爽快なのに鬱ゲー世界の敵役に憑依したからには、悲劇フラグを折って爽快無双ゲーにしなければ(使命感) 作:火星で1,000往復
主人公様にたんぽぽ野郎を切られたおかげで、パチモン野郎のボールサムで対面することとなった聖母様との密会。
そこで中身である俺の正体、ボールサムになった経緯、聖母様の素性やユグドラシルの本性を知っていた理由、ダンデライオンの末路までを説明した。
残るはユグドラシル退場計画のプレゼン、あとはこの憑依現象とスリフトという扱いに困っている幹部についての相談だな。
土下座スタイルは聖母様に強引に終了させられ、椅子に座りテーブルを挟んで向かい合う形になっている。
エルキドゥの権能で嘘がないことを確認しつつ、俺の話を聞いた聖母様は、矛盾の解消や俺が嘘を言っていないことなどから、荒唐無稽だと切り捨てられてもおかしくないこれまでの俺の話を信じてくれた。
さすが聖母様。人生経験が違うからか、器も広い。
ブラックコーヒーを一口。
冷めてしまったが、やはり美味い。うんうん、結構結構コケコッコー。
俺がブラックコーヒーを飲む姿を見て、聖母様は過去の幹部会のことを思い出したらしい。
「……そういえば、ボールサムはブラックコーヒーを好まなかったですね。味覚も人格に偏るのでしょうか」
「そうらしい。ダンデライオンの時もマスターのブレンドを受け付けなかったからな。誰の肉体になっても、俺にはブラックコーヒーが合うようだ」
「甘いのは苦手ですか?」
「饅頭とかなら問題ないが、生クリームや練乳になるとダメだ。ホワイトチョコレートも難しい」
「私は恥ずかしながらブラックコーヒーはいまだに苦手ですから、羨ましいです」
「味覚の好みなど千差万別、どうあれ恥ずべきことでも誇ることでもないだろ」
「……そうですね」
ただの味覚に関する話題だったのに、なんか一瞬引っかかったような気がしたけど、まあ気のせいだろうと無視することにした。
さて、コーヒー談義はこれくらいにして、本題に戻ろう。
「話を戻そう。次は、俺の目的に関しても隠していることを全部話しておかなきゃいけないだろうな」
「それは先ほど言ったはずでは──」
「自由になりたいというのは前提になる。俺の目的はその先にあるからな」
「……続きをどうぞ」
次の話題は、俺の目的について。
これに関しては大陸議会に潜入したときに結局真偽を確かめられずに終わってしまっているので確認が取れていないが、聖母様には隠し事したくないし、先に接触があったような時にあらかじめ知っておいてもらえれば余計な戦いを避けられる可能性もある。
自由を得た後にやりたいことである、俺の最大の目的について打ち明ける。
「ユグドラシルを退場させて自由を得たら、俺は姉貴を捜したい」
「あなたのお姉さんを? しかし、それは──」
「いや、根拠はないが確信している。姉貴はこの世界に生きていて、俺と同じようにどこかの誰かに転生しているって。候補にも目星をつけている」
「それは……いえ、続きを聞かせてください」
聖母様は一度流石にそんなことはないだろうと否定しようとしたが、酷なことを告げるのは良心が痛むからか、出かかっていた否定を飲み込んでくれた。
やはり聖母様は優しいな。美人だし。踏んでほしい。
「心遣いに感謝を。他者からすれば一蹴したくなるだろうが、俺の姉はゲームにてあるキャラクターの声優を担当していた。俺みたいなほとんどゲームに関わりのないただのプレイヤーより、姉貴の方がこっちの世界に転生している可能性が高い気がするんだ」
「お姉さんが、声優を……」
「ああ。ダンデライオンが回収任務に赴いた先にある施設に幽閉されていた、クソ野郎の計画ではバルバトスの生贄にする予定だったオーバードーズ……アジダハークの保有者。それが俺の姉が声で命を吹き込んだ人物だ。名前はココ」
「ココさん……あなたがユグドラシルの任務を引き受けたのは、彼女と接触しお姉さんであるかを確かめて助けるためだったわけですね」
「最初からそこまでは期待してなかったさ、あわよくばって感じだったしな。ストーリーだとダンデライオンの施設襲撃前に逃げ出すことになってたし、実際逃げ出してたしで、結局確認はできなかったけどな」
「……お姉さんの安否は、さぞ心配でしょう」
「心配っちゃ心配だけど、強さは保証されてるオーバードーズだからな。フォーリナーだろうが大陸議会だろうが、簡単に捕まったり殺されたりすることはないと思ってるよ」
姉貴の転生先と見ているキャラであるココに関しては、ハクノがいたから脱出はしっかり成功しただろうし、そのあとハクノと別の道に進むかしばらく一緒になっているかは分からないがおそらく無事だと思う。
何しろオーバードーズはそんじょそこらのパラディソスとは性能が違う。雑兵がいくら集ろうともまともな戦いにならず蹴散らせるくらいには。
ユグドラシルはココを諦めないだろうから、場合によっては聖母様がココと戦う羽目になるなんて展開もありえる。ストーリーではすれ違って回避できたけど、聖母様とココが戦いになりそうだった展開があったし。
オーバードーズ相手に無茶を頼む形となるが、対峙することになった場合にココの命を奪うのはやめてほしいと頭を下げる。
「聖母様が今後遭遇するかもしれない。そうなった時、命を奪うような真似はやめてほしいんだ。オーバードーズ相手に無茶を言っているのはわかるが」
「……そういうことならば、わかりました。家族を失いたくない気持ちは、私もしっています」
「すみません、貴女に多くの負担をかけてしまう形になって……」
「もしあなたのお姉さんであることが確認できたならば、私の方で保護を試みます。あなたに教えていただいた話をすれば、彼女の素性も自ずと判別できますからね」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
聖母様の返事は、了承。
相対することがあった場合には殺傷を避けることと、さらにココの保護も可能ならば動いてもらう約束も受けてもらうことができた。
聖母様に信者が入手したココの姿を写した写真を渡し、聖母様に中身が姉貴だったらという場合に通じる手段として、俺と姉貴の生前の名前も伝えた。
「姉貴は“アリサ”、俺の本当の名前は“イツキ”っていいます。もし姉貴が覚えていてくれたなら、きっと反応があるはずです」
「分かりました。ですが──」
「ええ、姉貴がいない可能性もある。こっちで生きてるって信じたいですけど、そんな都合のいいことがあるわけないって可能性ももちろんある。覚悟はしてます」
もちろん、姉貴なんていないって可能性はある。
けど、根拠もないのにやっぱり姉貴はココになって生きているんだって、そんな確信があるから俺は諦めるつもりはない。
聖母様に更なる負担をかける形になったが、姉貴と会った場合の対応も穏便に済ませられるようにしてくれることを承諾してもらえた。
ユグドラシルにとってはココの確保が大きな目的だからな。多くを動員して確保に動く可能性は高いし、聖母様にも動くよう指示が出る可能性も十分に考えられる。
聖母様が味方になってくれるだけでも心強い。
さて、これで俺の本当の目的も含めて隠し事は吐き出した。
あとはうまくいけば味方に引き込むことが可能なスリフトとカトレヤの件、そして本題であるユグドラシル退場計画のプレゼンだな。
ゲームのストーリーを網羅しているというアドバンテージを活かし、そして聖母様という強力な味方をつけた現状で組み上げたユグドラシル退場計画を提示する。
「次は本題のユグドラシルの野郎の退場計画だな」
「……もう計画を立てたのですか?」
「俺はこの先のシナリオを知っているんでね、あいつの弱点も、誰を味方に引き込めばいいかも把握していますよ。もっとも、ゲームではなく現実になったからストーリー通りにはいかない可能性もバンバンありますがね」
天山山脈の件とかな!
ダンデライオンの立場からすればシナリオ通りの退場だが、本当はこのあと東南アジアを舞台に二大勢力による戦争が開始されて、そこで主人公の中隊も大陸議会と戦う羽目になるはずなんだよ。
つまり主人公様がキルギスにいたならば、シナリオに狂いが生じている可能性があるのだ。
あの戦線で大陸議会が勝つなんてことになってみろ、泥沼化するわ。
ストーリーでは損害の大きさと大量に発生した捕虜の身柄の安全確保から、割と早期に条約機構の有利な形で講和にこぎつけることができたのだ。
これもクリスタルスカルの策略で、両陣営にとって不本意な形の開戦だったし。
そしてこの時活躍するのも主人公たちの中隊で、無印版の方でも主人公とくつわを並べた海軍のプレイアブルキャラが率いる部隊と協力して、4つのステージを通じて大陸議会に大きな損害を与え有利な講和を勝ち取る功績を上げるのだ。
しかしその要の主人公様がまさかの天山山脈である。
主人公抜きの条約機構軍が劣勢に陥れば、長期化する可能性があるのだ。
このようにすでにズレが生じ始めている。
とはいえそれでもバルバトスの弱点は変わらない。
一つ目。あいつは生贄の権能を発動すると、しばらく動けなくなるという致命的な欠陥を抱えているのだ。
もちろんココを生贄に焚べることを許すつもりはないので、こっちの手段を取るとしたらハクノを利用してという形になるけど。
まあ、これはあくまで一つの手段。
俺の本命の計画は、カトレヤを仲間に引き入れることにある。
「俺が建てた計画は、カトレヤを仲間に引き込むというものだ」
「カトレヤを? ですが、彼女は──」
「無論、爆弾の件は承知しているさ」
カトレヤを仲間に引き込み使うという俺の計画を聞いた聖母様は、しかし彼女もまたユグドラシルの野郎に命を握られている1人である点を指摘してきた。
ふっふっふっ、それはもちろん承知の上よ。
だがしかし、カトレヤを仲間に引き込めば彼女にはユグドラシル打倒の絶好の機会を見出せるのだよ。
「カトレヤに寝込みで暗殺してもらうなんて野暮なことを考えてるわけじゃない。試みたところで爆弾で返り討ちになるだけなのは目に見えてる」
「いえ、それ以前に彼女をどうやって味方に──」
「聖母様はご存知ないだろうが、カトレヤはユグドラシルと肉体関係を結んでいるんだ。幹部昇格を引き換えに愛人になれって契約でな」
「あなたは人の話を聞きなさい。……今なんと?」
「カトレヤとユグドラシルは夜な夜な一糸纏わぬ姿でまぐわう関係に──」
「卑猥な表現はやめてください! 普通に、その……肉体関係でいいではないですか!」
聖母様が顔を真っ赤にして遮ってきた。
カトレヤとユグドラシルがチョメチョメする関係にあるってだけなのに、聖母様には刺激が強かったらしい。しかも肉体関係のところだけ声量落とすとか、意外とウブなんだなこの人。70代なのに。
「意外だな、肉体関係を恥じらいながらでないと口にできないとは」
「あ、当たり前です!」
「まあ、2人がどんな内容のエッチしているかなんてこの際どうでもいい。重要なのはカトレヤがあいつとそういう関係にあることだ。つまり裸ん坊で無防備な上に○○○○に夢中になっているあいつの目を盗んで寝室に工作を仕掛けられる立場にあるってことよ」
「もう表現が直球すぎます! それにどうやってカトレヤの協力を得るつもりなのですか!? その前提条件がありますよね!?」
おうおう、矢継ぎ早に聖母様から指摘が入ってきた。
アスカロンで店内を眠りに誘っていなければ、この騒ぎっぷりは注目の的になっていたぞ。眠らせて正解だったな聖母様。
さて、聖母様の指摘に対する答えももちろん用意している。
カトレヤの協力を得るという前提で話を進めているが、大陸議会を激しく憎悪しており、拾われたクリスタルスカルに大きな恩を感じている彼女を、ユグドラシル退場計画の同志に抱き込むのは確かに困難だろう。
だがしかし、ストーリーを知るアドバンテージを舐めてもらっては困る。
彼女のユグドラシルへの信用を失墜させ、俺たちの同志に引き込む算段ももちろんつけている。
そのキーマンになる男こそが、スリフトなのだ。
「落ち着け聖母様。もちろん、カトレヤを仲間に引き込む算段も立てているさ。彼女の知らない事実を明かせば、確実にユグドラシルへの信用は地に落ち俺たちの共犯に鞍替えしてくれる。そのカードを俺は握っている」
「彼女は大陸議会に家族を殺され、その復讐に燃えています。ユグドラシルは彼女を救ってくれた恩人、故に爆弾の存在を承知しながら幹部に昇格しパラディソスを得たのですよ。彼女は力を与えたユグドラシルを信奉しています」
「ところがどっこい、カトレヤの家族は生きている。養父だが、カトレヤは大陸議会に殺されたと信じ込まされているだけで、ボールサムに記憶を改竄されてユグドラシルの手駒にされているんだよ」
「なっ──!?」
「スリフト。本名はエイブラハム・オズモックだが、あいつが故郷を焼かれた幼い頃のカトレヤを拾い育てた父親であり、アスカロンの権能で記憶を改竄され顔も隠されユグドラシルの駒にされてしまった被害者さ」
改めて見ると鬼畜の所業だよなこれ。
家族の生存を隠して、救いの手を差し伸べたように見せかけて、裏では父親の記憶捻じ曲げて兵器にするだけでは飽き足らず、娘も兵器にした上に未成年を愛人にしてるんだから。
ボールサムが死んで洗脳が解けても、真実を娘が知っても、親娘ともどもに爆弾が仕掛けられてどちらも人質にして言うこと聞かせられるって保険もかけてるし。
オズモック親娘に対してやらかしてるユグドラシルの下衆の所業をきいた聖母様は、怒りを抑えられないと言わんばかりの形相になった。
おっかねぇ……。まあ、気持ちはわかる。
自分を騙していたから別の被害者も多数いると思っていただろうに、カトレヤはその想像以上に酷い目にあってるからな。
まだ16歳の、血のつながった家族も故郷も奪われた少女から、さらに純潔と人生と養父まで奪い、復讐心を煽って殺人はじめ多くの罪を背負わせているんだから。マジで最悪の所業だよ。
オズモック親娘の悲劇を教えただけで、彼女のカトレヤたちに対する見方はひっくり返っただろう。
さて、プレゼンの続きだ。
「スリフトの正体を教えれば、カトレヤのユグドラシルの野郎に対する信用は失墜するだろ?」
「……確かに」
「スリフトの洗脳をしているのがアスカロンだしな。本当はダンデライオンで暗殺仕掛けて仕留めるつもりだったんだけど、変な因果でこうして丸ごと手に入っちまった。スリフトをクソ野郎の支配から解放して、カトレヤと再会させる。それを引き換え条件に、ユグドラシルの野郎と行為中に工作を仕掛けてもらうのさ」
「スリフトを先に洗脳から解放するべきでは?」
「命握られてる状態で解放しようものなら俺もスリフトも即座に爆弾ドカンだよ。特にスリフトの方なんか娘を助けるために相打ち覚悟で突っ込みかねねえし」
「そうですね。すみません、思慮が足らず……」
「気持ちはわかる。でも物事には順序がある。一歩間違えれば悲劇の別れになるが、うまくいけばオズモック親娘の呪縛を解放できるはずだ」
スリフトの解放はユグドラシルの退場の後になる。
今すぐスリフトを解放することはできない理由を説明すると、聖母様にも納得いただけた。
さて、カトレヤを味方につける前提条件はこれでクリア可能。
次の段階である、カトレヤを味方につけてやってもらう工作を発表する。
これがまさにユグドラシル退場計画の肝になる代物だ。
「カトレヤにやってもらうのは、ユグドラシルが握っている幹部のパラディソス爆弾の起爆スイッチへの工作さ」
「爆弾を無力化するわけですか」
「その通り。基本的に肌身離さず持ち歩いており、寝室ではあいつしか知らない秘密の隠し場所に置いてある起爆装置。その置き場所を俺は知っている」
クリスタルスカルの幹部たちの命を盾に従わせている、パラディソスに仕掛けられた爆弾の起爆装置。
ユグドラシルはこれを普段は常に持ち歩き、唯一手放す就寝時も自分しかいらない場所に隠している。
寝室は施錠していて外部からの侵入はできない。
たとえ寝室に入れる立場であるカトレヤや愛人の信者もその在処を知らないから手を出せないのだが、俺はゲームを通じてユグドラシルしか知らないはずの寝室における隠し場所を知っているのだ。
「カトレヤに場所を伝えて、行為の後眠りについたところで起爆装置に細工をしてもらい使えなくするのさ。これで俺たちはユグドラシルに遠慮なく仕掛けられるようになるって寸法よ」
「なるほど、だからカトレヤの協力が必要なわけですか。よもや、カリスタもこの世界がゲームの舞台になっていて、別世界の人たちに誰にも知られていない起爆装置のありかを知られているなどとは思わないでしょう」
「ゲスな手で親娘を引き離し縛りつけるクソ野朗さ、同情を向ける価値もねえよ」
起爆装置を無効化すれば、スリフトを解放できる。
もっとも、クリスタルスカルの信者や支援者は無数にいるし、爆弾がなくとも手駒でいるフリージアというボディーガードとメープルという事故物件がいる。
何よりあの野郎自身もバルバトスという極めて強力なパラディソスを保有しているなど、戦力はまだまだ大きい。
俺と聖母様、オズモック親娘で対抗するには戦力不足だ。
「味方を増やしてあいつの呪縛から解放されたとはいえ、戦力は少ない。アスカロンの洗脳もバルバトスは弾けるからな。だから、この段階では起爆装置の工作だけに済ませて、スリフトを解放したあとも引き続きクリスタルスカルの幹部として動く」
「直ぐには動かないということですね」
「ああ。アジトの所在などの情報を流して、二大勢力にクリスタルスカル討伐の行動を起こさせて、ユグドラシルの野郎にぶつける。戦いの中でフリージアとメープルを引き離し、欲を言えば主人公様たちとも協力して隙をつくなどしてあいつを倒す。それが俺の立てた、ユグドラシルのクソ野郎退場計画だ」
これぞ、俺の建てたユグドラシル退場計画の全貌だ。
二大勢力を利用してクリスタルスカルと戦争を起こさせ、ユグドラシルの所在を密告し討伐隊をぶつけて、その対応にフリージアやメープルが離されたところで、俺たちであいつをぶちのめす。
自信満々に粛清をしようとして起爆しない事態に慌てふためくだろうから、隙は必ず生まれるって寸法よ!
俺のプレゼンを聞いた聖母様はしばらく目を閉じて思案し、そして頷いた。
「なるほど、良き作戦です」
「だろう?」
どうやら聖母様のお眼鏡に叶う作戦だったようだ。
まあ、俺の素晴らしい頭脳が導き出した完璧な計画だからな。
「カトレヤの説得は聖母様に頼みたい。俺が伝えようものなら、今すぐ取り返すって殺されかねないからな、ボールサムが」
「わかりました。こちらは私に任せてください」
俺が向かったらアスカロンを消して洗脳を解除するために殺される可能性があるので、カトレヤの説得は聖母様にお願いする。
俺の方は起爆装置の解除をするための準備を進めておくとしよう。
というわけで、ユグドラシル退場計画のスタートだ──というところで、カウンターの方のモニターに緊急ニュースが流れてきた。
「緊急ニュースです。本日10時ごろ、ユーラシア大陸議会勢力のものと思われる爆撃機編隊がスマトラ島の領空を侵犯。スクランブル発進した条約機構空軍の警告を無視し飛行すると、突如として都市に対し無差別爆撃を敢行。これに対し自衛権を行使し撃墜措置を行ったところ、ユーラシア大陸議会が一方的な攻撃を受けたとして報復と称し環太平洋条約機構に対して宣戦布告。東南アジアにて、二大勢力による軍事衝突が勃発したとのことです」
それは本来ダンデライオン討伐で東南アジアに赴いた主人公たちに舞い降りた次の試練である、次のステージに繋がるイベント。
二大勢力が再び人類同士の戦争を開始した合図だった。