人理修復者のヒーローアカデミア   作:うなぎの生姜焼き

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第4話

 カルデアに所属し世界を正した藤丸立香が転生し15年がたった。

 

 顔や名前、更には手の甲の令呪でさえ同じ物を受け継いだ藤丸は運命的なものを感じていたが前世の仲間との再会はまだ果たせていない。

 

 15年も歳を取れば人の意識は変わる物で、過去の思い出を引きずらず新しい生をくれた両親に恩を返すために藤丸は雄英高校への入学を目指し日々努力を続けている。

 

 この世界で1番の話題といえばヒーローであり生活を続けていれば嫌でも目に入る。TVでは各局が我先にとヒーローの現場へ映像を撮りに足を運び、新聞やネットニュースでも開くページのどこかにヒーロー関連の記事が載っている。

 

 今や子供のほとんどがヒーローに憧れ将来の夢ランキングでは常に一位だ。しかし実際になれる者はほんの一握りである。ヒーローになるには資格を取る必要があり、それを万といる受験者たちの中から勝ち取らなければならない。そのどれもが人命やライフラに関係するため覚えることは多く、厳しく審査される。

 

 ほとんどが大人になるに連れて、『あぁ、あの頃は子供だったなぁ』と懐かしさを感じながら振り返るのがあるあるだ。

 

 しかしその夢を叶えた者たちが勝ち組とは言えない。

 

 ヒーローの主な仕事は町中で個性をメチャクチャに使って暴れるヴィランを相手に確保する。災害現場に急行し被災者を助けたりと危険な仕事ばかりで他の仕事に比べて死が身近だ。どれだけ気をつけていても少しのズレで今までの全てがおじゃんになる。

 

 そんな仕事だがランキング一位になるだけあって、なれば生活に困らない金と常人では得られない名誉、賞賛、人気を手に入れられる。

 

 藤丸は15年も平穏な日常で自分を育ててくれた両親に報いるにはコレが最上だと。そう考えた。

 

 それからの藤丸は前世での経験を活かしながらヒーローになる為の特訓を開始した。

 

 藤丸はまずヒーローになる方法を調べた。

 

 ヒーローになる為に必要なのは「ヒーロー免許」という資格で、コレを持っていればヒーローを名乗れるらしい。

 

 一般的には学校に通い、そこでの学びを通して「知識」と「経験」を積み卒業と同時に1人のヒーローとして世間デビューするのだ。

 

 つまりヒーローになる一般的な方法はヒーロー育成学校に通うことだ。

 

 ではどこの学校に通うのか。ヒーローになるための学校は無数にあり、前世の受験と同じでいい学校の競争率は高い。

 

 受験であるのなら最も高いところへ行くのがいいだろう。最も偏差値が高いのは雄英高校。入試倍率300倍の日本で最も優れた高校でもある。

 

 藤丸の頭で行けるの?と思われるかもしれないが、幸い現在の藤丸はまだ幼稚園児であり、前世での記憶もありコツコツと勉強すれば行ける可能性はあるだろう。・・・・・・0では無いはずだ。

 

 知識や経験は高校で学ぶとして、他にも必要なものがある。ヴィラン達を抑えるための「力」だ。

 

 幸いこの世界では前世の様に相手が全員人外の膂力を持っていたり簡単に人を殺せるような非物理攻撃を持っているわけでは無い。(一部を除いて)

 

 それに加えて前世とは違い自分を満足に強化することができるのだ。これはとても重要な事である。前世では自分自信を強化しても相手のスペックが高すぎて焼石に水だったが、今世では元からスペックが同じなうえ強化を施すことで相手のスペックを上回ることすらできるのだ。

 

 それに体も勉強と同じく幼い頃からコツコツと鍛えることができる。

 

 そのため藤丸は自分自身を鍛え始めた。

 

 お手本なら前世で呆れるほど見てきた。それも世界で最上級の手本だ。手慰みに彼らから手解きを受けたこともある。これ以上の教本は無く指導も同様である。

 

 もちろん見たものを思い出すだけで全てを習得できるわけじゃない。近くの道場に通ったり、道場がないものはネットや資料を使って調べた。前世での一般的な柔道や弓道以外も槍術や盾術などの道場があったのはこの世界だからこそだろう。

 

 世界の記憶に刻まれた英雄達の手本、という肉の中に基礎という名の骨をはめ込み理解と解析を行った藤丸の技術は驚くほどいや、必然メキメキと成長していった。

 

 記憶の中の動きとは程遠いが一つずつ歩みを進めるたびに、彼らに一歩近くごとに藤丸は武術にのめり込んで行った。

 

 もちろん武術だけでは無い。幼稚園の頃から本などを能動的に読み、英語の教室などにも通っていた。

 

 藤丸は都内の裕福な家庭の元に生まれたので習い事のお願いは簡単に通った。両親は藤丸に強制させることは無かったが子供の将来を考えれば何かを学ばせることに躊躇いは無く藤丸の事を応援してくれた。

 

 何より藤丸は個性がわかったその日から「ぼくヒーローになりたい!」と両親に宣言している。子供が目標に向かって進む事を応援するのは藤丸の両親にとって当たり前の事だった。

 

 

 

 そんなこんなで藤丸がヒーローになる目標を立ててから10年が経った。時間があるので死に物狂いでは無いが、一生懸命頑張りながら雄英高校を目指して努力を積み上げた。

 

 5歳の頃から鍛えた体はシュッとしていて、動くために不必要な筋肉を削ぎシュッとしてスマートな体型を維持しているが、槍や剣などの武器を軽々と扱い、動き続けるのに問題ないパワーを秘めている。家くらいなら軽々と登り切れるし、一般家庭の玄関のドアを無理やり引き開けきる。

 

 そんなパワー系人間になった藤丸だが本領はそこでは無い。その鍛えた体から繰り出される奥義の数々こそが彼の本領だ。

 

 力で押し切り叩きつける古代の剣から相手の力を利用した鮮やかな中華拳法まで、豪柔関係なく使えるようになった。

 

 藤丸には合わない技もあったがもちろん習得している。彼にとって彼らの技を身につけることは何よりも大切なことだった。

 

 現時点で同年代の中ではトップクラスの戦闘能力を待つ藤丸だが、勉学の方はギリギリだった。

 

 最初は前世でも受験の為に勉強したし、高校入試をもう一度やり直せると考えたら構えなくても大丈夫などと考えていたのだが、倍率300%はそんなに甘く無い。

 

 この世界で1番有名な雄英高校に合格!などの煽りを掲げた塾は多く、そう言った塾に幼い頃から通っていた藤丸は常に雄英の合格ラインと向き合い続けてきた。藤丸は入学試験半年前にようやく雄英高校合格ラインにたどり着い 

 極めて順調だと言えた。しかし彼が当初考えていた前世の知識チートなどは無く全て自身の努力で補うしかなかった。

 

 初め想定していたより勉強に苦戦した藤丸だったが、なんとか合格ラインにたどり着いた。そのことに慢心せず、対策を重ねとうとう試験日が近づいてきた。

 

 

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 気温が下がり服の上からでも寒さが肌を突き刺すような季節になってきた今日この頃。

 

 いつものように朝のランニングに行くため寝巻きを脱ぎランニングウェアに着替える。

 

 俺と父さんの為に朝食を用意している母さんに「いってきまーす!」と声をかけてから玄関を出る。

 

 歩きながら全身を伸ばし走る準備を進める。早寝早起きを徹底した超健康的な生活で整えている体に不調を訴える部位は無いが、伸びをするたびに筋肉がほぐれていく感触に違和感を感じる。

 

 1週間後に控えた受験にらしくなく緊張しているのだろう。いつもより強張った体を念入りにほぐしながら歩みを早めていく。受験では実技試験も含まれるため体を壊さないように慎重に動きを早める。

 

 何年も走り続けた街並みを確かめるように、昨日も走ったコースを同じように走る。雄英高校に受かったら高校近くのマンションに引っ越すため見慣れたコースもなんだかいつもと違うように感じる。

 

 歩きからランニングまで速度が上がった俺は信号の少ない道で徐々にスピードアップする。一歩一歩の感覚が広くなり、足の回転数も同時に上げていく。

 

 だんだんと全力疾走くらいの速さになってきた頃に山道に入る。上り道でも速度を落とさずにスイスイと登っていく。

 

 前方に現れた車を安全のために追い越してそれでもペースは上げ続ける。前に車のうしろをピッタリと張り付いて事故りかけた事件の様に怪我しないよう追い越して距離をとる。

 

 折り返し地点を過ぎてからはトップスピードを維持したまま走り続ける。全身を絶え間なく連動させ走るだけの機械になるように感じ、走ることだけを考えるこの気持ちを心地よく思う。

 

 鍛錬などもそうだが、体を動かして無我の心になるこの瞬間は全てから解放されるような気になりとても良い。

 

 前世での記憶と今世での生活は複雑に絡み合いどちらかを意識しないことなどできない。しかしこの瞬間だけ俺の心は洗われるような清々しい気持ちになることができる。

 

 家の周りまで戻り歩きながら体をクールダウンする。冬なのに身体中から蒸気をあげ、頭から垂れてくる汗を袖で拭いながら歩き続ける。

 

 「そろそろいいかな」と思い家に向かって歩き出そうとした時、視界の右端曲がり角から人が現れる。寝巻きにも使っているのであろう裾がボロボロになったジャージを着た小太りのおじさんがこっちに向かってくる。

 

 「君、藤丸立花くんだよね?」

 

 「はい、おはようございます」と答える。

 

 「雄英高校を受験するんでしょ?」

 

 おじさんはだんだんと近づいてくる。鼻を刺すツンとすえた臭いに少し顔をしかめてしまう。

 

 「いやーすごね、僕はね〇〇高校卒なんだ。雄英にくらべたら見劣りするかもだけど同じくらいすごい所なんだ!」

 

 語気を荒くしながら詰めてくるおじさんが一歩で相手に触れるほど近くで止まる。ちなみに〇〇高校は雄英高校とは月とスッポンのようなレベルの専門学校である。

 

 「僕はね君に雄英高校じゃなくて、〇〇高校を受けるように言いに来たんだ!」

 

「はい?」

 

 「分からないかな?雄英高校みたいな名前ばかりの高校より僕みたいな優秀な人材を排出した実績のある〇〇高校の方がはるかに優れてるよね。だから〇〇高校を受けるべきなんだよ!」

 

 「そうなんですねー」「じゃあちょっと考えてみますねー」と適当な相槌をうつがおじさんは気に入らないらしく「〇〇高校にしろ!」と何度もしつこく迫ってくる。

 

 おじさんが一歩を踏み出すたび当たらないように下がるがおじさんは構わずにどんどんこちらに進んでくる。

 

 とうとうおじさんは怒り「なんでわかんないかな!」と騒ぎ始めた。

 

 「あのさぁ!」といいながら腕を掴んでくるおじさんに嫌気が差すが落ち着いて手を離すようにうながす。

 

 俺の腕を引っ張った率押し込んだりしながら「雄英高校受験するのやめろって」と言い続けている。

 

 めんどくさくなり「雄英高校の受験諦めますから、ね?離してくださいよ」と言うと更に怒り始める。

 

 「なんだよその態度!お前舐めてるだろ!」

 

 おじさんが殴ってくるのを受け止め「どうしようかなー」と考えていると掴まれた手に激痛が走った。

 

 手を振り解いておじさんに目を向けると手から電気をバチバチと放っている。

 

 「俺に逆らうからこうなるんだ!もう知らないからな!」

 

そう叫びながらこちらに飛び込んでくるおじさんをいなしながらどうしようか考える。

 

 明らかな不審者だが俺に攻撃を当てられるほど強くは無い。問題はどうやってこの人を無力化するかだ。

 

 電気の個性は厄介な個性で電気を纏うだけで防御も攻撃もできる。纏う電気の強さによっては相手を気絶させることもできるほどだ。

 

 電気を無視して攻撃するってことも考えたが体を壊したくないし、どれほどまで電気を使うことができるかわからない状況で突っ込むのはだめだ。

 

 家の付近での襲撃であり、もし家を把握されてたらと考えるとここで逃すのは最悪家族まで危害を加えられるかもしれない。

 

 攻撃を避け続けながら何か手は無いかと探っているとおじさんが息を切らしたようで手を膝につき「ぜぇぜぇ」と荒い呼吸を繰り返す。

 

 その間に離れ辺りにヒーローや人がいないか見渡すも日が登ったばかりの住宅街は静かで期待できそうに無い。

 

 それならとスマホで警察に連絡する

 

 「まて、待って、くれ、それ、はやめてくれ、たのむ」

 

 無視して警察に場所と状況を伝えているとおじさんは「やめろって言ってるだろ!」と再び攻撃してくる。

 

 ヘロヘロで疲れ切った体で突っ込んでくるおじさんの攻撃は緩慢で誰でも避けれるような無様な物だった。

 

 少ししてまた息を切らしたおじさんは更に荒い息を吐きながら止まる。

 

 そしてまた攻撃を始めるおじさんとの攻防は警察が来る10分の間続いた。

 

 パトカーがサイレンを鳴らしながら駆けつけてくる。

 

 警察とヒーローに取り押さえられたおじさんは何かを叫び散らしながら暴れている。

 

 「大丈夫だった?」と座り込んだ俺に警察の人が簡単な事情聴取を始めるその時、おじさんが大放電を放った。

 

 無差別に放たれた電気が電線に当たり火花を散らし、それに触れたヒーローが崩れ落ちる。

 

 いち早く離れようと腰を浮かしたその瞬間、俺のいるところに電気が向かってくる。

 

 急いで参考方向から逃れようとするも電気はとてつもないスピードでこちらへ迫ってくる。

 

 反射的に手を前で構え顔を隠す。「電気から顔を守っても意味ないよなー」と思いながら「雄英高校の受験無理かもな」となかば諦めの気持ちで来るであろう痛みに体を強張らせる。

 

 終わりだ、そう思った次の瞬間。体に痛みはこなかった。

 

 恐る恐る目を開けると放電が手の甲の令呪に吸い込まれている。普段家でコンセントから充電する電気の量よりはるかに多い量が流れ込んでいる。

 

 悪あがきの大放電が終わった後俺はヘナヘナと崩れ落ち大きく息を吐いた。

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