騙されたユメ先パイがホシノと一緒に出演した透き通る系裏ブルーアーカイブが鬼バズりした世界線 作:M92A&J941
これでもなるべく簡潔に書いてるつもりなんですが
主街区から数キロメートルも離れると、多少の往来こそあるが至る所に廃墟が建ち並び、いかにも寂れているのがアビドス郊外である。
その一角、元の用途が既に定かでない幅広の低層ビルの正面に、数台のバンやピックアップトラックが並んだ敷地が高い塀に囲まれていた。唯一の出入り口たる正門には、在りし日の名残か錆びたレールがあるのみで、門戸は影も形もない。
その代わりなのか、AK47突撃銃を持った歩哨が退屈そうに門柱に寄りかかっている。黒いフルフェイスヘルメットを被った彼女は欠伸を噛み殺しながら、腰に下げたトランシーバーを指先で撫でつつ交代時刻を待っていた。
それがカタカタヘルメット団アビドス第2支部のつい30分前の光景だった。
幹部の証である赤い衣装を纏ったヘルメット団員は、突然轟いた建設現場のような音と振動に、寝転んでいたソファから跳び起きた。最初の連続した数回が終わってからは、もう揺れが起きる様子は無い。数十秒待った彼女が窓から階下を見下ろすと、正門の前に引っくり返った車両が積み上がって、唯一の出入り口を塞いでいた。
スクラップとなったトラックやバンが目を惹くが、よく観ればその周囲には倒れた団員が何人か転がっている。襲撃という単語が脳裏を過るが、その癖に銃声の1つも聞こえない静けさが、彼女には恐ろしく不気味に思えた。
この拠点のリーダーとして与えられた個室から飛び出し、声を荒げて呼びかけるが誰からの返事も無く、自身の叫びだけが廃ビル内で虚しく響くのみだった。
這々の体で通信機の置いてある部屋に駆け込んだヘルメット団幹部は、床に倒れている部下達に悪態を吐きながらマイクを掴んだ。
「第2支部だ! 正体不明の敵に――」
「至急応援求む! ……ドスの奴らが攻げ――ギャッ!!」
碌に喋る間もなく、通信機のスピーカーから流れてきた別拠点の仲間の悲鳴と銃声に、ヘルメット団幹部は思わずマイクを取り落とす。
その赤いヘルメットの後頭部に、ピタリとサイレンサーの銃口が押し付けられ躊躇無くトリガーが引かれた。零距離で放たれた9mmパラベラムは、カタログスペック以上の威力を発揮して、赤いヘルメットを破壊した。
「お~終い」
サイレンサーを装着したM92Aにセイフティを掛けると、正体不明の襲撃者=ホシノは、おもむろに通信機本体から垂れ下がっているマイクを手に取った。
「もしもし~」
「――この声、ホシノ先輩?」
「あ、シロコちゃん? こっちは終わったよ。そっちは?」
「ん、無事制圧完了。今、回収屋を呼んで貰ってる」
敵であるカタカタヘルメット団の機材を利用して、後輩達と連絡を取ったホシノは、彼女以外動ける者がいなくなったカタカタヘルメット団第2支部を後にした。
アビドス高校の保健室に集まった面々は、一斉にジュースの缶を掲げた。ホシノ、シロコ、ノノミ、アヤネ、セリカ、ユメ、そして『先生』が異口同音に「お疲れ様!」と乾杯する。
アビドスの復興を目指す対策委員会にとって、カタカタヘルメット団は目の上のたんこぶの様な集団だった。治安悪化のみならず、ネフティスグループ関係者への拉致未遂なども行っており、それによって事業撤退を仄めかされた事すらある。
万一ネフティスグループに撤退された場合、復興事業の頓挫は必至であり、早急な対処が必要だったが、ヘルメット団の急速な勢力拡大に、弾薬補充が追い着かず後手に回っていたのだ。
今回の『先生』の来訪により、兵站の不安が無くなった事でアビドス対策委員会は、最大火力にて敵拠点を一気に叩く事を決定。アビドス高校近辺で確認されている拠点は2箇所あった為、ホシノ単独とシロコ・ノノミ・セリカの2班に分けての同時襲撃を敢行、同拠点所属の団員を一網打尽にした。
「おじさんは特に問題なかったけど、シロコちゃん達はどうだった?」
「ん……弾の心配をしなくて良いなら、あんな奴ら大したこと無い」
「そうですねぇ、何というか、凄く戦い易かったですね」
得意気に菓子を頬張るシロコに対し、顎に指先を添えたノノミは『先生』の指揮能力を評価する。
「皆が頑張ってくれたからだよ。所で君は?」
謙遜した『先生』は、ホシノの隣に座っているユメに水を向けた。
「えっ私? くち……
「と言うと、ホシノのお姉さんかな? アビドス高校のOG?」
成る程、ホシノとユメはよく似ている。制服では無いワンピースを着ているなら、そう言うことだろうと『先生』思ったが、的外れな勘違いだ。
「いや、未だ梔子でしょう。それに卒業生じゃなくて在校生だし」
「でも、近いうちに小鳥遊に成るんだから、今の内から慣れるのも良いかなって」
恋人の物言いを訂正するも、それに対して明け透けに笑うユメに、ホシノは言葉を詰まらせる。
2人の遣り取りに疑問符を浮かべる『先生』対し、ユメが左手を掲げると、ホシノはネクタイを緩めブラウスの襟元から細いチェーンのペンダントを引き出した。ペンダントの先には、ユメの薬指に填まっている物と同じデザインの銀色のリングがチェーンに通されている。
「私達、結婚するんです」
「うへへ……」
「つまり、学生結婚?」
満面の笑みのユメと、照れ臭そうに頬を掻くホシノ。そして手作り感あるチャイルドチェアに座らされた乳幼児――よく観れば、ホシノとユメ両者に通じる面影がある。それらが意味する所を『先生』はゆっくりと咀嚼した。
「私は独り身だから分からないけれど、子供を産んで育てる事は、とても大変な仕事だと考えているよ」
その務めを果たして来た事は、2人の娘が元気である事から判る。慎重に言葉を選んでいるがそれは間違いなく『先生』の本心だった。そして「困った時でも、そうで無くても遠慮無く頼って欲しい」援助の手は惜しまないと『先生』は締め括った。
「ん、ユノは私たち対策委員会のみんなで育てる」
頬張った菓子を飲み込んだシロコが親指を立てると、対策委員会の面々は各々うなずいた。
ジュースが温くなってきた事に、趣向を変えましょうと、ノノミは大振りな急須を取り出し、薬缶で湯を沸かし始めた。ティーパックを3つ急須に放り込んだノノミが席に戻ってきた時、セリカの携帯のアラームが鳴った。
「あっ用事があるから、私もう行くね」
「お茶を飲むくらいの時間はありませんか?」
「ごめんなさい! お先に!」
立ち上がったセリカは、慌ただしく挨拶を済ませると、鞄を掴んで走って行った。
程なく沸いた湯を急須に淹れて暫し。紙コップ注がれた紅葉色の液体から、
「ルイボスティーです。ノンカフェインだから、ユメ先輩も安心ですよ」
「ありがとうノノミちゃん」
「ユノの
愛娘への気遣いに感謝する先輩達に、ノノミは緩いガッツポーズで応えて腰を下ろした。
ルイボスティーで口を湿らせたノノミは首をかしげた。
「そういえばセリカちゃんの用事って何でしょうか?」
「確かに、最近のセリカちゃんは直ぐに帰っちゃいますね」
同じ1年生で特に仲が良いアヤネも、最近のセリカの動向が気になっていたらしい。するとお菓子をルイボスティーのイッキ飲みで流し込んだシロコが立ち上がった。
「ん……セリカを尾行しよう」
今ならまだ追いつける筈と、キラキラ目を輝かせたシロコに、なぜか『先生』も同調。ヘルメット団の拠点を潰した直後で、気が逸っているのか、真面目なアヤネとノノミも、尾行には乗り気のようだ。
「何だか面白い事になってきたねぇ。でも、悪いけど私はユメ先輩と
砂漠地帯であるアビドスの夜は冷えやすいし、ヘルメット団の残党も未だウロついている筈だ。明るいうちに細君と娘を家に送り届ける必要がある。
アビドス市街地にある中層建築マンションのセミファミリールームが、ホシノとユメが同棲生活を営む住処である。
愛娘をベビーベッドに下ろすと、ユメはスルスルとフローリングに靴下を滑らせて、リビングの椅子に腰掛けているホシノの背後に回り込んだ。そのままホシノにしな垂れかかると、ユメは母乳を蓄えて重みを増しつつある胸を、慣れた仕草で小柄な旦那様の頭に預けた。
「セリカちゃんの行き先は分かったの?」
後輩からのメッセージを確認していたホシノは、頭頂から後頭部にかけて、温かく柔らかい弾力がのしかかった事に小さく嘆息すると、携帯から目を上げた。
「場所はアビドス市街だから、
「だって、すごく重いんだよ? ホシノちゃんのいけずぅ」
ぶうぶうと唇を尖らせる嫁に閉口したホシノに、ユメは楽しげに眦を下げる。
「ふふっ……そうだよねぇ。ホシノちゃんは正面からのぱふぱふが好きだものねぇ?」
否定できない事実ではあるが、益々調子づいて揶揄ってくる事は流石に堪えかねたホシノは、粗雑な手つきで頭頂から後頭部に沿って撓んでいる重量物を押し退けた。
「あんっ!」
ホシノにとっては想定外の甘い悲鳴に鼓動が跳ねる。常日頃は丁寧に扱う為、ぐにゃりと五指と掌が深く沈み、やんちゃな手を跳ね返さんとする乳房の弾力は、新鮮な感覚を呼び起こす。潰された事で母乳が滲んだのか、甘い香りが一層強くなった。
紅潮して固くなった悪戯っ子の隣に座ったユメは、有言実行とばかりにホシノを豊満な懐に抱え込んだ。
「行かないの?」
その一言に、ふわふわと蕩けていたホシノの意識が覚める。
「後輩のみんなに、先輩らしいトコ見せなきゃね」
ミルクの香気の谷間から顔を持ち上げた後輩に、ユメは優しく頬笑んだ。
スッと立ち上がったホシノは部屋の隅にあるクローゼットへと真っ直ぐに向かった。
柔らかな色調の物が多いインテリア群の中において、異質かつ無骨なダイヤル式南京錠が取り付けられたクローゼットは、明るい木目調の外観に反しギギッと重量感のある金属的な音を立て観音開きになる。
最初に目を引く物は、吊り下がったアビドス高校のブレザージャケットだが、内部のFRP製のラックにはノーマル仕様のベレッタM92Aや、各種グレネード、12ゲージ弾、9mmパラベラム弾などが整然と並んでいる。
これはユメのお腹が大きくなった頃、ベビー用品を買い集める際に新規購入した鋼鉄製のウェポンロッカーだ。『キヴォトスの
ホシノは迷う事無く制服のジャケットだけを取って羽織ると、ゴソゴソと裏地やポケットを弄る。一見標準的な状態の上着だが、実態はえげつない改造制服であり、下手なタクティカルベスト以上の弾薬携行力を備え、特殊繊維を織り込んで9mm弾程度では容易に貫通できない引っ張り強度がある。もはや戦闘服と称しても過言で無い代物だ。
「よし!」
ジャケットの各所を確認したホシノは、ウェポンロッカーの観音扉を閉めると、ガチンと南京錠でロックした。
「ホシノちゃん、盾は持って行かなくて良いの?」
メインアームの
「近場ですし、大丈夫ですよ。
「うん。そうだね・・ありがとうホシノちゃん」
愛する『パパ』の言葉を噛み締めながら微笑んで
「それと……直ぐ帰ってくるつもりですが――もし、出掛けるならば、必ず目的場所や時間を連絡して下さいね」
「いや、小さな子じゃ無いんだから……そんなに信用無い?」
苦笑いを浮かべるユメに、ホシノは据わった目をして断言した。
「有るわけ無いでしょう。この間も
「ひぃん! ホシノちゃ――んむ」
涙目になった恋人に頭を掻いたホシノは、爪先立ちになって、ユメの言葉を唇で封じ込めた。
10数秒か数十秒か、ユメが落ち着きを取り戻すと、薄目を開けたままのホシノはゆっくりと愛妻の唇を解放し、至近距離で見つめ合う。
「兎に角、なるべく早く帰って来ますから、家で大人して居て下さい」
「……うん。行ってらっしゃいホシノちゃん」
ヘルメット団第2支部
アニメにて、砂漠にある本部を潰した後に、便利屋68がヘルメット団の残党を処理している。よってアビドス内には、本部の他に最低2つの拠点があると考えられます。
このホシノ単独での強襲殲滅は、ホラーっぽい雰囲気で綴ったつもりです。
ホシノとユメとその娘に対する『先生』の反応
ストーリー上の都合が強い部分です。もし学生の妊娠出産などに対して、少しでも否定的な事を口走った場合、対策委員会からの総スカンは必至。即行で物語が破綻しかねません。
ご都合主義とか性格改変などの誹りを受けてでも、こうする必要があると考えています。
キラキラスナオオカミ
拙作中では結構な頻度で『目がシイタケ』になっているシロコです。
ユメとホシノの関係性として
保守的な性格のホシノの背を、理想家あるいは楽観的なユメがそっと押して上げる関係を考えています。
今回、その一端でも感じて頂ければ幸いです。
ミルフィカB92
ユメの護身用拳銃。M92Aノーマル。何の事かではないが、現在1メートル超らしい。
フィカス=無花果・優曇華。ミルヒ=乳。
M92Aタクティカル
ホシノのサブアーム。ユメ曰くお揃いだが、増設マウントレールやサプレッサー着脱機構などを追加した、ホシノらしい特殊部隊仕様。
砂漠でお水は大切だよね
ユメのスキル。通常はペットボトルや水筒の演出だが、ホシノ相手ではレア演出で『哺乳瓶』になる。
戦術的制圧
シン化したアビドスホルスのスキル。通常はショットガンの連射だが、ユメもしくはアヤネの後方支援下の場合に、二丁拳銃の乱射になり威力と射程が向上する。
鎮圧から制圧に強化されている