爽快なのに鬱ゲー世界の敵役に憑依したからには、悲劇フラグを折って爽快無双ゲーにしなければ(使命感)   作:火星で1,000往復

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たんぽぽの視点になります。


主人公様は対話を知らないバーサーカーでした

 

 いざ行かん、ファーストステージへ! 

 

 ユグドラシルから請け負った今回の仕事は、大陸議会の隠しているオーバードーズの保有者の確保。

 この指令を遂行するためにカトレヤから位置情報をもらい向かった先が、砂漠の只中にポツリと建つ軍事施設“エリア48”という場所。

 Foreigners 2のファーストステージとなる舞台である。

 

 操作するのは主人公なので、環太平洋条約機構軍の特殊部隊を率いて施設に収容されているオーバードーズの保有者を確保または抹殺することが任務。

 しかし向かった先ではクリスタルスカルが暴れており、三つ巴の戦闘に発展するというのがストーリーの流れである。

 すでにオーバードーズが逃げたことを受けてダンデライオンは戦うことなく撤退するし、大陸議会が派遣した部隊にはパラディソスの保有者はいない。このファーストステージの前日譚となるチュートリアルステージにて警備主任のパラディソスの所有者も殺されているし、ぶっちゃけ苦戦する要素はないステージだ。

 

 なので、現地の支援者と合流して主人公たちに無双される側の兵隊を募った俺は、さっさとこのステージを消化してユグドラシルに間抜けに“施設は空だったぞ。聞いてた話と違うじゃねえか、約束通り成果なしでも給料下がるんじゃねえぞ”のレポートを出すための襲撃を敢行することにした。

 

 やはりというべきか、グランシャリオでひとっ飛びして兵隊募って即来たというのに、施設はすでにボロボロになっており、無数の大陸議会のザコ兵士達が群がって警戒体制を敷いていた。

 

 おそらく俺の最推しは脱走した後だろう。

 つまりこれは消化試合。ユグドラシル信者と俺の最推しを幽閉していた大陸議会のコマどもの盛大な潰し合いを観戦することになるわけだ。

 もちろん俺も無双する側として参戦するぜ。

 

 というわけで、ステージを消化するために号令をかけた。

 

「推しを救うのだ! 全軍突撃ィィいいい!」

 

「「「オオオオォォォォ!!」」」

 

 戦略は真正面からの強硬突入これ一択。

 数は圧倒的にこっちが上だし、内部にも協力者がいるので内側から崩せるし、鉛玉で蜂の巣にされてもすぐに押し込んで施設に突入できるぜ。何よりいくら消耗しようと構わない信者を使うのだから、味方の損害を気にせず戦えるのが素晴らしい。最低だなこいつ。

 戦は数と勢いが大事なんだよ、行けザコども! 

 

 突撃してくるクリスタルスカルに、大陸議会も応戦。

 銃撃戦が発生し当初は押し返されそうになったが、内通者が後ろから味方撃ちを仕掛けたことで混乱が発生して戦列は崩壊し、あっという間にクリスタルスカルの突入を許した。

 

 それを高所から見下ろす俺。

 パラディソスの保有者もいない数だけの軍勢にこうも容易く崩されるとは、情けない連中である。そして俺の采配は完璧だった。内通者の存在が大きいです。

 どうやら俺には参謀の才能があるらしい。そんなものは無い。

 

「よろしい。それでは俺も施設に突入するとしよう」

 

 ここ来る前から施設割とボロボロになっているところあったし、どうせラスボスが襲来して脱出した後だろうけど。

 しかし姉貴がココと違う行動をする可能性もあるし、出て行った後の行き先につながる何かしらの手がかりがあるかもしれない。

 例えば地図とか、PCの検索履歴とか。

 

「ならば調べるのはPCがある部屋だな」

 

 どうせ施設にココはいない。

 ゲームでこのステージは何度も駆け回ったから、この施設の構造はあらかた把握している。PCが多数置かれていた部屋があったことを思い出し、そこに手がかりがあるのではないかと見て向かうことにした。

 

 記憶を頼りに、目的地の部屋に到着。

 木製の扉ではなかった気がするが、場所的にはこの部屋だったはずなので、ココが破壊したから扉が変わったのではないかと推測。

 というわけで扉を開いて足を踏み入れた。

 

「俺の勘が告げるぜ……目的のブツはここだとな!」

 

「侵入者め!」

 

「おっさんしか居ねえじゃねえか! 撃ち殺せ!」

 

 開いてみたら詰所で大陸議会の雑魚兵士のおっさんしかいなかった。

 どうやら部屋を間違えたらしい。こんなはずじゃなかったんだが……。

 

 ムカつくので随伴してきたユグドラシルの信者に全員始末させて、俺は再び記憶を頼りに目的のブツが置かれた部屋を目指す。

 今度は記憶と位置が違うが、扉は記憶通りの部屋の前に到着した。

 

「匂う、匂うぞ……」

 

「ここにオーバードーズが……?」

 

「突入すればわかることだ。いざ、ご開帳〜!」

 

「侵入者だぁ!」

 

「またおっさんしか居ねえじゃねえか! 撃ち殺せ!」

 

 結果はまたハズレだった。

 今度は仮眠室で、またも中にいたのはおっさんの雑魚兵士だけ。

 ムカつくので信者に全員始末させて、一旦頭を捻ることにする。

 

「うーむ、俺の記憶が違うのか……? 通信制御室の扉って確かこんな感じだったはずなんだが……」

 

「通信制御室とやらにオーバードーズがいると?」

 

「いや、檻の扉開けるための制御装置もあるからまずはそこ制圧しないと持ち出せないんだよ」

 

「なるほど。ならば人海戦術で見つけ出しましょう! おい、通信制御室を探して制圧するように指示を飛ばせ!」

 

 施設の1番奥の檻になってる部屋の扉を開ける装置があるのは本当だが、扉ならラスボスのやつが破壊しているからいまさら意味はない。

 とはいえ馬鹿正直に逃げた先の手がかりを探すなんて答えるほど俺は迂闊じゃないので、信者どもには納得できる理由を伝えて通信制御室を数の力で探させることにした。

 

 信者どもの成果を待つのも手だが、やはり俺自身の足でも探すべきだろう。

 そう思い立ち記憶を掘り起こしながらPCのある部屋の位置を探すため、俺も移動しようとした時だった。

 

「ダンデライオンさん! 外の連中から太平洋条約の奴らが攻めてきたって! 外の連中は突破されて奴らも施設に乗り込んできてるそうです!」

 

 ストーリーの主人公が率いる太平洋条約の部隊がクリスタルスカルの軍勢を突破し、施設に攻め込んできたという通信があったのは。

 

「ついに来たか、主人公!」

 

 ダンデライオンはじめ、クリスタルスカルのNPCたちの死亡の原因となる死神。

 Foreignersシリーズの主人公。

 環太平洋条約機構の英雄様。

 

 ストーリーの開始、ファーストステージが開始されたことの合図であった。

 

「しゅ、主人公……?」

 

「こちらの話だ。戦力を派遣して足止めしろ」

 

「分かりました!」

 

 この戦場にてパラディソスの保有者は、クリスタルスカルには俺だけで、大陸議会の連中にはいない。

 対して太平洋条約の部隊には、主人公をはじめ10人以上のパラディソスの保有者がいる。

 数は少ないが、戦力では圧倒的に上である。

 

 俺にとって主人公は死神も同然の存在だ。

 とりあえず俺は死神とはやり合いたくないので、信者どもに命令して戦力を派遣しストーリーでは先頭きって突入してきた主人公の部隊を迎撃を行わせる。

 その間に俺は通信制御室を探そうとして、ふと前に目を向けると見覚えのある曲がり角に差し掛かっていた。

 

「ここは……」

 

 確か、この先の部屋を抜けるとココを幽閉している部屋につながる長い通路に差し掛かる場所だったはず。

 そこにワラワラと走って行く信者たちは、曲がり角を抜けた先で銃撃を受けて先頭の数名が倒れ、通路の先にある敵と銃撃戦を開始した。

 

「クソッ! 太平洋の奴らだ、もうこんなところまで!」

 

 いや早いな主人公!? 

 この俺がびっくりするほどのスピードで主人公はフィールドを走り抜け、すでにゴール地点に差し掛かっていたらしい。

 

「ダンデライオンさん! この先の長い通路で太平洋の奴らが待ち構えていて……内通者の情報だと、この先にオーバードーズを閉じ込めた部屋があるって!」

 

「早すぎるぜ、主人公様よ……」

 

 早いことはいいことだが、これはいくらなんでも早すぎるぜ主人公様よ。

 どうやら到着が遅かったはずの太平洋条約の方が、いつのまにかこちらより早く施設の最奥まで到達したようである。

 

 速さはたんぽぽの専売特許だというのに、こちらの主人公は命だけでは飽き足らず代名詞すらダンデライオンから奪おうという腹づもりらしい。こいつがシンプルに寄り道しすぎただけ。

 

「ダンデライオンさん、どうしますか……?」

 

「どうするもこうするも、俺が行くしかないだろ」

 

 先を越されていたことを受け、どうするかと尋ねてくる信者。

 どうするかと言われても、ユグドラシルの脅迫がある以上信者どもの目があるところでサボるわけにはいかないので、大人しく俺が主人公様と対峙するしかない。

 どうせ檻は空だろうし、お互い目的の品物が手に入らない状況ならば適当に説得して手打ちにすることもできるはずだ。

 

 ……あの主人公様が俺の話を聞いてくれれば、だが。

 このろくでなしが溢れる世界では人格者の彼女だが、戦闘狂な一面があるため若干の不安がある。

 まあ、流石に部下を持つ身になったし対話くらいはできるだろ。

 

「俺が通路を突破するから、お前たちは銃撃戦の相手をしてやれ」

 

「お願いします!」

 

「ふん、すぐに終わらせてくれる」

 

 対話して両者撤退の形に収めるだけだからな。

 

 銃撃戦は部下たちに任せて、足の速さを活かしての通路の強行突破を図る。

 ……なお、突破の際に見えない壁に激突して鼻を強打するわ、三十発ほど銃弾を受けるわといった妨害に遭い、ややボロボロになったが。

 

 

 

 

「ならば実力行使しかないな。覚悟しろ!」

 

 なお、本物の主人公様は対話という行為を知らないバーサーカーでした。

 

「やはりお前は俺にとって死神だ!」

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