第三者Side
パチッ!……パチ……ッ!
時を少し遡り、ルーミア達が大晦日を満喫していた頃、
バキッ!!
「くそっ!許せねぇぜ……」
ミリムやルーミアとのことを思い返したフォビオは苛立たしげにそう言いながら枝を折り、焚き火にくべる。
「俺を誰だと思っている?“黒豹牙”フォビオだぞ……っ。」
「魔王ミリムが相手では不可抗力というものです。例えカリオン様でも勝てるかどうか……」
「馬鹿野郎!!カリオン様ならこんな醜態は晒さなかっただろうぜ。単純に俺が未熟だっただけの話だ……しかし、このまま何の成果もなく帰るのは、俺の誇りが許さんのだ……」
宥めようとする配下の大猿の
「……彼奴ら、自分達で町を作っていたな。下等な魔物と侮っていたが、俺達じゃ到底及ばねぇ技術を持っていやがる。」
「全くです。配下に加えるなどと言わず、我らがユーラザニアと国交を結びたいくらいですな。」
「………」
(『貴方様の言葉・態度次第では貴方様の主である魔王カリオンと私達は敵対関係になるということです。』
『それは同時にこの『ジュラの大森林』の全てを敵に回すことを意味している……そんな大きな判断を、魔王カリオンではなく
フォビオの脳裏にルーミアとリムルの言葉が過る。
「……魔王ミリムの件がなくとも奴らの指摘通り、俺の対応は間違っていた……頭ごなしに支配しようとしても、奴らの信頼を得られなかっただろう。そして、悔しいがあのルーミアという女……ガキの
時が経ち、冷静さを取り戻したフォビオは自分の間違いやルーミアのことを素直に認めていた。
「だが、今更だぜ。この屈辱は怪我が癒えても消えやしねぇ……カリオン様に迷惑を掛けねぇようになんとかして復讐してやりたいんだよ……」
が、彼の中にある『獣王戦士団』としての誇りがそれを良しとしなかった。
「しかしフォビオ様。復讐などと現実的では」
「だから、わかってんだよ!それぐらい!!けどな。こういうのは理屈じゃねぇんだよ……」
バキッ!!
悔しさと怒りで苛立ちを隠しきれないフォビオはそう言いながら枝を折り、焚き火にくべる。
そんなフォビオを、エンリオを初めとする配下の
「おーほっほっほっ!!」
「「「「!?」」」」
突如、何処からか高笑いする声が聞こえてくる。
「何者だ!?」
「いやぁ~、よくわかりますよ……その悔しいお気持ち……」
そう言うエンリオを初めとする四人が立ち上がって辺りを警戒し始めた直後、森の奥から怒ったような仮面を着けた太った男がそう言いながら現れる。
「ごきげんよう。ユーラザニアの皆様。
私は『フットマン』と申します。」
「?フットマン?」
「『中庸道化連』が一人、『
「……知らんな。その道化が一体何の用だ?」
謎の仮面の道化、フットマンを睨み付けながら、フォビオはそう尋ねる。
「そんなに睨まないでほしいなぁ……」
が、今度は涙目の仮面を着けた少女がそう言いながら、フットマンの背後から現れる。
「あたいは『
貴方達の敵じゃないよ。」
「……で、目的は何だ?」
「ほっほっほっ……私はね、怒りと憎しみの感情に呼ばれて来たのですよ。」
「!?怒りと憎しみ……」
「上質な怒りの波動を感じましてね……一体何に怒ってらしてるのか、お聞かせ頂いても?きっと、貴方様の力になってご覧にいれましょう……」
フットマンのその囁きにフォビオの心が僅かに揺れる。
「フォビオ様。この様な者共の話など聞く必要はありません。排除してもよろしいでしょうか?」
そんなフォビオの前にエンリオがそう言いながら、立ちながら構える。
他の二人も同じように構える。
「我らは魔王カリオンの『獣王戦士団』に属する者。野良の魔人風情が相手になると思ったか!!」
フォビオの前に立った後、エンリオは睨み付けながらそう声を荒げる。
「……“力”が欲しいのでしょう?ございますよ、とびっきりのやつが……」
が、そんなエンリオを意に介さずにフットマンは話を続ける。
「当然ですが危険も大きい。ですが、その危険に打ち克った時、得られる“力”は絶大です。」
「……ほぅ……」
「フォビオ様!?」
「勝ちたいんだよね!?魔王ミリムに!だったらさ!あんたも魔王になれば良いんだよ!!」
「!?魔……王……っ!?」
「「「!?」」」
自らが魔王になる。ティアのその言葉はフォビオの心を大きく揺さぶり、エンリオ達三人も唖然とする。
パチッ!……パチ……ッ!
「……ハッ。魔王だと?そんな戯れ言でこの俺が騙されると」
「『
「!!?」
『
「ご存知ありませんか?」
「暴風大妖渦……だと……」
その“力”は魔王に匹敵すると云われる、大怪魚の
フォビオがそう思いながら息を呑むなか、その場が静寂に包まれる。
「……はぁ~、あの大怪魚の邪悪な“力”なら魔王に匹敵するんだけどなぁ……まぁ、いらないなら他を当たるから良いけど……」
そんななか、ティアが諦めたようにそう言う。
「例えば……あのルーミアっていう子とか?」
「!?なに……?」
「あれ?もしかして、知らない?あの子、ぽっと出の魔人で今はまだ成長途中だけど、十二分に新たな魔王になり得る素質を持っているみたいなんだよ。」
「それこそ、魔王ミリムが気にかけるくらいには……」
「!?なん……だと……っ!?」
ティアとフットマンのその言葉にフォビオが更に目を見開く。
あのガキが次の新たな魔王候補?
「ぽっと出が魔王になるというのは正直癪だけど、恩を売っといて損はないだろうし。あたい達はもう行くね。」
「ほっほっほっ。折角先にフォビオ様にお声掛けしましたのに……残念ですねぇ……」
ティアとフットマンはそう言いながら、その場から立ち去ろうとする。
「待て。」
が、フォビオの小さなその一言が二人を呼び止める。
「フォビオ様!なりません!!」
「……俺は最初から面白くなかったんだ……なんで
「フォビオ様……」
ミリムとルーミアへの怒りと復讐心、豚頭帝の魔王への進化に対する不満、新たな魔王に進化する可能性を秘めたルーミアに対する嫉妬、そして純粋に“力”を求めたフォビオは道化達の誘惑に負け、抑えつけていた感情を爆発させる。
「詳しく聞かせろ!!」
「おぉっ!流石はフォビオ様!!そうでしょうとも!魔王となるのは貴方様を置いて他にいませんとも!!」
「やっぱり!強い者が魔王にならなきゃおかしいよね!その点、フォビオ様は十分適任だと思うよ!!」
「「「………」」」
エンリオ達三人が心配そうに見つめるなか、フォビオは二人の道化から話を聞く。
「この話、おまえらに何の得がある?」
「魔王になった暁にあたいらを贔屓にしてくれたら良い!色々と便宜も図ってほしいしね!!」
「ほっほっほっ。我々だけでは暴風大妖渦を従えさせることはできませんからねぇ……」
「折角苦労して封印された場所まで見つけたは良いけど、このままじゃ宝の持ち腐れだし。」
「そんな時に丁度フォビオ様をお見かけしましてねぇ。」
「……なるほどなぁ……」
(つまり、俺が魔王になった際、『
「……しかし、俺が暴風大妖渦を従えさせることができるかどうか……」
「ほっほっほっ!フォビオ様なら必ずや成功するでしょう!!」
「大丈夫!大丈夫!!」
「……その話、引き受けようじゃねぇか。」
「おまえ達は戻れ。そして、事の顛末を伝えるのだ。」
道化達の誘いに乗ることを決意したフォビオはそうエンリオ達に別れを告げる。
「しかしフォビオ様……っ!!」
「カリオン様にこれ以上、迷惑は掛けられねぇ。『三獣士』の地位を返上し、野に下るとお伝えしてくれ。」
フォビオはそう言うと、エンリオの肩に手を乗せる。
「今まで仕えてくれて感謝する……」
「フォビオ様……」
「俺はこれから修羅になり、魔王ミリムとルーミアに認めさせてやる。」
「……わかりました。ですが、暴風大妖渦の“力”は未知数。くれぐれもお気をつけ下さい。」
エンリオはそう言いながら他の二人と共にその場を去っていき、フォビオはそんな三人を見送る。
「それでは参りましょうか。」
三人の姿が見えなくなってきた頃、フットマンがそう話しかける。
「あぁ、俺と暴風大妖渦の“力”を合わせれば、あのクソガキ共の憎ったらしい面を泣きっ面に変えてやれるだろうぜ。」
「ほっほっほっ!その意気ですよ!!」
「うんうん!あたいも応援するよ!!」
そうしてフォビオはフットマンとティア、怪しげな二人の道化と行動を開始した。