えっ!!無個性でヒーローを!?出来らぁっ! 作:セキセイインコ
受験生が次々と仮想敵を撃破する中、とあるモニター室でそれを眺める者達がいた。彼らは皆雄英高校の職員。内、ねずみの様な熊のような一人の男が、言葉を漏らす。
「この実技試験は、生徒には仮想敵の総数も教えていない。限られた時間と広大な敷地……そこから炙り出されるのさ。」
曰く――情報力、機動力、判断力、戦闘力。市民の平和を守るための基礎技術が、ポイント数と言う形で炙り出される。とのこと。
「いやぁ、今年は豊作なんじゃねぇか?特にほら、あの子なんて――」
そう言って刺されるのは、銀髪をポニーテールにまとめたジャージ姿の少年――凪康二だ。画面に映る彼の動きは実際……機敏!
サイズ感的にも圧倒的に差のある仮想敵を、容赦なしに風穴を開けていく。
無論拳には防護用のグローブを付けているが……ほぼ素手のようなものだ。それでも尚、康二は容易くポイントを稼いでいく。
……いや、ポイントを稼ぐだけではない。しっかりと念入りに仮想敵を潰している。まるで親の仇が如くだ……その一撃一撃に力を込めて撃ち抜く。
既にポイント数は82Pまで取っていた。ここまで全く調子を崩す事なくだ。見た所は増強型の個性に見える――――実際の所は個性も何も無い無個性なのだが。
すると、モニターで様子を見ていた一人が賽を投げる様に言葉を投げかける。
「しかし、まだわからない。真価が問われるのはここからだ。」
そして。一人の職員が一つのボタンを押した……そうすれば、ある種本来の試験が始まることとなるのだった。
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「……敵二慈悲無シ!」
「サヨナラ――――!!」
康二は仮想敵に拳を打ち付けて撃破する……これで84、5P位だろうか?兎も角ポイントを稼がねば……康二はそんな風に考えながら只管に仮想敵を撃破する。
周りの人間は個性を使用してポイントを稼ぐ中、康二はひたすらに肉弾戦のみでポイントを稼ぐ。
あえて言おう、康二にとっては個性?必要ナシ!鍛え抜かれた肉体とワザマエを駆使すれば、十分ポイントを稼げる!
……しかし、そんなある種の快進撃にも止まりが生じる。それは、康二が86P目の仮想敵を探し出そうとした瞬間だった。次の瞬間、康二の第六感に何かが訴えてくる!
第六感――インスピレーション!それは、人が潜在的に持つ力、即ち感!
何かが起こるかもしれない、何かかくるかもしれない、そのかもしれないを正確に捉えるのが、第六感であるッ!本来曖昧なものであるその第六感を康二は、長年の修行によりそれを己の物にすることができたのだ。
(何か……来るッ!?)
康二は咄嗟に構えると……地面が大きく揺れだしたかと思えば、それは現れた。まるでビルに手足をくっつけたような見た目の、ビルほどの大きさのある仮想敵だ。
恐らくはこれが説明された0ポイントヴィラン。だが、流石の大きさだ……流石にただのお邪魔虫では無いと言う訳か。
「な、なんだよあれ!?」
「あんなのに勝てるわきゃねぇよ!?」
「死人出るぞ!?……死ぬのかこの試験!?」
「逃げろ!にげろぉぉ!!」
受験生達の叫び声が聞こえる…………たしかに、目の前の0ポイントは恐怖の対象だ。あんなのを見てしまえば足がすくみ、逃げたくなるのもしようがない。
康二も足を進める…………無論、0ポイントから背を向けるのではなく、逆に!0ポイントへと思いっきり駆け寄った!
無個性の自分……勝てる可能性は薄いと思われるのだろう。しかし、だとしてもやらねばならない。自分がヒーローであろうとするなら、ヴィランを倒すと誓ったのならば!
(敵であるなら潰すべし……情け!容赦!一切無用!)
……しかし!不意に康二の視界にはとある物が映る。
不自然に浮き上がった瓦礫……そして、康二は聞き漏らさなかった。
「いたた……」
その声を!康二は咄嗟にその声の方向へと向かう。先程まで敵を倒すと息巻いていたのにとう言う風の吹き回しか?
彼が目指すのはヒーロー。敵を倒す者、しかしそれと同じ程に誰かを救う者でありたいのだ!
姿は見えない、聞こえたのは声だけ、しかしその声が聞こえただけでもヒーローとして走り出すのは当然のことだ!少なくとも、康二はそう思い今まで生きてきた!
何よりも!倒れ傷つかんとする者の声を聞いてヴィランを優先するとは、なんたる事か!?そんなやり方で受かるヒーロー科など、こちらから願い下げである。
康二は声のもとまで駆けつけると、そこには不自然に浮いた瓦礫が……すると、声が聞こえてくる。少女の声だ。
「だ、誰?」
「通りすがりだ。そこにいるんだな?」
「う、うん……でもなんで私がここにいるって……」
「……声が聞こえた。それだけだ……っ!」
次の瞬間、覆いかぶさる影あり……その主は、0ポイントの仮想敵!その腕を康二達の方へと向けていたのだった。
康二は咄嗟にその降りかかる巨腕に飛びかかり……タイミングを見極めて……腕で弾く!
「パリィッ!」
パリィ!それは、相手の攻撃をジャストタイミングでガードし弾き、相手を大きくひるませるワザ!無個性がヒーローになる上で、必ず獲得しなければならない必須のワザである!
実際、その仮想敵はほんの僅かではあるが、康二のパリィを受けて怯んでしまう……パリィは機械生物物の怪!あらゆる森羅万象に効く最強ワザなのだ!
隙は時間にして約3秒!巨大故に得られる隙も少ない。しかし、3秒は0秒ではない!その差は大きいのだ!
「ふん……ぬっ!」
その隙に康二は、その透明な少女に覆いかぶさっていた瓦礫を押しのけて、彼女を抱え込みその場から駆け出す。
その間、およそ2.8秒……もはや人間業ではない。康二はそっとその透明少女を地面に横たわらせる。……すると、少女は康二を見上げてお礼を述べる。
「あ、ありがとう……!」
「例には及ばない……さて、やるか。」
「えっ?」
少女は一瞬康二が何を言ってるのかんからなかった。やる?何をだ……?そんな疑問を抱えていると、康二は0ポイントへと顔を向け、瞬間駆ける!
「えっ……えっ?」
少女は、何が起きたのか、何をしようとしているのか分からなかった。その瞳に映るのは、おおよそ人間業ではない身体能力を用いて0ポイントへと飛び掛かる康の姿。
次の瞬間、康二は拳に力を入れた……どんな敵であろうと、共通の弱点――――顔!顔面!康二の拳は、その0ポイントの顔を狙っていた。
その腕には、内側から灯るような赤い血潮の如く光が一瞬現れる。それは、正にランタンの様であった!康二は拳を構えて、勢いよく叩きつける。
「
その掛け声と共に、抉るような鋭い拳が0ポイントの顔面へと打ち込まれる!まるでドリルにえぐられたかのように回転する0ポイント仮想敵の顔面!
受験生達はその様をみてただ只管に唖然とする……唖然とする事しか出来ない。透明少女も、逃げ惑っていた者達も、唖然としかできない。ピリつく空気が肌を痺れさせるのを感じながら、眺めるしかできなかった。
やがて、その仮想敵が力なく項垂れるように倒れるのはすぐであった……康二はそんな0ポイントの頭部に乗っかると、深い深呼吸を行い、唸る。
「すぅ……はぁ……」
『終〜了〜ッ!!』
そのアナウンスが響くのは、0ポイントの仮想敵から光がなくなった、数秒後だった。しかし、試験が終わっても誰も言葉を発さなかった。
まるで蛇に睨まれた蛙のようだった。たった一人で、あの巨大な仮想敵に勝ってしまったのだ。恐れるのも当然だ。
実を言えば、康二も余裕があったわけではない。あの抉るような一撃はそれなりに体力を使う。正直今も康二は頭が歪むような感覚に襲われていた。
そらでも康二はその0ポイントの残骸を足場に地面へと降り立つ。少なくとも、祖父の、師の顔に泥は塗らずに済んだと思いたい。
(敵を潰す。人を助ける。両方やるっていうのは……簡単じゃないな。)
康二は心のなかでそう呟く…………
師から教え…………受け継ぐは凪流のワザマエ。個性無き物がヒーローになるために磨かれたワザマエである。
Q:凪流のワザマエって何ッ!?何なの!?
A:凪流のワザマエです。某流派東方不敗とか某ニンジャスレイヤーのカラテみたいなもんです。取得さえすればモビルスーツともやりあえます。