転生したけど隣のやつが何か大きなものを抱えている。(抱えてない) 作:得時
1.夜の山道は危険
真夜中の山道を俺は走行していた。周りに灯りはなく車のライトだけを手掛かりに走る。
俺は運送会社に勤めているごく普通のトラックドライバーだ。最近は残業が続き碌に寝れていないせいで軽く眩暈がする。
「まずいな……もうこんな時間か……。」
予定時間よりも遅れていることに焦り俺はアクセルを強く踏む。この道は普段人はもちろん車通りもない、だから油断していたんだ。
そう、飛び出してきた血まみれの怪異に気づくことができなかった……。
結果として俺は転生を果たしていた。それも異世界にだ。
なぜ死んだのかは覚えていないが恐らく最後に見た怪異に襲われたのだろう。余りにも恐ろしすぎて目を瞑っていたからわからないがきっとそうだ。
「マリョクゥゥゥゥゥ」とか、謎の呻き声も聞こえたし。現代にあんなのがいるとは恐ろしいもんだ。
まあ、死んでしまった物は仕方がない。それよりも大事なのは今世のことだ。俺が転生した世界は前世の世界よりも文明が進んでいないらしい。
移動手段も車ではなく馬車だ。(車があっても前世で散々乗ったから乗りたくはないが)
だけど列車が走っていたりでそこまで不便には感じない。
そういえば、前世との違いがもう一つあった。この世界には魔力があるのだ。魔力を使い身体能力を強化して戦う奴がいて、魔剣士というようだ。
その魔剣士を代々輩出している貴族の家に俺は生まれた。
ああ、言い忘れてたけど今世の名前はドライ、バートラック男爵家のドライだ。
この世界に来て早いもので十五年がたち、俺は領地を出て王都に来ていた。
ミドガル魔剣士学園に入学するためだ。貴族は15歳になると三年間学園に通うことになるらしい。
最初は魔剣士の修行だとかは面倒で適当にこなしていたが、この世界に魔物という存在がいることを知った俺は一心不乱に剣を振った。
そりゃあそうだろう?前世は怪異に殺されたんだから普通にトラウマだ。おかげで学園の入学試験の実技はらくらく突破できた。代わりに座学はボロボロだったがご愛嬌。
座学が怪異相手になんの役に立つってんだ。
そんなこんなで無事に入学式を終えた俺は見事に教室で浮いていた。
こちとら生まれてから領地でひたすら剣を振っていたんだ。まぐろなるど?ミツゴシ商会?話題についていけないぜ。
おまけに生まれつき目つきが悪いと来て、話しかけてくる奴も0だ。
流石に話し相手もいない三年間を過ごしたくはないと思い、隣で同じく空気になっている奴に話しかけた。
「あー、俺はドライ・バートラック。隣だしよろしく。」
すると話しかけたそいつはこっちを向いた。黒い髪に黒い眼、どこにでもいそうな顔立ち。だけどその眼はどこか遠くを見ているようで目が合わない。
「僕はシド・カゲノー、よろしく。」
これが俺のシド・カゲノーとの最初の出会いだった。