スキル「絶対対価」で無双しよう   作:テムテムLvMAX

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3話

「来たな、早速コイツに手を当ててくれ」

「監視長さん……これは……?」

「あーなんだ、お前の能力を検査するやつだよ」

 

 頭をボリボリ掻きながら、ようじょ……じゃなくて監視長カルレアは丸い水晶を部下に持ってこさせた。大きさは丁度両手で持って包めるくらいの手頃なサイズで、監視長が持つには少し大きい程度。それがテーブルの上に置かれ何とも言えない空気を醸し出していた……

 

「ほらさっさと手を置け、置いたら手に力を入れて集中するんだぞ」

「えっ?」

「いいから! 手ぇ置けってんだ!」

「いでででッ!」

 

 小さい手で手首を掴まれ水晶に手を押し付けられた、これはもうやるしかないとユキムラは目を閉じ、息を整え、ふぅーと息を吐き手に力を集中する……のはよく分かってないので意識を向ける。

 

「おーし光ってきたぞーその調子ー」

「うわ熱っ」

「手ぇ離すな、もうちょっとだ」

 

 水晶は光を放って熱を帯び、ガタガタと動き始め……

 

 パリン! 

 

「……成功、です? 監視長さん」

「んな訳あるか! これでも贅沢して中級鑑定水晶使ったんだぞぅ! チクショー給料から天引だよ……あーあ……おい上級鑑定水晶持って来い」

「ですが監視長、あれの在庫は貴重なので余程のことがない限り使用するなと上からの指示があったはずでは?」

「うるせぇ今が余っ程の事態だってんだ! さっさと持って来い!」

「そこまで言うなら……分かりました、お持ちします」

 

 カルレアが砕けた水晶を集めて纏めて窓の外にぶん投げたあと、とんと椅子に座り水晶を割った犯人、ユキムラをじっと見つめた。ユキムラはユキムラで高そうな水晶を割ってしまった事に肝が冷えて仕方なく、ずっしりと思い最悪なムードが漂ってきている

 

「よぉテメェよくも割ってくれたなぁ」

「マジすんません……」

 

 普通に怒られた。

 しかし監視長カルレアは「だが」と続ける。

 

「一応記憶喪失なテメェに親切に講釈してやるが、お前が割ったのは鑑定水晶って言ってな、触れた奴の能力、ステータスを可視化してくれるスゲー魔法道具だ。どこかの変態魔具師が作ったらしく、この数十年で一気に広まったんだ。それにステータスってのは変化しづらく、それでいて偽り難い、だから身分証明にも使える」

「それは凄い」

「だろ? ステータスから身分証明しようとしたが、ご覧の有り様だ、やんなるぜ全く……」

 

 頬杖をつきながら監視長カルレアはむすっとした、ユキムラのセリフが気に入らなかったから仕方ない。ユキムラからしたら何がどうなっているのかさっぱりわかってないのだか……。

 

「そんなスゲェ道具をブッ壊されたんだ、ちっとはキレても良いよなぁ? まぁ管理者責任で弁償すんのは私なんだけどなぁ……

 いや違う、こんな事を言いたいわけじゃない。

 良いか? あの鑑定水晶は中級の分類だ、普通に投げても壊れないし叩いても傷一つつかないって有名なもんなのに、見事に砕けた……これがどういう意味を持ってるか、分かるか?」

「えーと……その……不良品だったってことですかね…………?」

 

 ぱしっ、頭を軽くはたかれた。カルレアの顔は「アホか」と書いてあるのかと思わされるくらいに、呆れた表情をしていた。ユキムラは察しの悪い方ではないが未知の道具未知の世界で全てを察せを言うのが無理な話、仕方のない悲劇である。

 

「不良品ならそもそも砕け散る訳ねぇの。良いか? お前があの鑑定水晶の水準を上回る能力を持ってるってことだ、中級って並の人間じゃまず砕けねぇ、そもそも下級のもんでも砕けねぇさ……かく言う私も下級にヒビが入る程度だからな……お前のようなバケモン、久しぶりに見たぜ」

「バケモンって……そんなにあの水晶は凄いんですか?」

「中級鑑定水晶って能力判定に用いる数値、いわゆるレベルで言えば100超えなんだぞ? 一握りの有力者でせいぜい40〜50だからな?」

「はぁ……」

 

 ユキムラ、この説明でもいまいちピンときていなかった。やっぱり察し悪いか……? しかしここで記憶喪失設定が上手く話を推し進めてくれた。

 

「……記憶喪失ってここまで常識が欠如するのか……えぇい面倒だが教えてやるわ! 良いか? レベルってのは個人の能力を数値化したもんだ、低けりゃ弱い、高けりゃ強い、例外もあるが今はいい。それでな? 大体レベルが一桁だと一般市民だ、腕自慢とか力持ちなやつは二桁あるかないか、冒険者とか兵士とかちゃんと訓練したやつだと20前後で、私くらいだと50くらい、大体そんなもんだ」

「じゃあ俺、監視長の2倍強いってこと……?」

 

 パシッ。また叩かれた。さっきより強めだった。

 

「単純にそうじゃねぇ、10ずつ壁があるんだよ、レベルってのは……仮にレベルが1と10のやつが戦ったら0対100で10やつが圧勝するぐらいには差がある、万が一はあるかも知んねぇが百が一の負けはありえねぇ話なんだよ、5人いたらやっとトントンって所か」

「俺は監視長の25倍強かった……?」

「変な話そうなるな、そこまで行けば私が25人いても勝てる見込みはミジンコほどに小さい、負けてやるつもりはないがな! 調子に乗んなよ」

「なんで俺が喧嘩売る前提なんですか……? まぁでも俺の能力ってそんな凄いんだー程度の感想しか、今のところは……」

「ま、だろうなぁ」

 

 ここまで熱く語ったので少し疲れを見せた監視長カルレアは、椅子にもたれ体重を任せ、細長い筒を加え指先から火を出して炙った。いわゆるタバコであるが、絵面が酷くてユキムラは今までの話が吹っ飛んだ。うわようじょたばこすってる……。

 

「監視長、お持ちしましたよ……ってまた吸ってるんですか? それ止めてくださいとお願いしましたよね」

「うるせぇこれがねぇとやってられねぇんだ、ほれお前、さっきみたいにやれ、今度はブッ壊れる心配はないぞ、レベル300まで測れる代物だ……これぶっ壊したら大魔法使いとか勇者のレベルだけどな、ガハハハ!」

 

 ピキキ……嫌な音が鳴り響いた。それはまるで硬い鉱石にヒビが入る音だった。ユキムラが指示通りに水晶に手を置いたら割れてしまったようだった。さっきの再演である。

 

「うわあっちぃ! ヒビが……わ、割れた……あわわわ……」

「………………ゃ」

「これはひどい……ってあれ監視長……どうされ……まさか……っ!」

 

「もうヤダぁぁぁぁ! おうちかえゆぅぅぅぅ!!!」

 

「大変だ! 監視長が幼女モードになったぞ! 総員フォーメーションをとれ! そしてそこの君は一刻も早く逃げろ! 巻き込まれるぞ!」

「え? えっ……え??」

 

 ユキムラが戸惑っていると監視長カルレアが泣きながら成人男性の身の丈より大きい鉄塊のようなものに申し訳程度の柄を取り付けた武骨なハンマーを取り出して振り回し始めた。一振りごとに詰所の内装が弾け跳び形を失っていく、風通りが良いな、全部穴だらけだ。しかし掛け声で集まった兵士一同は怯むことなくハンマーの嵐に立ち向かっていく……! 

 

「やぁぁぁっ!」

「ぐぉーっ!?」

「アレックスーッ!?」

「ちィアレックスがやれた!」

「なら俺が「よせマックス戻れっ!!」ギャーッ!?」

「案の定ぶっ飛ばされたっ!」

 

 鉄の塊をいやいや言いながら振り回す幼女は大人を殴り飛ばしながら家に帰ると連呼し続け、それが収まるのは10人程度の兵士がノックアウトされ5人程度の兵士が壁にめり込み壁尻になった後だった。彼らの尊い犠牲によって監視長カルレアの情緒は取り戻されたのである。なお、ユキムラはなんとか巻き込まれないところまで逃げた、そして事が終わったあと、勇敢なる兵士達への敬礼を自然に行っていたのだった……

 

「いや、死んでねぇからなアイツら」

「だとしても、やらずにはいられなかった……尊い犠牲に」

 

 一悶着……一悶着? は、あったが、ユキムラがレベル300オーバーである事が示された、ので、監視長カルレアは今後の彼の身柄をどうするべきかさらに悩まされることになった。

 

 

 

 

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