爽快なのに鬱ゲー世界の敵役に憑依したからには、悲劇フラグを折って爽快無双ゲーにしなければ(使命感) 作:火星で1,000往復
クリスタルスカルの幹部が集い、首領であるカリスタから計画の進捗を聞いたり指令を受けることとなる幹部会議。
今回の会合にて、カリスタから計画の段階が一つ進むこととなったことを告げられた。
カリスタの野望である、バルバトスの権能を用いた世界の破壊と再生、そして自己の神格化。
その権能を発動させるための鍵となる存在である特殊なパラディソス──オーバードーズの保有者の所在を掴んだことが伝えられた。
カリスタは以前からオーバードーズの保有者を大陸議会が確保しており、その存在を秘匿している情報を議会にいる組織の支持者から得ていた。
そして1ヶ月ほど前にカトレヤが拉致した大陸議会の大物議員より、オーバードーズの保有者を収容している施設の存在と謝罪を聞き出すことに成功したという。
民衆を虐げ吸い上げた利益を貪る性根の腐った男。情を与える価値もない圧政者。
典型的な大陸議会の支配階層に当たる議員で、幽閉して多少脅すだけで口を割るような自己保身欲の塊のような人物だったが、オーバードーズの所有者の情報に関しては頑なに口を噤んでいた。
証言の真偽を確かめるためにと私も尋問に同席していたが、大陸議会に激しい憎しみを抱くカトレヤの尋問はフォーリナーを相手にする戦場という地獄の光景を見慣れた私から見ても壮絶なものであり、議員はついに口を割った。
議員が頑なだった理由は、情報を吐いた直後に体が膨れ上がり風船のように破裂したのが物語っている。
なんらかのパラディソスの権能で秘匿する情報を第三者に漏らした時に発動し命を奪う類のものが課せられていたのだろう。
もっとも、カトレヤの無慈悲な拷問に耐えかねてついに口を割ったが。
その情報は真実であり、カリスタはオーバードーズの確保に向けて動き出すことを今回の会合にて宣言した。
環太平洋条約機構も大陸議会の隠しているオーバードーズの情報を得て動いているという。
太平洋条約よりも早く確保するため、カリスタはグランシャリオにより迅速に動けるダンデライオンに施設の襲撃とオーバードーズの保有者の確保を命令した。
二つ返事で引き受けたダンデライオンはカトレヤから情報を渡されると、会議の終わりすら待たずに即座に飛んで行った。
彼はカリスタの野望を阻止することを目的とする同志。
オーバードーズの保有者を確保しても、カリスタへの引き渡しを伸ばすなどして彼の野望を阻止するための作戦が整うまで時間を稼いでくれるだろう。
最悪、オーバードーズは保有者の命を奪うのも手である。オーバードーズは通常のパラディソスと異なり、所有者がオーバードーズ以外の外的要因によって乗っ取られることなく死を迎えれば、一旦この世界から消えるという性質がある。適合者がいればどこからともなく再び発生するが、時間稼ぎにはなる。
カリスタに怪しまれるわけにはいかない。
今は同志を信じ、前回約束した日を待つことにした。
「さて、残った諸君にも仕事を頼みたい。フォーリナーの脅威から人類を解放する日を実現するための計画を進める上で、な……」
ダンデライオンが出て行った後、オーバードーズを手に入れる目前にあると思っているだろうカリスタは、自身の野望の成就に向けた計画を動かすため、他の幹部にも指令を出した。
「オーバードーズの保有者を確保すれば、二大勢力も黙ってはいないだろう。妨害を避けるため、これまで広げた支持者に内側から動き二大勢力を混乱させ動きを止めたい。確保後、ボールサムは大陸議会がオーバードーズを秘匿していた情報を拡散させる手筈を整え、同時に抗議活動を扇動したまえ」
「お任せください!」
「スリフトはカトレヤから情報を受け取り、ダンデライオンと合流。太平洋条約の派遣する部隊の迎撃を頼みたい」
「了解」
「メープルは大陸議会の方に潜入している支持者とコンタクトを取り、誤情報を流して軍を扇動することを頼みたい。目標はスマトラ島だ。オーバードーズを確保したクリスタルスカルが潜伏していると見せて大陸議会に攻撃させ、報復に動く太平洋条約を扇動し、二大勢力に太平洋で再び血を流してもらう」
「OKボス。そいつは面白そうだ。なるべく世論が沸騰するような悲劇を作らせるよ」
オーバードーズをめぐる争いで二大勢力をぶつけ合わせて戦力を削ぎ、クリスタルスカルに目を向ける余裕を無くさせる。
そのための指令を幹部たちに出し、次に私の方に目を向けた。
「ヘリアンサス。貴女にはフォーリナーの対応に備える役目を頼みたい。オーバードーズを確保したとしても、ゲートを閉じるまでは奴らも介入の可能性があるからな」
「分かりました」
私に出された指令は、フォーリナーの襲来に備えること。
バルバトスの権能を用いれば、破壊と再生が完了するまでカリスタは無防備となり動けなくなる。
フリージアという護衛はいるが、フォーリナーの大軍の襲来を考慮すれば守りを得意とする私に役目を任せるのは当然と言えるだろう。
だからそれが昨日、同志を得るまで私が考えていたカリスタを倒す狙い目だった。
オーバードーズをめぐりフォーリナーや二大勢力とぶつかることになれば、そしてバルバトスの権能を行使すれば、物申さない護衛の人形の手も埋まり、この男にはパラディソスの性能上必ず隙ができる。その命を取れる決定的な隙が。
一歩間違えればカリスタの野望が成就する状況だが、刺し違えてでも殺すつもりだった。
もちろん、その他にカリスタを倒せる可能性はあるかもしれない。
3日後のダンデライオンとの密会にて、彼から私の知らないカリスタの隙を付ける作戦が提案されるかもしれない。私の考えているこのプランは最後の手段なので、やる時が来るならば覚悟を決めているが、できればこの案で行かなければならないほどカリスタの野望を進行させたくはない。
一応こちらの案として後日ダンデライオンには提案してみるつもりだが、なんとなくだが彼には反対されるような気がする。
「カトレヤは残りたまえ」
「……はい」
「それでは各々、頼む。次の会合でいい報告があるように期待しよう」
カリスタはカトレヤにのみ残るように告げて、幹部の会合を解散した。
アジトを後にする時、スマートフォンにメッセージが届く。
未登録の番号だが、内容を見てすぐにダンデライオンからものであることに気づいた。
“今回の仕事はあらかじめ知っていたから問題ない。予定通り3日後だ。朗報を待っておくのだシスター(*^_^*)”
「全く……他の方に見られたらどうするつもりなのですか」
これから彼は大切な任務で大陸議会に潜入するというのにそんなことを感じさせない能天気な文面を見て、思わず口元が緩んでしまう。
メールの文面まで真偽を判別する機能はないが、この言葉に嘘がないことはパラディソスに頼らずとも理解できた。
「頼みましたよ、ダンデライオン」