転生したらルーミアだった!?   作:デスゴッド

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罪を喰らう者と救う者

「ッ……ここは……」

 

気付くと私はかんかん照りにひび割れた大地、草木も枯れ果てた地に立っていた。

 

「……魔王ゲルドの記憶を投影した精神世界……かな……」

 

「ルーミア!?」

 

「あ。リムル。」

 

「なんでここにいるんだ!?」

 

「魔王ゲルドについて、ちょっと気になることがあってね。『荒神(アラガミ)』に内包されているスキル『精神侵入(サイコダイブ)』を使って、ここに来たの。」

 

「わぁぁぁん……」

 

「えぇぇん……」

 

困惑の声を上げるリムルにそう説明しているなか、子どもの泣き声が聞こえてくる。

 

「ん?」

 

「あれは……オークの子ども?」

 

泣き声が聞こえた方を見ると、酷く痩せ細っているオークの子ども達が泣いているのが目に入る。

 

「腹が減っているのか?」

 

そんな子ども達に対し、二人の大人のオークが近づき、一人が目線を合わせるように膝を着きながらそう話しかける。

 

顔の左右にある二本の傷痕……豚頭魔王(今の姿)とは大分違うけど、間違いない……あのオークはゲルドだ。

 

「ちょっと待っていなさい。」

 

ミシミシッ!ブチンッ!!

 

「「!?」」

 

私がそう思いながら見ているなか、ゲルドは自らの左腕を引きちぎる。

 

「さぁ、食べなさい。」

 

引きちぎった後、ゲルドはその腕を子ども達に与え、子ども達は必死に食べる。

 

「たくさん食べて、大きくなるのだぞ。」

 

「「………」」

 

「王よ。もうお()め下さい。」

 

私とリムルが悲痛な面持ちで見ているなか、場面が変わり、さっきの場面でもゲルドと一緒にいたオークがゲルドの背後で(ひざまづ)きながらそう懇願する。

 

あのオークは黒フードを被っていた側近のオークか。

 

「この大飢饉のなか、王である貴方様まで(うしな)われれば、我ら豚頭族(オーク)には絶望しかありません……」

 

「……一昨日産まれた子は今朝、死んだ。昨日産まれた子はもう虫の息だ……この身はいくら切り刻もうが、再生するというのに……」

 

ゲルドはそう言いながら、再生した左腕を触る。

 

どうやら元から『自己再生』を持っていたみたいだね。

 

「これが既に『絶望』でなくて、何だというのだ……」

 

「………」

 

今のやりとりでわかった。魔王ゲルドは、いや、ゲルドは豚頭帝(オークロード)に進化するずっと前から『自己再生』を持つ自分の身を文字通りに切っては子ども達に与え続けていたんだ。それでも間に合わず、未来ある子ども達が『飢え』で死んでいく現実に絶望していた……

 

「!王よ。どちらへ?」

 

「……森に入って食糧を探す……」

 

「!?しかし、『ジュラの大森林(あそこ)』は暴風竜の加護を受けし場所……っ!!」

 

「その暴風竜が封印されて久しい……少しでも……僅かばかりの恵みを……」

 

ゲルドはそう言いながらオークの静止を振り切り、森へと向かって歩いていった。

 

「「………」」

 

「腹が減った……何でも良い……飯が食いたい……っ!!」

 

ドサッ!!

 

場面が変わり、空腹に堪えかねたゲルドは力尽きて倒れる。

 

「おまえに食事と……名をやろう。」

 

「ここでゲルミュッドと出会ったのか……」

 

「弱っているところを突かれたんだね……」

 

「あの方は俺に食事と名を与え、豚頭帝(オークロード)の持つ『飢餓者(ウエルモノ)』について、教えてくれた……」

 

そこに現れたゲルミュッドを見ながらリムルとそう話しているなか、背後からそう言うゲルドの声が聞こえてくる。

 

「俺が豚頭帝(オークロード)となり喰えば、『飢餓者(ウエルモノ)』の支配下にある者は死なない……飢えた仲間を救えるのだと……っ!!」

 

振り返ると、魔王ゲルドがこちらに背を向けながら語っていた。

 

「邪悪な企みの駒にされていたようだが、それに賭けるしかなかった……」

 

「………」

 

「だから、俺は喰わねばならぬ。おまえが何でも喰うスライムだとしても、喰われる訳にはいかない。」

 

「……腐食の過程がない分、喰い合いは俺に分がある……おまえは負ける……」

 

「同胞が飢えているのだ。俺は負けられぬ。」

 

リムルの言葉に魔王ゲルドは強い意思を宿した表情でそう言う。

 

「俺は他の魔物を喰い荒らした。ゲルミュッド様も喰った。同胞すら……喰った……」

 

「………」

 

「俺が死んだら、同胞が罪を背負う。最早退けぬのだ……」

 

「………」

 

「皆が飢えることのないように、俺がこの世の全ての『飢え』を引き受けてみせようっ!!」

 

「………」

 

よくわかった。エフィメラや『飢餓者(ウエルモノ)』だけじゃない………一族を、未来ある子ども達を想う心がゲルドをここまで強くし、突き動かしてきたんだ。

 

例えそのために歩んだ道が、業の深い茨の道だとわかっていても、ゲルドにはその道に進むしか選択肢がなかった。

 

だけど……

 

「それでもおまえは負ける……おまえが『飢餓者(ウエルモノ)』なら、俺は『捕食者(クラウモノ)』だ。だからおまえの罪も、おまえの同胞達の罪も俺が喰ってやるよ……」

 

私と同じことを思ったのか、リムルはそう言葉を紡ぐ。

 

「俺の罪を喰う?同胞のも含めて?」

 

「そうだよ。俺は欲張りだからな。」

 

パァァァ……

 

リムルがそう言った瞬間、リムルを中心に周りの景色が変わっていき、ゲルドも魔王としての姿から元の豚頭族(オーク)の王の姿に戻る。

 

「……ッ!!……おぉ……っ!!」

 

次の瞬間、目の前に広がる青々とした森に澄んだ水が流れる川、何処からか元気な子ども達の笑い声も聞こえる自然豊かな光景にゲルドは涙を流す。

 

「ッ……強欲な者よ……俺の罪を喰らう者よっ!!……感謝するっ!!……俺の『飢え』は今……満たされた……」

 

パァァァ……

 

ゲルドはそう言いながら、光の粒子になっていく。

 

「……ねぇ。ゲルド……ちょっと良い?」

 

「……おまえは……」

 

「私はルーミア=テンペスト。貴方達の罪を食べたリムルの相方。貴方に提案があるんだけど、良い?」

 

「提案だと?」

 

「貴方も私達と一緒にこの景色を現実のものにしてみない?」 

 

「!?なに?」

 

「このままだと貴方の魂もリムルに取り込まれる。でも今、貴方と私は繋がっている。その『繋がり』を使えば、貴方の魂を私の中に移すことができる。その上、私のスキルを使えば、貴方の新しい身体を用意できる。」

 

「!?」

 

私の提案にゲルドは驚愕の表情を浮かべる。

 

「……貴女の提案はありがたい。だが、俺は罪深き魔王だ。そんな俺も救われて良い筈が……」

 

「……『魔王ゲルド』はもうじき死ぬ。だから、これからは生まれ変わったつもりで償いをしていけば良いと思う。」

 

「生まれ変わったつもりで……」

 

「私はエフィメラの『闇』にも負けない、貴方の子ども達を想う強い心を知った。そんな貴方だからこそ、子ども達の未来を見届けてほしい。」

 

「!?子ども達の未来……」

 

「良いよね?リムル。」

 

「あぁ、俺は良いぞ。おまえを喰うのは、それしか攻略法がなかったからだ。おまえの想いを知り、ルーミアの“力”で生まれ変われるのなら、俺達と一緒に町を作ってみないか?」

 

「町だと?」

 

「うん。『皆が楽しく暮らせる町』だよ。貴方も、私達と一緒にオーク達も笑って暮らせる町を作ってみない?」

 

私はそう言いながら、ゲルドに手を差し出す。

 

「ッ……俺は本当に赦されるのか?同胞達と笑って暮らせるのか……っ!?」

 

「そんな未来を、私達と一緒に作るんだよ。ゲルド……」

 

今にも号泣しそうなゲルドに対し、私は優しい笑顔でそう言う。

 

「ッ……感謝するっ!……我ら一族を救いし者よ……っ!!」

 

対するゲルドはそう言いながら私の手を取る。

 

「それじゃあ私はゲルドを連れて、先に精神世界(ここ)から出るね。」

 

パァァァ……

 

私はそう言いながら、ゲルドと共に光になっていく。

 

「おう。また後でな。」

 

そう言うリムルの言葉を聞きながら、私とゲルドはその場から消えた。

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