転生したけど隣のやつが何か大きなものを抱えている。(抱えてない)   作:得時

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8.覚悟の瞳

俺の前世の記憶はこの世界に来てから徐々に薄れつつある。いや、正確には思い出さないようにしていた。自分の罪から逃げ出したかったんだ。だからがむしゃらに剣を振った。剣を振っている時だけは思い出さずに済んだ。疲れ果てるまで剣を振れば悪夢を見ずに済んだ。

その甲斐あって何とか記憶にフタをすることができたんだ。

 

だけど、学園に入ってからそのフタは開いてしまった。

シド・カゲノー。

俺が前世で轢いてしまった少年にそっくりな奴。最初に顔を見たときは心臓を掴まれたみたいだった。

 

『お前は忘れても、僕は忘れていない』

 

そう言われたような気がした。俺はきっと無意識に赦しを求めていたのだろう。

シドに少年を重ねていたんだ。だからアイツが気になった。アイツに話しかけようとした。

アイツの友達になろうとした。アイツの為に声を上げた。

全て自己満足のためにアイツを利用していたんだ。

 

『で、君はまだ逃げる気なの?』

 

『僕の未来を潰して、君だけ平穏に生きていくつもり?』

 

『それでもいいんじゃない?そうして全てから逃げ続けるといいよ』

 

「俺は……」

 

『シド・カゲノーのことも利用し続けるといいよ』

 

『自分を慰めるためにさ』

 

シド。アイツはきっと俺なんかよりも大きなものを抱えている。二日前の忠告もそうだが、何も抱えていない奴があんな眼をするはずがない。

だけど、アイツは俺とは違う。

あの眼は戦い続けることを選んだ眼だ。すべてを捨てる覚悟がある瞳だ。

 

なあシド。俺もお前みたいになれるだろうか。

……まだお前の隣に居てもいいだろうか。

 

「悪いなシド。後で謝らせてくれ」

 

『?』

 

「お前にもだ。眼を背けてすまなかった」

 

『それで赦してもらえると思ってるの?』

 

「赦してもらおうなんて思っていない。赦されるとも」

 

『……』

 

「俺は罪を背負って生きていく。俺が消してしまった命の分も」

 

「そして俺の命を懸けてより多くの命を救って見せる」

 

だから、もう行かなきゃな。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

動け。動け。動け!俺は必至に震える脚を怪物に向けて動かした。

まずいことに怪物の近くには足を引きずっている騎士団員がいる。

そして怪物は今にもその腕を振り下ろさんとしている。

 

覚悟を決めろ俺!命を懸ける覚悟を。命を救う覚悟を。

そして……

 

『君は、踏み込みが浅いね』

『どこかに怯えがあるんだろう』

 

命を奪う覚悟を。

 

俺は大地を思い切り蹴った。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

王都は混乱に陥っていた。王女の誘拐事件は解決しておらず、建物が切れるように崩壊し、謎の怪物まで現れた。そんな事態を収拾するために一人奔走する赤髪の騎士がいた。

アイリス・ミドガル。この国の王女でありながら、王国最強とも称される魔剣士だ。

アイリスは怪物が現れたと報告があった地点へ疾走する。

そんな彼女の眼に巨大な体躯が見えた。怪物の体だ。次に目に入ったのは怪物の脚元にいる負傷した騎士団員の姿だ。今にも怪物の腕が振り下ろされようとしている。

 

(まずい!この距離では間に合わない!)

 

そして、怪物の腕が団員に振り下ろされた。

 

瞬間、アイリスは見た。

怪物の腕を切り飛ばした閃光を。全てを背負う覚悟を秘めた瞳を。

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