国連軍も色彩討伐に参加したいようです   作:ユーザーページへのリンクが切れます

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到来

20XX年 某日 エジプト

 

 アフリカ大陸でも有数の大国であるエジプト・アラブ共和国。

 世界4大文明の一つであるエジプト文明発足の地ということもあってか、同国における文明的価値は計り知れない。

 世界で最も有名な遺跡であるピラミッドを始めとする数々の著名な歴史遺産を人生で一目見ようと、世界中から訪れた観光客によってこの日のエジプト国内はいつもと変わらぬ賑わいを見せていた。

 

「こちら左手に見えますのが皆様お待ちかね、かの有名な''ギザの三大ピラミッド''です」

 

 とある観光旅行業者が運行するツアーバスにて、バスガイドが車窓から神々しい直射日光に照らされているピラミッドへと客の目線を誘導させる。

 まだこの位置からでは遠目に薄らと視認できる程度だが、長時間の座りっぱなしの体制と大人数での密閉空間という環境に少なからず苛立ちを覚えていた観光客たちはようやくお目当てのピラミッドのご登場に興奮を隠し切れていない様子だ。

 早速バスの車内では、一眼レフカメラやらスマートフォンやらのシャッター音が何重にも重なって響き始めた。

 

「……あれ? なんだかあのピラミッドの辺り、おかしくないか? 」

 

 不意にカメラを構えていた乗客の一人が、そうポツリと呟いた。

 何故かその呟きは近辺の環境音に遮られることなく、バスの車内にいた全ての人間の耳に入った。

 

「確かに、あのピラミッドの上だけやけに空が赤いような……」

 

「ねぇねぇ! あの辺りなんだか崩れてきてない? ほら、あの端っこのあたりよ! 」

 

 段々と乗客の間で何やら不穏な空気が伝染し始める。中にはピラミッドの一部が崩れているように見えると言い出す者まで現れる始末だ。

 

 そんな乗客の様子に流石に乗務員達もピラミッドの様子が気になって来たのか、バスガイドと運転手はこれまでに見飽きるほど見てきたピラミッドへと視線を向けた。

 

 

 次の瞬間。

 

 

ガラガラガラ……

 

 そんな擬音がこちらにまで聞こえて来そうなほど盛大に、ピラミッドが突如として崩壊を始めたのだ。

 

「な、なんだアレ?……」

 

 どこからともなく呆気に取られた声が、誰かの口から漏れ出す。

 

 しかしその声が指すアレ(・・)とは、現在進行形で崩壊を続けるピラミッドに対してではなかった。

 

 いや、厳密には最初の数秒だけは崩壊するピラミッドにみな意識を奪われていた。しかし今は違う。もっと深刻な現象に、その場にいる全員の脳はそれにしか意識を集中せざるを得なくなったのだ。

 

「も、モンスターだ!! ピラミッドからモンスターが出て来たぞ!!」

 

 後部座席に座っていた男性が叫び声を上げながら、たった数十秒前まではピラミッドが見えていた場所へと震えながらも指を指す。

 

 ――――――その指先にいたのは、全高数十mには差し掛かろうかというほど巨大な、全体を紫色のオーラ状に包まれた蛇状の巨大生物であった。

 

 

―――――――――

 

 人口約460万を抱えるエジプト有数の大都市、ギザ市。

 数あるピラミッドの中でも一際有名なギザの三大ピラミッドを名物に長らく発展を遂げて来た同市だったが、突如としてその日常が崩れ始めていた。

 

 いきなり空が青一色の快晴から紅一色の原因不明に染まったかと思うと、ギザ市の代名詞である三大ピラミッドが突如として崩壊を始め、その中から不気味な紫色のオーラを纏った蛇状の巨大生物が現れ街を破壊し始めたのだ。

 

 当然市内はすぐにパニックに陥り、各地で事故が多発する。右往左往する車が互いにぶつかり合い、そこへ追い打ちと言わんばかりにトラックが突っ込んでくる。

 そしてさらに間の悪いことに、観光客用にそれなりの数が道路を歩行していたラクダが交通事故の衝撃や市民の悲鳴に驚くと、パニックを起こし暴れ始めるといった二次被害が多発した。

 そこに崩壊したピラミッドから避難してきた多数の観光客の波が押し寄せると、僅か数分で市内の交通機関は麻痺してしまった。

 

 本来ならば避難誘導や交通整備を担当するはずの警察も、謎の巨大生物出現というイレギュラーに大半は職務放棄をして逃げ出すか、仮に出動しても混乱する市街で思うように移動できないかのどちらかだった。

 それでもパトロール等で偶然ギザ市内に居合わせたパトカー数台が避難誘導を必死になって行うも、焼け石に水だった。 

 

「ああ! 神様……!」

 

 混乱により逃げ遅れ、とうとう巨大生物が目と鼻の先にまで迫り、死を悟った市民が天に向かって叫んだ。

 

バヒュッ

 

 そんな天に向かっての叫びに応えたかのように、数本の槍状の物体が風切り音と共に急速に巨大生物へ接近、炸裂した。

 

 突然の衝撃に狼狽える巨大生物のすぐ横をソニックブームと共にすり抜けたのは、カイロ西空軍基地から巨大不明生物出現の報を受けスクランブル発進した第292戦術戦闘航空団第95飛行中隊所属のJ-10C ヴィゴラス・ドラゴン(猛龍)*1による二機編隊であった。

 

「こちらカイロウェスト01。巨大不明生物に対してKD-88(空対地ミサイル)を二番機と共に計4発発射。全弾命中。巨大不明生物は狼狽える様子有り」

 

「了解した。これよりカイロウェスト01、02はゲームプランBに移行し、誘導爆弾投下を実施せよ。投下後はベースに帰投。作戦中止符号は無し」

 

「カイロウェスト01、全て了解」

 

「カイロウェスト02、オールコピー」

 

 管制塔からの指示を受信した二機のJ-10Cはアフターバーナーを点火して一気に巨大不明生物から距離を離したかと思うと、いきなり機首を反転させ再び巨大不明生物へと接近する。

 

「投下」

 

 エンジンスロットルを引き絞り、機体は急減速。巨大不明生物の頭部付近にまで到達したところで、主翼内側のパイロンに吊り下げられたJG-500B 精密誘導爆弾が各機2基ずつの計4基投下される。

 

 投下された4基のJG-500Bは事前に設定されていたレーザー識別コードの反応が最も強い地点を検知すると、まるで引き付けられる磁石かのように目標地点への誘導降下を開始する。

 

「弾着5秒前――――――弾着」

 

 フライトディスプレイに表示された弾着までのカウントダンが0になると同時に、巨大不明生物の頭部に4基のJG-500Bが直撃した。そして次の瞬間、内部に詰められた約500kgの炸薬が4回に渡って炸裂する。

 

「全弾の直撃を確認。これよりカイロウェストはIPカイロを経由して帰投する」

 

 未だ爆煙に包まれる巨大不明生物を尻目に、J-10Cのパイロットは帰投の報告を行う。

 詳細なBDA(戦闘損害評価)は行っていないが、何せ累計で2t以上の炸薬を顔面に向かってほぼ直撃で喰らったのだ。まさか生きているわけあるまい。

 パイロット含め、中継映像で一連の様子を確認していた軍事関係者たちは誰もがそう思っていた。

 

「――――!! RWR(レーダー警戒装置)作動! ミサイル多数接近! 」

 

 一仕事終え多少気が緩んでいたコックピット内に、突如として甲高い電子アラーム音が響き渡る。パイロットは即座にディスプレイを確認すると、驚愕した。

 

「な、この座標はあの巨大生物の……」

 

 しかし驚いている暇は無かった。なにせディスプレイにはこちらに段々と向かってくるミサイルが40発以上も表示されているのだ。今すぐ回避行動をしなければ撃墜されてしまう。

 

「フレア全開!! ブレイク! ブレイク! 」

 

 機体表面の投射装置(ディスペンサー)からカートリッジ1つあたり15個のフレアがばら撒かれる。

 どうやら巨大不明生物から発射されたらしきミサイルは赤外線誘導型らしく、次々と2000℃もの高温で赤々しく燃え上がるフレアに騙され、右へ左へと逸れていった。

 

 あまりの物量の前にフレアの数が足りず何発かはすり抜けてしまったが、幸いにもミサイルの追尾性能はそこまで高くないらしく、爆弾投下後ということもあってか身軽になったJ-10Cはその運動性の高さを遺憾なく発揮し、次々とミサイルを回避していく。

 

 しかし度重なる激しい回避機動によりエネルギーを消失してしまった二番機が最後の一発を避けきれず被弾してしまう。

 

「こ、こちらカイロウェスト02!! 機体後部に被弾! エレベーター及びラダー全損! エンジン損傷! 油圧喪失! 操縦不能!! 」

 

 機体後部に直撃したミサイルは尾翼を勢いのまま吹き飛ばし、ラダー(方向舵)バーティカルフィン(垂直尾翼)はまるで齧り付かれたかのように消失した。そしてミサイルの内部に詰められた炸薬が作動すると、その衝撃波はエレベーター(昇降舵)の大部分を吹き飛ばし、エンジンにも大きな被害を与えた。終いには航空機の操縦に必須な油圧系列も喪失し、機体の操縦は最早不可能となってしまった。

 

「02、脱出しろ! 」

 

「ダメだ! 高度が低すぎて間に合わ――――――」

 

 そして数秒後には断末魔と共に二番機からの通信がノイズに変わった。レーダーには《LOST》の文字と共に赤色の×印と永遠に動かない座標だけが残った。

 

「……こちらカイロウェスト01。僚機が撃墜された。ベイルアウト及び救難信号は確認できず。巨大不明生物は未だ健在」

 

「こちら管制塔。了解した。直ちに帰投し報告せよ。終わり」

 

 あれ程の爆発を受けてもなおあの蛇状の化け物は倒れず、それどころか相方が墜とされた。残ったJ-10Cのパイロットは己の無力感に静かに涙した。

 

 いつの間にかギザ市全体を包み込もうかというほどの規模にまで発展した原因不明の赤色の空を、相棒を失った猛龍は一人寂しく飛んでゆく。

 

 

―――――――――

 

 

「――――――ビナーが……消えた!? 」

 

 薄暗いオペレーションルームにてエルフのような尖った耳を持った少女、七神リンが驚愕の声を上げた。

 

「はい……。今から5分ほど前に突如として第1サンクトゥムの付近にブラックホールのような空間が発生し、守護者であるビナーがその中に吸い込まれるようにして消滅しました。今現在は担当である対策委員会と便利屋68の皆さん総出でビナーの行方を捜しているところです」

 

「アヤネさん、その報告は確かなんですね? 」

 

「ええ。この目で確かに確認しましたし、他の皆さんも吸い込まれる瞬間を見たと言っています。映像にも記録されているはずです」

 

「……そうですか」

 

 アヤネと呼ばれたリンと同じく尖った耳を持った眼鏡の少女が、ホログラム越しに報告をする。その内容を聞いた少女は信じられないとでも言った様子だったが、多数の目撃者に映像まであると言われては、信じるしかないだろう。

 

「モモカ、サンクトゥムから検出されたエネルギーの推移はどうなっていますか? 」

 

「今確認してるところだよ~。ふむふむ……。確かに第1サンクトゥムだけやけに検出されるエネルギーの量が下がっているねぇ。このまま行けば元の水準に戻りそうなまでに……。この下がりようを見るに、本当に守護者であるビナーが消えちゃったんじゃない? 」

 

 明太子チップスをボリボリ食べながら、何とも怠けたような態度でモモカと呼ばれるピンク髪の少女はそう返す。

 しかし彼女の言っていることは正しく、実際端末に表示されているエネルギーの推移の記録は突如として急激に下がっていた。

 

「……分かりました。とりあえずは第1サンクトゥムの守護者は突如として消失したという定で話を進めて行きましょう。しかしいつ守護者が再び現れるかは分かりません。第1サンクトゥムの担当である対策委員会と便利屋の皆さんは引き続きビナーの捜索をお願いします」

 

「了解しました」

 

「それとアユムは今すぐ他のサンクトゥムを担当している人員と"先生"に連絡をお願いします」

 

「え? あっ、はい! 分かりました!」

 

 守護者のいきなりの消失により、もう一つの世界(キヴォトス)も混乱の渦に包まれようとしていた。

*1
2024年9月7日にエジプト国防省がF-16C/Dの後継として配備を発表した中国製戦闘機。作中では既に大々的に配備されている設定。




 虎丸と一緒に戦う連邦軍のレオ2やエリドゥを空襲する米戦略爆撃部隊を書きたくて始めました。黒歴史にならないように頑張ります()
 
 創作に不慣れなので、誤字脱字や変な改行等が多いかもしれません……。もし見つけましたら、お手数ですが報告してくださると嬉しいです!!

 次話はエジプト軍+αがビナー(色彩)くんと戦うお話です。お楽しみに!
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