国連軍も色彩討伐に参加したいようです 作:ユーザーページへのリンクが切れます
今後はできるだけ3日に1話、筆が進まなくても週に1回は更新できるよう、善処していきます。
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今回登場する部隊の主な配置図です。クオリティがやけに低めですので、あくまで大まかな状況把握用にご活用ください<(_ _)>
【挿絵表示】
「―――司令部より。砲撃準備」
砂漠迷彩に身を包んだK11砲兵指揮車の中でそう呟いたのは、巨大不明生物が出現したギザから南西に程近いダハシュール基地に駐屯する第9装甲師団隷下の第44砲兵旅団長であった。
巨大不明生物対処のため出動した同旅団であったが、何せ標的である巨大不明生物は大都市であるギザのど真ん中におり、効果範囲の大きい火砲では民間人誤射のリスクが捨てきれず、出動から10分近く経っても砲撃を開始できないというもどかしい状況にあった。
しかし
巨大生物出現から22分30秒。空軍による最初の攻撃から2分12秒。アフリカ大陸最強の軍隊による砲火が今、遅れながらも始まろうとしていた。
「指揮車より各車へ。照準最終調整。方位0-7-5。座標30005614。目標巨大生物。目標西南へ進行中。精密効力射。弾種通常榴弾」
指示を受け取った各車は次々と砲の仰角を上げ、告げられた座標へと弾が正確に飛ぶように調整を行う。
演出の時よりも幾分か上がり幅が小さい砲身が、目標の近さを物語っていた。
「第1大隊砲撃準備完了」
「第2大隊いつでもどうぞ」
「第3大隊全車照準調整完了」
一分も経たずして全ての部隊からの砲撃準備完了の無線が届く。
「大佐、やりましょう」
「ああ」
一呼吸置いてから旅団長は無線に向かって叫んだ。
「撃て!! 」
瞬間、周囲に凄まじい轟音が響き渡る。
旧式のM109や、それらとの更新が進むK9 サンダーら計100両以上の自走榴弾砲が同時に火を噴いたのだ。その轟音は車内にいてもなお鼓膜が引き千切られるのかと錯覚するほどであった。
発射された砲弾は33口径のM109から発射された場合は弧を描くような山なりの弾道で殴り込むように、52口径のK9から発射された場合は垂直に突き刺すような安定した弾道で、それぞれ巨大不明生物への直撃ルートを飛んだ。
「弾着!! 」
まずは部隊の半数を占めるK9から発射された砲弾57発(命中率92%。うち頭部命中は7割。誤差約30m)が命中。そして5秒ほど間を置いた後に、残りのM109の砲弾47発(命中率76%。うち頭部命中は4割。誤差約50m)が命中した。
計104発。炸薬量にして約1040kgを喰らってもなお巨大不明生物は倒れる素振りすら見せない。
「巨大不明生物未だ倒れず!! 」
「だったら次を撃て!! 数で押すんだ!!」
「第2波よーい!! 照準そのまま!! 各車装填完了共に撃て!!」
しかし火砲部隊は心折られることなく、むしろ躍起になって第2波攻撃の準備を始める。
"60秒で準備。60秒で6発砲撃。30秒で撤退"を繰り返すショート・アンド・スクートを実現させたK9は、装置補助装置によって僅か5秒で再装填を済ませ第2波砲撃を開始する。
対する旧式のM109は装填補助装置こそあれど、基本設計の古さも相まって分間砲撃能力はK9の半分ほどしかない。それでも火事場の馬鹿力とも言うべき搭乗員の努力も相まって、この時は新型のK9とも遜色ない発射レートを実現していた。
これらの努力により、第44砲兵旅団は僅か20分ほどの砲撃で駐屯地内の弾薬庫に保管されていた在庫をほぼ撃ちきってしまった。車両の方に関しても、冷却不足で砲身が溶け出したり寿命で砲先が裂ける車両まで現れる始末だ。
「砲弾在庫もうありません!! また砲身の冷却不足で車両の半数以上が砲回りに何らかのトラブルを抱えています!!」
「畜生め。俺らはここまでか……。砲撃評価は? 」
「砲撃による爆煙が晴れるまでは……」
と、そこで突如無線が入る。かなり慌てた様子だ。
「こちら司令部から第44砲団へ! 至急その場から離れたし! 繰り返す! 至急その場から離れたし! 巨大不明生物がそちらの座標に向かって青白い光を照射している!! 」
「光? 」
「た、大佐!奴がこちらを……!」
ハッチから身を乗り出していた側近の下士官がそう叫んだ次の瞬間、第44砲兵旅団は青白い光と共に"消滅"した。
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「嘘だろ……」
第44砲兵旅団の一部始終を見て思わずそう漏らしたのは、第44砲兵旅団と同じく第9装甲師団の隷下に入る第71機甲旅団A大隊の大隊長だった。
10km以上先にいたはずの砲兵旅団がまるで某怪獣王を彷彿とさせる青白いブレスで都市ごと粉砕される光景は、大隊長クラスを持ってしても恐怖しか感じないものであった。
「今から俺らはあんなのと戦うのか……」
彼ら機甲部隊は砲兵旅団の攻撃で巨大不明生物が撃破されなかった場合、ほぼ確定となる首都カイロ突入を1秒でも長く阻止するための、実質的な"捨て駒"であった。
首都の防衛を担う中央軍管区所属と言うこともあってか、機材はアメリカ製のM1A1エイブラムスや旧ソ連製の戦車との置き換えが進むロシア製のT-90MS*1に統一されており、部隊が保有する全ての戦車が第三世代MBTに更新済みと装備面ではかなり恵まれていた。
それでもあんな光景を見せられては勝機を見いだすことなど、1mmもできなかった。
それでもやるしかないのだ。
この川幅1kmも無いナイル川を渡河されれば、その先は首都カイロ。エジプトの絶対的中心地である。そこに家族を持つ搭乗員も決して少なくはない。
「巨大不明生物カイロ方面へゆっくりと進撃中! 間もなく戦車砲有効射程圏内に入ります! 」
「とうとう来やがったな」
無線からの報告を聞いた大隊長は舌舐めずりをしながら呟く。
しかし口調こそ強気だったが、手足はどちらとも死への恐怖で僅かに震えていた。
「司令より各大隊指揮官へ。攻撃開始。攻撃開始。カイロを死守せよ」
そしてついにその時はやってきた。
通信完了と共に道路を埋め尽くしていた第71・72機甲旅団の戦車合計200両近くが一斉に行動を開始する。
前方からはガスタービンエンジンの甲高い咆哮が、後方からはスーパーチャージド・ディーゼルの唸り声が、何重にもなって響き出す。
「北西、巨大不明生物、弾種徹甲、小隊集中行進射、撃てぇ!! 」
号令と共に真っ先に火を噴いたのは隊列の先頭を行くM1A1エイブラムスによる戦車大隊であった。
砲手が撃発スイッチを押すと、起動した撃発回路が弾底部のプライマーを発火させる。刹那、装薬が爆発とも言えるほど瞬発的に燃え上がり、120mm滑空砲に装填された
米国の軍事科学の集大成とも言える劣化ウランに包まれた弾体は、先の砲撃で表面が溶け出していた巨大不明生物の外膜を貫くには十分過ぎるほどの威力であった。
貫通した砲弾はそのまま数百もの破片を散りばめながら内部へと浸食していく。それが何十回分も、ほぼ同時に顔面を襲ったのだ。
巨大不明生物はあまりの痛みに悲鳴とも取れる叫び声を上げる。
そこへすかさず追い打ちと言わんばかりに次の砲撃がやってくる。今度は俺達の番だと言わんばかりに後続のT-90MSの砲身が火を噴いたのだ。
M1A1の120mm砲よりも一回り大きい125mm滑空砲から1650m/sもの速度で射出された3VBM22 APFSDS-T "スヴィネツ2"は、新型の劣化ウランの採用により大柄な砲の威力も合わさってかエイブラムスの砲弾よりも一回り強く、大きい一撃を喰らわせた。
「徹甲弾だ! 榴弾よりも徹甲弾が効いてるぞ!! 」
APFSDSの一斉射撃により、下手すれば500kg爆弾や自走榴弾砲の一斉効力射の時よりも痛がってる様子を見せた巨大不明生物に、お通夜モードだった戦車の搭乗員たちの士気は一気に上昇。このまま押し倒してしまえと言わんばかりに次弾装填を始める。
M1A1の搭乗員は砲塔後部の即応弾弾薬庫の中から素早く砲弾を取り出すと、まるで我が子を抱える親のように10kg近くはある砲弾を丁寧に抱き抱え、素早く薬室に詰め込む。
一方のT-90MSは従来型の
「再装填!!」
「照準微調整! 仰角そのまま、方位2-7-0、ってぇ!!」
M1A1は装填手が閉鎖機を閉じたと同時に、T-90MSは自動装填装置が尾栓を叩き、装填完了を示すランプが赤から青へと切り替わった瞬間に次弾を次々と撃ち出していく。
その内の一発が左右に二個ずつ小さく点在していた目らしき部分に直撃した。
それが偶然の賜物なのか、それともFCSで緻密に制御された計算上の必然なのかは定かではないが、ともかく急所に手痛い一発を喰らった巨大不明生物はとうとう絶叫と共にその場にうずくまるようにして動きを止めてしまった。
「目標沈黙! 目標沈黙! 目標は倒れた!」
「やった……のか? 」
無線からの報告、戦車の分厚い装甲越しにも聞こえてくる外からの歓声、そして動かない巨大不明生物。
捨て駒として配置されたはずの自分たちが逆にあの巨大不明生物を討ち取ったしまったのだと、そう認識した瞬間、各車の搭乗員たちは叫び、泣き、喜び、抱き合った。
始めて理不尽な存在から掴んだ勝利の余韻に、皆浸っていた。
――――――しかしその幸せな時間はそう長くは続かなかった。
ゴシャリ。
何か硬い物がさらに硬い存在に押し潰されるような、そんな不定和音が隊列後方から連続して聞こえてくる。
「なんだぁ……? 」
その場にいた人々が後ろを振り向くと、そこに見えた光景はまさしく地獄絵図であった。
巨大不明生物の胴体と同じような色合いの尻尾状のものが、数百m後方から猛スピードで軍用車両を薙ぎ倒しながら段々とこちらに向かって来ているのだ。
道路に退避したままだった一般車両は原形すら留めないほどグシャグシャに押し潰され、軍用トラックや歩兵戦闘車は彼方へと吹き飛ばされていく。
とうとう戦車部隊へと差し掛かった尻尾の波は、幾分か力を強めたかと思うと数十tはある鉄の塊を造作をなく薙ぎ倒していく。
戦車の中でも比較的軽量な(それでも50t近くになるが)T-90MSはナイル川へと弾かれるように落とされ、60t以上の重量を誇るM1A1も例外ではなく、むしろその重さが仇となり一層大きい音と衝撃でナイル川の川底へと沈んでいった。
「機関全速! 退避!! 退避!! 」
慌てて各車両は撤退を始めるも、時既に遅し。すでに隊列最前列にまで迫っていた尻尾は、指揮車諸共全てを破壊するかナイル川奥底に沈めた。
やっとこさナイル川対岸の国道75号線に展開した共和国親衛隊*3の戦車大隊が援護射撃を開始するも、大半が本体ではなく尻尾を砲撃したり、相手を刺激するのを恐れて一部部隊は発砲を控えたりと、統率が取れた射撃とは言い難く有効打を出すことはできなかった。
第71・72機甲旅団の大半を一掃した巨大不明生物は、痛みが引いたのか再び進撃を再開する。
空軍は先のミサイル攻撃を警戒し分析が終わるまでの当分は出撃ができず、カイロ突入阻止の最後の望みであった戦車部隊と共和国親衛隊は壊滅するか撤退かの二択であった。
人類最古から続いた文明は無常にも、破壊され尽くされようとしていた。
やけに射撃号令が自衛隊風なのは許してください……