのは、あんたですよねぇ?参加人数を知らないなんてこと、あり得ます?あんたの迎えはもう手配済みです。これ以上ズルしようっていうんなら....あたしが残した座標が正しいって保証はしかねますけど?」
「...あ...あと、鉱員が一人と、若い男が一人だ...」
『よし、引き続き進もう!』
そう言い、スーツの男は手配の人に任せ、俺たちは奥へ進み始める。すると、そこには鉱員の男が立っていた。
「うわっ!え、エーテリアス!?」
『落ち着け、味方だ。助けに来た。』
「お、俺たちを助けに....?そ、そうか、俺は平気だ。大した怪我はしてないが....あの若者を早く助けてあげてくれ!」
『若者?どこに...』
「あそこだ!下を見ればすぐわかる....」
そう言い下を見ると、確かにそこに道場の制服を着た人がいた。
「彼は盤岳先生の道場の生徒なんだ。熱心に案内してくれたうえに、ずっと俺たちの安全を守ってくれてたんだよ。彼は俺を助けようとして、この崖下に閉じ込められたんだ!下はミアズマがかなり濃いから、俺も下りるに下りれなくて....ここで待つことしかできなかった....」
『任せろ!俺が何とかするから!―――『
「おわっ!?」
「わぁ!い、いきなりタンザナイトの横に裂け目が...!しかもそこから道場の人も!」
俺は『亜空間』で下にいる道場の生徒をここまで引っ張り上げる。
「う...うう....」
『大丈夫か?』
「うぇ!....あ、ああ、大丈夫だ。すこしミアズマに侵蝕していたから...すまない、ありがとう」
『ならよかった....うん?』
すると、突然讃頌会の人とサクリファイスが現れた....サクリファイスだと!奴らは全滅したはずじゃ....
『とりあえず....お前ら二人は安全な場所へ!ここからは俺たちが行く!』
「うん、まかせたよ!」
そう言い、襲ってきたサクリファイス達は3人で倒すことに成功した。幸い、1人しかいなく、そこまでの数じゃなかったので数分もかからず早く終わった。
「讃頌会、ですか?防衛軍が一網打尽にしたって聞きましたけど、まだ生き残りがいたんですねー。よくないですよねぇ、いい加減なお仕事って。あたしが思ってるよりずっと、ここは穏やかな場所みたいです」
「そこのアナタ!早く白状しなさいよ!ここで何をしようとしてたの?」
「フッ、何を...まだ小童ではないか―――」
ズドンッ!!
『時間がない、早く、言え、簡潔に』
「アッハイ....」
「早っ....もうちょっと意地とか見せないんですか?」
俺は讃頌会の残党に顔スレスレに『
そうして、残党はやけくそ気味に話し始める。
「―――もううんざりなんだ....こんな風におびえながら生きるのは!なのにサラ様ときたら、突然思い付いたように『古の陣』なんてものを探せと命じてくるし....」
やっぱ
『古の陣?なにそれ?』
「この際だから正直に言うが....自分もさっぱりなんだ!我々はもう探し始めて何日にもなるが、五里霧中としか言いようがない状況だ。サラ様のご指示はただ一つ....『100年以上の時を経ていて、なおかつその場にふさわしくないもの』を見つけた暁には報告しろと....もはやサラ様自身でも、何を探していらっしゃるのか分からないんじゃないか...?」
凄い無茶ぶりだな....それ....確かにサラ自身もよくわかってないものだな....
「はぁ、なんてことだ...讃頌会に入れば、こんな人生でも上向くと思ったのに。入信してまもない内に元の司教様はいなくなり、今はただあらゆるものに怯え、逃げまわってるだけだ....防衛軍に引き渡された方がましかもしれない!こんなのは...もうたくさんだ!」
『あー...そこまでやけにならなくてもいいんばゃねぇか?その....お前がやる気があるなら、後で真っ当な道を一から作り直せるが....』
「一からやり直す....か。サラ様のおかげで
『...え?』
今なんて言った?サクリファイスを...戻した!?
『ちょっと待て、どういうことだ?』
「これもまた不思議な話なんだが....メヴォラク様が堕ちてしまわれた後、始まりの主は、サラ様に偉大な力を授けられたようなんだ....自分は、この目で、サラ様がサクリファイスたちを人間に戻すところを見た...それも、
(俺と同じ.....サクリファイスを人間に戻す力.....)
(前に幻の中で釈淵さんは、サラが悪夢を取り除いてくれたって言ったけど....それも同じ力の仕業なのかな...?それにしても、その力....まるでタンザナイトがイゾルデやブリンガーを人間に戻したのにそっくり....)
「あまりに深遠すぎて、自分のような存在には到底理解ができないよ。始まりの主の権威を継承してからというもの、サラ様の行動は、ますます奇妙になっていった。もはやあのお方と行動を共にしているのも、あの
「ん?他にも誰かいるの?」
あっやべっ!多分釈淵のことだ!と、とりあえず話題転換しないと....
『あーオホンオホン....そ、そういえばそろそろあの人たちの方へ向かおうか。いつまでもここに留まるつもりもないし...』
[マスターの心拍数が1分間に140回まで急上昇したことを検知。これは『現行犯逮捕』に匹敵するレベルの緊急状態ですまた、脳波が『緊急で話題を変える』領域おいて非常に活性化して―――]
『フンッ』ブッ――
俺はとっさに『Fairy』が入ってるスマホを切る。
「タンザナイト...?」
『はい、ほら、あいつの話を聞かないといけないし、行こ!』
「え、ええ?あ、じゃあこの人は術法で縛っとくね」
そう言い、俺は強引に話を切って、道場の生徒のほうへ向かう.....
「皆さん、助けてくれてありがとう!僕は
「オペレーター番号2493、カスタマーサポートの『DiaLyn』です!ご丁寧にどうもどうも!どうしても感謝の気持ちを伝えたい場合は、TOPS公式サイト右下の『お問い合わせ』からメールで送って頂けると助かります~!タイトルは...そうですね、あんまり大げさだと、システムに弾かれちゃうので....『感謝状:部署横断型カスタマーサポートセンター、オペレーター番号2493の誠実な対応について』...なんてどうですか?」
「...ええと....」
と、寧謙が困惑気味に引いていたので、俺が話に入って仕切った。
『あ~気にしないで、TOPSで働いてる、ちょっとユーモアな人だから....で、俺はタンザナイト雲嶽山の弟子をやってて、今は適当観で修行してる。それでこっちは、同じく雲嶽山の弟子リンと友達の瞬光さん....光ちゃんって呼んでやってくれ』
「そうそう、それとこの子は助手のイアス。ここでミアズマに閉じ込められた人がいるって聞いて、みんなで助けに来たの」
「そうか...この始まりは、僕がいる道場の師範に、助けを求めてきた鉱員がいたんだ。この辺りで大事なものを回収したいから、用心棒を探しているということだった。ただ折悪しく、あの時は師範が用事から戻られていなくてな....ボクもそれなりに稽古してきた自負があったから、代わりに行くと申し出たんだ」
『...で、この状況と』
「恥ずかしい限りです.....ミアズマを甘くみていたよ。鉱員たちとはぐれてしまっただけでなく、僕がこんな所に閉じ込められてしまった」
「道場の師範って...もしかして、盤岳先生のこと?」
「...いかにも。皆さんも師範のことを?」
「私達、みんな盤岳先生とは何かと縁があるの。この前だって、私と友達がトラブルに遭った時、凄く助けになってくれたし...あの人の教え子が困ってるなら、こりは恩返しのチャンスかなって」
「そうか、それはまさに縁だな....」
『....ん?』
何かを感じ取って振り向くと、そこにはエーテリアス達が現れ始めた。
「またですか...しつこい奴。カスタマーサポートにとって、おサボりタイムは貴重なんですよっ!」
『フッ...行くぞ!』バッ
戦闘態勢に入った俺たちは次々に襲い来るエーテリアス達を倒し始める。
『『
「まとめて解決です!」
「たぁ!!」ズバッ
「ふふん。こっちですよ―――!?」
『?』
するとダイアリンが何か頭を押さえる。
「っ!」
『Guoooo!!』スッ
『っ!ダイアリン!!』バッ
動かないダイアリンにエーテリアスが攻撃しようとするのを見かけ、急いで向かい、技を放つ。
「っ...しまっ―――」
『『爆戦 グングニル』!!』ドォォォンッ!!
『っ!』
カッ―――ビュドォォォォンッ!!
飛ばした槍をエーテリアスに当て、そのまま吹っ飛び爆散した。
『ふぅ...』
『Gya!!』バッ
『.....っ』スッ
後ろから襲ってきたエーテリアスを次の武器で生成して返り討ちにしようとした瞬間....
ガッ!!
『っ!?』
『!....玉?』
エーテリアスの腹に金色の玉が打ち込まれ、その瞬間、6個の玉がどこからか射出され、そのまま回転しながらエーテリアスは吹っ飛ぶ。
『っ!?....あれは....』
「助かった.....盤岳師範!!」
「むんっ.....」ドンッ!
そこには堂々たる機械仕掛けの獅子が構えをとっていた.....
ヤバいなどんどんタンザナイトと『始まりの主』の関係性の謎が深くなってきてる....