えっ!!無個性でヒーローを!?出来らぁっ! 作:セキセイインコ
「実技総合成績出ました!」
その言葉と共に、とあるモニター室の画面には今回受験し合格した生徒達のリスト、順位がずらりと並んでいた。
そこで始まるのは総評……一人の教師がとある尖った金髪の目つきの悪い少年の動きを観て絶賛する。
「レスキューポイント無しで2位とはね!」
「1Pや2Pの仮想敵は標的を捕捉して追跡してくる。後半他が鈍ってく中、派手な個性で迎撃し続けた。タフネスの賜物だな。」
例年であれば、首席は間違いなかっただろう。それほどまでの逸材だ……因みに、レスキューポイントとは入試を受ける生徒達には秘められていた審査制ポイント。名の通りどれほど人を助けたかのポイントである。
そして、総評の相手はもうひとり…………レスキューポイントのみで合格した緑髪の少年についてである。
「対照的にヴィランP0で8位か……」
「0ポイントに立ち向かうのは何人かいたけど、仏都はしちゃうのは久しく見てないね!」
「しかし個性の反動で重大な損傷。まるで個性発現したての幼児だ。」
「おかしな奴だよ、それまでは典型的な不合格者の動きだった。」
そして、総評と言うからには当然実技入試1位の男について注目が集まる。銀髪ホーステール、体の節々に深い傷跡のある少年だ。名は……凪康二。
「しかし、一位の奴……改めてみるとまたなんとも。」
画面に映るのは、次々と拳で仮想敵を葬り去る康二の姿……ほぼ全ての仮想敵を一撃で急所を捉えて沈黙させている。
索敵能力を持たぬ分は、単純な移動力で只管にフィールドを駆け回り仮想敵を探し出している…………様に見える。しかし、実を言えば違う。
どんな物にも気配は宿る。それが相手を倒すための殺気であるのならば、より激しくうねり感の鋭いものならそれを把握することができる。
康二はそうやって敵の位置を把握し、迎撃したのだ!しかし、それを知るすべは本人以外にはない。
「筆記試験実技試験全てにおいてトップの首席…………だが、
これは非常に困ったことになった…………雄英高校では個性伸ばしというカリキュラムがあるのだが、無個性では伸ばすものがないではないか。あまりにも前代未聞の出来事すぎて教師陣も頭を悩ませる………最悪の場合は…………なんてことも考えてしまう。
すると、扉がガチャリと開き一通りの書類を持ってきた教師が言う。
「実技1位の……凪康二君についての資料!かき集めるだけかき集めました!」
その書類に書かれていたのは、康二に関する様々な情報…………そこには、確かに無個性とされていた。ウソを付いても仕方がないのだろうが、あれ程の力で無個性とは、にわかには信じがたい。
「……こいつ。七年前のパーク襲撃事件の被害者か。」
七年前……康二の家族の命を奪ったヴィランが、遊園地で起こした事件については、その被害の大きさからそれなりに資料が残っている。
何せ、その日遊園地に訪れていた客の四割を殺害、負傷させた超凶悪犯だ――目的は、異形型個性により差別されたことについての腹いせ……だそうだ。
「父、母、妹を殺害されその後は祖父の家に引き取られる……か。」
「つか、コイツの祖父ヒーローやってたんだな…………ヒーロー名ゼンゾウ……しらねぇな、お前知ってるか?」
「知らん。」
「ゼンゾウ…………か。君達が知らないのも無理はない。」
すると、一匹のネズミのような熊のような犬のような男が不意に口を開く。
「彼はかなり古いヒーローだからね。しかし、彼のお孫さんだと言うのなら納得だ。」
「と、言いますと?」
「ゼンゾウもほぼ無個性同然の個性で戦ってきたからさ。それも、バリバリの最前線でね。他のヒーローと引けを取らない、いやむしろ数歩先をいっていたね。」
「そんなヒーローなのに…………無名、なんですね。」
「まぁ、彼はメディアを嫌っていたし、自分の手柄ほとんど他の人に取られたりあげたりしていたからね。」
すると、そのネズミの様な男は声を上げる。
「……みんな!彼の入学を認めよう。彼のような未来ある若者を無個性と言うだけで切り捨てるような真似、僕はゴメンだ。雄英に無個性を育てるカリキュラムがないのならこれから作れば良い!」
そのネズミの様な男の言葉に、一同は深く頷いだ………異議あるものはいないようだった。こうして、凪康二の入学が本格的に決まることになるのだった。
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そして、その無個性の少年は…………その日、合格通知を受け取った。
送られた投影機からは、オールマイトが現れ、首席合格だとか、立派だとか言われていたが、そこはもはや気にならなかった。
因みにポイント数はヴィランポイント70、レスキューポイント25の計95Pだ。これも凪流ワザマエの賜物だ。
そして、合格の便りを聞けば康二は、祖父の凪善蔵の手によってとある天然自然木々と木漏れ日あふれる、滝の流れる山の中に連れ込まれるのだった。
そこには道場着に着替えた善蔵と康二が居た。善蔵は、康二を見て言葉をかける。その表情はとても優しいものだった。
「康二よ、先ずは首席合格おめでとう。儂はお主を誇りに思う、お前は儂の自慢の孫だ。…………これが祖父としての言葉だ。」
「ありがとう、じっちゃん。」
康二も少し嬉しそうに呟く………すると、次の瞬間仮面をはすしたように善蔵の表情が強張る。
「だが師としてはあえて言おう。この馬鹿弟子めッ!これで図に乗るでないぞ、貴様はまだ青臭い小僧!赤子!スタートラインまでの道のりを一歩踏み出しただけなのを忘れるな!」
「はいッ!師匠ォッ!」
康二は背筋をぴしっと伸ばしてそう言葉を上げる。すると、善蔵はヨシッ!と声を上げて言葉をかける。
「しかし、お主が一歩踏み出したのも事実……儂が貴様に新たなワザを教えよう。」
そう言うと、善蔵は腹に手を添えて…………目を瞑り…………木々を、滝の流れを、木漏れ日を、青空を、風を感じる。
すると次の瞬間目を見開いて、言葉をあげる。
「喝ッ!」
次の瞬間、善蔵を中心として激しい風のようなものが起こる。
その衝撃は滝の流れを一瞬切断し、木々をのけぞらせ、木漏れ日をさらに照らし、青空にかかる雲を押しのけて、風すらも叩き切る。康二も思わず受け身を取らねば吹き飛ばされそうな勢いだ。
「……これが練気だ。気を練る……コレを極めれば、貴様の攻撃したければ接近しなければならぬと言う弱点も消え失せる。」
「……!」
無個性の弱点の一つ………それは武具を使用しなければ遠距離の攻撃ができないという弱点だ。しかし、練気の取得はその弱点を消す事が出来るという。
「練気を取得すれば、そこから気を用いた波動攻撃へと移る事が出来るからだ。仮に波動攻撃ができなかったとしても、近接攻撃や移動能力は少なくとも三割の向上を見せる。それだけでも敵にとっては脅威の存在だ。」
「練気…………!」
康二は目を輝かせて善蔵を見る。善蔵はにやりと不敵な笑みを浮かべると、言葉を言い放つ。
「入学までにこの練気をお前に取得させる。無論死期が迫るほど過酷な特訓になるが、お主ならくぐれる壁よ!」
「お願いします!師匠ォッ!」
そうしてこの日から、雄英入学までに過酷な修行の日々が始まることになる。肉が裂け、血が沸騰するような日々だったが、確実に自分のものになっているという感覚が康二はつかめていた。
そしてある日のこと………
「喝ッ!」
「ほうっ!!早くも練気を習得したか!?」
そして、康二はPulls Ultra……さらに向こうへと行った!
善蔵の想像を超え、とんでもないスピードで練気を習得したのだ!
その練気こそ、善蔵の練気には遠く及ばない代物であった………雫が止まり、葉が落ちる程度の練気だった!しかし、確かに康二は練気を習得したのだった!
残りの入学までの時間を、取得した練気の向上へと勤めることに成功したのだ!
そして時間は流れ、雄英高校入学の日…………康二は雄英高校の制服に身を包み、自宅の玄関の戸を開けた、善蔵も見送りに来ている。
「康二よ、よく練気を習得した。まだほんのちょびっとの雫程度の物だが、たしかにお主は練気を習得した。その力かつてとはクラバ物にならぬほどだろう。存分に振るうとよい!」
「あぁ………行ってくるよ、じっちゃん!」
そう言って康二は手を振りながら自宅から飛び出す………よほど雄英高校の入学ガ楽しみだったのだろう。
善蔵も、師てして関わるときにはけして見せない笑顔で、康二を見送るのだった。