月光が照らす東京キングダムの外れにてけたたましい重火器の音が鳴り響いていた。銃弾が放たれる度に火花が辺りをてらしコンクリートが飛び散る。
それを放っている存在は鋼鉄の体に四脚の足にキャタピラをつけ重厚な音を立てながら走行するドローン兵器であった。
「もういやぁ!!」
「うーん、予想外すぎて泣きそう」
あの後無事に施設に侵入し何とかバレずに情報抜き抜きして色んなところに爆弾仕掛けたて脱出後爆発したのは良いんだけど。まさか爆破した施設からひょっこりして来たのは驚いたなぁ。
情報を流し読みした時には頑丈とは書かれてたけど流石にビル1つを潰す爆破に巻き込まれて無傷とは。
パッと見武装はガトリングと小型ミサイルポッド。今はガトリングだけ撃って来てるけどそのうち小型ミサイルも撃って来るよな。
しかも、近くの廃ビルから施設内にいた警備と同じ強化外骨格を着た奴らがドローン兵器の後ろに集結しつつあった。
(流石にしのぶと稲にはキツイかな)
2人とも未だに新人と言って差し支えなく今日が初めての実践だ。しのぶに至ってはほぼど素人。
このまま逃げても良いがその場合あのドローン兵器やその開発元は雲隠れする事になり開発元の情報もゴミになる事確約だ。
「蛍は後ろの兵士を頼む、成美さんはしのぶと稲についてやってください。ドローン兵器は俺が担当します」
「「了解」」
俺の指示に2人も了承したのでドローン兵器を見やる。ガトリングの弾幕がかなり分厚くめんどくさい為正面突破は難しい。というかやりたくない。
「……これがゲームだったらつまんねとか言われそうだなぁ」
これからする事にぼんやりとそう考える。
「まぁ、ここは現実だからな」
そう言いながら懐から巻物を取り出し軽く広げた巻物に腕を沈めた。
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試作極地対応自走型ドローン兵器『マイティ』それが今なお銃身から弾丸を放ち続けるドローン兵器の名称だった。
マイティは強い衝撃を加えられた事でプログラミングされていた命令に従い起動した。マイティは起動すると同時に辺りが瓦礫によって押し潰されている事を理解し瓦礫から這い出た。そして近くにいた味方識別信号の無い5人の人間に向かって攻撃を開始した。
しかし、現在は5人が物陰に隠れたことにより未だに排除出来ていなかった。しかし、未だに未完成であるマイティは自慢のキャタピラで自走することも無くガトリングで5人が隠れた物陰付近にただ銃弾をばら撒くだけだった。
そんなマイティの後ろに味方である強化外骨格を装備した兵士たちがやってくるが後ろに着くと途端に動きを止める。
それもそうだろう敵がいるであろう場所にはガトリングによる攻撃が続いており迂闊に前に出ればマイティは味方を撃たないように停止するようにプログラミングされているからだ。下手に自分たちが出るよりはマイティに任せた方が良いだろうという判断だ。
故にただ無駄に銃弾を放ち続ける固定砲台と化したマイティとたちつくす兵士という何とも言えない光景が広がっていた。
そんな時だマイティのセンサーカメラに弧を描いて近付くものを検知した。プログラミングに従いそれを撃ち落とそうとガトリングを一時的にそちらに向ける。そして見事に銃弾は飛翔物体を撃ち落とす事に成功した。
しかし、次の瞬間には戦場が煙幕に覆われていた。その発生源は先程マイティが撃ち落とした飛翔物体──スモークグレネードであった。
そんな事態にもマイティはプログラムに忠実に従いカメラをサーモグラフィーに切り替え煙幕の中でも敵を見失わないようとして崩れ落ちた。
その原因は地面に無造作に転がっていた。スモークグレネードによって視界が遮られた時に放り投げられた円柱状の物体、EMPグレネード。
電磁パルスを発し電子機器にダメージを与える非殺傷兵器であった。
ケーブル・アンテナ類に高エネルギーのサージ電流が発生しらに接続された電子機器などに流れる過剰な電流によって、半導体や電子回路が傷付き誤作動を起こしたのだ。
そんなマイティに向かって突き進む人影が1つ。全身を黒い戦闘服に身を包み顔をガスマスクで覆っている雑賀であった。
彼は煙幕の中でもマイティのに迷いなく突き進んでいた。
なぜ目が見えないはずの煙幕の中でマイティをの姿を捉えられるのか。それは背中に装備された具足型パーソナル全方位ソナー
そして腕を引き絞りマイティへ向けて正拳突きの構えを取る。
その拳はただの人間の拳では無い。
筋肉の密度は常人の数十倍。それによる筋肉の収縮は常人を遥かに超えるエネルギーを生み出す。そんな膨大なエネルギーに耐えるために骨格は常人の倍近い強度を誇る。
だがそれだけでは無い。
雑賀が持つ色欲の権能によりそこモンハナシャコ、テッポウエビ、デンキウナギ、サバクトビバッタの特性を肉体に付け加えた。
モンハナシャコは前二本の捕脚をスナップさせ打ち出すこの一撃は水槽のガラスに穴を開け……水中でダイバーの指を折り……体長15cmの時点で二十二口径の拳銃と同じ威力があると言われている。
しかしこれらは水中での出来事。陸地では自分の余りの力に耐えきれず、自身も傷ついてしまう可能性があるから加減をすると言う説がある。
これが人間大で水の抵抗もなかった場合。しかも常人を遥かに超えたパワーで放たれた時──
テッポウエビは体長約4センチ、体重25グラムの十脚目テッポウエビ科に属するエビの一種である。
テッポウエビの持つ左右片方だけ肥大化したはさみは、はさみの上部を開くと曲がった小さなスペースに水が入り込み、勢いよく閉じると圧力がかかって水が噴射される仕組みを持つ。
これによって発生した気泡は時速100キロ以上の速さで獲物に向けて放出され、銃声よりも大きな約218デシベル()の音が1秒程度鳴る。また、気泡が弾けると、溶岩の温度の約4倍にあたる摂氏4427度の熱も発生し、更には衝撃波までも生まれる。
これが人間大で放たれた時その規模は──
デンキウナギは身体から電気を生み出す生物の代表として有名で、体の胴から尾部にかけて左右一対の発電器官を持ち、一撃で馬を倒す最大850ボルトの電流を発生させる。発電器官は筋肉細胞が変異した「発電板」と呼ばれる器官であり自らの意思で運動させる事で発電する。
全長約2.5メートルほどのその体長ですら850ボルトという殺人的な電流を発電するがそれが人間大で発電した場合──
サバクトビバッタは昆虫界最大の脚力を誇る昆虫である。その脚力を発揮する秘密は後肢足の関節で強力な「バネ」のように働く、レジリンというゴム状の特殊なタンパク質にある。レジリンのおかげで、バッタはジャンプするときに蓄えたエネルギーを脅威の97%もの割合で使うことができる。
もしそれが足だけでなく全身の関節に存在すれば──
そんな4体の異なる生物の力を掛け合わせたその一撃は──
ビル一棟を吹き飛ばす爆発にすら耐えたマイティの装甲に触れた瞬間、闇を照らす電流が内部に存在する電子機器の全てを焼き切りその装甲を飴細工のように砕きマイティの四脚を除いたおよそ八割を轟音と共に粉微塵にした。
マイティはもう二度と動く事はおろか原型すら無くしたのだ。
更に後ろにいた兵士たちに向かって砕け散ったマイティの欠片が高速で着弾し吹き飛ばす。更にマイティの破壊と同時に生まれた轟音により眩暈やショック状態を引き起こさせた。
そんな兵士に向けて銃弾が放たれる。
対魔忍は戦闘を行う際には対魔粒子を利用し身体や武器に纏わせることで殺傷力や防御力を高めている。
対魔粒子によって強化されたその弾丸は必中の腕前を持つ蛍により吸い込まれるように強化外骨格を貫き兵士の頭蓋に叩き込まれその命を奪った。
「…………終わった?……え?」
全ての敵が動かなくなった事で恐る恐ると言った様子でしのぶはもは足しか残っていないマイティと血の中に倒れ伏す兵士を見て唖然としたのだった。
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