爽快なのに鬱ゲー世界の敵役に憑依したからには、悲劇フラグを折って爽快無双ゲーにしなければ(使命感)   作:火星で1,000往復

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東南アジア旅行にはパチモンが行こう

 

 ダンデライオンを倒し、クリスタルスカルという組織を知ったアサヒ。

 セカンドステージの舞台である東南アジアでは、その後にクリスタルスカルが裏で糸を引く事件により太平洋条約と大陸議会の間で武力衝突に発展する事態が起こり、アサヒたちの中隊はオーバードーズ確保の任務が中断となり、増援が来るまで大陸議会軍の侵攻を食い止めるという新たな任務を受けることとなる。

 そして海軍から先遣部隊としてオーストラリアより派遣された、サザンクロスとの戦いでもくつわを並べた戦友たちと再会し、大陸議会軍の侵略を防ぐ戦いに挑むこととなる。

 その中で、大陸議会軍側と太平洋条約側の主張が食い違っていることを知り、お互いの上層部も戦火の拡大に消極的な今回の武力衝突の真相を探る中で、背後にクリスタルスカルの存在と、上官がそのテロ組織の一員であることを知ることとなる。

 テロリストのスパイとなっていた上官を打倒したアサヒは、仕組まれた戦争を止めるために協力者たちと共に動き、大陸議会の侵攻を食い止め停戦に持ち込むための戦いを挑むこととなる。

 

 ……これが大まかなダンデライオン撃破後の東南アジア旅行のストーリーの流れになる。

 結末は、侵攻ルートを予測して引き込み大陸議会軍の後衛を撃破することで前衛を孤立・無力化させて、大量の捕虜を人質にした停戦交渉に持ち込んで、なんとか戦争の拡大を阻止することに成功というものだった。

 

 さて、この戦争に主人公たちが駆り立てられることとなったのは、ダンデライオン追撃のために東南アジア旅行に来ていたからである。

 つまり大陸議会軍の侵略を止めるためにすぐ動ける位置にいたから参加することになっただけであり、ダンデライオンを追って天山山脈をうろちょろしている場合には参加する可能性は限りなく低くなるのだ。

 実際、足止め要員として近場にいたから召集されたんであって、太平洋条約はオーストラリアとかから派遣する本隊で侵略を跳ね返すつもりだったわけだし。

 

 だがしかし、この東南アジアの二大勢力の武力衝突は主人公様の中隊がいたから太平洋条約が早期に犠牲者を抑えて勝利することができたのだ。

 なにしろアサヒの率いる中隊には10人のパラディソスの保有者がいる。

 一個中隊だが、質を考慮すれば軍団クラスの戦力がある。

 衝突当初は数で圧倒していた大陸議会が跳ね返されて、大軍を動員したのにほとんど戦果を上げられずに捕虜になるという敗北を喫したのは、主人公様と彼女の率いる中隊と息ぴったりの戦友の海軍がいたからである。

 逆に言えば、アサヒ中隊のいない太平洋条約軍では数が多い大陸議会に負ける可能性が高く、その場合インドネシアをはじめとする東南アジアの島と海を大陸議会が占領することになるのだ。

 

 フォーリナーの侵略で荒廃したこの世界において、資源に恵まれている東南アジアは非常に大きい存在である。

 太平洋条約にとっては東アジアの列島戦線をつなぐ航路やオーストラリアの防壁としても重要なので諦められるはずがないし、大陸議会にとっても一度手に入れた資源の宝庫を手放すことはできない。

 そうなれば、ゲームのストーリーでは早期に終わるはずだった武力衝突が二大勢力の本格的な戦争に発展してしまう。長期化は避けられないし、そうなれば犠牲者も多く出ることになるのだ。

 

 主人公には東南アジア旅行をしてもらわなければならなかった。

 ところが当人は何がなんでも始末したかったらしいたんぽぽ野郎を仕留めるために旅行先を天山山脈にしてくれやがったので、東南アジアがお留守なのだ。

 

 そんな中で時期的にはシナリオ通りのタイミングで始まった東南アジアの武力衝突。

 アサヒ中隊がいなければ、数で圧倒的に劣る太平洋条約の現地部隊で大陸議会の大軍の侵攻を食い止められるとは思えない。

 しかし大陸議会の勝利を許せば本格的な戦争に発展してしまう。

 

 最悪のパターンは大陸議会が勝利して東南アジアを巡る二大勢力の本格的な戦争に発展することだが、この際にアサヒ中隊がいないことにより太平洋条約が劣勢となりそのせいで主人公様の戦友の海軍士官殿が戦死したりするのも非常によろしくない展開だ。

 何しろ彼女たちはクリスタルスカルとの戦い、そして3のストーリーにおいて主人公にとって欠かせない存在。失われることがあれば、とんでもないバッドエンドに流れることになりかねない。

 例えば二大勢力が消耗した隙に、あのユグドラシルのクソ野郎が躍進して神になりたい野望を阻止できず世界滅亡とかな。

 

 そんな最悪のバッドエンドなんてさせるかってんでい! 

 姉貴のためにハッピーエンド届けるのが弟である俺の使命よ。

 

 天山山脈に旅行先を変えるような主人公は頼りにならん。そもそもあいつ人の話をまともに聞かないしな。だからお前が言うな。

 ならばストーリーの軌道修正のため、己の手で大陸議会が負けるように動かすほかあるまいて。

 つまり東南アジア旅行にはパチモンこと俺が行く! ということよ。

 太平洋条約の現地部隊と主人公様の戦友には、ストーリーを知る──すなわち数で圧倒する大陸議会軍を撃退する方法を知っている俺という最高の援軍が向かってやることにしようぞ。

 

 よし、方針決定。

 ダンデライオンみたいに高速移動とはいかないが、クリスタルスカルはジェット戦闘機とかも保有している組織である。これを使って東南アジアに向かうのだ。

 そして到着したら撹乱・足止めにはもってこいのアスカロンを駆使して大陸議会を追い詰める。

 

 これで行こう。

 見つかったら俺テロリストだから殺されるし、二大勢力は両方敵という形になる孤独な戦いになるけど。

 

 武力衝突の発端となった、大陸議会によるスマトラ島への民間人を標的にした都市爆撃はクリスタルスカルが裏で糸を引いている。

 オーバードーズを強奪した太平洋条約の部隊がスマトラ島に逃げ込みオーストラリアに逃れようとしているという偽情報に踊らされた結果、焦った大陸議会がこの爆撃を敢行したのだ。

 バカだと思うが、オーバードーズはそれだけ危険な存在なのだ。隠して拘束していたなんてバレるわけにいかないから、条約機構の本拠地に逃げられる前に諸共吹き飛ばせってなってしまうらしい。

 

「始まった……」

 

「聖母様も知っていたのか」

 

「聖母様と呼ばないように。……メープルが請け負った任務です。二大勢力に武力衝突を発生させて混乱を起こし、その隙にオーバードーズを確保し生贄の儀式をする算段なのでしょう」

 

 聖母様もユグドラシルが裏で糸を引いた武力衝突であることは承知していたようす。

 ……ボクっ娘カナダの仕業だったのか。ボールサムのアスカロンみたいな権能があるわけでもないのに、よく煽動なんてできるよなあいつ。事故物件なのに。

 

「ユグドラシルの思い通りにはさせられねえな。東南アジアは俺がどうにかするんで、カトレヤの説得を任せていいか? 説得できたらこの番号に連絡をくれ、準備するから」

 

 ユグドラシルの野郎退場計画の肝となるカトレヤの説得は聖母様に任せて、俺はプライベート用の携帯の番号を記したメモをコーヒーの料金とともにテーブルにおいて、武力衝突の早期終結を目指すために東南アジア旅行に向かうことにした。

 

「それはもちろん。しかし、二大勢力の衝突はいずれ必ず起きること。これを止めたとしても次が──」

 

「ダメだ。東南アジアは資源の宝庫、ここを一度でも大陸議会が勝ち取れば絶対に戦争が泥沼化する。戦意が低いうちに戦争の意欲を削ぎ落として早期停戦に引っ張り込まないと、大勢の人が死ぬしユグドラシルのクソ野郎が動きやすくなっちまう」

 

「……わかりました。どうかご無事で」

 

 東南アジア旅行に行くと言い出した俺に、わざわざ首を突っ込む問題かと疑問を呈する聖母様。

 本来は平和を愛する慈悲の人だが、ユグドラシルのクソ野郎とこの荒廃した世界に晒されたせいでだいぶドライになっちゃってる聖母様。

 そんな聖母様は嫌なので止めなければいけない理由を説くと、エルキドゥの権能で俺の言葉が嘘でないことを確認した上で納得いただけた。

 ついでに聖母様から無事を祈る加護の言葉をいただいた。

 

「おう、そっちも頼むぜ聖母様! 貴女の祈りは最高の加護になるぜ!」

 

「だから聖母様はやめなさい!」

 

「いくぞまずは戦闘機の確保だ!」

 

「人の話を聞きなさい! そしてマスターたちを戻しなさい!」

 

「ああっと忘れとったわ! 起きろ愚民ども!」

 

「なんですかその呼び方は!」

 

 聖母様の注意を受けて、マスターたちの催眠を解除し店を飛び出す。

 

 行くぞ、まずは戦闘機の確保だ。

 というわけであつまれ信者ども!

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