えっ!!無個性でヒーローを!?出来らぁっ!   作:セキセイインコ

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敵殺スマッシュ!

 

 個性――それは、人類の八割がもつ特異体質、特殊能力、その総称である。かつて、中国で発光する赤子が生まれたとニュースになった際にはマイノリティであった個性。

 

 しかし、今やその個性は誰もが当たり前に所持する異能へとなってしまった。それ故、その個性を悪行に使う者も多く存在する。人はそれをヴィランと呼んだ。

 

 反対に、その力を人々を救うために使用する者達の事を、人はヒーローと呼んだ。今や、ヒーローは溢れに溢れ、多くの人々を救っている。

 

 しかし、そんなヒーローに救われない者も居た…………

 

 

 その少年は、今日も一人で縁側に座り込み、流れる雲を眺めている。少年の名は――凪 康二(ナギ コウジ)。つい先日、父と母、そして妹をヴィランに殺された哀れな8歳児である。

 

 彼は父方の祖父の家へと預けられ、それ以来ずっと縁側に座り込み雲を眺めていた。

 

 もう何日こうしているかは本人もわからない。思い出すのは、家族との楽しい思い出と、その家族の最期だ。

 

「た、助けて!ヴィランが!血が出て!!――」

 

 腹から血を流しながら叫ぶ母。

 

「ヒーロー!来てくれヒーロー!?―――」

 

 妹を抱きかかえながらその場にいないヒーローを呼ぶ父。

 

「――。」

 

 そんな父に抱きしめられたまま、既に物言わぬ亡骸となっていた七歳の妹。

 

 父が!母が!妹が!ヴィランによって酷く殺されていく……先程まで笑顔でいたはずの顔は苦悶に歪み、通っていた血はその身体から垂れ流れて行く。そんな光景を只管頭の中に浮かべていく

 

 そんな康二に近づく影がある……少し老け込んだ筋骨隆々で、頭にほんの僅かに飛び出た角を持つ老人――康二の祖父、凪 善蔵(ナギ ゼンゾウ)だ。善蔵は、康二へと問い掛ける。

 

「何時まで雲を眺め過去を覗いている気だ。」

「…………じっちゃんには関係ない。」

 

 ぶっきらぼうにそう言葉を返す康二。善蔵はそんな康二を鼻で笑い飛ばすと、その肩に力強く手を置いた。

 

「本当か?本当にお主はそう思っておるのか?」

「…………じっちゃん。俺、無個性なんだ。」

「知っておる。」

 

 無個性、それはこの超人社会においてあまりにも大きいハンディキャップ。無個性と言うだけでいじめに遭い、無個性と言うだけで煙たがられる。

 

 無個性は永遠に日陰者、それを誰も気にしない。目の前に輝くヒーローだけを追いかけて誰も気にしない。それが今の世の中だ。

 

 無個性はヒーローになれない、それは暗黙の了解だ。

 

 それでも、康二はヒーローを志してしまった。恨むべき敵を!ヴィランを!!潰する為に!これ以上自分のように家族を失うものが現れぬように!!

 

 康二は善蔵に問い掛ける。

 

「……じっちゃんはヒーローなんだよな?無個性でも、ヒーローになれるのか?」

 

 ……善蔵は、かつてヒーローとしてその名を馳せていた。ヒーロー名もゼンゾウ。祖父の持つ個性は『小角』、頭に小さな角が生えていると言うだけの個性だ。それ以外には何の効果もない。

 

 しかし、そんな個性でもゼンゾウはヒーローとして名を挙げた。いま2人が暮らしているこの和式の広い家も、ヒーローとして活動していた時に火星が金で建てたものだ。

 

 そんな元ヒーローの善蔵は、ニヤリと笑みを浮かべて康二へとハッキリと言う。

 

「わからんなぁ、そんな前例は無し、儂も無個性ではないからな。…………しかし、お主がなれぬ道理はあるまい?」

 

 なれるかは分からない、だがなれない道理は無い。そんな宙ぶらりんな言葉に、康二は少しイラッとする。

 

「……そう、なのか?」

「運もあるだろうな。しかし、何もしない者に舞い込むほど運も暇ではない。なそうとするのならば……儂が鍛えてやろう。」

 

 そう言って、善蔵はまた不敵な笑みを浮かべる。煽るような顔だ……お前できないの?なんて煽るような顔だ。康二は歯を食いしばって言葉をあげる。

 

「やってやるよ。アンタなんか一朝一夕で越えてやる。」

「やってみろ、康二――今からお主は儂の弟子だ。」

 

 無個性と弱個性、その師弟が出来上がった。それは、この超人社会にどのような風を撒き散らすのか……それは、誰にもわからなかった。

 

 

 

□□□

 

俺のライブへようこそ!エブリバディヘイセイ!!!

 

 訪れるのは静寂。大舞台でかましたにも関わらず、総スカン――!!ここは、国立のヒーロー養成学校!雄英高校!そのヒーロー科実技試験説明の回である!

 

 その場には康二も居た!ヒーローゼンゾウに弟子入してから七年の月日を経たその身体は、同年代の他の面々よりも一回り大きく引き締まった身体となっていた。

 

 服装は、通常のジャージ……のみである。長年使い続けすっかり古びているが、そこには貫禄を感じさせる。何も言わぬ、確かな貫禄だ。

 

 不自然と周りの人間も若干萎縮している。その目つきは、真剣に説明される試験内容を捉えていた。

 

 解説員、プレゼントマイクが言うには試験は、それぞれポイントの割り振られた仮想敵を倒してポイントを稼ぐ。

 

 そして、0ポイントと呼ばれる仮想敵もおり、それは倒してもポイントにならないので避けるべし……だそうな。

 

(仮想敵か……仮想でも敵であるのならば……殺すべし。慈悲は無い。)

 

 康二は心の中でそう呟くと、試験のために多くの人間がその場をさから移動する。康二もその人波に紛れて――まずかな緊張と共に歩みだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験用のグラウンド。そこは、市街地をそっくりにそのまま再現した場所だ。ここが試験場、様々な受験生が各々準備運動をしている。

 

 すると、不意に声が響き渡った。

 

『ハイ。スタート。』

 

 突然!突然のその声に、皆がしんと静まり返る……緊張の最中、咄嗟にこんな事を言われては、誰も咄嗟に反応できない。しかし、駆け抜ける影もまた然り!

 

 その足を進める影こそ………凪康二その人である!康二は、スタートの合図の瞬間駆け出し、既に仮想敵と設定しようとしていた。

 

「標的発見!ブチコロス!!」

 

 そう言って何処からともなく襲い掛かる仮想敵……その仮想敵は、口悪く暴言を放つと、その鉄の腕を振り下ろした……次の瞬間。

 

パリィッ!

 

 康二は篭手のつけた右腕で攻撃を弾いた!仮想敵は弾かれた衝撃で懐を隙を晒す……その瞬間を、康二は見逃さない。拳を握りしめて……必殺の叫びをあげる。

 

敵殺(テキサツ)スマッシュ!!

 

 康二はその拳を仮想敵の腹へと撃ち込んだ!静かに空くのは風穴!仮想敵は、いとも容易くその機能を停止される。

 

「次をッ!」

 

 康二は倒れた仮想敵を足蹴に、さらに高く舞い上がる!次の瞬間、背から大人数の受験生が……しかし、康二は気にしない。、気にせず仮想敵を殺す!それを信条に突き進む。

 

 永遠に広がるとさえ思えるそのグラウンド。騒ぎ立てる受験生の声の混じるその試験場は、騒然な戦の開始点と化す!!

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