side タンザナイト
適当観へ戻ってきた俺たちは早速、古書を解読するのだが.....めっちゃ文字化けしてる箇所があった。
取り敢えず全部読んで、みんなでこれまでの出来事を整理する....
「古書の内容のうち、判読できない部分を除けば....サラと釈淵さんがここに記された『陣法』なるものを調べていたのは確実だ。サラの追い求めている『始まりの主』と関係があって、『謁見』とやらには欠かせないもののようだ」
「でも、肝心な陣法の効果は『ミアズマを吸収すること』...なんだよね?今まで人の命なんて何とも思っていなかった讃頌会と、その神様にしてはなんからしくないよね?」
「サラはその陣法が鉱区跡地にあると考え、残党を動員して探させている...瞬光先生、かつてあそこで暮らしていたなら、何か心当たりはないだろうか?」
「ごめん....私があの頃からしっかりしてたら....それかもっと、お兄ちゃんと話せてたら....」
「よさぬか。我輩もこの幾年、ホロウの深くに異変を感じ探索を試みてきたが...だが、いずれも徒労に終わった。とはいえ案ずるな。見つからぬのなら、何度でも赴くまでのこと。おぬしらはただ知らせを持つがよい」
「ちょ、ちょっと待ってください!このままホロウに突っ込んだところで、砂漠でコンタクトを探すようなもんですよ!」
と、ダイアリンは止める。うーん....何か方法はないものか....
「瞬光ちゃん、10年前の鉱区跡地を生き延びた誰かで、最近もまだ連絡を取り合ってる人っていません?」
「当時の人達に話を聞いてみるってことよね?確かに、私は小さかったから何も覚えてないけど、誰かしら覚えている人がまだいるかも....ただ私自身、雲嶽山に入門して、青溟剣を継承してからは俗世と関わりも減っちゃって...それを、過去と向き合わない言い訳にしてたとこもあるし」
[マスター、鉱区跡地の生存者名簿を確認いたしました。当時の生存者は現在、ほとんどが泅瓏囲エリアで生活しているようです]
おお、ナイスだ『Fairy』!!さすが仕事が早い!
『よし、なら早速行ってみて聞いてみよう!陣法のことも何か知ってるかもしれないし』
「泅瓏囲か...あそこなら僕も多少は土地勘がある。とはいえ人が少ないわけじゃないし、団子になって動いても効率は悪そうだ。いっそ手分けするのは?時間が惜しいし、僕は先に行こう。皆さんは準備が整ったら来てくれ」
「...よかろう」
そう言い、調べた住所と共に、一同はそれぞれ動き出す。
『ふぅむ...さてと、どっから聞こうかな....ん?』
すると、どこかで見たことがある人物が目にした....あ、思い出した。あの時寧謙を助けてほしいって言っていた鉱夫か!
「あ、あの時の...!僕を助けてくれた人...人?じゃないか!」
『おお、あの時以来だな。元気?』
「おかげ様でだいぶ良くなったよ!お前とその友達のおかげさ。どうお礼をしたものか思ってたんだが、まさかそっちからきてくれるとはな」
『いや、いいさ無事で何よりだ...ただ、ちょっと聞きたいことがあってだな....』
「なんだ?俺が知ってることなら全部話すよ。なんでも聞いてくれ!」
俺は、陣や神について話すと、何やら飽きたような顔つきをした。
「陣?神?またそれか....」
『また?ということは誰か聞きに来た人がいたのか?』
「あー、実は昔、親父からチラッと聞いたことがあるんだ。ここ数十年、ちょくちょく他所の人間が来ててな....引っ越しきて間もないってのに、鉱区の深部に入り込むのもいた。そういう人らはベテラン鉱員に会っては、大昔の話を尋ねるんだ。それが確か...何とかの『陣』とかなんとか....」
(『古の陣』か....)『それで...何か見つかったのか?』
「さあな。ただ覚えているのは、物腰柔らかい男の人と、いつも微笑んでいる女の人と、怪しいフクロウ?の仮面をつけた人のことで.....親父の病気も診てくれたし、いい人たちだったよ。そういえば、『解決の糸口が見えてきた』とか言ってたっけ....その後は....まぁ、例のことが起きたわけだ.....あの人たちが探してた解決策も、多分ダメだったんだろう」
『えっ何故?』
「だって解決策があったなら...
『....何かほかにないか?どんな些細なことでもいいが....』
そう言うと、鉱夫は少し考え、あっと何か思い出した。
「些細なことか...そういえば、最近思い出したことがあるな」
『お、どんなことだ?』
「前に俺がホロウに入ったのは...まぁ郷愁の念にかられてってやつだったんだ。結局着く前に閉じ込められたんだが....
白い花...そういえば、俺たちが向かった先でもなんか咲いていたな....
「みんなあの白い花はミアズマが引く吉兆に違いないとか言ってるよ。それでなんとなく思い出したんだが、十年前、鉱区に住んでた頃、
『そうなの?』
「ああ、花の周りは綺麗で、ミアズマの気配なんてなかった。あの頃は親に叱られると決まって、白い花のそばに隠れたもんだ。興味もあったが、
『そうか...ありがとな。おかげで少しわかってきたよ』
「そうか―――そういえば、偶然かもしれないが、実は...いや、あー....」
『?....どうした』
「いや、恩人だし全部話すって言ったしな。もう言っていいか。最近、お前以外にもあの陣について聞いてきたやつがいたんだ」
『!?』
「若い男で、このことについてはもう誰にも話すなって多額の口止め料を渡してきた。かなり危ないことに絡んでて、これ以上踏み込まれないようにって」
若い男....もしかして釈淵か?そう思い、俺はその人物について聞いてみる。
『どんな人だったか覚えてるか?』
「うーん....黒ずくめで背が高い瘦せ型って感じだったよ。なんか...何て言えばいいのか、オーラがあったな。でも、口調は丁寧だし気前も良かった。お前が命の恩人じゃなきゃ、俺も喋ったりしなかったさ」
(見た目的に釈淵じゃないか....)『そうか....わかった。お前も元気でいろよ』
この後、リン達も合流して、一旦適当観へ戻ろうとしたが....何やらひそひそと声がする。
「見ろ...本当にあの鉄屑だぞ....」ヒソヒソ....
「舒ちゃんも目も節穴ね。あんな奴をホロウから連れ帰って、人間扱いするなんて....」ヒソヒソ....
「あんなによくしてくれたあの子を見殺しにして....殺戮兵器だって噂も、きっと本当だろうよ。機械の心に温かみなんてないのさ!」ヒソヒソ....
『.....』
と、なんだか盤岳先生を化け物のような目で見ている人々に若干の苛立ちを籠りつつ、盤岳先生にそのことを聞いてみる。
『...なぁ、盤岳先生....今のは....』
「...我輩はかつて、大罪を犯した。揺るがない証もあり、弁明の余地もない。あの者が抱く怨嗟も....果てなき憎悪も....すべては我輩が受けるべき報い、逃げはせぬ。いつの日か、おぬしにもその仔細を語ろう」
『.....』
そうして、俺たちは盤岳先生と一緒に、適当観へ戻った....
『....なぁ盤岳先生、さっきは....』
「すまぬ...突然の訪いで騒がせた。これは我輩の過ち、おぬしたちが気に病むことはない。言の葉にしてその辛苦が和らぐのであらば....我輩が受け止めるのが必定」
「そっか...わかったよ。あんまり詮索しないでおくね。もし話してもいいって時が来たら、いつでも聞くからね」
『俺も。辛かったら言ってくれよ』
「...かたじけない」
盤岳先生は感謝の眼差しを向け、それ以上は何も言わなかった。その後、みんなが続々と戻ってきて、得られた情報をまとめる....
「なるほど、当時ミアズマの大量発生が起こる直前、僕達が見たのと同じ白い花が咲いていた....瞬光の直感は正しいと思う。再び現れた白い花は、何かの前兆とみて間違いない。それに、例の陣法のことも繰り返し話に出てきたね。生存者にも覚えている人がいるのなら、実在してる可能性が高まったとみていいだろう」
「ですね、サラの探してる動機が『一日一善』のためかはさておき....当時鉱区跡地にあったっていう居住区には、とりあえず行ってみないと」
「...うむ」
『瞬光さん、それでいいか?』
「うん、私は平気。手がかりがこうして私達を導いてくれたんだもん、きっと、向き合う時が来たのよね」
『よし....なら、決まりだな!準備ができ次第行くぞ!』
こうして、俺たちは鉱区跡地の奥へと進むことにしたのだった....
―――
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[ルート設定、完了。目的地――鉱区跡地・居住区]
『Fairy』にいつもの仕事を済ませ、先へ進む。その途中、瞬光さんが詠唱を唱える練習をしていた。
...なんか上手く行っていないような感じだが....
「ちゃんと唱えられましたか?我らが瞬光ちゃんはスランプですねぇ....まさかとは思いますが、ゆうべは悪いことしたりしてないですよね?寝てる間に呪文がよだれと一緒に出ちゃった可能性もありますよ?」
「えーっと...次は確か『生々流転...』だっけ?いや、待ってね...えっと....えっーと....はぁ....変なの....」
『瞬光さん...顔色が良くないぜ。ちょっと休む?』
「....いいのいいの!その...ちょっと気が散ってただけよ!多分...どこか懐かしいのに、でも馴染みがないこの道のせい。なんかイマイチ集中できなくて....」
「むう....であれば、徒に急ぐことはあるまい」
「そうですよ。あそこにある秘密がなんであり、急に足が生えて逃げたりなんてしませんから。体調が悪いなら、日を改めればいいだけです」
「む~....『生々流転...青溟よ、我を導け』!....ほら、言えたでしょう?本当に気が散ってただけだから。さっ、行きましょ!」
『.....』
本当に気が散っただけなのか、半信半疑の中進んでいくと、目的地の建物が見えた!
「目的地は眼前...されど行く手は障害か....」
『さっさと片付ければいいだけの話だろ?.....『
俺は一回り大きい腕をエーテル爆薬で飛ばして、障害物を爆破させ、取り除く。
「わーお、ダイナマイトビックリな爆破解体ですね~ぜひとも、TOPSの爆弾工事係に転任したいですね~」
『はいはい...アキラ、この先が当時の居住区だよな?』
「ああ、間違いない。この橋を渡った先に瞬光が住んでいた場所だ」
「小さい頃、お兄ちゃんはよく私をこの橋かの真ん中まで連れて来てくれた。どっちが石を遠くまで投げれるのか、水しぶきを高く上げられるかって勝負してたっけ。お兄ちゃんはいつも手加減してくれたと思うけどね....私負けたことなかったし。あの頃はこの横がどこまで行っても終わらないように感じてた」
すると、瞬光さんは遠い目で色んな感情が溢れながらも10年前のことを話しだす。
「そして10年前のあの日....覚えてるのは、まっくらで、騒がしくて...誰かの悲鳴と何かが壊れる音がひっきりなしにしてたこと。それと息もできないくらい、体がこわばったあの感覚....大きくて頼もしい影が、私とお兄ちゃんを抱えてこの橋を駆け抜けていったの....不思議と安心する...でも、ちょっとだけ冷たいような....そんなことを考えている内に、橋の向こうの景色はどんどん遠ざかって、聞こえるのは風の音と、その人のずっしりした足音だけになった....」
「それが、瞬光たちを助けてくれた人なんだね?誰だったか...までは、分からない感じ?」
「...うん、もう思い出せない....でも、そのとき感じたことはずっと覚えてる。私を抱きしめてくれる腕はどこか冷たかったけれど、絶望の中では、それがどんなものよりも慰めになったわ」
「そうだろうか....」
「それじゃ、向こう岸へ行っても?もう一度この橋を渡りましょう。今度はあたしたちと一緒に」
「...うん、それじゃあ行きましょう!」
そうして、俺たちは橋の奥へ進むのであった.....