転生先はエーテリアス   作:YEX

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作戦会議

side タンザナイト

 

一夜が明けた後、約束の会議の時間を迎えた……

 

そこには、福福さん達以外にもダイアリンたちもいた。

瞬光さんは傍らに立ち、俯いたまま、無意識に俺の手を握っていた。

 

「皆、揃ったようだ。始めるとしよう。今回、各々方にお集り頂いたのは他でもない。各関係者から情報を集め、現状を整理したうえで、葉釈淵の処遇について話し合うためだ。それでは、宗主」

『「ああ。すまない、ちょいと事情があってな……今回はこのような形で参加させてもらう。釈淵の件を聞いてすぐ、澄輝坪に引き返すつもりだったが……メイフラワーから緊急の頼みがあってな」』

 

メイフラワーからの依頼?一体どんなものだ……ただならぬものだとは思うが……

 

『「なんでも、零号ホロウに異常事態があったとかで、人手が足りないからと、私と対ホロウ六課の何人かが駆り出された。思いのほか難航していてな。しばらくはここで離れられそうにない。『始まりの主』に関することは、既に陸老師から聞いている……事が重大なだけに、メイフラワーにも報告済みだ。ただ、伝聞だけでは何かと漏れているかもしれないからな」』

『「―――よって、当時その場にいた皆には、状況をもう一度簡潔に説明してほしい。正確な判断を下すためにもな」』

 

そう言うと、先にダイアリンが簡潔に説明し始める。

 

「それじゃあ簡潔に言いますが……まず、讃頌会のサラ達が起こした一連の行動は、『始まりの主』という存在を召喚ないし呼び覚ますという目的に沿ったものでした。そして彼女たちとおたくの大兄弟子が協力関係を結んだように見えたのは、その実、葉釈淵側の偽装……彼の本当の狙いは、『始まりの主』が寝ぼけているうちに、それを滅ぼしてしまうことだったんですね。とはいえ、往々にしてそう上手くはいかないもんです。彼は自分の力を過信しすぎましたね。『始まりの主』……少なくともその力を受け継いだフクロウにボコボコにされ、あたしたちの前にぼろ雑巾のように捨てられて、あのフクロウと対面しました」

「うむ。そこに活路を開いたのは瞬光とタンザナイトであった。あの子たちの助けあって、我輩たちは『始まりの主』の力をもった野鳥を打ち砕いた」

「あの時、びっくりしたよ……タンザナイト、青溟剣を使う直前、瞬光を助けるために自らミアズマの渦に飛び込んで……息飲んじゃったよ」

『「ああ、私もしかと聞いた。瞬光……お前さん、やはり青溟剣を抜いたんだな?」』

「ご、ごめんなさい……師匠……」

 

と、俯く瞬光……まぁ確かにやばいと思って、急いで突撃したけど……

 

『「剣をお前さんが継承したとき、確かに言い含めたな。よほどのことが無い限り、あれを剣棺からだしてはならないと……」』

「でも師匠!あのときはお兄ちゃんもみんなも……絶対絶命だったの!あれ以上に『よほどのこと』なんてなかったし、それに――!」

 

瞬光が早口になりながらも、師匠はたった一言で止める。

 

『「聞け、お前さんを責めているわけじゃない。よほどの危機だったことも本当だろう。だが……剣を抜く前に、お前さん自身のことは考えたか?……まぁいい、概要はこのくらいだろうか。何か補足したい者は?」』

「我輩たちは、悪しき者との戦いに勝利した。だが釈淵は、混乱の最中に姿を消し、その行方は見当もつかぬ……」

『「そうだな。あいつの居所は……私がどうにか、引き続き追ってみせる」』

「宗主。葉釈淵は讃頌会と結託し、澄輝坪の安全を脅かしただけでなく……我ら雲嶽山の名誉を大きく損ねた。引き続き調べるなどと、悠長なことを言ってよいのだろうか」

『「言っていなかったが……適当観を離れる前、釈淵のやつを探すべく、何度か青溟鳥を放っていた。それが一度、運悪く讃頌会に捕まったことがあってな」』

 

あっ……確かそれ、俺が吹っ飛ばされたときにあったな、そういや……

 

『「どうにか帰ってきた青溟鳥を検めていたところ、釈淵があの子を介して、()()()()()()()()()()()()()があったんだ。うまくいかなかったようだがな……つまり、『釈淵が雲嶽山を裏切った』、という点については今のところ疑問の余地がある。だからこそ、とっととあいつを見つけ、当人の口から真実を聞く必要があるということだ」』

「きっとしょうがない理由があったに決まってるわよ……!お兄ちゃんがみんなを裏切るなんて、あり得ないもの!」

「……事情はどうあれ、葉釈淵が雲嶽山の名誉を傷つけたことに変わりはない。詳しい話は、あやつが雲嶽山に戻ってからするとしよう」

「あ、最初の話を捕捉してもいいですか?サラが『始まりの主』を呼んだ時、あの場に黒い霧が出てたのを思い出しました。試しに払おうとしてみたんですけど……どんな攻撃も通用しなかったんですよねぇ」

『「攻撃が通用しない、か……」』

 

と師匠は何かを考え込む。

 

「かの黒い霧は形を持たぬゆえ、刃も術も通じぬは道理。『始まりの主』が操っていた悪しきものと同様、形をとるよう、凝固させねばならぬだろう」

『「なるほど、理解した。そいつが恐らく、『始まりの主』の力……その本質的な部分なんだろう。とはいえこれに関してはメイフラワーの方でも独自のルートから調査を進めるつもりだそうだ。私たちはしばらく手を出さないでおくのがいいだろう。とりわけ瞬光、お前さんはな。しばらくは適当観で静養に専念しろ」』

「でも、私……」

 

瞬光さんは何か言いたげそうな感じだが、福福さんが割って入ってくる。

 

「瞬光ちゃん、お師匠様の言う通りですよっ!この前も倒れちゃったばっかりなんですから、無理をしちゃダメですっ!」

「そうだぞ、瞬ちゃん。どのみちお師さんと市長が調査してくださるなら、俺たちの出る幕はない。少しくらいは休んだって罰は当たらんさ!」

「青溟剣の力は雲嶽山の誇りであり、剣主が背負うべき責任でもある……とはいえ今は、剣を抜くべきではないだろう。その力は、人々のために振るうべきものであり―――私情で無暗に振り回してよいものではないのだからな。よって、宗主の判断に同意する。葉瞬光、今は休むのだ」

 

……確かに、師匠やおっさんの言ってることは正しいんだけどさ……

 

『――瞬光本人の意見はどうなんだよ?一応当事者わけだし……』

「タンザナイト……」

 

瞬光さんは目でこちらに謝意を伝えると、身なの視線に真っ直ぐと向き合った―――

 

「私も、調査に参加したい!剣棺を開かなくたって、きっと皆の役に立てることがあるはずだから……お願い――」

『「だめだ。青溟剣の反動を避けるため、お前さんは今後、関わりのありそうな危険には一切近づくな。この点について、議論の余地はない」』

 

……やっぱり師匠、青溟剣のヤバさが理解してるから……

 

『「皆に異存がないようであれば、私はこれで切るぞ」』

「宗主の決が下された以上、この集まりはこれにて解散としよう。各々方の協力に感謝する」

「……」

 

空気が張りつめ、沈黙が広がる。

瞬光さんはそっと肩を落とし、指先で頬を拭った。

そして皆の視線を避けるように、そのまま一言も発さず、駆けだしていった。

 

瞬光さん……

俺は落ち込むような瞬光さんの後を追うことにした……

 

 

NOside

 

タンザナイトが瞬光さんの後を追う中、リン、アキラ、福福は瞬光の記憶喪失の可能性ついて師匠に相談することとなった……

 

「お師匠さま!あたしたち、本当に瞬光ちゃんのことが心配なんですっ!もし……もしですよ?本当に記憶喪失らしい兆候があったら、なにか和らげる方法ってないんですか?」

『「……ない」』

 

儀玄は喉に詰まるような言葉で否定する。

 

『「歴代剣主の記録によれば、記憶喪失そのものが兆候にすぎん。ひとたびそうなれば、剣主の体は徐々に蝕まれていく。止める術はない」』

「そんな……でも……」

『「だが私が研究してきた限り、剣棺が無事で、瞬光が青溟剣の『真の力』を使いさえしなければ、()()()剣が影響を及ぼすことは無い。ゆえにお前さん達にできるのは、あの子をしっかりと気にかけることだ。決して、再び青溟剣を抜かせるな」』

「分かりました、お師匠様。瞬光ちゃんのこと、しっかり気にかけておきますっ!」

『「それと……さっきの集まりでは、私も少し大人げなかった。瞬光が皆の力になりたいだけというのは、充分分かっている……だが姉様のことを思うと、どうしても……な」』

 

儀玄の目には惨劇がしっかりと焼き付いていた……

 

『「私はこれ以上、あの剣のせいで誰かを失うことをよしとしない。それが、宗主たる私の守るべき弟子なら……なおさらだ。あの日、青溟剣に()()()()()()()のが私であれば、どれほど良かったか」』

「お、お師匠様、そんなに自分を責めなくても……きっと瞬光ちゃんも、心配してくれてるってことはわかってますからっ!」

「ん?まって師匠、それって……青溟剣は、自分で剣主を選ぶって事?」

『「ああ。記録にある限り、青溟剣の歴代剣主は全て、剣が自ら選んだ者だ。選ばれし者だけが剣と共鳴を起こし、その力を行使できる。だがこれだけの年月が経っても、私たちは、青溟剣が剣主を選ぶ基準を解き明かせずにいる。どうも実力の強弱や才能の優劣とは、直後の関係がないらしい」』

 

儀玄が話を続けると、どうやら、瞬光は偶然にも剣棺を保管していた禁足地に迷い込み、うっかりそれに触れ、青溟剣の繋がりを強いられたらしい……

 

「……」

「あの、お弟子ちゃん……どうしました?何やら真剣な様子で……」

「……あのね、もしもの話なんだけど……さっき言ってたけどタンザナイト、瞬光を飲み込まれる瞬間、駆け寄ってたんだけど……ちらっと見えたんだよね……タンザナイトが青溟剣を手に取ったところを

『!!』

「もしも、もしもだよ?その時、青溟剣は瞬光よりもタンザナイトを選んだ可能性があるのかもしれない……」

『「……可能性としては―――ありえなくもない。なにしろ、情報が少なすぎる。一概にない、とはいいきれない」』

「そ、そんな!お弟子ちゃんが……もしかしたら記憶喪失に!?」

『「……やることが増えたな。取り敢えず、瞬光とタンザナイトの様子を見ていてくれ、兆候がどちらかに来るかもしれん」』

 

儀玄がそういうと、申し訳なさそうな顔をする。

 

『「それと……もしタイミングがあれば、師匠が申し訳なさそうにしていたと瞬光に伝えろ」』

「うん、分かった」

 

師匠はため息をついて、電話を切った。各自用事があるとのことで去って行った……

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