side タンザナイト
瞬光の後を付いていくが……見失った。
部屋にいると思い、覗くが……誰もいなかった。
どうしようか―――ん?机の上に日記か?それらしいものを発見する。
『……ちょっとみてみるか』
ざっと目を通すと、びっしりするほどの文字が書きこ乗れている。何かが詳細に記録されているみたいだ……
なんだか後ろめたい気持ちになり、深く読まずにすぐ、日記を戻す……
その時、背後から聞き覚えのある……そして驚きと焦りの入り混じった声が響いた。
「タンザナイト……!ど、どうして貴方がここにいるのよ……?」
『えっ……いや、その……さっきは落ち込んでいたから、心配になって……』
そのとき、太った茶トラが部屋の隅からひょっこり現れた。こちらを見ると、得意げに『にゃーお』と鳴いて足元を悠々と通り抜けていった……
すると、瞬光さんは落ち着いた様子でお礼を言う。
「あれがと、私なら大丈夫だから。でも、それ……私の日記……」
『あーその……すまん、ちらっとだけ見えたわ……』
「まあ……別に、貴方になら見せたっていいんだけど……特別なことなんて何も書いてないわよ。些細な日常ばっかりっていうか……」
言葉が終わらぬうちに、背後からまた聞き覚えのある声がした……
「ああっ、みんなここにいたんですねっ!よかったぁ、ちょうど探そうと思ったんです!」
『福福さん?』
「あのっ、瞬光ちゃん!さっきの集まりのことですけど……お師匠様から伝言を預かったんですよ、さっきは悪かったって」
「うん……ありがと、福姐さん。師匠は私を心配してくれたんだって……それくらいのことはわかってるから」
ほんの一瞬、瞬光の顔に寂しさらしきものが浮かんだが、すぐにそれは収まり、お馴染みの愛らしい笑顔に変わった。
――まるで、何事もなかったかのように。
「とにかく、二人とも、気を遣ってくれてありがと」
『……なぁ、瞬光さん。いつまでも
「……分かった。でも安心して。私、本当に平気だから」
瞬光さんは若干驚きつつも、了承した。
「……それと、お師匠つまからもう一つ頼まれているんです。記憶に関して、ちょっとテストをしてみてほしいらしくて……あんまり気負わず答えろ、だそうですっ!」
「ええっ……福姐さん、私まだ質問に答えなきゃいけないの?」
「まあまあ、ほんとに気負わなくていいとのことですから……それにあたし、記憶テストしようにも、何を聞いたらわかんないので……最近一緒にいた人にお任せしたいです!三つくらいでいいですよっ!」
最近一緒にいた……となれば俺か……
『うーん、じゃあ……俺たちが初めて会ったのは、二人で何をしてた時だっけ?』
「初めて会った時……うん、適当観のことを言ってるなら、あの太っちょの猫ちゃんを助けたわよね。どう?」
うん、合ってるな……じゃあ次は―――
『火を囲んでお喋りした夜……皆で星を見上げながら、恥ずかしい話大会したよね。竣工はどんな話をしたっけ?』
「えっと……対してお金を持たないで雲嶽山から出て来ちゃって、あやうく質屋のお世話になるところだった……それで青溟剣以外だったら、もう何もかも質にいれちゃってもいっか……とか言ったわね」
そうそう、聞いた時一瞬『!?』ってなってたな……
じゃあ最後は―――
『じゃあ、最後の問題は……瞬光さんは弟子からなんて呼ばれるのが一番好きだったかな?』
「え、ええ?なによそれ、ちょっと唐突なんじゃない?」
「えへへ、これはあたしにもわかりますよっ!
「あ……『姉弟子』……」
『ん?聞こえないな。もっと大きな声で言いなさい』
「だ、だから!『姉弟子』って言ってるじゃない!もう、意地悪なんだから……」
と、瞬光さんの顔が赤くなりながら言う。
フフッ……カワイイッ!!
「うんうん、これならなーんにも心配することなんてないですよっ!―――と言うわけで、次はお弟子さんの番です」
『え?』
え……俺も!?
「え?福姐さん、何でタンザナイトも?」
「お師匠さまが言うには、お弟子さんも青溟剣に触れたから一応テストする必要があるらしいので!」
『あー……』
そういえば、あの時一瞬だが、触れたような……
「ふっふっふっ……なら、私の恥ずかしい思いをここで晴らさせてもらうわ~」
『あの……目が怖いんだけど??』
「覚悟しなさーい!」
『ア゛ーー!!』
―――
――
ー
軽い質問をした後、福福さんは安心したのか、戻っていった。
……瞬光さん、最後なかなかなところ責めたなおい……
部屋に戻ろうとした時、瞬光さんに止められる。
「ごめんね、その……まだちゃんとお礼を言えてないと思って。ありがとね。会議の時、私のこと、庇おうとしてくれて……」
『いや、お礼なんて……』
「ううん、私が『調査に参加したい』って勇気を出して言えたのは、貴方がそう言ってくれたお陰だもの。私にとって、これは大きな進歩なんだから!……なんて、役立たずの言う台詞に聞こえちゃうよね……?」
『そんなことないぜ。瞬光さんはよくやってるよ』
そう言うと、瞬光さんは少ししょんぼりになりながら言う。
「……私、わかってるの。師匠も、雲嶽山の皆も、本当は私のことすっごく心配してくれてるって。でも、そういう気遣いが……まるで私をガラスで出来た置物ものみたいに扱ってるって、思わずにはいられないわ。みんな、私を丁寧に拭いたり、守ったり、傷一つつかないように神経を張り詰めてる……」
『……』
「でも私は、後ろで守られるよりも、みんなの傍に立ちたい……こういうのって、ワガママだし、いけない考えよね?だってみんな、私の為にやってくれてるのに……ごめんね、愚痴をいっぱい聞かせちゃって」
と、瞬光さんは今まで溜めていただろう鬱憤を話してくれた。
言い切った瞬光さんに俺は大丈夫と、安心させる。
『平気だよ。話したい時は、いつでも付き合うぜ?』
「……うん、ありがと、タンザナイト……そうだ。貴方、最近はずっと雲嶽山で練習してるわよね?何か分からない人があったら、この姉弟子に聞きに来てもいいのよ!えへへ、手取り足取り教えてあげる!」
『そうか……ならお願いしようかな?』
「ふふ……あっ、いつの間にかもうこんな時間!じゃあ……これ以上は流石に悪いし、また明日……かな?」
『ああ、また明日』
そう言い、部屋から出て、瞬光さんがこちらに向かって、大きく手を振っている。その笑顔は月の光に照らされて、ひときわ優しく見えた。
俺は部屋に戻り、ベットで一休みしようと手に取ったその時、不意に声を聞こえてきた。
これは……誰かが俺の名を呼んでる?
コソコソと、扉を開けてみると……人影らしき人物が見えたその時、煙のように消えてった……
『……まさか―――オバケか……まさかね~……』
急いで後をつ
いてみるが……それらしきものはいなかった。
ただの気のせいか?……ん?
「にゃーお」
ふと、振り返ると、そこには太っちょの茶トラ猫がいた。
……ん?こいつよく見ると、目線が俺じゃないほうに向いてるな……え?誰かいるの?
『……っ』
振り返ってみると、そこには―――誰もいなかった。
『?』
「……っ!ニャァァ……!」
すると、猫が何か威嚇する声がした。
その声に振り返ってみると―――草が動く。
『―――まさか……!』
そして草むらから飛び出たのは―――
「チュー……」
タダのねずみだった。
なんだ……焦った……
『ほっなんだ……』
「タンザナイト……」
『っ!?』
安心しきっていると、急に誰かに声を掛けられた。
振り返ると、そこには、屋根の上に誰かが座っていた。
あれは……瞬光さん!?なんか白いぞ!?
「やっと会えたわね!」
『お前……誰だ?瞬光さん?』
「ふふ……いつもの、お利口さんの姉弟子だと思った?」
そう言いながら、ふわふわと、下へ降りてきた。
「残念。今ここにいるのは―――生きるのに必死なケモノ……」
白い瞬光さんの眼には、赤く、まるで血のような真っ赤な目が俺を見つめていた……