爽快なのに鬱ゲー世界の敵役に憑依したからには、悲劇フラグを折って爽快無双ゲーにしなければ(使命感)   作:火星で1,000往復

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引き続き転生者の視点になります。


別視点:転生者 5

 

 ワーム形態のフォーリナーを倒した翌朝。

 夜以上に冷え込む明け方。陽の光が湖を照らし、フォーリナーの残骸の金属面が反射して、瞼の向こう側で眩しさを感じたことにより目を覚ました。

 

「ん〜〜ッ……おはよ、ハクノ」

 

 私が目を覚ました時には、私より遅く就寝したはずなのに私よりも早く起きていたハクノの姿があった。

 その背中に声をかけると、朝日をバックに全身を禍々しい呪いの鎧みたいな見た目をしているウラノメトリアのアーマーを装備したハクノが反応して近づいてきた。

 

「湖はフォーリナーの骸で汚染された上に、湖面に氷が張っている」

 

「綺麗な湖だったのに……私が言えることじゃないけど、ちょっと悲しいかな」

 

 ハクノの言葉を受けて、まだ眠気が完全に抜けていない状態で湖に目を向けると、フォーリナーの死体で湖は工場の廃水みたいな虹色の油が浮いている水になっている上に氷が張っていた。

 顔だけでも洗いたかったけれど、こうなっては流石に無理。

 諦めてこのまま出発することになった。

 

 

 

 ハクノの話では、協力者はこの湖からさらに北に向かった先で落ち合う予定の場所があり、その近くの村に住んでいるとのこと。

 湖の北の方に回ると、ほとんど生き物の気配がなかった南側と異なり、幾つか川が湖に流れていてその近くには緑が見られた。

 

 川の先には山が並んでいる。

 山頂の方はうっすらと白くなっており、この先の山は湖以上に寒そうな世界が広がっていることを教えてくれている。

 あの山を超えた先に人里があるとのことだけど、あんな場所に人が住んでいるのだろうかと思うほど山は人の気配を感じさせてなかった。

 

「まるで世界の果てって感じの景色だね……」

 

「バフィン島やグレートビクトリア砂漠も趣は異なるが、その表現が合う」

 

「世界中旅してるの……?」

 

「……アフリカ、南米、南極に行ったことはない」

 

 キルギスの山を見た感想を述べると、ハクノからカナダの北にある島とオーストラリアの砂漠の名前が出てきた。

 この人世界中を旅しているのかと思いきや、やはりフォーリナーの勢力下にある場所には行ったことがないと返される。

 それでも前世では人生のほとんどを日本で過ごした私なんかより、よほど世界を見てきているんだけど。

 

「流石にフォーリナーのところには行ったことないんだ……」

 

「地中海と西アジアには行ったことがある」

 

「あるの!?」

 

 普通にフォーリナーの勢力圏にも足を踏み入れてました。

 さすがラスボス。公式が最強認定しているし、フォーリナーの勢力圏でも普通に無双できるから問題ないんでしょう。

 

「アララト山に登頂した」

 

「観光かな!?」

 

「フォーリナーの群れに遭遇した成り行き」

 

「それで挑む山じゃないと思うよ……」

 

 しかも観光みたいなことしてるし。

 実際はフォーリナーに追い回された成り行きで登ることになったとのことだけど、アララト山ってそんな無計画に挑める山じゃないと思いますよ。

 

「小さい方だよね?」

 

「大きい方」

 

「流石に暑い時期でしょ」

 

「12月」

 

「雪なんて関係ないのかな?」

 

「この旅路の方が過酷」

 

「そうなんだ……」

 

 大アララト山に12月にフォーリナーに追いかけられて準備なしで挑み登頂したハクノから見ると、今回の旅の方が過酷なルートを渡っているとのこと。

 経験者からそう聞かされると、オーバードーズがあればなんとかなるものなんだなって思えてきました。

 確かに冷静になって振り返ると、施設から出てからのこの旅路も人間が挑むものじゃないしね……。タクラマカン砂漠渡って、天山山脈登って、キルギスっていう前世の私は名前すら知らなかった場所に来たわけだし。

 

 ゲームでも様々なステージがあり、世界のいろんな場所をモデルにしたフィールドが出ていたけど、流石にこんな場所は無かったし。

 ファーストステージも基本的に施設の方がメインで砂漠のフィールドはごく一部だけだった。

 もちろんチャティルクル湖なんていう場所もゲームでは出てこなかった。

 

 ハクノと同行すると、今後もこんな世界を歩くことになるかもしれない。

 もっとも、頼れる相手が現状彼しかいないので選択の余地はないんだけどね……オーバードーズの保有者なんて、この世界じゃ人類の敵扱いされているので、同じ立場のハクノしか味方になってくれる相手がいない。

 ……ゲームだとココは施設を脱出するなり対等に戦える存在だからとその唯一の味方になってくれる存在だったハクノを攻撃してすぐに袂を分ったけど。

 

 命を燃やして、戦って、奪って、その灯火を消すことで、自分の命はまだ燃えているって、それしか生きているっていうことを感じることができないから、戦いに全てを賭ける。

 ココはそれでしか生きている実感が得られなかったから、自分の灯火が消えることになっても戦うことを渇望していた。紛れもない戦闘狂キャラ。

 眠っているけど今も私の中にその魂があるっていう不思議な感覚があるし、特に戦闘中にはココに引っ張られているんだろうって自覚できるくらいに性格が変わる。私の意識が全力でそれを拒否しているけど、ハクノと戦いたいっていう感情が沸くこともある。

 声という形で関わったキャラだから、彼女の感情もわかる。

 ココの生き方を尊重するなら、私はハクノと敵対していた。

 

 それでも、前世の価値観、私の価値観は、彼との敵対は望んでいない。

 

 だから、眠っている彼女には申し訳ないって思うところもあるけど。

 私は貴女にこの体を返さなきゃいけなくなる時が来るまでは、彼とは敵になりたくない。

 

 それに、こうして世界を旅することもキツいけど悪くない。

 

 私のわがままだけど。

 戦いにしか生きる喜びを見出せないのは寂しいから。

 知らない世界を知って、見たこともない景色に触れて、こうして一緒に行く相手と時を過ごすっていう旅の楽しさも、生きているっていう感情を満たせる要素になって欲しいなって思っている。

 

「ハクノ」

 

 私の声に反応して振り向いたラスボスに、私が転生者でありこの身体の本来の持ち主がいることも知っている彼に、尋ねる。

 

「貴方は、()()()の味方でいてくれる……?」

 

「どちらであろうとも、変わることなく味方でいる。それが、兄の意思故に」

 

「……そっか」

 

 ラスボスは、迷うことなく返答した。

 私であっても、ココであっても、味方でいてくれると。

 

 確かに、ゲームでも彼はココに襲われてからも、応戦こそしていたけどストーリーでココを敵とみなすことは一度もなかった。

 オーバードーズに飲み込まれず、家族の無念よりも意思を尊重して復讐を辞める。

 ココに見せる対応は、強くて優しい彼の心根を映している。

 

「じゃあ、もうしばらく頼らせてもらいます」

 

「了承」

 

 なら、私は彼女に旅を通じて戦い以外にも喜べることが世界にあるってことを知ってもらえるようにする。

 なんの因果か訪れたこの二度目の人生。

 この荒廃した世界で生きることと、ココにも戦う以外の楽しいことを知ってもらうこと。それを今世の目標にしようと思います。

 

 声優として携わった存在であるココに転生したからこそなのだろうか。

 いつの間にか、私の中にはこの悲劇に溢れる世界でどう生きていくかの目標が生まれていた。

 

 まずは目的地である協力者と会うためにキルギスへ。

 人類に認められないもの同士、2人の旅はまだ続く。

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