転生したけど隣のやつが何か大きなものを抱えている。(抱えてない) 作:得時
10.学術学園からの呼出
気温が上がり夏の訪れを感じる今日この頃、俺たちは変わらず4人で昼飯を食べていた。
シドに謝った日から現在まで特に変化はない。シドについて分かったこともなければ、ヒョロとジャガが急に怪物に変わることもない。平穏な日々だ。
「そういえば、ドライ君はブシン祭の選抜大会にエントリーしましたか?」
「俺たち三人はもうしてあるぜ」
「僕のはヒョロが勝手にしたんだけどね」
ブシン祭。それは二年に一回、王都で行われる剣の大会。国内は当然、国外からも名のある剣士が集まる大きな大会だ。そのブシン祭には学園枠があり、それを決めるのが選抜大会というわけだ。
「俺もエントリーしたぞ。もちろん目指すは優勝だ」
「まあお前は実技だけはいいからな。実技だけ、は」
「今は第一部の教室ですもんね。実技だけ、は凄いです」
「もしかして喧嘩売られてる?」
最近は座学だってちゃんと聞いてるんだがな。成績は全然上がらないけど。
「あ、そうだドライ。俺たちこの後チョコレートを買いに行くんだ。お前も来いよ」
「チョコレートを?」
「そうです。何でも甘いお菓子で、女子に渡せばモテモテになれるそうですよ」
チョコレートってこの世界にもあったんだな。俺も一緒に行きたいところだが今日は無理そうだ。
「悪い、今日は呼び出しを受けてるんだ」
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俺が通っているのはミドガル魔剣士学園だが、この学園の敷地には別の学園の校舎が存在する。
ミドガル学術学園の校舎だ。俺はそこへの呼び出しを受けていた。
何の用だ?俺の成績が悪すぎて特別補習でも受けさせる気か?
俺は指定された教室に着き、ドアをノックした。
「入りたまえ」
中から男の声がした。俺は断りを入れてからドアを開ける。
ドアを開けるとそこには先ほどの声の主であろう初老の男がいた。
部屋を見渡すと他には、前の事件で出会った赤髪の騎士の姉さん、それにアレクシア王女がいた。
とても補習をするような雰囲気には見えない。教室を間違えたか?
「すみません。間違えました」
「いいえ。合ってますよ」
教室を出ようとしたら騎士の姉さんに止められた。
どういうメンツだよ。
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赤髪の騎士アイリスは事件について思案に暮れていた。
彼女の妹、アレクシアは無事に戻ってきたが、事件には不可解な点が多すぎる。
中でも一番大きな問題は謎の宗教団体・ディアボロス教団についてだ。
アレクシアはその教団の施設に囚われており、騎士団はその施設から様々な資料や物品を押収した。
しかし、先日謎の火災により保管庫ごと押収物が燃えてしまい、残ったのは一つのアーティファクトだけだった。
(外部の人間が保管庫を燃やすなんてできない。きっと騎士団の中に……)
騎士団の中に敵が居ると考えたアイリスは新しい騎士団、『紅の騎士団』を設立し、既存の騎士団から信頼できる二人を引き抜いた。
(残ったアーティファクトは学術学園に調査を依頼しましょう)
学術学園には学生の身でありながら、王国一の頭脳と呼ばれた女性がいる。
その名はシェリー・バーネット。アーティファクトの解析で彼女に勝るものはいないだろう。
(残る問題は……アレクシアね)
彼女の妹であるアレクシアは事件の当事者であり、誘拐されている間に様々なことを見聞きした。
アレクシアはこの王都に蔓延る陰謀を暴くと言って聞かない。意地でも事件について調査するだろう。
しかし、アイリスは姉として妹が心配であった。
(アーティファクトは教団に狙われている。シェリーにも護衛が必要になる)
『紅の騎士団』には人手が足りず、アレクシアにまで回せる人がいない。
そこで彼女は、事件の時に怪物の腕を切り飛ばした少年を思い出した。
自分と同じく背負う覚悟を決めた少年のことを。
(そうだ。あの時、騎士団員を救うために飛び出した彼なら。覚悟を秘めた瞳をする彼なら……)
アイリスは魔剣士学園に『腕が立ち、茶髪の目つきが悪い学生』を探すように依頼した。