和歌山県和歌山市太田城本来の歴史ならば既にその存在は無く来迎寺が代わりにその本丸後に建っているはずだがこの世界においては未だに太田城はその威容を保っていた。
外見上は戦国時代の城と何ら変わりは無いが内部は違う。別名カラクリ太田城と呼ばれる。城の地表部分は昔ながらのゼンマイや歯車などを使用したカラクリが様々な場所に施され侵入者を容赦なく殺しにかかる。
そして地下は近代科学の粋を集めて作られた地下施設が広がっている。
そしてそこは我らが雑賀衆の本拠地でもある。
そんな太田城にしのぶの初任務の引率から一日、今日はしのぶを連れて来ていた。
「これが……太田城。初めて見た」
「そりゃそうだ、前世だとこの場所には来迎寺っていう寺が建てられてたからな」
「え?そうなの」
「ああ、まあ前世でもそこまで有名じゃ無かったし知らなくても問題ないしな」
「へぇ〜」
現在の太田城は未だに俺ら雑賀衆が持ち主であり一般公開などはされていないので人の気配は少ない。そもそも太田城に入るのは相当な手練でも不可能に近い。
太田城の四方の門はには封印遁による封印と隠蔽が施されておりそもそも入ること事すらできない。更に上空からの侵入を防ぐ結界が貼られており内外共に隙のない城だ。
ならそれにどうやって入るかと言えばこちらも封印を開けるための鍵がある。ただしこの鍵は最低でも上忍クラスでもなければ所持できない。
ただ非常に出入りが少ない場所なので特段問題は無い。それに内側から開けることも出来るので事前に連絡さえすれば開けてもらえる。
鍵を取り出し門にかざすと封印遁の封印文様が浮かび上がりそれが消えると勝手に門が開いていく。
「すご……」
「行くぞ。数秒で閉まるからな」
「え?まっ、待って!」
開いてから早いものでもう閉まり始めている門の中に体を滑り込ませる。
この門は封印遁が解除されると開門し数秒で閉門するカラクリ仕掛けになっている。封印遁の封印も門が閉まると自動的に再び発動する。
そのまま城の地下へと向かう通路に向かう。
地下への通路は封印遁による封印こそないが最先端の科学セキュリティーが施されており、指紋から網膜、声帯、DNA認証など様々なセキュリティーを解除する必要がある。
「……城?」
「まあ、わかる」
あまりの科学っぷりにしのぶは城である事に疑問を持ち始めたがまあ、わかる。これを城と言い張るにはちょっと難しい。いや、確実に城なんだけどね。
そのまま地下に入って行き。エレベーターに乗り込む。この太田城の地下はおよそ200mまで広がっており4層に別けられており、最下層が最重要区画となっていてエレベーターは研究階層の中層までしか繋がっておらず下層は全て侵入者迎撃用の区画となっている。そして今回用がある上層は主に訓練や兵器試運転などに使用されている区画で様々な武器や道具が揃えられている。
「それにしても、よく1ヶ月も時間勝ち取りましたね」
「まあな、アサギ校長にはいつも無茶ぶりさせられてるからな。これで1ヶ月もらえなきゃ雑賀衆まとめて離反するぞと脅した」
「うわぁ……」
「実際声かければ離反する程度にはヘイト溜まってんだよなぁ……」
「うわぁ……………………」
1ヶ月という時間はしのぶの次の任務までの期間でありその間にこの太田城にて鍛える手筈にしている。俺?もちろん任務ですがこのやろー。
ていうかマジでアサギ校長というか井河の長老衆からの嫌がらせが酷い。危険度の高い任務振ってくるし単独任務も行かせるし偽情報握らせてくるし。よほど俺に死んで欲しいらしい。
まあ、雑賀衆は昔から井河とは仲悪かったからなぁ。忍法に頼り下忍の使い捨て戦法をとる井河と忍法に頼らず全体的な質を高めている雑賀衆とでは反りが合わないんだよな。
「と、ついたな」
エレベーターが上層に着いた事を知らせ止まる。そのままエレベーターから降りて幾つか轟音を響かせる部屋を通り過ぎて一番奥の方まで来る。
「すごい音だけど大丈夫?」
「大丈夫だ、問題無い」
「それは問題ある時の奴では?」
轟音は実験や戦闘訓練の音なので気にするだけ無駄だ。
「武器屋いるか!」
「はいはい、いますよ。おや、ご当主さまじゃないですか」
最奥にある部屋に入り名前を呼べば1人の男が現れる。
「おや?そちらのお嬢さんは?」
「あ、どうも。大真しのぶです」
「こりゃどうも、あっしはしがない武器屋でございます。よろしくお願いしやすねしのぶさん」
こいつの名は武器屋。本名は別なのだが本人があまり本名を好きじゃないらしく武器好きなのも相まって周りには武器屋と呼ばせている。
「それで今日はどのような品物をお探しで?」
「しのぶは最近対魔忍になった元一般人でな。今日から1ヶ月ここで訓練させる。任務は昨日の1回だけでとりあえず俺と同じ戦闘服とガスマスク、メイスを2本と閃光手榴弾とスモークグレネードを持たせてる」
「なるほどそれは大変でしたねぇ」
大まかな事情を話せば武器屋のしのぶに向ける視線が哀れなものを見るような目に変わる。
「井河は相変わらずのようで」
「後数世代は重ねないと変わらないだろ」
井河の長老衆の老害どもの影響がほんとに良くない。
「ま、そんなわけでこれからしのぶに合う武器を見つけていく感じだ。戦闘服の方もしのぶの要望をできるだけ叶えたものにしたいしな」
「なるほどなるほど。わかりやした、とりあえず一通り触れさせみてって感じですかね」
「ああ、それで頼む」
「それじゃあしのぶさんこちらへ」
「1ヶ月だけど頑張れよ」
「色々ありがとうございます!」
しのぶに別れを告げて部屋から出る。
とりあえずこの後は一度五車学園に戻る必要がある。
「だるいなぁ」
あー、なんで学生なのに仕事してるんだろうなぁ。