助けて補習授業部!!!   作: 俺は人間をやめるぞぉ!

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ヒフミ回


共犯者

ブラックマーケットの賑わいは、夜だろうとお構いない。

なんなら、夜こそその賑わいは最高潮に達すると言ってもいい。

 

 

なんて、適当にそれっぽいことを言っただけだがね。実際のところはどうか知らん。

何せはじめて来たんだし。

 

 

まぁお天道様の下で派手に違法な取引やらするかと言われればそんなことないと思うし、やっぱり活発になっていくのはこの時間辺りからじゃないだろうか。

 

 

いやそんなことはどうでもいいんだよ。

 

 

「えっと、アタッシュケースを貰うんだ...確か、黒いジャケットに赤い帽子をかぶった男から受けとる手筈だった」

 

 

何処だろぉ、うーん?

ぐるぐると辺りを見渡す。結構分かりやすい特徴だし、視界に収めれば気づけるはずだ。

 

 

「...えっ?」

 

 

そうして俺は見つけた。

と言っても、黒ジャケ赤帽男をではない。

 

 

そいつは、その場に似つかわしくない風貌をしていた。

ほとんどがその道を進んどりますねぇ、いやぁ反社反社などと言いたくなるような、明らかなカタギ外の格好をしているのに対して、そいつは一般的な服装だった。

逆にそれがここでは異端的なので、ハチャメチャに浮いている。

 

 

なんだろうこれ、他人の空似かな。

 

 

「...ん?」

 

 

「あ、」

 

 

思わず見入っていると、そいつが突然クルリと踵を返したもんなので、目があった。

 

 

「...え?」

 

 

「あの、お前...ヒフミだよな?」

 

 

恐る恐る尋ねる。

いや尋ねて良かったのだろうか。これあんまり知られたくない感じじゃない?

だってここブラックマーケットだし...学校にバレたら割りとキツ目と罰を受けるレベルの()()()()だし。

 

 

「あ、あ...こ、これは、ちがっ....」

 

 

ほら、案の定アワアワしちゃったよ。どうすんのよこれ、この状況、どう収集つけるのよ。

 

 

「きょ、今日はいい天気でしたね!!」

 

 

「大丈夫?この場での第一声(違う)がそれでほんとに大丈夫?もう一回チャンスあげようか?」

 

 

「こ、ここであったが百年目....?」

 

 

「じゃあもうそれでいいや」

 

 

にしてもまさか、あのヒフミがこんな場所に来てるなんてな。人は見かけによらぬものとはまさにこれだ。

確かに、所々風格はあった。たまに見せる圧は平凡なものとは言い難かった。

 

 

つまりこれが、阿慈谷ヒフミの真の姿、正体ってこった。

 

 

「まさかお前がそんな奴だったなんてな...俺はそんな子に育てた覚えはありませんよ!!」

 

 

「育てられた覚えもありませんけど!?って、どうしてここにシンタロウ君が!?安静にしてるはずでは!?」

 

 

「話を逸らすのは良くないなぁ」

 

 

「いやだって...」

 

 

正直想定外もいいとこだ。こんな場所で知り合いと会うとは思わんもん。

けど会ってしまったのなら仕方ない。

 

 

「まぁ、お互いさ。見なかったことにしようや」

 

 

「へ?」

 

 

「俺も勿論ヒフミがブラックマーケットに来てることなんて誰にも言わない。だからヒフミも俺が病室を抜け出してここに来てること、誰にも言わないでよ」

 

 

「.....」

 

 

おやヒフミさん?どうしてお黙りになるのですか?

どうしてそんなに険しい表情を?

 

 

「...またバイトですか?」

 

 

「うん」

 

 

「ブラックマーケットに来てると言うことは、危険なお仕事ってことですよね?」

 

 

「分かんないけど、危険な香りは凄かったよ」

 

 

「どうして、あんなにズタボロの体で...また無理してるんですか?」

 

 

「だから話を逸らすなよぉ」

 

 

「シンタロウ君。私は真面目な話をしてるんです」

 

 

「うへぇ」

 

 

...うん、まぁ知ってるよ。

だって、そんな真剣な表情するんだもんね。

なんでそんな顔になんのかねぇ。他人なんだしそんな気にしなくてもいいんじゃないかって思ってしまう。

 

 

「言いましたよね、安静にするって」

 

 

「言ったね。嘘だけど」

 

 

「ッ、」

 

 

あー、怒らせちゃったかなぁ。

怒ってるねぇ、眉根寄ってるねぇ。

怖いねぇ、怖いよぉ。

 

 

「悪いことは言いませんから、帰りましょう!」

 

 

「やだよ、一度受けちゃったんだし、やめたら違約金が発生するんだ」

 

 

「死んだら元も子もないんですよ?」

 

 

「あーもーうっさいぁな、おかんかよぉ。宿題はやってるのかネチネチ聞いてくるタイプの」

 

 

「シンタロウ君ッ!!!」

 

 

ヒフミは怒鳴った。

俺のふざけた態度に、我慢の限界が来たらしい。

 

 

「...あー、俺さぁ」

 

 

うーん、これ、言ってしまっていいものだろうか。

でもハッキリ言わないと面倒くさいよなぁ。

ハッキリ言ったら言ったで後々の学校生活が気まずくなるかもだしなぁ。

 

 

...まぁ、いいや。

 

 

「お前みたいな奴が一番嫌いだ」

 

 

「え?」

 

 

「自分の物差しでしか他人を図らないお節介焼き。俺の事情とか何にも知らないから無責任に言えるんだろ?今、俺が無理をしてまで金を稼ごうとしてる意味、分かってないんだろ?だから休めなんて簡単に言えるんだろ?」

 

 

「...し、シンタロウ君....」

 

 

「ま、それもこれも全部お前の善意っつうのは分かるよ。結構心配してくれてるんだよな。でもな、ヒフミ」

 

 

知らない癖に知ったように。

責任も取れない癖に手を差しのべようとする。

俺がひねくれてるだけかな?

いや、そんなことない。

無自覚な善意ほどうざったいものはない。無自覚な善意ほど無責任なものはない。

無自覚な善意、それはただの、

 

 

「それは...偽善と変わらないんだぜ?」

 

 

「ッ......」

 

 

言って、俺はヒフミの横を歩き抜けた。

ヒフミの顔は見なかった。

悲しい表情を浮かべていたら、罪悪感を抱いてしまいそうだったから。

 

 

っと思ったら、

 

 

「待ってください」

 

 

「え?」

 

 

予想外にも、服の袖を引かれて俺は足を止める。

 

 

嘘だろ?あれだけ言ってまだ引き留めようとするん?

 

 

「な、なに?」

 

 

「確かに、私は無責任でした。シンタロウ君の事情を知らないのに、休めなんてお節介もいいところです。そんな選択肢がないくらい、シンタロウ君は今、追い詰められてるんですね」

 

 

「うん、崖っぷち」

 

 

「なら私はもう...休めなんて言いません」

 

 

...意外と物分かりが良いな?

やでも、んなことを言うために、俺を引き留めたのか?

 

 

「でもその代わり、私にできることはさせてください」

 

 

「...へ?」

 

 

「手伝いますよ、そのバイト」

 

 

「い、いやでも...これって言っちゃえば闇バイト。もし学校にバレたりしたら、かなりヒフミの立場が悪くなるかもしれないぞ?」

 

 

しかしヒフミは、不敵に笑った。

 

 

「今更ですよ」

 

 

「う、うーん....」

 

 

まぁ、協力者がいるのはありがたい...のかな?

協力者と言うよりは、共犯者か。いいな。

これからもきっと、こういうバイトをする機会は多くなる。その時、学校で口裏を合わせてくれる存在がいるのは大きい。

 

 

そう考えると、ヒフミが手伝ってくれるのはアリだな。大いにアリだ。

 

 

...てか、さっきから思ってたけど....

 

 

「ヒフミって、意外と悪い娘だよね」

 

 

「ふふ、さぁどうでしょうね」

 

 

そうヒフミは、今までにない、小悪魔のような笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンタロウ君、ちゃんとご飯は食べてますか?」

 

 

「...え、えっと...ぼちぼち?」

 

 

「嘘ですね。良ければ、これを食べてください」

 

 

「え?なにこれ...弁当?」

 

 

「私が今朝作ってきました」

 

 

「マジでッ!?」

 

 

あれから、ヒフミは何故か俺の世話を焼くようになった。

根本的な解決にはならないものの、こういうのはちゃんとありがたい。

 

 

闇バイトを初めてから、以前みたいに無理にバイトを入れることは少なくなったし、お金も順調に貯まるようになった。

加えてヒフミがお弁当を恵んでくれるので...食べているのに食費も削れるとかいう無敵モードに入ってしまった。

 

 

そのお陰で俺は素直に学校を楽しめるようになったような気がする。

 

 

何て言うか、これ。

もしかして、俺...青春してるのかな。

 

 

なんとなく、胸のざわめきを感じた。

 

 

「...あの二人、いつの間に仲良くなったの?」

 

 

()()()があったんじゃないでしょうか...()()()が♡」

 

 

「ッ!?」

 

 

「うん?何かとはなんだ?」

 

 

「ふふ♡それはですねアズサちゃん」

 

 

「す、すす、ストップ!!!エッチなのは死刑なんだから!!!!」




【余談】

病室を抜けた次の日の朝シンタロウはミネから質問攻めを喰らっていたが、知らぬ存ぜぬを貫いたことによって、結局あれはミネの夢だったという結論に落ち着いた。
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