転生したけど隣のやつが何か大きなものを抱えている。(抱えてない) 作:得時
きっかけが何だったのかは覚えていない。ただ物心が着いた頃に僕はもう『陰の実力者』に憧れていた。
……という感じで『陰の実力者』を目指していた僕はとある壁にぶち当たっていた。人は核で蒸発するという壁に。こればっかりはどんなに肉体を鍛えても克服できない。でも僕の憧れた『陰の実力者』は核では蒸発しないのだ。つまり他に力がいる。そう魔力だ。それに気づいた僕はすぐに様々なことを試した。瞑想、断食、改宗……本当に様々。そうして木に頭を打ち付け森羅万象を感じていた時についに見つけた。魔力のような光を。
そうして新たな扉を開き僕は魔力を身に着けた。なぜか転生していたが些細な問題だろう。
貴族として生まれた中、陰で盗賊を狩ったり、『陰の実力者』プレイのための組織を作ったりで色々あったわけだけどそれはまた別のお話だ。
僕は今、念願の王都の学園に来ている。ここから本格的な『陰の実力者』プレイを始めるのだ。
しかし、学園ではモブに徹しなければならない。表で実力を発揮したら『陰の実力者』じゃないからね。そんなわけで僕は人畜無害なモブAとして学校の成績も中の下くらいを取っている。そうして今はモブに相応しいモブ友達を探しているのだ。なのだが……
「おはよう、シド。」
「おはよう、トライさん」
「いや、ドライな?もはやわざとだろお前。」
という具合に入学式以来、隣の席の彼によく声を掛けられる。
ドライ、バートラック男爵家の次男坊だ。赤茶色の髪に鋭い目つきで、その顔はもう何人かヤッちゃてそうだ。実際に結構鍛えてそうだし。
うん、とてもじゃないけどモブ友達には慣れなさそうだ。なのでそれとなく関わるなオーラを出しているんだけど効いてなさそうだね。かっと言って強硬手段に出て入学早々に悪目立ちするのもよくない。
うーん、現状維持が一番。
それはそうとして、他のモブ友達は二人ほど目星が付いているんだけど何かが足りない気がする。最高の『陰の実力者』プレイにはもう一捻り欲しいところだ。
何が足りないんだろうか。朝からそのことについて考えているんだけどどうもいいアイデアが浮かばない。
だけど意外な形でその天啓は降りてきた。
『バレる』
「そ、それだああああああああああああああああ!」
そうだ。『陰の実力者』と言えば、微妙に核心を突きそうだけど突かない人物が必要だ!
つまり、「モブっぽいけどおかしいぞ......いったい何者なんだ!?」とか「まさか!?こいつの正体は!?」みたいな反応をする役だ!
丁度いいのでドライ君にその役をやってもらおう。実力もそこそこだし、もし本当にバレても男爵家ならどうとでもなるよね。
そうと決まればさっそく実行しよう。思い立ったが吉日って言うしね。