国連軍も色彩討伐に参加したいようです   作:ユーザーページへのリンクが切れます

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 空母発艦の描写に手間取ってたら遅くなりました……申し訳ありません。


死の神(アヌビス神)の怒り作戦

――巨大不明生物がエジプトに出現してからすでに半刻ほどが経過しようとしていた。

 

 巨大不明生物の対処に苦戦を強いられたエジプト政府は協議の末、NATO地中海艦隊へ巨大不明生物駆除の救援要請を決定。

 

 NATO非加盟国からの要請でありながらも、このままではエジプトの国家機能喪失、そして最悪のケースとしてスエズ運河への大規模な被害を予期したNATOはすぐさまこの救援要請を受理した。

 

 不幸中の幸いにも、この時の地中海では大規模な海上演習が行われており、アメリカからはニミッツ級航空母艦8番艦"ハニー・S・トルーマン"が、イタリアからはカヴール級軽空母が、フランスからはシャルル・ド・ゴール級原子力空母の計3隻の空母が派遣され、地中海に浮かんでいた。

 

 この他にも様々な参加国から参加した多種多様な艦船たちがおり、これら艦船と米伊仏空母3隻を主軸とした大規模なNATO艦隊による巨大不明生物撃滅作戦――『死の神(アヌビス神)の怒り作戦』が発動されようとしていた。

 

 

―――――――――

巨大不明出撃から約1時間25分後

地中海上

 

 

 

 地中海に浮かぶ、アメリカ海軍第6空母打撃群(CSG-6)の旗艦たるニミッツ級航空母艦8番艦"ハニー・S・トルーマン"では着々と発艦準備が行われていた。

 

 旗艦たるハニー・S・トルーマンの周囲にはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦2隻、アーレイバーグ級ミサイル駆逐艦が同じく2隻、バージニア級原子力潜水艦が1隻、その他補給艦等が輪形陣を組んでいた。

 

 そんな空母打撃群の主たるハニー・S・トルーマンのブリーフィング室では、第1空母航空団(CVW-1)隷下の第11(VFA-11)第211(VFA-211)第34(VFA-34)戦闘攻撃飛行隊の各パイロットたちが集まっていた。

 

 彼らに割り振られた任務はただ一つ。地中海の友人たるエジプトを絶望に陥れ、人類の宝たるピラミッドを崩壊させた、憎き巨大不明生物の撃破。ただそれだけであった。

 

 "Zilla(ジラ)"のコードネームを名付けられた*1巨大不明生物は、身長約40m、全長は尻尾(背ビレという説もある)含めた場合最低でも500m、最長で1km以上の可能性があるほどの巨体であった。

 

 それだけでも十分に骨が折れるのだが、さらに背中に存在する孔穴のような箇所からは、第1世代のAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルに相当する赤外線誘導ミサイルを数十発連射出来ることが確認されており、挙げ句の果てには射程10kmを越える超高温の熱線*2を吐き出すというハリウッド映画でもそうそう見ないスペックの持ち主である。

 

 おまけにエジプト上空では空が赤くなるという謎の現象が発生しており、人体及び兵器に影響は無いとされるが、不可解な現象故本格的な解明が急がれた。

 

 そんな非現実的な話ばかりのブリーフィングも終わり、パイロットたちはぞろぞろとブリーフィング室を後にした。

 

―――――――――

ニミッツ級航空母艦8番艦 ハリー・S・トルーマン

飛行甲板

 

 

 

「やぁデイブ。調子はどうだ? 」

 

 相棒であるF/A-18F スーパーホーネットのタラップを登りながら、パイロットのグレッグ少佐はすでに後席に座っていた兵装システム士官(WSO)のデイビッド大尉へと声を掛けた。

 

「まさか初の実戦がGodzilla退治になるとは思いませんでしたよ」

 

 機体のチェックリストを行いながら、デイビッド大尉は答える。

 

「HAHAHA.確かに俺も何度か中東で飛ばされたことはあるが、本物のタマを使うのは今回が初めてだ。……それとデイブ。今回のターゲットはGodzillaじゃない。Zillaだ。パチモンのほうだ」

 

「そんな昔の映画の話なんてされても知りませんよ」

 

 豪快に笑いながらヘルメットを被るグレッグ少佐に向かって、デイビッド大尉は苦言を呈す。こんなのでも一応2人の関係は良好である。

 

「そう言えばやけに到着が遅かったですね少佐。またトイレでも詰まらせましたか? 」

 

「いや違う。家族と電話だ」

 

「うわ。フラグっぽい」

 

「なんだお前。この俺が墜とされるとでも思ってんのか? 」

 

「そこまでは言ってませんよ。ですがエジプト空軍機が1機、墜とされてるんでしょう? しかも爆弾投下後の、一番身軽な状態で。こんなバカデカい爆弾を搭載した状態で狙われたら、流石に第1世代クラスのミサイルでも脅威になります」

 

 デイビッド大尉は左右翼のハードポイントに搭載された、GBU-24 Mk84 2000ポンド(907kg)級 ペイブウェイIII レーザー誘導爆弾に視線を向けながらそう言った。

 

「あれは司令が悪い。あんな低空から御丁寧にご挨拶しようとするからそうなるんだ」

 

「はいはい、そうですか。――と、チェックリストコンプリートです。少佐」

 

「ご苦労」

 

 デイビッド大尉からチェックリスト完了の知らせを聞くと、グレッグ少佐はATC(航空交通管制)へエンジン始動の許可を求める。

 

『ヘルキャット、こちらレッド・リッパーズ。エンジン始動許可を求める』

 

『リッパーズ、こちらヘルキャット。許可する』

 

 ATCからエンジン始動の許可を得たグレッグ少佐はエンジンに火を灯す。

 

 更新が進むF-35 ライトニングIIやF-22 ラプターよりも一回り大きい爆音を発する、ゼネラル・エレクトリック社製のターボファンエンジンは、近隣住民から苦情が寄せられる程だと言う。

 しかしグレッグ少佐は、このけたたましいエンジンの咆哮に惚れ込んでいた。

 

 年が明ければ、自分たちの部隊にもロールアウトしたばかりの新品のF-35が順次配備され、老兵となった相棒は航空機の墓場に送られるか、スクラップになるのだろう。

 

 そう思うと、グレッグ少佐の胸はキュッと引き締められた。

 

「少佐、余韻に浸っている時間はありませんよ」

 

「ああ。そうだな」

 

 デイビッド大尉からの言葉で我に帰ったグレッグ少佐は、ATCへタキシング許可を求めた。

 

『こちらリッパーズ。リクエストタクシー』

 

『ヘルキャットからリッパーズへ。第2カタパルトにタキシング許可』

 

『コピー』

 

 フライトデッキ・クルー(レインボーギャング)の誘導に従い、機体はゆっくりと指定のカタパルトへとタキシングする。

 

 カタパルトに着くと、下げられたローンチバーと機首下の前脚がそれぞれフライトデッキ・クルーによって固定されていく。

 

 その間にグレッグ少佐は最終確認と言わんばかりに、主翼、方向舵、昇降舵など飛行に関する箇所を全て動かし、外から直視で確認する担当係へと異常が無いかの確認を取る。

 

 兵装係、操作係のクルーがそれぞれ親指を立てる。

 

 オールグリーン。兵装、飛行共に問題無しだ

 

「そろそろだ。漏らすなよ? 」

 

「少佐こそ」

 

 カタパルトへ原子ボイラーから高圧水蒸気が送られてくる。無限とも言える原子炉から蒸気を送り出すことができるのは、原子力空母の特権だろう。

 

 グレッグ少佐はスロットルを操作し、エンジン出力をアフターバーナー直前のミリタリーパワーまで上げる。

 発艦前のパイロットが出来ることはここまでだ。後は座席に背中を押し付け、襲い掛かる強烈なGに耐える準備と覚悟を決めるだけである。

 

 フライトデッキ・クルーが片腕を大きく天に上げる。それを確認した射出係がカタパルト射出ボタンを押す。

 

 次の瞬間、20t以上にまで迫った機体が僅か2秒で300km/hにまで猛加速し、空母から放たれる。

 

 まるで押し潰されるかのような強烈なGがグレッグ少佐とデイビッド大尉に襲い掛かるが、数秒後には脱力感と共に意識がハッキリとしてくる。

 

 すぐさまグレッグ少佐はライディングギアを格納し、スロットルを構えると、機体は上昇を始めた。

 

「これだから海軍はやめられねぇんだ!」 

 

 急上昇する機体の中で嬉しそうにグレッグ少佐は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

キヴォトス アビドス砂漠

第1サンクトゥム近辺

 

 

 砂嵐が吹き上げるアビドス砂漠のほぼ中心。そこに突如として現れた不気味な塔――"虚妄のサンクトゥム"と名付けられたそれから程近い地点に、例の"ブラックホール"はあった。

 

 それぞれの虚妄のサンクトゥムを護るように存在する"守護者"のうち、このアビドス砂漠に位置する第1サンクトゥムを護っていた守護者である"ビナー"が突如としてこのブラックホールのような空間に吸い込まれるようにして消えてしまったのだ。

 

 この非常事態に虚妄のサンクトゥムの攻略及び観測全般を担当していた連邦生徒会は、キヴォトス内でも随一の科学力を持つ学園、"ミレニアムサイエンススクール"に調査の協力を要請。

 

 ミレニアム側はこの要請を受け入れ、ミレニアム内でも特にこう言った不可思議な現象に精通する部門、"特異現象捜査部"を派遣させた。

 

 同時にキヴォトスにおける超法規的機関である連邦捜査部"シャーレ"もこの調査に一枚噛むこととなり、キヴォトストップクラスの頭脳と組織による、消えたビナーの行方、そしてブラックホールの調査が始まろうとしていた。

 

「――ふぅ……。やはり、ヘリコプターでの移動は慣れないものですね」

 

 MH-60に酷似したヘリコプターから降りてきて開幕一番そう呟いた車椅子の少女は、特異現象捜査部の部長、明星ヒマリであった。

 

"ヒマリも忙しいのに、わざわざこんなところまでごめんね"

 

 そんなヒマリに背後から声を掛ける人物がいた。

 

 ヒマリが声を掛けられたほうへ車椅子ごとグルリと向きを変えると、そこにはグレーのスーツに身を包み、その上からは連邦生徒会の制服である、白を基調にしたロングコートを羽織った20代初頭のアジア人男性の姿があった。

 

 彼こそが連邦捜査部シャーレの顧問たる人物。――通称、"先生"であった。

 

「いえ、お気になさらず。それにこんな大規模で摩訶不思議な特異現象、この超天才清楚系病弱美少女ハッカーが見逃すとお思いで? 」

 

"ううん。多分ヒマリなら要請が無くても自分から来てたと思うよ。……そう言えばエイミは今日いないの? "

 

「エイミは今、第2サンクトゥムの対処で忙しいのでミレニアムでお留守番です。チーちゃんたちを呼ぼうとも思いましたが、そうすると虚妄のサンクトゥム自体の分析が遅延してしまうので……」

 

"ヒマリが直接足を運んだってことだね"

 

「そう言うことです」

 

 会話をしながらも、2人は黙々とヘリから機材を降ろしていく。

 中にはいかにも重そうな金属製の箱もあったが、ヒマリの車椅子はどうやらかなりハイテクらしく、なんと左右からアームが飛び出して来たかと思うと、1箱だけと言わず、2箱ごと重ねてスイスイと運び出してしまった。

 

 結局荷物を全て降ろした頃には、車椅子の少女よりも、成人男性の方が息が上がってしまっていた。

 

「ふふっ♪先生もまだまだですね」

 

"ぜぇ……ぜぇ……、そんなの、ズルいよヒマリ……。……ところで、その箱の中身は何? 随分大掛かりに見えるけど? "

 

 先生がそう問うと、待っていましたと言わんばかりに、ヒマリは箱に装着されていた電子ロックを素早く解除すると、中身を先生に披露した。

 

"ドローン? "

 

「ええ。エンジニア部に依頼して作成して貰った最新鋭の観測ドローンです」

 

 元々ロボットなどのメカ好きであった先生は、"最新鋭"という響きに寄せられ、まるで子供のように目を輝かせながらドローンをマジマジと観察する。

 

 先生の腕のさらに倍ほどの長さはあるであろう全長と、上下左右には計4枚の大きなプロペラが取りつけられており、下部には大型のカメラレンズが取り付けられていた。

 極めつけに全周を囲うように配置された装甲版から漂う重装備感は、どんな荒地にも対応してくれそうだった。

 

「どうですか? 作成はエンジニア部ですが、設計は私が行ったので、宜しければご感想が欲しいのですが……」

 

"凄いよ。特にこのゴテゴテ感というか……。耐久性がとても高そうだよ。シャーレの制式ドローンとして採用したいぐらい"

 

「……! ええ! そうですとも! 今回のドローンは特に耐久性を重視するように設計しましたから。例えアビドス砂漠の砂嵐だろうが、レッドウィンターの猛吹雪だろうが、この子には何ともありません」

 

 自分が設計したドローンが褒められて嬉しいのか、ヒマリはウキウキとした様子だ。先生もそれを微笑ましい目で見守る。

 

「――と、どうやらドローンの起動が完了したようですね」

 

 勢いよく回り出した4つのプロペラが、周囲の砂を巻き上げる。数m離れた位置にいる先生ですらそこらの扇風機並の風圧を感じることから、モーターの回転力の強さが分かる。

 

"操縦は? 大丈夫そう? "

 

「ご心配なく。バッチリですよ。天才美少女に不備はありませんから」

 

 手元の携帯端末を弄りながら、ヒマリは自信満々に言う。

 それを見た先生は、スマホゲーム感覚でドローンを動かせるのだから凄い時代になったものだと、まだまだ若いながらも時代に取り残されたような感覚を覚えた。

 

「ではドローン、突入します――!!」

 

 かつてのビナーのように、ドローンはブラックホールの中へと吸い込まれていった。  

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

エジプト領空域近辺

 

   

 

 

 ハニー・S・トルーマンから発艦したグレッグ少佐機は、同じタイミングで発艦した僚機とロッテを組み、エジプトの領空域へと差し掛かろうとしていた。

 当然だが、既にエジプト政府により作戦機のエジプト領空侵入は許可されているため、スクランブル機がご挨拶に来たり、SAM(地対空ミサイル)で狙われたりすることもない。実に優雅なフライトであった。

 

 レーダーには後続のF/A-18E/Fが続々と現れ、中にはイタリアのカヴール級から発艦したらしきF-35Bや、フランスのシャルル・ド・ゴール級から発艦したラファールMの反応もあった。

 

『でかしたぞデイブ! この100機以上の編隊の総攻撃の火蓋を切るのは、記念すべき俺らの機だ!』

 

『大体こう言うのは初撃じゃ倒せないものなんじゃ――少佐、残り15秒でWP(ウェイポイント)エコーです』

 

『WP15Sコピー。通過したらIPゴルフへ旋回する』

 

『コピー。……5秒前………3、2、1、旋回(ブレイク)!』

 

 機体がグイッと右方向へ曲がると、2人の眼中には黒煙に包まれたカイロが見えた。

 操縦桿を握るグレッグ少佐の力が強くなる。

 

Tallyho!!(目標視認)デイブ!! 』

 

『分かってますよ! ATFLIR(発達型前方監視赤外線)、スタンバイ!』

 

 ATFLIR(発達型前方監視赤外線)が作動し、ディスプレイの映像が白黒に変わる。 

 強力な赤外線は、雲はおろか朦々と昇る黒煙や砂嵐さえ貫き、カイロを我が物顔で蹂躙する目標(Zilla)を白色に発光させる。

 

『目標ロック』

 

 デイビッド大尉の手が投下スイッチに添えられる。

 

『Drop Ready……Now!! 』

 

 左翼、右翼、そして胴体下に吊された計3基のGBU-24 2000ポンド級(907kg) ペイブウェイIII レーザー誘導爆弾が、掛け声と共に切り離され、エジプトの空へと放たれた。

 

『弾着残り10秒』 

 

 ATFLIRからのレーザー照射により誘導された3基のペイブウェイIIIは、まるでプロのスカイダイバーのように少しもブレることなく降下を続ける。

 着弾までのカウントダウンは1秒たりとも止まることはなかった。

 

『全基弾着』

 

 デイビッド大尉の報告と共に、巨大不明生物(Zilla)の頭部が炎と煙に包まれる。

 

『ありゃ酷ぇな。逆に同情しちまうぜ』

 

バンカーバスター(GBU-28 5000ポンド級 レーザー誘導地中貫徹爆弾)じゃないだけ幾分かマシですよ』

 

『アレは空軍機じゃないと無理だろ。……それで、マイケルたちのほうはどうだ? 昨日のハムが当たって朝から便所に籠もりっきりだったが』

 

『大丈夫ですよ。あちらも直撃コースです』

 

 デイビッド大尉がそう告げた瞬間、またもや同じ地点で爆炎が上がった。

 

BDA(戦術損害評価)は? 』

 

『今やっているところです……ってあれ? 』

 

『どうした? 』

 

『アイツ、地面に潜っていませんか? 』

 

 デイビッド大尉が指差す先には、なんとカイロの市街地に頭を埋め込み、そのまま潜り込もうとしている巨大不明生物(Zilla)の姿があった。

 

『おいおいマジかよ! こちらレッドリッパーズ! Zillaが地面に潜りやがった! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

米海軍第6空母打撃群の攻撃から20分後

イタリア ローマ

在伊エジプト大使館

 

 

 

 

「……それで、その報告は本当なのかね? 」

 

 ここはイタリア首都ローマにある在伊エジプト大使館。

 巨大不明生物の出現によりイタリアへと避難してきたエジプト大統領とその側近たちは、NATO首脳陣を始めとする巨大不明生物に対する会議を行うための準備として、在伊エジプト大使館に滞在していたのだか、ここに来て驚愕のニュースが飛び込んで来たのだ。

 

「……はい。例の巨大不明生物、NATOコードネーム"Zilla"はアメリカ軍の攻撃を受けた後、地面を潜り出し、凄まじいスピードで撤退を開始。ピラミッド跡地にて出現した謎のホール状の空間へと消え去りました。また、それと同時に我が国上空にて発生していた空が紅くなる現象も終息しており、今現在は巨大不明生物、紅い空のどちらとも再発は確認されておりません」

 

「そうか……。消えた……のか」

 

 報告を聞いたエジプト大統領は、安堵と怒りが混ざったようや不思議な表情で呟いた。

 

「被害のほうは……? どうなっている? 」

 

「人的被害に関しましては、大都市であるギーザ及びカイロが集中して狙われたこと、避難誘導が失敗したこと等により、死者だけでも最低で50万人、最大では200万人以上が予測されています」

 

「……」

 

 大統領は最早何も言えなかった。

 

「物的被害に関しましてはギーザの三大ピラミッド及び隣接していたスフィンクス象は完全に崩壊。ギーザ中心地とカイロ中心地も膨大な被害を覆っています。また、軍備面に関しましても、戦車や自走榴弾砲等計500両以上が全損。細かい物も合わせれば最早集計不可能と――」

 

「分かった。もう良い。言うのも辛かろう」

 

 段々と声が震えてきた側近に対して、大統領はストップをかける。もうこれ以上は言う方も、聞く方も耐えれないと判断したのだ。

 

「すまないが、少し1人にさせてくれ。他の者も、今日は全員何もしなくていい。エジプト政府の役人としての業務は明日から再開しよう。今日中の会議も全て明日以降に回すように手配しておいてくれ」

 

「……はっ。承知致しました」

 

 ゾロゾロと部屋の中から人が消え、最後は大統領独りとなった。  

 

 

 

 

「クソッタレめ!!!」

 

 

 

 

 全てを失った大統領は、叫んだ。誰にもぶつけられないこの怒りを、ただひたすらに声に出した。

 

*1
何故かブリーフィング中にこのコードネームを聞いた数名のパイロットは失笑していた。

*2
某怪獣王の熱線とは違い放射能は確認されていない




 次回はキヴォトス側メインのお話です。
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