side タンザナイト
話が決まった俺たちは、照さんが言っていたロープウェイへ向かう。
そこには、照さんが堂々と立っているのが見えた。
「やっぱり来てくれたね。君達なら、正しい選択をしてくれるって分かってたよお」
「待って、照さん。一つ聞きたいことがあるの」
「もちろん、なんでも聞いて!」
「ラマニアンホロウが不思議な拡張をしてるから、調査がしたい……って話だったけど、貴方はTOPSの人なのよね?その……わざわざ
「うーん……瞬光ちゃんがそう思うのもわかるけどねえ」
主にルクローとかフェロクスとかフェロクスとか……!大体が碌な人じゃなかったからな……
「あっ、TOPSのいち部門って言ったのはザオちゃんだし、黒枝とTOPSを同一視しちゃうのも無理ないって事ね。ある意味ではそれも正しいけど……あくまでザオちゃんは、TOPSっていう大きな括りそのものじゃなくて、『クランプスの黒枝』に属してるから。ザオちゃんたちのオシゴトは『審査』と『裁定』、それから、『ルール』を守らせること」
『ルール……』
「このあいだ、澄輝坪に派遣されたTOPSの役立たずな子たちが、ザオちゃんたちの『裁定』対象だったみたいにね。あんまりあの人たちと一緒くたにしないでほしいかな。それに組織って、大きくなると中がゴチャゴチャしてくるっていうのは、もう不可抗力みたいなものだから」
「その、つまり―――」
「ザオちゃんは、責任をもってこのオシゴトをしてるの。いまの澄輝坪を管理してるのが黒枝だってこと、忘れないでねえ。世の中は結局『等価交換』―――ザオちゃんたちは、澄輝坪からたくさんのものを貰ってるんだから、澄輝坪を守る責任もあるよね。もらいっぱなしじゃ筋が通らないもん」
『……』
等価交換……ね。なんがか、それにこだわっているように感じる……
「雲嶽山はどお?ラマニアンホロウは今おかしなことになってるけど、なんだかそれどころじゃないって感じだよねえ。瞬光ちゃんも、お兄ちゃんが心配で仕方ないみたいだし……確かに、ザオちゃんたち悪ーいビジネスのほうが、澄輝坪のことを心配してるみたいになっちゃう……変なの!」
「わ、私は……」
タジタジ担ってる瞬光さん、すかさず俺はフォローにはいる。
『勿論、澄輝坪が危ないのなら黙ってはいられない。でもホロウっていうのは、基本的に拡張していくものって聞いてるし、そこに異常のあるデータってのは、まだ照さんしか持っていないんだろ?』
「うんうん、流石エーテリアスくん。花マルの解答だよお!でも ザオちゃんのデータによると、拡張速度はもう、とっくに基本的ってレベルじゃないかなあ。もちろん本当のところは、ホロウの中で調べてみないと分かんないけどねえ」
『まぁそうなるか……』
「安心してよお!ホロウに入ったら、葉釈淵の手がかりもちゃんと教えてあげるよお」
そう言い、照さんが今回の目的を整理する。
「じゃあ、おさらい。ザオちゃんたちの目標は、ラマニアンホロウに現れた謎のエリアで、ホロウの拡張と異常なミアズマについて調査をして、その原因を突き止めること。目的地までは凄腕のプロキシが必要だったし……それと、白いお花と異常なミアズマの関係をハッキリさせるためには、それと共鳴できる青溟剣を扱う、剣主の協力が必要……うん、こんな感じかなあ」
『ガイドは……こっちの高性能AIがいるから大丈夫だ』
「そのなの?なら安心だねえ!じゃあ、さっそく出発~」
そう言い、早速目的の場所へむかうのだった……
船で向かった先は何やら船乗り場のような場所に着いた。
「この先は長い事廃校になってる輝磁の鉱区だよお。輝嶺石を加工する工場もあったみたい」
『へー……そんな場所が……』
「もうすぐで着くよ」
船から降りて、少し歩いた後、瞬光さんが突然足を止め、青溟剣の剣棺を見つめた……
「気のせいかな……いま、青溟剣が震えたような……?」
『早速反応が……?瞬光さん、何かあったらすぐ言ってくれよ。一回戻って確認してもいいんだからな?』
「そ、そんな大げさな感じじゃないから……剣棺の中の青溟剣が、何かと共鳴したみたい。ここのエネルギーかな……」
「やっぱり?何か関係があるとは思ってたけど、早かったねえ」
照さんがそう言うと、『Fairy』が伝えに来る。
[マスター、このエリアから検出されたミアズマはことのほか異常です]
『確かに……明らかに変だ。今までのミアズマとは全然違う……』
「違うって?濃度のこと?」
『濃度……じゃないな、この感じ……』
この辺のミアズマ、今までより胸がザワザワする……
「ちなみに、ザオちゃんが調べた感じたと、ここは廃坑になって、もうずっと使われていないみたい。ここで何があったかなんて、もう誰も覚えていない……それどころか、『始まりの主』の力を持った怪物を君達が倒すまで、入口さえなかったんだから。本当なら、『無人区域』なのは明らかだねえ」
『無人区域……』
「情報共有はこれでおしまい。葉釈淵をみかけた具体的な座標も、いまみんなに送ったからね。ザオちゃんが調べたいのはあっちだから、ここからは別行動。お兄さんの痕跡を探した後に、4また合流しよお」
えっ?ここから別行動?一緒に行ってくれるんじゃねの?
「んー……君達は、ザオちゃんの調査を手伝ってくれて、ザオちゃんが、葉釈淵の手がかりを教える……それが、『等価交換』だったよね?でも、お兄ちゃんの調査を手伝うってお話はしてたかなあ?ザオちゃん、タダ働きはしない主義なんだあ」
「そ、そんなつもりで言ったわけじゃ……!」
『誤解だって照さん!瞬光さんはタダ、心配してるだけだよ!こんな場所だし、一緒に動いたほうが安全だろ?』
「君の目の前にいるのはねえ?いま黒枝にいる裁決官で唯一、
一度も、か……そんなことを言うってことはよっぽどの自信を持っているのか……
「君達は葉釈淵のこと、ザオちゃんはホロウ拡張と異常なミアズマの原因調査……それぞれやることやって、終わったら、埠頭で合流しよお。なるべく早く来てねえ」
そう言うと、照さんは俺たちに引き留める隙も与えず、行ってしまった……
「『常勝不敗のザオちゃん』……そんなに凄い人なら、本当に心配いらないのかな……」
『さあな……自分で言うんだから相当自身があるんだろうな……』
「はあ。教えてもらった座標に沿って、まずは倉庫を調べてみましょ」
そうして、俺と瞬光さんは照さんから貰った座標に沿って向かうのだった。
途中、襲ってくるエーテリアス達をなぎ倒しながら進んでいると……なんか見られないボンプがいるな……?
「異常なミアズマが……ますます強く……っ!?」
『あっ』
俺たちを見かけるやいなや、倉庫の奥へ入っていった。
『ここって『無人区域』だろ?なんでボンプが?』
「それに、今『異常なミアズマ』って言っていたわ……後を追ってみましょう!」
急いで、謎のボンプの後を追い駆ける。
途中、
[マスター、前方に正体不明のボンプを確認。型式番号を照合……失敗。新エリー都の公式データベースに、該当するボンプは存在しません]
『え?ないの?』
[警告:対象のボディから、高レベルの知能データ体を検出。構造は既存サンプルと部分的な類似が見られますが、完全に一致していません。警戒しつつ接触することを推奨します]
『Fairy』がそう言い、慎重に近づいてみると……そのボンプは機械的な言葉を淡々と放っていた。
「エラー……データエラー……再編成を試行……」
「この子……共通語を話してない……!?独り言?それとも言語モジュールに不具合があるのかな……」
『ちょっと怪しいが……話を聞いてみるか……』
「データ……再編成……統合……」
「―――やあ友達、見えてるよ。会えて嬉しい、僕はロックスプリングだ。見ての通り、壊れかけのボンプさ」
『シャベッタァァァッ!!』
「君だってエーテリアスなのに喋っているじゃないか」
『おう、急なマジレスやめーや』
「えっと……貴方、どうして一匹でこんな所にいるのよ?道に迷っちゃった?」
「ごめん。それは僕にも分からないんだ。記憶モジュールに問題が起きてるらしい……状況を認識したときには、もうこの辺りにいたんだよ。ずっと歩き回ってたみたけど、出口が見つからない。
そうして、謎のボンプ「ロックスプリング」の話は続く……
どうやら、このボンプを作ったのは、『初代虚狩り』の一人、『ミス・サンブリンガー』らしい。当時のマルセルグループのCEOでボンプを発明した人だ。
そんな凄い人物に作られたのか……このボンプ。
このボンプは初期に製造した『高火力型戦闘用ボンプ』。型式番号は『GU-0001』……なんか物騒なボンプだな……
どうやらこの機種は運用開始から間もなく、様々な理由で生産中止になったらしい。長い年月が経った今では、ロックスプリングと同じ機種はほとんど廃棄されている。
新エリー都じゃあ見かけていないから、このボンプが唯一最後の機種になっているだろうな……
「でも今のボンプって、みんな大体戦闘のサポートができるわよね?」
『確かにな……』
色んな陣営のボンプを見てきたが、結構戦えていたぞ。
「そうだよ。けど、僕はそういうボンプとは違う。簡単に言えば……
『えっそうなの?』
「そうだよ。あ、もちろん、戦闘モジュールはもうとっくに壊れているから、危害を加えることはない。安心してもいいよ」
にしても『高火力型戦闘用ボンプ』か……きっと『ヒャッハァー!汚物は消毒だぁ!』とか言いそう。世界が世紀末に近いから……
『というか、何で戦闘用ボンプを作ろうとしたんだろう……』
「ミス・サンブリンガーが創り出したボンプには、すべて設計段階から、使命が与えられてたんだ。退屈で煩雑な作業を肩代わりするためのボンプもいれば、日常の中で、ただ寄り添うためだけに生まれたボンプもいる。そして何より,ミス・サンブリンガーは、人類を誰よりも深く愛していた」
『人類を……愛していた?』
「そう。だからどんな形であれ、ボンプという存在は全て、人類に尽くすためにあるんだ。彼女が『高火力型戦闘用ボンプ』を造った理由も、僕達の深層コードに刻み込まれている。それは、たったひとつの最上位命令―――『人類を守ること』。僕は人類を守るために創られた」
そんな理由で造られたのか……サンブリンガーは本当に人類を尊重しているんだな……
「でも今や、その使命を果たすための力はもうない……『守る』ことも、出来なくなった。たぶん僕の行きつく先は、仲間たちと同じだ。あの冷たい廃棄処理場で、静かに忘れ去られていくんだろう……」
「そ、そんなこと言わないで愛して私がホロウから連れ出してあげる、外に出たら、きっと直す方法も見つかるわよ!」
「もう時間が経ちすぎた。きっと、今の新エリー都に、僕みたいなタイプのボンプがいたことを覚えてる人なんていない。ましてや、修理してくれる人なんていないよ――でも本当にありがとう」
と、ロックスプリングはお礼を言う……
にしても……純粋の疑問なんだが―――
『なんで生産終了したんだろう?戦えるボンプなんて、機種としてはいいのに……』
「維持コストが高すぎたことと、他のモデルに比べて、故障もしやすかったせいだと思う。僕がその一例だ。今は記憶モジュールも、戦闘モジュールも、言語モジュールさえ損傷してる」
結構深刻な重症だった!?それでなんで動けんだよ!?
「理論上、とっきに廃棄されててもおかしくない。なのにどういうわけか、意識だけは残ってるんだ。もうどこにも行くところがない。だからこうして、毎日この廃墟をさまよい続けてる」
「大丈夫よ、私達についてきなさい!外へ連れてってあげるから!そうだ、自己紹介がまだだったわね。私は葉瞬光。瞬光って呼んでくれたらいいわよ。こっちは私の弟弟子、タンザナイト」
『よろしく』
「私たち、雲嶽山の弟子なの。ここに来たのはお兄ちゃんを探すためで……あっ、それと、この辺りで起きてる異常を調査するためなの」
『そういえば、さっき『異常なミアズマ』って言っていたが……それって?』
「僕は戦闘用ボンプだから、周囲の環境の微妙な違いに気づけるんだ。最近この辺りで、前とはまったく違うタイプの異常なミアズマを観測してね。それが白い花に付着すると、花が変異するようなんだ。あの時はエーテリアスに追われてて、変異の過程を見届けられなかったけど……」
白い花に、異常なミアズマ……!照さんが言っていた通りだな。
「ねぇ、その花ってどこにあるかわかる?」
「白い花はたくさんあるから……あの見張り台に登って、探して見るといいかもしれない。このエリアで一番高い場所だから、周囲を一望できるはずだよ」
「いい考えね!タンザナイト、急いでいきましょ!」
『OK』
そうして、俺たちは戦闘用ボンプ「ロックスプリング」と一緒に見張り台まで移動することとなった。