「やあっ!!」
「はあっ!!」
メイスと忍者刀がぶつかり火花を散らす。一合、二合、三合と打ち合い大きく距離を離す。そして再び激突する。
やがてその攻防はメイスと忍者刀がそれぞれの持ち主の首元に添えられた事で終わりを告げた。
「「ありがとうございました!」」
今まで武器をぶつけ合っていた二人。対魔忍の大真しのぶと龍化の術と呼ばれる龍に姿を変える獣遁の使い手、五車学園所属の竜宮ハイリはお互いに礼をして休憩に入る。
「だいぶ成長したな……」
しのぶの太田城での集中訓練も終わり現在は学園での生活にシフトしている。しのぶはメキメキと成長し戦闘面に関してだけだが最低限対魔忍としてやって行ける実力を身に付けていた。幾ら雑賀衆が長い時間をかけて研磨し続けた訓練法でしごいたとはいえその訓練に耐える精神力と乾いたスポンジのように技術を吸収して強くなっていく様はまるで強くなる事が約束されたゲームのキャラのようだ。まあ、実際しのぶは主人公ではあるのだから妥当と言えば妥当なのか?
「あ、雑賀さん!任務終わったんですか」
「おう、楽な仕事だったからな」
「お疲れ様です」
「ハイリもおつかれ、しのぶの相手あんがとな」
ここに来る前にした任務はいわゆる護衛任務で今回は襲撃もなくほぼ立ってるだけだったので楽ではあった。
まあ、コネクション作りに自分の娘を勧めてくるのはちょっとウザかったけど。もちろん断ったけどな。
「あたしの訓練にもなりますから」
そう言ったハイリは少し嬉しそうに笑う。最初は訓練相手としてそれぞれを紹介したのだが今では友人関係になったようでかなり仲も良い。
ちなみになぜ本来なら成人のはずのしのぶが五車学園にいるのかと言うと、俺が雑賀衆トップとしての権力で無理くりねじ込む事に成功し1年だけは五車で対魔忍のあれこれを学ぶ事になったのだ。なのでそれに伴い任務もそのまま対魔忍やるよりは少ないし難易度も下がった。
井河衆は昔から下忍の使い捨て戦法がデフォルトだからか一人一人を大切に扱わない節がある。最近はアサギさんが校長になってマシにはなってるが中々悪習は終わらないもんだ。
「そうだ、しのぶに渡すものがあるんだ」
「私にですか?」
そう首を傾げるしのぶの前にアタッシュケースを置いて開ける。中に入っていたのはしのぶが使っているのとほぼ同じ形と大きさの小型メイスだ。
「予備かなんかですか?」
そう言ってしのぶはおもむろにメイスを手に持つ。
「そのメイスに対魔粒子流してみろ」
「対魔粒子をですか?」
俺の言葉に首を傾げながらもしのぶはメイスに対魔粒子を流し込む。
するとメイスからバチバチと音を立てながら電気が発生してメイスの上を走る。
「な、なんですかこれ!?」
「これは、アミダハラのとある店で特注したメイスだ。本来なら魔力で使う魔術を対魔粒子でも使えるようにしてもらったものだ。見ての通り対魔粒子を流し込むと電流が流れるようになってる」
アミダハラというのは近畿地方に存在する人工島都市の事だ。
かつては日本第三の都市として栄えていたが、米連と中華連合の代理戦争となった“半島紛争”の煽りを食らって弾頭ミサイル攻撃により廃墟化。
その後、地下深くに存在する魔界の門を通じて魔族が流入するに従い無法者たちの巣窟となり、10年余りで“廃棄都市”と呼ばれる日本最大級のスラムに成長した。
ただし東京キングダムやヨミハラなどの無法地帯とは違い、「魔術師組合」を中心としたアミダハラ独自の秩序が築かれており、中心地のシンサイをはじめ、キタ、キョウバシといった普通の街並みとさほど変わらない町地区と、危険な廃墟地区が併存している。
そして無法と法治の境目には巨大な歓楽街が形成され、“無法ならではのサービス”を求める客が全国から殺到、莫大な収入源となって今でも廃棄都市を成長させている。
アミダハラは元々はBLACK Lilithから発売された『鋼鉄の魔女アンネローゼ』の舞台だが、アンネローゼの世界観は対魔忍シリーズとパラレル的に共有されており、対魔忍シリーズの1つである『決戦アリーナ』において対魔忍世界にも正式に登場する運びとなった。
だからかこの世界にも存在している。
そしてとある店というのはアミダハラ随一の魔術師、ノイ・イーズレーンというアミダハラの闇を司る魔術師協会、その重鎮中の重鎮が普段営んでいる魔法堂という店だ。
ノイ・イーズレーン──俺はノイ婆さんと呼んでいるのだが、彼女らが魔界からこちらに来てからのお得意様でもある。
俺もあそこで魔術的な品を仕入れたりしているので関係的には良好だったりする。
「電流を発生させる他にも広範囲の地面に電流を流し込む範囲攻撃や貫通性が高い雷速の電撃を放ったり、ワザと暴発させて強力な電撃を発生させたりも出来る。まあ、暴発技はメイスがお釈迦になるから最終手段だけどな」
「へぇ〜」
「確かに良い武器ね。でも、高かったんじゃない?」
「ん?いや、オマケしてもらったから安い方だと思うぞ」
「ちなみに幾らなんです?」
「7桁円」
「100万円以上!?」
いや、普通なら八桁いっても良いのだが一部素材の持ち込みと次の依頼を格安にしたりとかそういう取引でお安くしてもらったんだよな。
「お前、パワーは凄まじいけど忍法無いからな。こういうのは持っといた方がいいと思ってな」
「7桁の重み……恐ろしい」
「随分と過保護なのね」
「いや、雑賀衆だと結構こういうのはあるんだが。俺としては井河は補助が足りないと思うんだよなぁ」
雑賀衆だと武器屋に頼めば大抵のものはお安く仕入れて経費で落とす事が可能なので対魔忍自身の負担は少ないようになっている。まあ、それだけ雑賀衆は稼いでるという事なんだが。
井河はよく知らんが長老衆が腐ってるからそっちに金吸われてそうなんだよな。
「ま、頑張れよ」
「あ、ありがとうございます」
「お疲れ様です」
未だに値段のせいでメイスをビクビクしながら持っているしのぶとハイリに別れを告げてその場を去る。