武装国家ドワルゴンとの同盟が成立してからというもの、
大抵は国の王となったリムルとルーミアへの挨拶や町への見学、その庇護を求めてのものだが……
「ヒャッハァーッ!!イイ町じゃねぇか!!」
「今日から贔屓にしてやるぜぇぇぇっ!!」
このような何処ぞの世紀末のような輩もいる訳で……
「ようこそ。魔都リムルへ。」
そういう輩は紫苑によって半殺しという形で鎮静化されるのがお決まりの流れになっていた。
「スライムトガキガ王ダト?フザケヤガッテ……」
人型のゴキブリのような魔物がそう悪態を吐きながら、仲間の人型蟲系魔物達と共に木々の隙間からリムルを抱っこしながら散歩しているルーミアを観察する。
「シカモ、襲ッテキタ相手ハ絶対ニ殺サナイオ人好シダソウダ。」
「ジャア、ソノ座モ笑顔デ譲ッテクレンジャネェガッ!?」
「「「!?」」」
「!?ダ、誰ダッ!?」
そんななか、一人の人型蟲系魔物が上へと吊り上げられ、他の人型蟲系魔物達は上を見上げる。
「確かにあの方々はお優しい。おまえらのような輩ですら『殺すな』と命じられる程に……」
そんな人型蟲系魔物達に対し、木の枝の上から『鋼糸』で一人を吊り上げた蒼影はそう言いながら刀を引き抜く。
「だが、『
「ルーミアさんは『程々にね……』とも言ってましたけどね。」
「「「「「!?」」」」」
「?なぁ。今、悲鳴みたいなの聞こえなかったか?」
「白老とブラッドレイ、ピッコロの三人がゴブタの訓練レベルを上げるって言ってたからそれじゃない?」
「あぁ~、なるほどな……」
「半日程晒した後に回復薬を与えて放逐しろ。」
「「「「「ハッ!!」」」」」
「うわぁ……また派手にぼろぼろにしましたね……生きてるんですか?これ。」
人型蟲系魔物達を半殺しにした後、そう指示を出す蒼影に蒼華達5人のドラゴニュートがそう返事をするなか、海華はしゃがんでつんつんしながらそう尋ねる。
「文字通りの虫の息ですがね。」
「あのお二方を侮ればどうなるか……良い見せしめになるだろう。」
そんな海華に対し、鬼鮫と蒼影はそう答えた。
ルーミアSide
「「!?」」
「リムル!!」
「あぁっ!!」
こちらに向かってくる大きな魔力の気配に気付いた私はリムルを抱えたまま町を飛び出し、森の中を駆ける。
この感じ……『
町から十分に距離を取った後、私はそう思いながら立ち止まり、リムルと共に空を見上げる。
キィィィィィッ!!
すると、上空を飛んでくる“何か”が私達目掛けて急降下してくる。
「「ッ!!」」
ドカァァァンッ!!
私がリムルを抱えたまま咄嗟に避けた直後、“それ”は先程まで私がいた地点に落下する。
「くっ……」
「ッ……」
「はじめまして。ワタシは唯一人の
落下地点から吹き荒れる突風と衝撃にリムルと共に耐えるなか、砂埃の中からそう言う少女の声が聞こえてくる。
「おまえ達がこの町で一番強そうだから、挨拶に来てやったのだっ!!」
次の瞬間、砂埃の中からプラチナピンクのツインテールになにやら露出度の高い格好をした少女がそう言いながら現れる。って
((いきなり魔王かよ!?))
いや!展開早すぎでしょ!?
来るにしてもせめて四天王(最弱)辺りでしょ!?
なのにいきなり
「え~と……はじめまして。この町の盟主の片割れのリムル=テンペストと申します。」
「同じく盟主のルーミア=テンペストです。
よく私達が一番強いとわかりましたね?」
「ふっふ~ん♪その程度、ワタシにとっては簡単なことなのだ。この
「なるほど……便利な眼ですね……」
「うむ!だから、ワタシの前では弱者のフリなどできぬと思うがいい!!それはそうと金髪のおまえの方がスライムより魔素量が多いようだな?」
【そうなの?リムル。】
【まぁ、俺と違っておまえはあんまり
〈是。個体名『ルーミア=テンペスト』は個体名『リムル=テンペスト』の1.5倍の魔素量を保有しています。〉
【【へぇ~……】】
「スライムの方もその姿が本性なのか?ゲルミュッドの遺した水晶に映っていた蒼銀髪の人型は変化したものなのか?」
『大賢者』さんからの説明に私とリムルが『思念伝達』でそう言うなか、魔王ミリムは首を傾げながらそう言う。
「リムル。」
「それってこの姿のことですかね?」
リムルはそう言いながら、私の手から離れながら人型に変わる。
「おぉっ!これなのだっ!!」
対する魔王ミリムは嬉しそうにそう言いながら、リムルの周りをぐるぐると回りながら観察する。
「……ん?水晶ではもう少し小さかった気がするのだ?」
そんななか、リムルの人型の身長が
まぁ、身長が伸びた理由は多分……
「さてはおまえ、
「まぁ、俺が勝って
「……ん?ミリム様。
ちょっと質問よろしいですか?」
「うむ!今は機嫌が良いからなんでも聞くがいい!!」
「では、遠慮なく……もしかしてですが、
「なに?ということは魔王に進化していたのか!?」
「はい。ゲルミュッドを喰って
「おぉっ!では、おまえは成り立てとはいえ、魔王を倒して喰ったということか!!」
「えぇ、まぁ、
「おぉっ!魂を保護しただけでなく、スキルで新しい身体を作り出すとはおまえもなかなかやるな!!」
「恐縮です。それで今日はどのような御用でいらしたのでしょうか?」
まさかとは思うけど、殺されたゲルミュッドの復讐?
「?最初に言ったではないか。挨拶だぞ?」
「「………」」
((それだけかよ!?))
いや、確かに最初にそう言ってたけど、本当にそれだけ!?たったそれだけのために魔王が一人でここまで来たの!!?
『まさかの理由だね……でも、ある意味で助かったかも?』
〈是。測定可能な下限段階で魔王ミリムの魔素量は個体名『リムル=テンペスト』並びに個体名『ルーミア=テンペスト』の十倍以上と推定されます。〉
私がそう思っているなか、『
『〈マジ(です)。〉』
マジかぁ……でも、挨拶だけが目的ならこのまま当たり障りない会話をして帰ってもらおう。
私がそう思っているなか、私とリムルの背後から黒い影が飛び出してくる。
「え?」
「ちょっ!?」
「ん?」
「覚悟!!」
飛び出してきた黒い影…紫苑はそう言いながら剛力丸を振り下ろす。
って魔王ミリムの覇気に当てられてる!?
第三者Side
ズガァァァンッ!!
「嵐牙!影狼!
リムル様とルーミア様を安全な所へ!!」
【【心得たっ!!】】
激しい衝撃と共に土埃が舞い上がるなか、そう言う紫苑にそう答えながら、嵐牙と狼形態の影狼がリムルとルーミアの影から飛び出し、二人を無理やり背中に乗せて駆け出す。
「ちょ、ちょっと待てっ!嵐牙!!」
「影狼!止まって!!」
【待てませんっ!!我が主!!】
【お許し下さい!ルーミア様!!
今はご避難を!!】
「フフフ……なんだ?ワタシと遊びたいのか?」
「っ!?」
慌てながらそう言うリムルとルーミアに嵐牙と影狼がそう返すなか、紫苑の剛力丸を片手で白刃取りしていたミリムは不気味な笑みを浮かべながらそう言う。
「待てっての!!」
「待ってってば!!」
「「キャインッ!?」」
「はあああぁぁぁっ!!」
リムルとルーミアがそう言いながら嵐牙と影狼を無理やり止めるなか、ミリムの背後から萃香が殴りかかる。
「ふんっ!!」
「「!?」」
ドカァァァンッ!!
「うっ!?」
「きゃっ!?」
が、ミリムは白刃取りした剛力丸ごと紫苑を投げ飛ばして、萃香にぶつける。
シュルルルルルルルッ!!
「!?おぉ……っ!?」
「如何に魔王といえども、この糸の束縛から逃れることはできまい。」
直後、蒼影がそう言いながら『操糸妖縛陣』でミリムを拘束する。
「少なくとも、数秒だけだが……」
「十分だ……燃え尽きるがいい!『
ボオオオオオオオオオッ!!
紅丸はそう言いながら、『
「……火傷くらいはしてくれると嬉しいんだが……」
「わはははっ!凄いのだっ!!」
紅丸がそう言うなか、『
「これ程の攻撃……ワタシ以外の魔王ならもしくは倒せたかもしれぬ……だが、ワタシには通用しないのだァッ!!!」
ズガァァァァァァァンッ!!
次の瞬間、ミリムはそう言いながら魔力を放出し、突風と衝撃が吹き荒れる。
「ッ!!」
「!?ルーミア!?」
「ルーミア様!?」
【【「「「!?」」」】】
「ユニークスキル『
「む?」
シュウウウウウ……ッ!!
直後、咄嗟に前に出たルーミアが『
ゴォォォォォォォッ!!
ルーミアがミリムの魔素を吸収している間も突風と衝撃が吹き荒れ、近くにある木々を凪ぎ飛ばしていく。
【ッ……】
【なんて凄まじい“力”……】
吹き荒れた突風と衝撃が落ち着いた後、ミリムを中心に出来た巨大なクレーターを見て嵐牙が息を呑むなか、影狼はそう呟く。
「くっ……」
「ルーミア!!」
「ルーミア様!!」
そんななか、『
ルーミアSide
「わはははっ!!ワタシの魔素を吸収するとはやるではないかっ!!」
「くっ……」
魔王ミリムが笑いながらそう言うなか、私は立ち上がろうとする。
「ルーミア。もう無理するな……」
「リムル……」
「後は俺がやる……」
が、リムルがそう言いながら前に出て、魔王ミリムと対峙する。
「なんだ?今度はおまえがワタシの相手をしてくれるのか?」
「自信があるなら俺の攻撃を受けてみるか?」
「わはははっ!!面白い!!なら、その攻撃が効かなければ、おまえ達はワタシの部下になるのだぞ?」
「わかった……」
ふむ……魔王ミリムの配下になるというのも選択肢としては悪くないかも……
「ルーミア様!!」
【ルーミア様!!大丈夫ですか!?」
「萃香、影狼……大丈夫……ちょっと疲れただけだから……」
『吸収した魔王ミリムの魔素はルーミアの身体が耐えられないと思うから、体内に作った異空間に一先ず封印状態にして保管しといたよ。』
『
あの液体は確か……
「食らえぇぇぇっ!!」
私がそう思っているなか、リムルはそう言いながら駆け出し、魔王ミリムの口の中に液体を突っ込む。
「……な、なんなのだぁっ!?こんな美味しいもの、初めて食べたのだぁっ!!!」
次の瞬間、魔王ミリムは目を輝かせながら、そう言いながら口の周りに残っているそれを必死に舐めとっている。
液体の正体は最近、コーカサスオオカブトのような魔物、ゼギオンと共に庇護を求めてリムルの配下になった蜂型の魔物、アピトに集めてもらった蜂蜜。
リムルはそれをミリムに文字通り食らわせたのだ。
これまでの会話で子どもっぽい性格なのはわかってたけど……蜂蜜であれだけ感動するって一体どんな食生活を送ってたの……?
「どうした?魔王ミリム。素直に俺の勝ちを認めてくれるんなら、こいつをもっとくれてやっても良いぞ。」
「あ……あぁ……」
私がそう思っているなか、リムルはそう言いながら、追加の蜂蜜をちらつかせる。
「欲しい……いや、でも、それでは魔王としての威厳がぁ……」
「ん~♪美味しいぃ~♪」
「あぁっ!?」
「おっ、もう少しで無くなりそうだ……」
「ま、待つのだっ!!提案があるっ!引き分け!引き分けでどうだ?今回の件は不問とするのだっ!!」
「ほぅ……?」
「も、勿論、それだけではないぞっ!今後、ワタシがおまえ達に手を出さないと誓うのだっ!!」
(勝ったな。)
あ。リムル、悪い顔してる。
シズさんと似た顔でそれはやめて。マジで。
「じゃあ、交渉成立ということで。」
「おぉっ!!」
私が内心でそうツッコミを入れるなか、リムルはそう言いながら蜂蜜の入った小瓶を魔王ミリムに手渡す。
「ん~♪」
「ルーミアちゃん?あれって魔王ミリム……だよね?」
「一体何があったのですか?ルーミア様……」
魔王ミリムが受け取った蜂蜜を美味しそうに舐めているなか、いつの間にか駆けつけていたシズさんと絶狼がそう尋ねてくる。
「シズさん、絶狼……どうやら私達は未曾有の危機を脱したみたい……」
知ってる?蜂蜜で町一つが救われることがあるんだよ。