マジか.....
side タンザナイト
盤岳先生が後から現れ、残りのエーテリアス達を吹っ飛ばした後、盤岳先生は皆に声を掛ける。
「皆のもの、無事か?」
「師範....」
「盤岳先生、来てくれてありがとう!先生が来てくれたらもう百人力だね!」
「ど、どうもどうも~。助けていただきありがとうございます」
「ダイアリン殿、先ほどから何やら落ち着かぬ様子....いかがいたした?」
そういえば、何か痛み出していたが.....
「....何も?ちょっと気が散ってただけです」
『本当か...?』
「すみません、師範....!僕が軽率でした。己の力量を見誤り、人々を助けられるなどと....」
「繰り返さぬよう励むことだ。明朝、三百の打ち込みを課す」
「はい、師範!」
「寧謙よ、我輩は言ったな。『己を守れぬ拳なら、他者に託そうとて同じこと』―――慈悲深き心とは、また拳の如く堅固であらねばならぬ。力及ばぬ身で差し伸べた手は、ときに更なる災いをもたらしうるのだ。おぬしのそれが、溺れる者たちにとっての石となったこと....しかと心に刻むがよい」
「心に刻みます。道場に戻りしだい、鍛錬に励む所存です」
(盤岳先生って、普段は謙虚で優しいけど、教え子にはちゃんと厳しく指導するんだな....そういう意味では師匠と違うんだな....)
と、心の中で盤岳先生を尊敬していると、瞬光さんが話しかける。
「盤岳先生....えっと、私のこと...覚えてる?」
「うむ、葉瞬光、おぬしのことは、駆け付けた当初より気づいていた。だが如何に感慨深けれど、敵を前にして、気を緩めてはならぬ」
「『敵に臨むは、両の手で水を湛えるに同じ。たとえ一分の隙も、すべてを失うには十分と心得よ』でしょ?盤岳先生!相手の実力とかは関係なしに、向き合うときは常に全力....私とお兄ちゃんが小さい頃、そう教えてくれたよね」
「うむ。あれからもう随分になる。背丈こそ伸びたようだが....おぬしの心は昔日のまま、変わらず澄み切っているようだ」
『もしかして、瞬光さんは盤岳先生の弟子だったのか?』
と、親し気に話す二人を見た俺は純粋な疑問をぶつける。
「...吾輩はおよそ師などと呼べるものではなかった。ただ、釈淵と瞬光には、武術の基礎を教えたにすぎん....それも、二人が儀玄のもとに弟子入りするまでのこと。今もささやかな道場にて、人々に技の手ほどなどしているが....それだけだ」
「謙遜しすぎだよ先生、だって...!」
「おお、瞬光先生は今、儀玄宗主のもとに?彼女を戴く雲嶽山には、才のある者が集うと聞く...尊敬のかぎりだ!」
「雲嶽山ですかぁ...実は、一緒に戦ってた時からきになってたんですよ。面白そうなもの背負ってるなぁって雲嶽山の葉瞬光さん....もしかしなくても、そのおっきな鞘に封印されてるのって...かの有名な『青溟剣』だったりしませんか?」
「.....」
『!?』
『青溟剣』だって!?確かそれ、強大な力を出せる代わりに、どっかの鎖使いの使う能力の並にやばい代償がでるってあの....!?
『そしたら瞬光さんは...!』
「ど、どうしたの?急にそんな目で私をみて....」
『師匠から『青溟剣』の代償を聞いてたから....結構戦ってたけど大丈夫なのか!?』
「いやいや、落ち着いてって!ほら見てよ?私はなんともないでしょ?師匠ったら、青溟剣の怖い話だけして、剣棺のことは言わなかったんだ」
剣...棺?なんだそれは....
「心配しないで。この大きな鞘はね、師匠の長年の研究成果なの。青溟剣にまつわる恐ろしい『代償』をシャットアウトしてくれるんだから。身を守るだけならこの剣棺そのものを操るだけでいいし、封印を破って剣を抜かない限りは、何の問題もないよ!」
『...ほんとに?』
「本当に本当!ほら、信じられないなら盤岳先生にも聞いてみて!」
と、瞬光さんがそう言ってきたので疑心暗鬼で盤岳先生に聞いてみる....
「うむ....確かに、儀玄はそのように申していた」
『―――そっかぁ.....』
その言葉を聞いてようやく俺は、瞬光さんの心配を解いた。
「とはいえ瞬光よ、用心を怠ってはならぬぞ」
「大丈夫大丈夫、先生も安心してよね。師匠が私を何べんも山籠もりさせたのは、この剣棺の効果を確かなものにするためだから。そうじゃなかったら、こんな風に飛んだり跳ねたりできなかったって。あ、そうそう...みんなには申し訳ないんだけど....私が衛非地区にいること、できれば他の人には内緒にしてもらえる?」
「ふむ?よもやおぬし、許しなく山を下りたのではあるまいな...?」
「....えーと、そう。でもはら、あんまりここで長々話してるわけにはいかないし、まずは外に出てから説明させてよ!」
すると、ダイアリンが突然入ってくる。
「あーっとすいませんお話し中...サボりついでに感動の再開に立ち会えたのはうれしかったんですが、あたしのお目付け役がこっちに向ってるみたいです。あんまり部外者がいてもあれですし、まだやらなきゃいけないことがあるので、お先に失礼しますね~」
『おうそうか。ダイアリン、今日はありがとうな!おかげですごく助かったぜ』
「いえいえ!こちらとしても、そうそうたる顔ぶれに恩が売れてほくほくですから!ではでは!高評価っ、わすれないでくださいね~!」
そう言って、ダイアリンは道の向こうへ消えて行った....
『さて、救助した人も終わったし...帰るか』
「うむ、我輩たちも早くここを帰還としよう」
そう言い、俺たちはこの場からでたのだった....
NOside
タンザナイト達が帰った後、ダイアリンは意味ありげな笑みを浮かべながら引き返してきた....そこに照が待っていたかのように立っていたのだった。
「どうだったダイアちゃん?
「えへへ、いい人に見えてましたか?点数稼ぎのついでに、新しいお友達をちょっと手伝ってあげただけですよ」
「もう、すっかり夢中なんだから....同僚として忠告しておくけど、任務を忘れちゃだめだよお」
「ふーむ、任務ですか...それは
「ダイアちゃん?黒枝の裁決官なら....誰の意思に従うかなんて、考えるまでもないよねぇ?」
「冗談ですってば。まったく照ちゃん先輩は手厳しいんですから。『あれ』はちゃんと回収してみせますよ。それで?手厳しい優しい先輩はお手伝いに来てくれたんですか?」
「そう思うの?でもザオちゃん、タダで働いたりはしないからね。ボスだってザオちゃんのやり方を認めてくれてるんだもん、同僚だからって特別扱いしないよお」
「ほんっと照ちゃん先輩って『肉食系ウサちゃん』を地で言ってますよねぇ...でも安心してください。それを知ってて借りを作るほど、あたしもパーじゃないですから」
「ふふん、わかってるならよし。でも万が一失敗したら、さのときはちゃあんと
「もうターゲットは目時なの先です、みすみす逃したりなんてしませんよ。ただ....動くにはまだちょっと早いってだけなんで」
「早い?ザオちゃんも彼の記録は見たけど、あれは間違いなく『パージユニット・ゼロ』...
その言葉にダイアリンの笑みが消えた。
真っ赤な記憶が心中に滲み出し、冷たい観察者の視点へと変わっていく―――
そして、記録の暗がりから意識が浮かび上がり、再び目を開いたダイアリンの瞳は―――いつも通りだった。
「安心してください、先輩が取ってきてくれた情報は正確そのものですよ。ただ、確認を要する面倒事が一つ増えちゃったんですよね~」
「面倒事お?」
「照ちゃん先輩は聞いてないですか?さっきのホロウの中で、なんか...変な声がしたのを」
「...『ホロウの中で死んじゃった人の声がする』ってやつ?ダイアちゃんの十八番だし、黒枝の情報網に貢献してるってことは否定しないけど....ボスの『有能ならなんでもOK』って人事も、たまに考えものだよねぇ。黒枝にとっていいことならザオちゃんは何も言わないよ?でも、こうやって死者の声マウントされちゃうとねぇ~」
「違いますって!まったく傷つきますねぇ、あたしはこんなに照ちゃん先輩が大好きなのに。...死者の声じゃないですよ。
「....自分の声?」
「はい。だから
「あのねえダイアちゃん...任務中だよお?つまんない冗談言ってる場合じゃないんだから。事情はわかったけど、だからって任務の最終工程は疎かにしないでね?一応今の話は、ザオちゃんも気に留めとくから」
「もっちろんですよ!そうそう、あたしが助けたポーセルメックスのアホですけど....どうします、彼?」
「うーん。ダイアちゃんがタイミングよく登場できたのぱあのお馬鹿さんのお陰だけどねぇ....ああいう抜け駆けするタイプの子って、ただの不確定要素しかないから。ザオちゃん、そういうのが何よりキライなんだよねぇ」
そう言い、二人はこの場から離れる...その時ホロウに咲いていた花が何かを溜めるような