転生したけど隣のやつが何か大きなものを抱えている。(抱えてない) 作:得時
最初こそクラスメイトから避けられていた俺だったが、一週間もすれば話をする程度にはクラスに打ち解けていた。授業は魔剣士学園と言うだけあって実技が多い。基礎的な体力づくりに剣術、魔力操作の練習などなどだ。幼い頃から必死に剣を振り続けていた俺はそれなりに腕が立ち、領地の同年代には負け知らず。なんで、学園でもらくらく無双……、とは行かなかった。
いやびびったね、まさか同年代にあっさり負けるとは。
そいつは白い髪に赤い眼をした女で、涼しげな顔して俺から一本を取っていった。アレクシスだか、アレクサスだかってやつだ。正直、領地でテングになっていた俺だが一瞬で鼻を折られたね。世の中上には上がいるんだな。王都のレベルを痛感した俺はそれはもう剣を振った。寝る間も惜しんでただただ剣を振った。振りすぎて眩暈がしたときはちょっと焦ったけど大丈夫だろう。
ちょうど座学とかいう昼寝の時間もあることだしな。
そんなこんなで学園の日々を謳歌していたわけだが、どうにも気になる奴がいる。
隣の席のシド・カゲノーだ。……誤解を招く前に行って置くが俺は男が好きなわけじゃない。
同じ男爵家としてシドとは入学式の日から授業後に話したり話さなかったりしているわけだがどうにも不思議な奴だ。あいつはよく一人で周りを観察している。だけど実際には周りなど眼中になく遥か遠くを見ている、そんな目をする奴だ。
それに、もう一つ気になる点がある。シドの成績だ。あいつは座学も実技も平均よりちょい下ぐらいの成績だ。何も不思議な点はない、それだけなら。気になるのはあいつの剣術だ。剣術の授業であいつと打ち合うことがあって分かったことだがシドの剣は一見すると普通だ。いや普通すぎる。剣を習えば必ず出るような独自の癖がない、全くな。
最初こそ覇気も感じない剣にただやる気がないだけ、かと思っていたがそれにしては基礎ができすぎている。努力なくしてあんな教本通りの剣は振るえないだろう。
おかしな剣のシド・カゲノー。
しかしまあ、鼻を折られた俺は知り合ったばかりの奴に「お前の剣おかしくね?」なんて教官面できないためそのことについて触れることもなく、今日も他愛のない話を振る。
「シドはまぐろなるどって行ったことあるか?」
「いや……」
「なんでもマグロを挟んだハンバーガー見たいなのが売ってるらしいぜ」
「うーん?」
「あ、ハンバーガーっていても分からないよな」
「それは、違うよな……」
今日のシドはいつにもまして生返事だ。眼も合わずどこかを見ているようだ。
こいつは時々こうして何かを思いつめたような顔をすることがある。
「まあ、剣術の修行があるからあんまり遊ぶわけにもいかないが」
「そうだよなあ……」
「授業中にバレずに抜け出す方法とかあればいいんだけどな」
「ん、バレる?」
生返事のシドに合わせて適当なことを話していたらなにかが引っかかった様子だ。なんか変なこと言ったか?
思案していた俺の思考は数秒後遮られた。
「そ、それだああああああああああああああああ!」
柄にもない大声を上げ立ち上がり、こちらを見るシド。
初めてこいつと眼が合った気がした。