転生先はエーテリアス   作:YEX

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今回も、六章突入!


この身に『希望』を灯すとき

side タンザナイト

 

あれから色々あったけど、瞬光はまだ釈淵のことが気にはしているが、だいぶ落ち着いてきたようだ……そんな瞬光は今、金木犀のケーキを作っていた。

丁度リン達も来たみたいだし、瞬光特製のケーキを頬張ることにした。

 

「うん。瞬光が作った金木犀のケーキ……弾力があってとっても美味しいよ」

『本当だ、うめぇ~』

「美味しいね!」

「そう?ありがとう!」

「そう言えば気になっていたんだけれど……瞬光はどうしてこまで金木犀のケーキが好きなんだい?」

 

あー、そういえば確かに……店の金木犀のケーキにもアドバイスしてたし、気にはなってたな。

 

「それは……私、金木犀の香りがするものなら何でも好きになっちゃうの」

 

瞬光は懐かしむ様子で話してくれた。

 

どうやら入門したての頃、きんしせょの街角で点心を売っているお店があって、そこで食べた金木犀のケーキが凄く美味しかったらしい。

そういうわけで、しょっちゅう釈淵にねだってたのだ。だけど、なぜか食べるたびにお腹が痛くなるからその内禁止にされたとか……

とういうわけで、自分で金木犀のケーキを作るようになったらしい。

 

……へーそんなことがね……

なんて、会話しつつ金木犀のケーキを食べていると、福福ツンが何やら慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「三人共、ここにいたんですねっ!」

「福姐さん!もどってきたの?」

「はい、衛非地区でまた何かあったと聞いて、大急ぎで戻ってきたんです!……といっても、いま着いたばっかりなんですけどね。とにかくっ!泅瓏囲のほうで、変な物が現れたってもっぱら噂ですっ!」

『……変な物?』

「すぐに確認しにいきますよっ!」

 

そうして、福福さんと一緒に泅瓏囲に駆け付けた。

着いた先には、白い大きな花が咲いていた。

な……なんじゃこりゃあ!?

 

「これは……」

 

すると瞬光さんは身をかがめ、白い花びらに指先で慎重に触れた……その顔には驚きと不安の色が見て取れる。

 

「……これ、前のホロウの中で見かけたあの白い花よね?どうしてホロウの外まで……」

 

確かに、前の依頼の時にみかけたよな……

 

「それに、気のせいかな……青溟剣が()()()()()()()()()()?」

「うん、何だか嫌な予感がするね……」

「私も。だってこの花……あれとまったく同じだもん。師匠がいたくれたらな……あの人の見識なら、きっと何か知ってるかもしれないのに―――」

 

すると、名の知らないおじさんが割って入ってきた。

 

「ふん。澄輝坪でこんなことが起こってしまってはな。宗主たる儀玄が直々に市長へ釈明せねばならぬのも当然……」

『誰だお前』

「……葉瞬光。その中でもおぬしの兄がしでかしたことはいっとう大きいぞ。まったく、雲嶽山の扁額に泥を塗りおって」

「陸老師!兄はただ―――」

「事実は事実。弁解は無用……そして、おぬしの道はもはや、あやつとは異なるのだ。己が果たすべき務めを忘れるでないぞ。青溟剣を継いだ以上、その全てを背負う。それがおぬしの宿命なれば」

「……」

 

おい、流石に言いすぎだろ。

流石にの言い草に俺はこのおっさんに少し苛立ちを込める。

 

『おい、あいつ誰よ?』

「あっ、ごめん。紹介しなきゃよね。この人は雲嶽山の―――」

陸衡舟(りく・こうしゅう)だ。おぬしたちのことは知っておる。儀玄が取った新弟子だな。この花のことなら、既に弟子たちから聞いた。今のところ害を及ぼす兆候は見られんし、物理的に脆い。ただの植物のように思えるが」

「そんなことないわよ!この白い花、見覚えがあるもの。旧都陥落のとき、それに……ラマニアンホロウの深層にもたくさんあったわ。近づくと侵蝕が和らぐような、不思議な感触もあって……」

「そうなのか?であれば念のため一掃しておくべきか。葉瞬光。おぬしに任せても良いな」

「え、ええ……やってみるわ」

 

瞬光が剣を振り上げると、閃光が走り、目の前にあった白い花は一瞬にしては意図なって消えた……見た目よりもはるかに脆かったな……一応、役立つかもしれないし、()()を取り込んでおくか……

 

「陸老師、この白い花にはきっと見た目以上の何かがあるの、それこそ大きな秘密が……このまま放っておけない!」

「……おぬしがそれほどまでにこだわるとは、珍しいこともあるものだ。あの疑うことを知らぬ葉瞬光がな……ここへ来てから何かあったのか?それとも、『誰か』が……」

 

……今、ちらっと俺を見た?気のせいか?

 

「そ、そんなことないけど……ただ、放っておいちゃいけない気がして……」

「よかろう。明日の夕方、関係するものを適当観に集めさせる」

「やった……!」

「むろん、花の件だけではないぞ。おぬしの兄についても、最終的な判断を下さねばならん。情報をまとめ、雲嶽山の弟子全員に対して、責任を以て説明せねばならんのだ。分かっておるな」

「は、はい……!」

「分かっているのならよい。よいか。自分が何者であるかを片時も忘れるな。おぬしには天賦があるのだ。その手にある剣共々、無駄にしてはならん」

 

陸のおっさんはそう言い、立ち去る……その時、俺とすれ違う瞬間、一瞬立ち止まり、こちらにしか聞こえない声で―――

 

「おぬしの存在が、あの子にとって良いものとなるならば構わぬ……重荷ではなく、な」

『ああ?』

 

なんだコイツ……えらい偉そうな態度だな……

そう思っていると、瞬光さんが謝ってきた。

 

「ごめんね、変な空気にしちゃって……陸老師って、いつもあんな感じなのよね。雲嶽山の名誉を何より大切に思ってる人だから……悪気があるわけじゃないの」

『名誉……ね』

「結局何者なの、なの陸老師って……雲嶽山の大先輩的な?」

「陸老師は雲嶽山の……古株かな。師匠がいないときは、だいたいあの人が色んな事を代わりに取り仕切ってるわ」

 

古株……妙だな。確か師匠の話では、師匠以外の門下生はほとんどいなくなったって……

 

「陸老師は戦う人ではなかったから。あの人は雲嶽山の守り手……みんなが山を下りたあの時、老師は弟子達の家族を避難させる役目を任されたの。だから、惨劇を生き延びることができた。でも……あの人がここまできたっていうこと、今起きてること、雲嶽山は相当重く受け止めてるのね」

『……それにしては、瞬光さんにはだいぶ厳しくなかったか?』

 

あと、なんか睨んでたし……

 

「うん……『青溟剣の継承者』になったからには、それにふさわしくあれっていうことだからだと思う。ただ、ちょっと……期待が大きすぎるっていうか」

『……』

「はあ、このくらいにしましょ。もうこんな時間だし、明日の準備もしなきゃ……じゃあ、また明日ね!」

 

瞬光さんは軽やかな足取りで角を曲がっていった。

その姿はどこにでもいる普通の少女のようだったけど、小さな背中に、俺は想像もできない何かを背負っているように思えた。

……?俺今何を……

 

「タンザナイト?どうしたの?」

『……っ。いや、何でも……さっ、俺らも明日に備えておくか』

「?……まぁいいや、わかったよ。タンザナイト」

 

俺たちは約束の日までしっかりと休むことにしたのだった……

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