だって、インフィニティに飲ませた薬ってもう確実にカローレ関わってマスやん
side タンザナイト
数分が経ち、外から香辛料の香りが、彼女の弾むような足取りを追いかけ、小さな中庭に瞬く間に広がっていく。
暖かな焚火がバチバチと音を立て、オレンジ色の炎を夜の深みに向って揺らめかせる....
まるで、つかの間のぬくもりと集いをもっと明るく、もっと熱く尽くそうとしているかのように。
そうして、料理が完成に、宴が始まる....!
「よし、準備はバッチリよ。オシシにイアス、それと盤岳先生にはお礼を言わなきゃ!私一人じゃ手に負えなかったわね。手伝ってくれてありがと!」
「ンナ、ンナナ!」(われ、力になれた!)
「ンナ!」(えへへ、いいよ!御礼なんて!)
「ダイアリン、これ食べてみて頂戴!はちみつを多めにしてみたのよ、あなたの好みの甘さになってるんじゃないかなと思って!」
「おっ、あたしが甘党だと見抜くなんてやりますねぇ。お気遣い感謝します!...あれ、オシシくん。お手々が油まみれになってますよ。ご自分をカラッと揚げちゃうつもりですか?ほら、火の粉が跳ねたら....外はカリカリ、中はふわふわな『シシ肉団子』になっちゃいますよ?おっと失礼、ここにはもう一人『シシ』がいたんでしたね~」
と、からかうように盤岳先生の方を見るダイアリン。
「....」
「ンナナ、ンナ!」(ダイアリンさん、いじわるではないか!)
「盤岳先生にはチャーシューまんを作ってみたよ。油っこいのは苦手ってきいたから、潘さんのマネして、陳皮を加えたタレに付け込んでみたんだ。口に合うといいんだけど....」
「うむ、よく火が通っており申し分ない」
「みんな気に入ってくれたみたいで嬉しいわ!まぁ、どれも至って普通の家庭料理だけど....」
『そんなことねぇよ。結構うまいぞこれ!!モグモグ....』
と、皆瞬光さんの料理でわいわいと楽しんでいた。
「さて、みんな火の傍に集まってねことだし....このまま少しお喋りでもしない?」
「お喋りは大好きですよ。せっかくなら何かテーマを決めませんか?」
「うーん、テーマねぇ.....じゃあこうしましょ!最近あった恥ずかしいこととか、面白かったことを一人ずつ話していく!じゃあ....まずはダイアリンからよ!」
炉の炎がパチパチと音を立て、星のように火の粉が舞う。談笑の声、冗談の応酬、食器が触れ合う澄んだ音。ふだんはなかなか見られない、気楽な賑わいがあたりを包み込む。
張りつめていた心の糸もいつの間にか緩み、胸に秘めた重い秘密さえも、この暖かさの中ではひとときだけ姿を見せていた
夜の帳はぬくもりに照らされてそっと引き伸ばされ、その静かなひとときの流れのなか、ふと笑い声が途切れたとき、気づけば、満天の星だった。
「わぁ、みんな見て!なんだか星がさっきより明るくない?」
『本当だ....すげえ綺麗だ....』
「思い出すなぁ。お兄ちゃんと福姐さんたちで、雲嶽山の裏に集まって、天燈を飛ばしたことがあったの。風が凄かったせいで、全然火がつかなくて.....私、途中で天燈なんてどうでもよくなっちゃったから、草の上で寝ころんだのよね。そしたら、天燈よりもずっと眩しい星たちが、目の前に広がってた」
「へー...」
「一緒に寝ころんだお兄ちゃんが『天燈より、星の願いを託そうか』なんて言って....あの時私は....なんて願い事をしたんだっけな....ふぅ。こうやって頭を空っぽにして、星を眺めながらただお喋りする....そんな時間、ずいぶん久しぶりな気がするわ....」
誰もが黙って耳を傾けていた。静寂の中で、木炭が燃えるばちばちの音だけが鮮やかに響く。火の子は蛍のように舞い上がる、まるで夜空の星々へ溶けていくかのように。
そして、青溟剣の剣棺が、星明りの下で、わずかに光っていたことは、この時は誰も知らない.....
その後、満腹になった影響か、眠気が強くなり、俺たちはその場で解散し、自分のベットに戻り、眠った.....
ん?こんな時に電話?相手は――――ツイッギー姉さん?
NOside
とある場所にて....そこにはサラ、釈淵、ストラスの3人が密集していた.....
「僕をここに呼んだのは、あの陣を起動するためではなかったのですか?ええ、これ以上あなたを試してもしょうがないもの。あなたには私たちと、ともに始まりの主のもとへ赴いてもらうわ。陣の起動は....他の誰かにやってもらいましょう」
「....陣法は確かなものとなり、始まりの主がいる場所も明らかとなった今...召喚を躊躇う理由もないと思いますが」
『そう焦るな....釈淵。これは土の中で眠る種のようなもの....意思だけで芽吹くわけではないのだ。必要なのは、
「そう、もう少しだけ待ちましょう....始まりの主がお選びになった『鍵』、そのすべてが揃うまで」
『...それはそうと、タンザナイトはどうする?あいつなら、当然陣の発動を阻止するはずだ』
「そこは大丈夫よ....陣さえ発動できれば、こっちのものだもの....」
サラはそっと顔を傾けた。風に溶けた誰かの囁きを聞くように、あるいは葉釈淵の焦りを見透かすかのように。その口元に浮かんだ笑みには、期待と冷たい計算の色が滲んでいた。
side タンザナイト
今日も天気のいい朝だなーと思っていたら、外が騒がしいと気づいた。
何かと思い、来てみると.....松涛先輩が倒れているのを見つけた!
『松涛先輩!?一体何があった!?』
「っ....!すぐ手当てするわね!」
「いや、俺のことは後でいい、まずは聞いてくれ!ゆうべの深夜、鉱区跡地でミアズマがいきなり噴き出したんだ....現場にいた弟子たちが囚われてしまった」
な、なんだってぇー!?
「そんな...!?リン、タンザナイト、師匠たちを待ってる場合じゃないわ!」
「そうだね...!すぐ出発した方がいいかも!松涛先輩のことはお兄ちゃんとオシシに任せたよ!」
「任された。イアスをそちらに向かわせよう。盤岳先生とダイアリンには僕から伝えておくよ。とはいえ、リン、タンザナイト、くれぐれも忘れてはだめだぞ。瞬光の状態は少し特殊だということを」
「大丈夫よアキラ、タンザナイトとはちゃんと約束したから。そう簡単に封印を解いたりなんてしない....それに忘れないで、私は結構強いのよ。青溟剣に頼らなくたって、みんなを守って見せるこういう時くらい、『頼れる姉弟子』っぽいことをさせてよね!」
そう言い、準備して向かおうとした時、慌てて駆け付けたダイアリンが更なる知らせを届けてきた...
「状況は大体把握しましたけど、一番の問題は盤岳先生と連絡が取れないことです」
まさか、昨日ダイアリンに言われたことのせいで...?いや、待てよ。ツイッギー姉さんから貰った連絡だともしかして.....
「ついでに寧謙さんもいなくなっちゃいましたし...こんなタイミングでミアズマの異変が起きたのは、ちょっと出来すぎです」
『やはりか...!』
「やはりって....なにか知ってるの?」
『昨日、ツイッギー姉さんから連絡があったんだ...寧謙が盤岳先生になんか物騒なことしようとたくらんでいるってな....』
「嘘...でもどうして?」
「多分、復讐...なんかじゃないですか?」
「復讐...?」
「ええ。あの惨事にあって盤岳先生が
「ちょっと待って....見殺し...って、どういうこと?」
「おっと...我らが騎士さん。こうなっちゃった以上、もう隠しても仕方ないんじゃありませんか?」
こいつ....最初から狙ってただろ....
『....ああ、瞬光さん、実は――――』
少しダイアリンに悪態をしつつ、瞬光さんに盤岳先生の過去を話す.....
「ひょっとすると、寧謙さんがそういう身の上を隠して盤岳先生の道場に入ったのも、彼に近づくためだったのかもしれませんねぇ....」
『おそらく、その可能性がたかいな....』
「朝一で報告書を受け取りましたが、あたしたちと会う以前に、サラと接触してたことも割れました。手がかりが途切れそうになる度、彼のいる場で都合よく繋がっていったのも、そういうことです」
連絡であった寧謙と会話していた女性はサラだったんだな.....納得。
「まぁサラのことですから....おおかた寧謙さんが抱いている憎しみにかこつけて、何かしら取引をしたんでしょう。讃頌会の残党に出会い、古い書物の存在を知り、謎めいた陣法が見つかる....一見すると自然な成り行きに見えますけど....ちょっとスムーズすぎる気もしますね」
「確かに...言われてみれば....」
「おまけに寧謙さんは、ここ数日の間に近所の人や道場の仲間たちに挨拶回りをしていたようで....遠くへ行ってもう戻れないかも...そんなニュアンスのことを伝えてたみたいですよ」
『戻れない....だから復讐か...』
「その可能性が一番高いと思いまして~....過去に因縁のある人間まで使って、今回の異変に盤岳先生を巻き込みたかった、その心はあの陣法を彼に起動させたいから.....でしょう」
「じゃあ、私が受け取ったあの紙切れも....」
盤岳先生が瞬光さんたちに感じてる罪悪感を利用して...って事だろうな.....
「はあ...今思うと、陣法を起動するために『鍵』が要るっていう話は、サラが書物に後から加えたものだったのかもしれません。鍵...つまり莫大なエーテルエネルギーと、それによって展開する陣が吸収するミアズマには、どちらも行先がある気がしてならないんです」
『というと?』
「ラマニアンホロウ内のミアズマに観測された現象を私たちがなんて形容してたか思い出してください....『引き潮』ですよ?まるで、何処か1箇所に集まってくみたいじゃないですか」
『!!』
その言葉に俺たちはハッとした。
「それと、あのホロウで聞いた奇妙な声....いまのところ、なんであたしと盤岳先生だけが聞こえたのかは分かっていませんよね。でもあの声は、明らかにあたしの記憶を利用して揺さぶりをかけてきました。じゃあ一体誰が?何の目的で?――――サラの行動を踏まえると、一番あり得るのは....ミアズマのあたしたちの力が何か特別な存在へと導かれようとしている....あるいは、もう導かれているってことです」
「特別な...存在?」
「例えば....そう、降臨する『始まりの主』とか」
『待てよ...ということはあの陣法は今や始まりの主を降臨するためのエネルギー吸収の陣法ってひとか!?』
「寧謙さんがどこまで知ったうえで、手伝ってたかは分かりませんけどね.....いいように利用されちっゃたことには変わりないかなと」
「私....あのとき鉱区跡地であったことはほとんど覚えてないから、寧謙さんの憎しみに寄り添う権利も、盤岳先生に代わってそれを許す権利もない....けど、先生がこの数日で見せてくれた優しさは、本物だったって思う....」
「つまり?瞬光ちゃんは、盤岳先生を咎めるつもりはない....そうきめたってことですか?」
「ううん....もうとっくに決まってたの。10年前、故郷と外の世界を繋ぐ橋を渡ったあのときに、混乱の中、私とお兄ちゃんを抱えて駆けだした、静かで大きな影.....絶望のなかでたった一つの救いだった、山のように頼もしい人...あれは、盤岳先生だったんだから」
『瞬光さん....思い出したの?』
「うん。盤岳先生はそんなこと、一言も言わなかったけど.....災害のあと、私達兄妹の面倒をみてくれたのもそうだし、雲嶽山っていう、新しい家を紹介してくれたときも....いつだってあの人がいたから。あの人がどんな過去を背負っていようと、どれほど冷酷な生まれの掟にしたがってきたとしても....この恩がなくなっちゃうほどじゃない」
『....』
「そして今、罪悪感があの人をもう一度、危ない場所に駆り立てようとしてる....リン、タンザナイト、ダイアリン....私、お兄ちゃんと盤岳先生はー、どっちも無事に帰ってきて欲しい!」
「ふーん、青溟剣の継承者らしい気概がようやくみれましたねぇ。そこまで覚悟をきめてるってんなら、とやかく言いません。行きましょうか!彼が正真正銘の鉄くずになっちゃう前に。それと、あんたのお兄さんと寧謙さんの馬鹿が、取り返しのつかないことをしでかす前に」
「ダイアリン...!」
キラキラした目で瞬光さんはダイアリンを見つめると、ダイアリンはこっぱずかしくなる。
「あーもう、うるさいですね...!行くんですか?行かないんですか!?」
『勿論....行くぜ!』
こうして俺たちは囚われた弟子たちを救助するため、向かうのであった。