side タンザナイト
橋の奥へ進んだ俺たちが目にしたのは荒んだ建物に、白い花が多く咲いていた。
「この十年で、あの像はずいぶん侵蝕されてしまった....時の流れというのは残酷だな....割れた窓を吹き抜ける風の音も....どこか泣いているみたいだ」
『確かにな...空っぽで荒れ果ててる...』
「ねぇ、私...一人で見て回ってもいい?」
「ま、どのみち手分けするのが得策ですね....ところで....盤岳先生は昔はここでお手伝いしてたんですね?ちよっとは懐かしくないんですか?随分口数が減ってる気がしますが.....盤岳せんせー?」
「....」
と、ダイアリンが呼びかけても盤岳先生は反応がない.....どうしたんだろう?
「ここに来てからというもの、師範は不自然なほど無口になられた....何か気付いたのかもしれないな....」
「....」
『取り敢えず、手分けして捜索する...って事でいいか?』
「うん、その方がいいね」
そう言うことで、俺たちは各自バラけて、あたりを捜索することになった。
『うむ....良い手掛かりは見つかんないかな....ん?』
捜索して数分後、俺は公園らしき場所で、1人の人物がブランコに寂しく乗っているのを見た....その人物はダイアリンだった。
...なんでブランコに乗ってんだろう。
「みなを見殺しにした怪物なら....恨まれるのも無理なし、ですかね」
『やっ、そんなところで何黄昏てんだ?』
「あー...あなたですか....ちょっと静かなところで一休みです。人間、適度に休まないとやってられませんからね~...ん?」
淡々としていたダイアリンの表情が、集中と奇妙な気づきの混ざり合った複雑なものへと変わる。そしてダイアリンは一瞬ためらったのち、眉間に困惑の色を滲ませた。
「ちょっとご意見を伺いたいんですけど....
『え...なに?そんな急にヘビーなもん質問して....何か聞こえたのか?』
「まあまあ、ちょっと考えてみてくださいよ。先に質問したのはこっちなんですから」
『は、はぁ.....うーん、そうだなー.....俺なら――――『自身がもうどうしようもないくらい暴走して、大切な人を殺める前に止めた時』...かな』
「....大切な、人ですか.....」
揺れるブランコが止まり、再び、ダイアリンは重いにふける様子を見せ、離れて行った....
あの時の質問が何なのかよくわかってないが、とりあえず、他の場所を捜索していると、盤岳先生と出会う。
「....!――――おぬしか」
『盤岳先生、どうした?』
「今しがた、我輩も面妖な声を耳にしたのだ」
『それって、ダイアリンも言っていた奴か?また聞こえたってことは、よっぽど可笑しなことが起きているのか?』
「うむ。この壁の向こうに、異常ならぬミアズマを知覚できる....その声は密かに忍び寄り、心を惑わす。おぬしも用心することだ」
そう言い、その場所をよく見ると.....確かに異常なまでのミアズマが肌に感じるな....
「不可思議なことはそれだけではない。かようにミアズマの気配が強い場所なれど、白き花の咲く場所に近づけば侵蝕が和らぐようなのだ....」
『確かに....となると、ラマニアンのミアズマに起きてる『引き潮』は可笑しい.....まるで、ミアズマがみんな、白い花に導かれているみたいに....』
「ふむ....なら、なおさら軽率に踏み込むのは危険だ。皆が合流したのち、決断を下すべきである」
『そうだな、一旦みんなのところへ戻るか』
そう言い、俺たちは広場に戻って、リン達と合流する。
『よぉ、リン。待たせたな』
「あ、タンザナイト!聞いて、さっきあの扉で―――」
『...ん?』
俺が何かを察知し、上へ見上げると....白い体に翼らしきものが生えた怪物が空を飛んでいた。
『!?―――リン、危ねぇ!上だ!』
「上?」
『ハァァぁっ!!』ズァッ!!
「!?」
『『
ズドォォォンッ!!
『....!』
攻撃した怪物が確認すると、そこには誰もいなかった....俺は咄嗟に『亜空間』でリンを回収したので攻撃が当たらなかったのだ。
「あ、ありがとう...タンザナイト、助かった....」
『ああ....というかあの怪物....どう見たってサクリファイスだよな?』
「うん、そうみたい....だけど、なんでここにサクリファイスがいるの?もしかしてサラ達が!?」
『可能性はアリよりのアリだな』
「この以上ならざる気配....まことに奇怪であるな」
『ハァァァァッ!!』ズババババンッ!!
『うおっ!?』バッ
サクリファイスが背中に生えた細長い羽根?を使って斬撃を飛ばしてくる。
.....ってあれ、なんだか....
「あのサクリファイス....盤岳先生とダイアリンを狙ってない?」
『本当だ。明らかに攻撃対象がムラがある』
「ぞわっとしますねぇ、この見られてる感じ....初めてな気がしませんけど!」
『よし...ダイアリン!合わせろ!』
「はぁ~?そっちが合わせるんですよ!」
俺は『
『お手々のシワとシワ.....』
『っ!』
『合わせて―――『
パァァァァンッ!!!
『っ!?』
「おお!大ダメージを与えてますよ!」
「下手したらミンチよりひどいものができそう....」
ダイアリンとの共同攻撃でサクリファイスにダメージを与える。すると、サクリファイスは翼を使い、ビーム攻撃を放ってきた。
『ハァァァッ!!』ビィィィム!!
『うわあっ!?』
ビィィィィィィ―――
「っ!追ってくる!?」
『レーザーカッターかよ!?』
何とか避けたが、直線のビームが横へ動き、薙ぎ払う感じで盤岳先生たちに襲い掛かる。
『ならば....っ!』バッ
『!』
『『時空真拳』――――』ズォッ
俺は上空に飛び、手を刀のようにみたて、引き離す余波を纏わせる。
『――――『
ドコォォォンッ!!
手刀で飛ばした空間をサクリファイスへ向かって衝撃を推したあと、その後ろの建物や木が横に斬れる。
「建物ぶった切ったんですけど!?」
「す、すごい....」
「うむ....何と熟年な技、相当修業したのだろう....」
「....っ!みんな、まだ油断しないで!まだ反応がある!」
『うぅ....ハァァァァッ!!』ズォォォォッ!!
皆感心していると、サクリファイスが立ち上がり上空に飛ぶと、ミアズマの気配が強まる。
「すごいミアズマの気配....」
「荒々しき邪気よ....その正体、我輩が見極めてくれよう!」ガチャコッ
そう言うと、盤岳先生の体が変化し、腕が四つに増え、口が開き目が光る。
――――うわっ何あれ、かっこよ!!
『よし――――俺も行くぜ!!』ピキキキッ!
「うわきもっ!?」
俺は腕を6本に増やし、サクリファイスに向って突撃する。
「わ、私も!」スッ
「えー...これ行かなきゃダメですか?」
他の人達も、それぞれ武器を構え、突撃する。
『――――っ!』
『
「震天動地!」ガガガガッ!!
「裁定の結果…万死に値します!」ドガガガガッ!!
「えっえーと....せいやっ!!」スババババッ!!
皆の全方位からの連続攻撃がサクリファイスを襲い、爆発する。
「....オーバーキルじゃない?」
リンは冷静にぽつりと言葉をこぼした。
全員で攻撃したので流石のサクリファイスはダウンする。そして、体がボロボロに崩れ去ろうとしていると、何か呟く。
『傾聴せよ...始まりの主の....呼び声を....』
「ミアズマの気配が濃くなっておる......用心せよ」
「オバケみたいにコソコソして....とっとと出てきたらどうですか!――――」
『この霧は....ダイアリン?盤岳先生?』
ふと、後ろを振り返ると、ダイアリンの目が気が抜けて虚ろな目をしていた。俺はダイアリンに近づいて、呼びかける。
『ダイアリン?...おい、ダイアリン――――ダイアリンっ!!』
「!!」
ダイアリンを掴むと、ダイアリンの目に光が灯る。
『大丈夫かダイアリン?なんだか虚ろな目をしていたけど.....』
「....いえ、なんでも。.....ハメられたみたいです。迂闊でした」
「ダイアリン、盤岳先生、大丈夫?」
「あのサクリファイスが消えたあと、お二人とも石みたいに動かなくなったんだ。何と呼んでも反応がなかったから心配しました」
『もしかして...あの声が聞こえたのか?』
「さよう....」
「何て言ってた?」
「...人の心の隙を付け込み、力を捧げようと迫る面妖な言葉だ」
なるほど....にしても厄介なもんだな....
「ふーむ...サクリファイスは言っていましたね?『始まれの主の呼び声』と....まさかと思いますが、本当に始まりの主とやらが拡声器で呼びかけてるんでしょうか?でも、どうしてあたしと盤岳先生にだけ聞こえるんでしょうね.....皆さん、このエリアにはいってから何も聞こえていませんか?例えば...頭の中でもう一人の自分がわちゃわちゃ行ったりとか.....?」
『俺は確かに、もう一人の自分らしき人がいるが....方向性が違うしな...』
なんかインフィニティも『そうだそうだ』と喚いてるし...
「特に何も聞こえなかったけど....ただ、さっきあなた達が危ないことになってるときに、剣棺の中の青溟剣か反応してたの....師匠自ら封印を手掛けていて以降、こんなことは初めだったから...ちょっと驚いたわ」
「なおさら興味深い状況になってきましたね....私たちはここへ、陣法と葉釈淵さんの行方を探しに来たわけですが....その過程で、このホロウに潜む何かに目をつけられてしまったようです」
『ホロウに潜む何か....』
「その『何か』とあたしたちが目指すものにどんな関係があるかは知りませんが....こんな風に人様を誑かすようなのが、慈悲深き神様なんかじゃないことは確かです」
「得体の知れない何かの力....それも、盤岳先生くらい強い人でも影響を受けちゃうほどの....本当はすぐにでも先へ進んで、お兄ちゃんの足跡を追いたいけど....はぁ、今までどうにかお忍びってことでやってきたけど....もうそんなこと言ってる場合じゃないみたいね。これ以上皆を危ない目に遭わせないためにも....雲嶽山に連絡するわ」
『確かに、師匠たちならラマニアンホロウに詳しいし、いいと思う。とりあえず一旦外へ出よう』
「同感ですね。どこの誰とも知らない奴に頭の中まで入ってこられて...そろそろ本気で頭に来てますから」
「盤岳先生、いいよね?」
「......」
盤岳先生は固く閉ざされたゲートをもう一度見つめ、そして頷く。
そうして、俺たちは一旦仕切りなおすために適当観へ戻るのだった。
たった数分で倒されるサクリファイス・コヴェナント・ガーディアン偏に間が悪かったせいだが....