転生先はエーテリアス   作:YEX

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これからの準備を...え?デート?

side タンザナイト

 

適当観に戻り、瞬光さんが適当観の修行者たちに事情をすべて打ち明けた後.....

 

「そうか...君が、あの若くして青溟剣を継いだという葉瞬光さんだったとは。雲嶽山の若き弟子たちの中でも一番の秀才とされ、いずれは虚狩りにもなりうる器だと、もっぱらの評判だ」

 

「秀才だなんて...そんな....あの、ごめんなさいっ!私ってば、本当に自分勝手で、軽率で....こんなことになるまで黙ってたこと....本当に申し訳なく思ってます!」

 

『俺からもごめんなさい...皆には、もっと釈淵の行方がはっきりしてから打ち明ける予定だったんだが....あの場所のミアズマがあんなにおかしなことになっているとは思わなかった....』

 

「今回調べてみて、事態がどれだけ深刻か痛感したわ...衛非地区の安全にもかかわることだし、これ以上隠しておくわけにはいかないって....でも、これだけは信じて。お兄ちゃんは雲嶽山を裏切ったわけじゃない!サラと一緒に行かなきゃいけない理由があったはずなの。確かな証拠が、あるわけじゃないけど....」

 

そう言い、瞬光さんが真剣なまなざしで弟子たちに伝える。

 

「私はお兄ちゃんと一緒にここまで来た。誰よりもあの人のことを良く知ってる!素直で、仲間思いで....私利私欲のために人を傷つけたり、道を外れるような人じゃないって!」

 

「大丈夫よ光ちゃん...じゃなくて、瞬光さん。兄弟子の人となりは、ここの誰もが知ってるもの。師匠にはもう連絡してあるわ。今は別のお務めで手が離せないそうだけど、そっちが済みしだいすぐ駆け付けてくれるって。後のことは...師匠の指示を仰ぎましょう」

 

「ありがとう、信じてくれて。でも、あんまり気は使わないでいいから...!普通に『光ちゃん』って呼んでくれたら嬉しいかな。ねぇみんな、師匠が来るまでの間、ミアズマがおかしくなった原因を私と一緒に突き止めてもらえない?」

 

「もちろん、全力を尽くそう!ただ...光ちゃん、その....君はしばらく適当観で休んだらどうだろう。リンちゃんもタンザナイトくんも、しばらくこのまま彼女に付き添ってあげてくれないか」

 

「休むって....」

 

「実は、師匠からの返事で、あなたをしばらく調査に参加させないよう念を押されて....」

 

...恐らく、青溟剣関連の話だろうな.....

 

「で、でも...!」

 

「ごめんなさい、でも明日からちゃんと、わたしたち適当観の人員で調査を始めるわ。だから安心して待っていて」

 

と、申し訳なさそうに同門たちは二言三言残して去って行き、瞬光さんはその場に立ち尽くす。その両ては強く握りしめられ、無力さに表情を曇らせているようだった。

 

「いつも....こうなっちゃう.....」

 

「....儀玄の命令も、おぬしの―――」

 

「...身を案じてるから、でしょ。わかってる、私もわかってるの....師匠は、本当の家族みたいに大切にしてくれてるって。自ら施した剣棺の封印があっても、ずっと心配してくれた....青溟剣の力が暴走しないか、儀降さんと同じ道を辿るんじゃないかって.....でも、みんなが危険な目にあってるのに、ただ後ろで守られて、待つことしかできないのは....もう....」

 

と、瞬光さんが段々悲し気な顔をする....すると、ダイアリンが発破をかける。

 

「はぁ...そのしかめっ面....あたしの知ってる『葉瞬光』らしくないですね。どんな状況にも揺るがず、素直に向き合える.....それこそが『葉瞬光』じゃないんですか?」

 

「瞬光、そんなに張りつめなくてもいいんだ。今日は大変な一日だったし、まずはしっかり休んで、元気を取り戻そう」

 

『そうだぜ?明日の為にも、休んだ方がいい』

 

「...ごめんなさい、また心配かけちゃったわね...わかった、みんなもゆっくり休んでね!」

 

そう言い、俺たちも部屋に戻って休むことにしたのだった....

 

NOside

 

「何度見ても澄輝坪もいい所よね~あとでアンビー姉さんやハリンにお土産買ってあげようかしら...ん?」

 

とある澄輝坪で、休みで観光に来ていたツイッギーはホテルにやすもうとしたとき、何やら裏で何かが聞こえる。

ふと気になったツイッギーはこっそりと聞き耳をとる。

 

「意外ね、あんな取るに足らない小物を逃がすなんて。肉親を殺された恨みを胸に、仇を道連れにしようと考えている....そんな人間にしては、甘すぎるって思わない....?」

 

「....あいつは、大して計画にも関わっていない、()()()()()()だ。知っている情報もたかが知れている、生きようが死のうが影響はない。あえて始末する必要もないと考えた。それだけだ」

 

「始まりの主に謁見する道の上に.....不信心なものの雑音は、すべて、徹底的に浄化されなくてはならないのよ。そう、かつて主の恩籠を浴したにもかかわらず、疑念を抱き、冒涜を企てた裏切り者たちのようにね....今、彼らはもう....()()()()()()()()()。とっても、静かに.....」

 

(あの女はだれだか知らないけど....あの男って、たしか讃頌会の残党を見張っていた人....だけど、まるで元々その組織に入ってた言い方みたいだったけど.....)

 

「なのにあなたは...その『たかが駒一枚』に情けをかけた。そんな人間が、最後の最後で盤岳に同じことをしたり、己の結末を前に、ためらったりしないなんて....どう信じろと?」

 

「あんたが信じようが信じまいと関係ない。言ったはずだ、盤岳に血で償わせることは、僕がやつに課した罰であり、自分自身に定めた結末だと」

 

(!!)

 

「罪も罰も、同じ場所で決するって....?あはははっ、皮肉ね!まさか、あんな欺瞞まみれの、ないも同然だった『師弟の絆』を、まだ気にしてるわけ?ふふっ...笑わせないでちょうだい...!」

 

「無駄な探りはもうやめろ。僕達はお互いに必要なもののため、利用しあっているにすぎないんだ。とやかく言われる筋合いはない。ぼくなんかより、周りの人間に目を光らせることだな。それに....あんたの『神』にも期待しすぎないことだ、お人形さん。その始まりの主とやらが....本当に全知全能かどうか、せいぜい祈っておくといい」

 

「葉釈淵のこと?はっ、彼のちっぽけな企みなんて....問題にもならないわ。始まりの主は、彼が牙を剝くことなんてとうに予見していた。そして私こそが....主の予言を成し遂げる最後の鍵となる。葉釈淵という存在も、その決断も、無駄な足掻きも....すべては壮大な絵巻物の一部、その絵が完成するころには...少し変わった彩り程度しか、見えなくなっているわ.....全てはその終点で、始まりへと還る....」

 

そう言い、サラは夜へと溶け込み、去って行った.....そしてツイッギーは二人との重い空気でのやり取りでぽろっと呟く。

 

「.....やばいこと聞いちゃったかも.....」

 

 

side タンザナイト

 

次の日の朝、俺は瞬光のところへ向かうと、一人静かに立っていたところを目撃する。その赤い飾り紐は、初めて適当観に現れたあの日と同じように、鮮やかに揺れていた。ただ今の彼女は、あの頃よりもずっと、多くの想いを胸に抱えてるように見えた。とりあえず俺は元気が出そうな『姉弟子』と言ってみる。

 

『おはよう、姉弟子!』

 

「お、おはよう....えっと、どうしたのよ、急に姉弟子だなんて....」

 

『いや?ただ、初めて会った時、姉弟子って呼ばれて嬉しそうだったから呼んでみただけだ。それにもう隠す必要なんてなくなったし....』

 

「そう...そうよね。ありがとう、タンザナイト」

 

瞬光さんの顔に淡い笑みが浮かんだ。

 

『ふっ...どういたしまして』(とりあえず、師匠が戻ってくるまで一人にさせない方がいいよな....)

 

そうだな....天気がいいし、姉弟子と一緒に散歩するのはいいか?一緒にいられるし。

 

『そうだ、瞬光さん。今日はいい天気だし、俺と散歩しない?瞬光さんとは、まだ一度も一緒に街をぶらぶらしてないから』

 

「そうね...じゃあ、案内はお願いするわ」

 

『ああ...あっ』

 

ふと、俺は『Fairy』に言っていたことを思い出した....確か『生活習慣のデータ』を参考に瞬光さんにカジュアルな服装を用意してくれたんだっけ?気分転換にもなるから、渡してみるか。

 

『そうだ、瞬光さん。カジュアルな服装って興味ないか?』

 

「えっ、カジュアルな服って...い、今!?

 

事情を説明すると、瞬光さんは少し恥ずかしそうにしつつも、小さく頷いて、部屋に着替えに戻った.....

 

そして、数分経って着替え終わった瞬光さんが出てきた―――もじもじと、その澄んだ瞳を泳がせながらも、同時に、その目にはかすかな期待の色が浮かんでるようにも見えた。

 

『おお...可愛いよ、瞬光さん!』

 

「ほ、ほんと?よかった....ちょっとだけ、その...子供っぽく見えないかって心配だったの。姉弟子らしくないかなって....」

 

『いや全然!似合ってるよ!』

 

「そ、そう...?えへへ、じゃあ行こっか!」

 

そうして、瞬光さんと共に澄輝坪へ散歩するのだった。

 

最初に着いた先は『飲茶仙』だった。

 

「これが『飲茶仙』?けっこう大きいお店なのね...?」

 

『ああ、ご飯が美味しくて人気の店なんだ。おかげで色んな情報なんかも集まるんだよ。試しに入ってみるか?』

 

「うん、入ってみましょ!」

 

「いらっしゃい常連さん!そちらの上品なお嬢さんはお友達ですか?見るからに通だね~...新作の季節限定メニュー、試してみる?」

 

季節限定メニュー?と、心の中で楽しみが出て来ると、瞬光さんが懐かしむ感じで言う。

 

「スンスン....なんか、金木犀の香りがするような....?」

 

「ご名答!金木犀のケーキが焼きあがったばかりなの、その名も『月ほの香』。今朝積んだばかりの金木犀をこれでもかと使った、お口の中でとろける一品ですよ!癖になること間違いなし!」

 

『へー....聞くだけで美味しそうだな』

 

「金木犀のケーキはね、いつだって特別な人のことを思い出させてくれるんだよ...!数量限定だから、お早めにね!」

 

「金木犀の、ケーキ.....タンザナイト....食べてみる?」

 

と、瞬光さんがケーキを食べてみると聞いてきた。

...大切な人を思い出させてくれる、と聞いて多分、釈淵のことを考えてるんだろうな....

 

『ああ、食べようか。すごくいい香りが店の外から漂っているし』

 

「ふふん、がっかりさせないよ~!二名様、お二階へご案内~」

 

そうして、俺たちは席に着き、二人で金木犀のケーキを食べるのであった。

 

「どう?おいしい?」

 

『うん、美味しい!甘い香りでふわふわな食感がしていい!瞬光さんも食べよう!』

 

「これ、お茶がすっごく合うわね。一緒に食べると、さっきまではすごく甘かった口の中がもう思い出せないくらいさっぱりするの.....不思議」

 

すると、瞬光さんは何か考えてるような顔で質問してきた。

 

「...ねぇ。一度思い出せなくなっちゃたことは、もうずっとそのままなのかな?なんていうか...お茶のそこに沈んだ茶葉がもう浮かんでこないみたいに」

 

その瞳の奥深くには、意味深な期待と緊張が潜んでいた。

 

『うーん...そのたとえで言うなら....沈んだ茶葉は、かき混ぜたらまた浮かんでくるだろ?記憶や思い出だってそう、ちょっとした衝撃で思い出す.....瞬光さん、何か気になることでもあるの?』

 

「....なんでもないわ。ただ....時間が過ぎるのって、本当に早いなって」

 

そう言ってると、横から紅豆が金木犀のケーキの感想を聞いてきた。

 

「お客さん、『月ほの香』はお気に召した?初めて来てくれたんだし、お店のサービスで何かあったら遠慮なく言ってね!」

 

「わざわざありがとう、紅豆。すっごく美味しかったわよ。上品な甘さで、金木犀の香りとお米の風味がどっちも感じられたもの。きっと焼き加減が絶妙なのね」

 

「おお、なんて的確なレビュー!お客さん、やっぱり通だね」

 

「別に、対したことじゃないわよ。自分でもたまにお菓子を作るから。あくまで勘だけど...この餡、はちみつに漬けた金木犀の他に、加熱した白玉粉も入ってるでしょう?もちもち具合がそんな感じだわ。それに、後味の爽やかな果実の酸味は....金柑の皮?」

 

「すごーい、大正解だよ!」

 

瞬光さんが金木犀のケーキの隠し味を言い当て、紅豆は驚く。

...いやすごいな、そこまで分かるなんて。

 

「白玉粉を入れると、もっちりしつつコシが出るの。金柑の皮、砂糖漬けにした奴を細かく刻んで加えるのが仕上げの決め手。お嬢さん、ほんとに舌が肥えてるよ~!感心、感心!あなたみたく通なお客様なら、うちはいつでも大歓迎だからっ!じゃあわたしはこれで。何かあったらまた呼んでね!」

 

紅豆は急須を持ったまま、満面の笑みを浮かべて離れて行った。

 

『すごいな瞬光さん...まるでプロの会話だったよ...!』

 

「プロだなんて、そんな。むかし、潘さんが料理してるのを見るのが好きだったから....色々教わるうちに、自分でも作ってみるようになったのよ。でも最初のころは本当に上手く行かなくて....お兄ちゃんも、師匠も、福姐さんも、潘さんも....みんな一回は私の『犠牲者』になったわ」

 

可哀想な雲嶽山。ひとえに瞬光さんの料理が失敗したせいだが....

 

「お兄ちゃんもなんて、『瞬光の料理も修行の内』とか、『精神が鍛えられる』とか.....好き放題言ってくれちゃってたわね」

 

『釈淵、結構妹に過保護なんだな』

 

「そうだよ!お兄ちゃんは小さい頃から、何かにつけて私を庇ってくれた。自分だってまだ子供だったのにね....どんなわがままにも付き合ってくれたし、滅多なことじゃ怒らなかった。教えてもらったことだって数えきれないよ。雲嶽山に来たばっかの頃、わたしは手に負えない問題児で、とんでもないことをして隠れてた時があるんだけど......お兄ちゃんはわたしを見つけた時、怒ったりしないでただ....真剣な目をしてこう聞いてきたの」

 

「『瞬光。老いた命と若い命、どちらか一つしか救えないとしたら、どちらを選ぶ?飢餓の時代、命を繋げる穀物の袋と、千年の知恵を継ぐ書物、どちらか一つしか守れないとしたら、どちらを選ぶ?そして....災いに直面したとき、自分自身を救うために逃げ出すか、それとも世を救うために、不可能だと知りつつも戦うか....どちらを選ぶ?』」

 

釈淵がそんなことを?聞いた感じ、答えがあるような問いかけには見えないが....

 

「当然、その時私には何も言えなかった。なんだか悔しくて、どうしてそんな残酷なことを聞くんだろう....って気持ちと混ざって、泣きたくなったわ。でも、そんな私にお兄ちゃんは言った。『正解を言い当てるための問いじゃない。考える中で、()()()()()()()()()()()()と....()()()()()()()ことが大事なんだ』」

 

『へー....』

 

「お父さんとお母さんもよくお兄ちゃんに言い聞かせてたみたい。本当に難しいのは『選択』したあと....『その選択と生きていく』ことなんだって。何もかも手に入る選択肢なんてそうそうない。でも、選ばなきゃいけない時が来たら、勇気を出して選ぶ....ちゃんと選んだことに向き合う。そうやってみんな、自分の道を歩いていくんだって....あの時はよくわからなかった....今でもちゃんとわかってるかは、自信ないけどね....」

 

釈淵なりに色々と考えていたんだな....

 

『けど、こうやって瞬光さんが向き合おうとしてるって知ったら....きっと喜んでると思うよ』

 

「うん。お兄ちゃんは、私ならその意味がきっとわかるって信じてくれたんだもん。だから私も信じる。お兄ちゃんにはやらなきゃいけないことがあるって。妹の私にだって、あの人を見つけなきゃいけない理由があるみたいに―――ってすっかり愚痴っちゃったわね。ごめん」

 

『いやいや、いつでも話してくれていいからさ。弟弟子をもっと頼ってくれよ』

 

「うーん...これじゃどっちが姉弟子かわからないじゃない。私もしっかりしなきゃよね!」

 

そう言い、瞬光さんはぷくっと顔を少し膨らました。

 

「ちよっと肩の力を抜いて、明るい話をしましょ!最近はみんなすごく頑張ってくれてるわよね。盤岳先生にダイアリン、あなたや寧謙さん、適当観の同門たちも....だからどうかな?この機会に、皆で火でもか囲んでバーッとやりましょ!私がお礼の手料理をご馳走しちゃうから。どう?」

 

へー、手料理でパーティか!いいなそれ!みんなも喜びそうだ。

 

『ああ、いいと思うぜ。じゃあダイアリン、盤岳先生、あと寧謙は俺から誘っとくよ。松涛先輩たちも戻ってきたら知らせなきゃな!』

 

「うん!やっとみんなにお礼ができるわ」

 

そう言い、残りの金木犀のケーキを食べ終えるのだった.....

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